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映 画

アラキンのムービー・ワンダーランド/「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」「MEN 同じ顔の男たち」「ケイコ 目を澄ませて」のとっておき情報
(2022年12月25日11:00)
映画評論家・荒木久文氏が「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」「MEN 同じ顔の男たち」「ケイコ 目を澄ませて」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、12月19日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 W杯ようやく終わって…。ホントに終って残念だけど、生活のリズムをここで何とか整えたいと思ってます。
鈴木 あっという間にメリークリスマスですよ。 ホント体調管理ね!
荒木 まず、先週ちょっと触れた最大の話題作、「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」公開されました。ようやく、感想とか詳細をしゃべれるということなので
今日は、ちょっとそれから話しましょうね。

鈴木 やっと話せるようになったのね!是非!
荒木 前作の「アバター」は、全世界興行収入歴代1位の大ヒット作で、今でもこの記録は破られてませんよね。今回の「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」、舞台は前の作品から約10年が経過した世界での新しい物語です。
ストーリーは、前作と同じく地球からはるか遠くの神秘の星パンドラです。
主人公ジェイクがパンドラの種族になり、先住民ナヴィの女性ネイティリと家族を築いて、子どもたちと平和に暮らしていましたが、再び人類がこの平和なパンドラに現れて侵略を始めたことで、暮らしていた神聖な森を追われたジェイクとそのファミリーは、未知の海の部族のもとへ身を寄せることになります。しかし、その美しい海の楽園にも侵略の手が迫ってくるというお話なんです。
鈴木 なるほど…。
荒木 ジェイク役のサム・ワーシントン、ネイティリ役のゾーイ・サルダナはそのまま、シガニー・ウィーバーが、ちょっと意外な役で出ています。もうごらんになった方もいらっしゃると思いますので、まあ、私は一般の方より多少たくさん映画を見てますけども…今回のこの作品の映像は、まさに映画史上最高クラスの映像美だと思います。
鈴木 最高クラスですか。
荒木 今までのベストと言ってもいいんじゃないのかな。三分の二は水中シーンなのですよね、この前 ダイちゃんに言いましたけども。とにかく、この水及び水中の表現やそこに生息する生物が素晴らしいんです。飛魚のでかいのに乗って空をとんだり海中に潜ったり、あのプレシオザウルスっていう海の恐竜、あれの小型っぽいのに乗ったりとかですね、明らかにクジラをモチーフにした巨大で知的な生物、これが今回大きなカギを握っているんですけど。海洋生物、トゥンクンとか言ったかな。私たちの想像を遥かに超えたものすごい世界へ連れて行ってくれますよ。多分 皆さん観る時、これは好みですけど、吹き替え版のほうがいいかもしれませんよ。
鈴木 それは画像をぐっと観れるってことか!
荒木 そ!字幕を読む時間がもったいない。
鈴木 あれー!そこまで言う?
荒木 そうそう!その分画面観ましょ!って感じですね。あまり詳しく言うのは野暮なんで、観ていただきたいんですけど。ちょっとお金かかりますけど、IMAX のHFRの3Dで、是非これ以上ないベストな環境で見ないともったいない!
鈴木 荒木さんがそこまで言う!
荒木 そう、もったいないです!私あんまりこういった大きな特撮ショームービー、ふつうは好きじゃないんですが、これは素晴らしいです。ジェームズ・キャメロン。ダイちゃんも観てらっしゃいますよね。
鈴木 タイタニック、T2から何から、すごい映画ばっかりじゃないですか。
荒木 ハリウッドナンバー1の監督と言っていいでしょうね。キャメロン監督は、パート2、続編が凄いって言われているんですよね。
鈴木 「ターミネーター」もそうだよね、T2が一番面白かったもんね。
荒木 成功を収めた作品の続編を作るって、プレッシャーがあるんですよね、どんな監督にとっても。大変なことなんですけども、シリーズ物は2が一番難しく、失敗する可能性が高いんですよ。ジェームズ・キャメロンは、「エイリアン2」、「ターミネーター2」と大成功を収めた2本の続編で知られています。
鈴木 確かにそうだよなー。
荒木 多分、多分ですよ。私の言ってることだからあてになりませんけど、この「アバター2」は、1を凌駕してナンバーワンになるんじゃないかと思いますよ。
鈴木 ええー!!史上最高収益ってことになる?
荒木 ま、時間はかかるかもしれませんけど、充分その可能性はあると思います。そして先週話しましたように、今回の次も完成してるらしいんですけど、もう撮影も終わっているという話もありますんで、もう次が見たいですね。
鈴木 いやー、そこまでですかー。
荒木 そこまで素晴らしかったです。皆さんも、ダイちゃんも早めに観たほうがいいです。ということで、ようやくお話出来た「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」でした。
鈴木 でも、「タイタニック2」って作んないですね。
荒木 2は出来ないでしょう! それで3位ですからね。海の映画好きですね、監督は海洋学者になろうと思ったくらいの人で、自分でも潜るんですよね。
鈴木 知識しっかりあるんですね。

荒木 そうですね。「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」でした。ということで次がですね、簡単にふたつ。制作会社A24。この話はこの番組でも何回もしていますよね。特にホラー映画で評判が高く今やひとつのブランドです。
「エックス」とか「ラム」とかね。ちょっと前だと「ミッドサマー」なんかがそうですね。この映画は、今までのホラー映画にないものを持っていると思っています。
それはA24から先週公開されている、「MEN 同じ顔の男たち」というサスペンスホラーなんです。というより、不条理ホラーといったほうが正しいかもしれません。
主人公は未亡人のハーパーという、40ぐらいの女性です。彼女は夫の死を目の前で目撃してしまい、心の傷を癒すためイギリス、ロンドン郊外の静かで美しい田舎町、田舎村ですね、村を訪れるんですが。彼女は豪華なカントリーハウス、別荘を借りて住みます。
そこで、そこの管理人ジェフリーと出会います。で、彼は色々面倒みてくれるんです。
ところが、街へ出かけるとそこに住む少年や牧師、警官に至るまで、出会う男すべておかしいんですよ。何がおかしいか、ていうと、男たちすべてが、なんと管理人のジェフリーと全く同じ顔をしているのです。
鈴木 うわー!気持ち悪いなー。
荒木 さらに、近くの使われなくなったトンネルから奇妙な全裸の男が後をつけてきたり、庭のリンゴの木から大量の実が落下したりと不思議な出来事が起こり始めるんです。彼女を襲う得体の知れない恐怖が、徐々にその正体を現し始めまるという…。いやーな緊張感ってあるでしょ?
鈴木 一番いやな映画だよね、それ。
荒木 何か理解できない恐怖感ですね。ダイちゃんみたいな人は、感覚的に嫌で理解出来ない恐怖かもしれませんけど、幻想的です。非論理的でわけわかんないないって人多いですけど、さすがA24の作品かなと思います。人を不安にさせるみたいな…(笑)
お好きな方はどうぞって言う感じですね。
鈴木 (笑)お好きな方はどうぞ…。

荒木 はい。「MEN 同じ顔の男たち」というタイトルの作品でした。
次は、12月16日から公開中の「ケイコ 目を澄ませて」です。
「澄ませて」は「耳を澄ませて」の「澄ませて」です。というのはこの映画のヒロインのケイコさんは聴覚障害、耳が聞こえない。だからその分 目を凝らして、目を澄ませて頑張ると言った意味も含んでいるんですね。
ストーリーです。岸井ゆきのさん演じるケイコさん。彼女は両耳が聞こえないというハンデを持ちながらボクサーを目指して練習を重ねます。そしてとうとうプロボクサーとしてリングに立つようになります。しかしケイコは、言葉がしゃべれないし、そのうえ不器用で人付き合いが苦手なんです。誰かに気持ちを伝えることが出来ずにボクシングはじめ、人間関係の悩みを1人で抱えてしまうという状況。色々悩んだ末に、ジムを休会したいと、距離をとろうとしますが、そのジムが閉鎖されること知り、再びボクシングと向き合うことになる…というお話です。
ダイちゃんはボクシングはやったことないですか?
鈴木 ないですね。でも、「あしたのジョー」とか「ロッキー」を観た後はシャドーボクシングやってますよ。
荒木 そうですね(笑) 主演の岸井ゆきのさん、セリフはほとんどないんですけども、言葉がなくても気持ちがビンビンに伝わってきます。あの人ご存じのように、小柄でやせていて、ボクシングどころか、スポーツとは無縁の位置にいる人ですよね。
鈴木 そういう感じするよね。
荒木 身長は150㎝で、体重は40キロだっていうから、これでボクシングは大変ですよね。実際たいへんだったようです。3~4か月間集中的に練習したようですよ。食事も筋肉をつけるためにタンパク質を中心にして、大変苦労したようですね。
それから喋れない役なので、セリフがないからちょっと楽と思うんですけど、逆みたいですね。表情とか、タイミングとか、セリフでタイミングがとれない分、それは凄く大変らしいですね。
そんなことで、耳の聞こえない人がボクシングをやるからもうこれ大変ですよ。ダイちゃんも同じように、サッカーもそうですけど声かけるって大変じゃないですか?
セコンドの声とか、ボクシングの場合ゴングの音、レフェリーのこと、指示の声、それが無い中でどうやってボクシングやるの?と。
鈴木 自分の感覚だけってことですよね。
荒木 そう!目だけだよね。この映画はその音の問題をうまく扱っています。
我々は普段生活していて意識してない音がこの映画では非常に強調されています。
縄跳びの音とか走る音だとかに混じって、我々は普段、体に染みついていて意識しない音ってたくさんあるでしょう。クラクションの音だとか、街の雑音だとか。そういうものを聞こえない人の立場に立って出しているんですよ。そうすると、本当に色んな音に囲まれて生活しているんだなと。まあ雑音も含めて感じますね。
鈴木 あるものはノイジーに聞こえるんでしょうね。
荒木 そういうことなんです。もうひとつは視線、というか目、見る方のね。この映画の特色は、今や素人でも使わない16ミリフィルムを使っているということです。8ミリ映画って昔ありましたけど、その上が16ミリなんですけども昭和の時代には無かったんじゃないかな。これを使って効果ってのはですね、懐かしい、なんとなく暖かい雰囲気が出ているんですよね。独特の色味が出るわけですよ。暗い場面は暗い部分で思いっきりつぶれちゃう感じですよ、墨で塗ったみたいに。
それが逆に主人公の心境とか周りの環境をイメージするんです。非常にいい効果を出しているなと思いました。
鈴木 へぇー。そうなんですか…。
荒木 この映画はすごく視覚と聴覚に訴えかける作品だなと感じましたね・・・。ということでご紹介したのは、現在公開中の「ケイコ 目を澄ませて」という作品でした。
鈴木 本当に我々は日常で、目を凝らし、耳を凝らし、鼻を凝らし、色んな感覚、五感、六感を凝らして生きているんですもんね。
荒木 それが無い人たちが、どんなに大変かということもわかりますし、ましてやスポーツね!やるのは凄いことですよね。これは実際のモデルの方がいるんです。
小笠原恵子さんっていう、実際に聴覚障害者でありながらプロボクサーとしてリングに立ったことがある人が。
鈴木 実際に恵子さんがケイコなんだ。
荒木 そうなんです。彼女の生き方にヒントを得て、監督が、三宅さんていう方なんですけど。作り上げた脚本でなかなか秀逸でした。
鈴木 これは年末年始、観たい映画、観なきゃいけない映画、盛り沢山じゃないですか。
荒木 まあ、選んで観てください。またこの前から来週発表出来るかどうか…。
鈴木 そうです!私の一本ってやつですよね。映画!今年のね。
荒木 私の一本。映画でもタレントさん、俳優さんでも構わないんで。まあ豪華とは思えない賞品を用意して待ってます。(笑)
鈴木 是非是非!まだまだ送ってください。待っています。ということで、ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。