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映 画

「第36回東京国際映画祭」「シック・オブ・マイセルフ」「カンダハル 突破せよ」のとっておき情報
(2023年10月21日10:45)
映画評論家・荒木久文氏が「第36回東京国際映画祭」「シック・オブ・マイセルフ」「カンダハル 突破せよ」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、10月16日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 秋っていうとお祭りですが、今年もやってきたのが、映画の秋のお祭りということで、「第36回東京国際映画祭」です。毎年紹介しているので、ダイちゃんにもおなじみだと思うのですが、紹介させていただきます。
この映画祭は、国際映画製作者連盟 (FIAPF) の公認で長編作品のみを対象としている、日本最大の映画祭です。今年は、10月23日(月)~11月1日(水) 東京・有楽町周辺で開催されます。有楽町に移ってから3年目ですね。今年も色々な企画が用意されているんですが、ちょっとご紹介しますね。幕を切って落とす注目の「オープニング作品」というのがあるんですが、これはヴィム・ヴェンダース監督『PERFECT DAYS』という作品です。
この監督は、「ベルリン・天使の詩」などで知られるドイツの名匠ですね。この監督が、主演に役所広司さんを迎え、東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々のドラマを描いています。

鈴木 最近、トイレの話題が多いのはこれだな。
荒木 これね、76回カンヌ国際映画祭に出品され、役所さんが日本人俳優としては、19年ぶり2人目となる男優賞を受賞した作品です。トイレの話題っていうか、まさにトイレなんですが、東京・渋谷区で実際に行われている、区内の公共トイレ17カ所を世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」という催しがあるんですって…。これに賛同したベンダース監督が、このプロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた作品なんだそうです。日本での公開は12月22日、こちらで一足先に観られるということです。
そしてクロージング作品は、日本が生んだ特撮怪獣映画の金字塔というと「ゴジラ」ですけど。生誕70周年記念作品で、日本で製作された実写のゴジラ映画としては30作目にあたるそうです。「ゴジラ マイナス 1.0」と書いて、「ゴジラ マイナスワン」と読むのだそうです。監督は、山崎貴監督。「ALWAYS 三丁目の夕日」などで有名ですが、この山崎さんが、監督・脚本・VFXを手がけています。舞台は戦後すぐの日本なんです。
鈴木 戦後すぐの日本?
荒木 はい。戦争によってメタメタにされた日本に、追い打ちをかけるようにゴジラが出現するんですね。その圧倒的な力で日本を更なる「負(マイナス)」へと叩き落としていくという・・で、ゴジラに対して生きて抗う術を探す…というらしいんです。
主演が神木隆之介君、ヒロイン役を浜辺美波ちゃんという、今年9月まで放送された朝ドラの「らんまん」コンビです。ほかにも、山田裕貴くんとか、安藤サクラさんとか、実力派豪華キャストが共演だそうです。こちらの一般公開は11月3日ということです。私もまだ見ていませんので、楽しみです。
鈴木 ゴジラの映画って、誰が出ようと、結局主役はゴジラってとこが好きなんですよ。そこが、なんともワクワクしますよね。
荒木 人間 みんな脇役ですからね(笑)。ということで、クロージング作品の「ゴジラ マイナス 1.0」です。そして、映画祭の花ともいうべきコンペティション部門、世界各国から1,942本もの応募があったそうです。その中から、15本の作品を上映します。ヴィム・ヴェンダース監督他、審査委員のもとに、クロージングセレモニーで各賞が決定されるということです。
鈴木 それ、1,942本観るんでしょうね、当たり前だけど。
荒木 そうですね、やはり下見する人がいて、その中から何本か出すんですね。ま、100程度にするのかな。そこから15本出すことになるそうです。大変な仕事ですよね。 ほかには、コアな映画ファンには見逃せないイベントとして、日本の巨匠、小津安二郎生誕120年を記念した特別企画「ショルダー オブ ジャイアント」という、巨人、小津安二郎監督の作品をデジタル修復版で公開するみたいですよ。あとは、この番組でも紹介しているんですが、城定秀夫監督の作品。「映画の職人 城定秀夫という稀有な才能」というタイトルで特別上映されます。
鈴木 ドキュメンタリー映画なんですか?
荒木 いえ、特別上映です。「ニッポンシネマナウ」という、今の日本映画を紹介する部門なのですが、城定監督は 2003年に「味見したい人妻たち」という、(笑)もともとピンクの人ですから、そこから始まって100本を超える作品でメガホン取ったと言われています。
鈴木 タイトルだけで、ワクワクしますね。
荒木 『アルプススタンドのはしの方』が、最近は評判となっていますけど、これはじめ4作が特別上映されますね。この映画祭は、10日間開催されます。
会場は、有楽町、日比谷辺りですけど、100本前後の映画が上映予定。普段見られないアジアや東欧の映画やドキュメンタリーなど、質のいいものが揃っていると思います。
チケットもまだ余裕があるようなので、安い価格で封切り前の映画が見られるチャンスですから、ちょっと調べて行って頂きたいと思います。と言う事で、10月23日から開催の「第36回東京国際映画祭」のお知らせでした。これで義理を果たしました(笑)。
鈴木 あはははは。
荒木 ガラッと変わって、ダイちゃん、TwitterとかSNSはやってないんだっけ?
鈴木 全部手出したけど、3年くらい前に、一瞬で一日で全て止めました。
荒木 何かきっかけがあったんですか?
鈴木 何もなくて飽きたんですね。
荒木 ああ、飽きたんだ(笑)。確かにそういう人いるね。僕の友達では、X(旧Twitter)、Instagram、Facebookどころか、スマホそのものを止めちゃったって人いますから。
鈴木 いやー、そこまでやっちゃうか、やらないかって、ひとつ前に、ひとつ線があるんですよね。
荒木 そうだよねー。ただ、そういうのは少数派で、みんな最近はSNSですね。
荒木 ああー、そうかもねー。この世に生きてない…ね。なるほどね。私なんか、もう墓の中だよね。
鈴木 あはははは。
荒木 SNSをやっいてる人の中には、「いいね!」をもらいたいだけの中毒患者みたいな人もいるって聞いていますけど。
鈴木 承認欲求ってやつだ。

荒木 そうです。次の作品はそんな人にはちょっと身につまされる映画かもしれませんね。タイトルが「シック・オブ・マイセルフ」。現在公開中ですが、強い承認欲求に取りつかれてしまってどうしようもなくなった女性のホラーと言いますか、怖い映画です。
舞台はノルウェーの首都オスロです。主人公は、人生に行き詰まってしまっている若い女性シグネさん。彼女は、かつてライバル関係にもあった恋人の彼がアーティストとして世間の脚光を浴びるんですね。普通、嬉しいと思うんですが、激しい嫉妬心と焦燥感に苛まされちゃうんです。そこで彼女は自分自身が世間から注目されるため、ある違法薬物に手を出し、それをSNSで発信して、これをきっかけに世間の注目を浴びようとしたんです。それで薬の副作用で入院することになってしまうんです。恋人からの関心は得たものの、シグネの目立ちたい、世間に注目されたいという承認欲求欲望はさらにエスカレートしていくという、そういうお話です。
鈴木 泥沼、底なしですよ、これは。
荒木 そうですよね。極論いうと、自己愛の強い、性格の悪い女性の話なんですけど。この場合、ちょっと病気チックなところもあって、一概には責められないんですが。この作品は、少なからず誰もが持っている承認欲求をテーマに、何者にもなれてない主人公が、嘘や誇張を重ねてですね、人に注目されたいためだけに自分自身を見失ってくということを描いているんですね。
鈴木 現代社会…痛いよ。痛いところをついてるよね。
荒木 内容的にはコメディ…というか、けっこうグロというか、痛々しくて、ブラックコメディとスリラーの中間みたいね、そんな感じかもしれませんね。「承認欲求」って最近よく聞く言葉ですよね。自分を認めてもらいたいという気持ちをそう言うんですけど、正確には、他人から認められる「他者承認」と自分を自分で認める「自己承認」の2つあるんです。当然、私たち中にも「承認欲求」はありますよね。
鈴木 もちろん、ありますよ。
荒木 ダイちゃんのように この業界で特に表に出て働いている人は、ある程度の「承認欲求」がなければ、この業界には不向きと言うしかないですよね。
鈴木 そうですよ!いたとしても、1.2年でいなくなる人が多いですよね。
荒木 ある程度、私が、私が…っていうところがないと…。タレントさんとか、必須条件ですよね。だけどそれは程度次第ですよね。
鈴木 低いか高いかって話ですからね。
荒木 迷惑事件を起こしてしまうユーチューバーとか炎上商法が得意のタレントさんたちも、この主人公と同じような状況なんですかね?
鈴木 もう引くに引けなくなってきているんじゃないですか。
荒木 そうなんですよ。で、ひたすら自分が分からず暴走しているってことを、わからなくなってくるんですね。周りにそういう人いますか?
鈴木 逆に、そういう人のYOUTUBEは面白いから困るんですよね。やばいなと思っても見てしまうんですよね。
荒木 私にも、1週間に1度 仕事で会う人がいるんですけど、その人は女性なんですけど、その人はしょっちゅう自分で、1時間程度しか会わないんですが、その1時間の間に何十枚自分の写真撮るの。SNS用に。
鈴木 えー!?
荒木 その人に、いわゆる自己承認欲求テストってのをやってみたんですよ。そしたら、95点でした(笑)。もう承認欲求の鬼と名付けましたけどね。
鈴木 あはははは。鬼女です!
荒木 そうですね。ということで、人に注目されることばっかりが価値になって、今言ったような、同じ行動とっている人結構いますよね。そういう人を見て、笑っちゃっていいのか笑っちゃいけないのか微妙ですけど、私みたいな非SNS派は。
現代社会の存在証明というか、レーゾンデートルっていうんですかね、どうすれば誰もが自分を幸せだと思えるんだろうかと。どうしたらいいんだろうね。
鈴木 荒木さんも僕も、こうやって表に出る仕事をしてるじゃないですか。承認欲求は誰にもあるって言いながら、我々2人、意外に低い方かと思います。
荒木 そうね。僕、承認欲求テストやってみたら、35点~40点でした。低いですね。
鈴木 聴いてくださるファンの方はたくさんいらっしゃるから嬉しい話なんですけど、あんまり俺が、俺が、俺が…って、昔から言わないじゃない。
荒木 確かに。これは難しい話ですよね。お互いに考えてしまう「シック・オブ・マイセルフ」ですね。
鈴木 ほんとそうですよ。

荒木 ということで、最後はアクション映画をご紹介しましょう。
アメリカのCIA、ミッチェル・ラフォーチュンという人がアフガニスタン赴任した時に体験した実話をベースに描いたアクション映画です。
「カンダハル 突破せよ」という、10月20日公開の作品です。
あの人気アクション俳優ジェラルド・バトラーが主演です。中東イラン国内で、CIA工作員トム・ハリスって言うんですけど、核爆発、核施設の破壊とかいろいろやってたんですが、内部告発で全世界にその正体がばれてしまいます。イラン国内での作戦を即刻中止し、30時間後に離陸するイギリスの飛行機に乗るために、アフガニスタン南部のカンダハルにあるCIA基地まで砂漠を横断しようとする話なんです。
鈴木 あるんだろうな、こういうこと。
荒木 あると思います。そこにイランの軍隊や、パキスタン軍の統合情報局とか、タリバン系のゲリラとかですね、それから金次第で敵にも味方にもなる武装集団とか、追跡してくるわけです。で、敵と味方が入り乱れる混沌としたものとなっちゃうわけです。
逃げるトムは果たして飛行機の脱出に成功できるのか!という、手に汗握る追跡劇です。
ジェラルド・バトラーって、これまではスーパーマン的に強いアクションが多かったんですね。だけど今回はリアリティのある、生身って感じのスパイを演じています。
鈴木 弱さもあるってこと?弱点も。
荒木 そうそうそう!そうですよ。撃たれりゃ死ぬという当たり前の役を演じてます。いい味出しています。むしろ今までのスーパーマン的な強い人より、こっちのほうがとてもいい感じですね。
「カンダハル 突破せよ」という10月20日公開の作品です。
チケットプレゼント2組4名に頂きましたので、お好きな方観に行ってください。
鈴木 ありがとうございます。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。