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映 画

第93回アカデミー賞のとっておき情報
(2021年5月2日10:15)
映画評論家・荒木久文氏が、第93回アカデミー賞のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、4 月26日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 荒木さん!! お願いします。
荒木 はい! 今日は第93回アカデミー賞の発表、授賞式です。例年より2か月遅れの異例づくめの開催でした。もう 結果を知っていらっしゃる方もいると思うのですが、各賞を発表していきたいと思います。
鈴木 待ってました。
荒木 早速 発表しましょう。その前に 各部門のノミネート作品のお話だけちょっと…最多10ノミネートを果たしたのは、デビッド・フィンチャー監督とゲイリー・オールドマンがタッグを組んだNetflixオリジナル映画「Mank マンク」でした。
作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞という主要部門のほか、撮影賞、衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、作曲賞、美術賞、音響賞など。
これに続いたのは、6作品。「ノマドランド」「シカゴ7裁判」「ミナリ」「ファーザー」「サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ」「Judas and the Black Messiah(ジューダス アンド ザ ブラック メサイヤ)」が、それぞれ6ノミネートで並んでいて、例年以上に混沌としたオスカー戦線が予想されていました。
さあどうなりましたか…というと…何から行きますか?
鈴木 作品賞から行きましょう…。
荒木 そうですね。 作品賞「ノマドランド」。以前、火曜日だった時のムービーキャッチャーで紹介しました。アメリカの、「現代のノマド」と呼ばれる人々を描いた「ノマドランド」が作品賞でした。
鈴木 やっぱりねー。
荒木 続いては監督賞。監督賞は「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督。
中国北京出身の女性。アジア系女性としては初めての受賞、キャスリン・ビグロー以来2人目の女性監督賞です。快挙です。
続いて主演男優賞。主演男優賞は番狂わせですよね。「ファーザー」のアンソニー・ホプキンス。大本命だった故チャドウィック・ボーズマンを抑えて4度目のノミネートで2度目の最高年齢での受賞。
鈴木 そうですか すごい、見事ですね。
荒木 主演女優賞です。主演女優賞は フランシス・マクドーマンド。
「ノマドランド」で3度目の受賞ですね。オールマイティの女優さんで最初から本命とみられていましたが、見事獲得です。そして助演男優賞は「Judas and the Black Messiah」でダニエル・カルーヤ。そして助演女優賞はなんとなんと、韓国の女優さん。「ミナリ」のユン・ヨジョンさん。「ミナリ」では印象的なおばあさんを演じていました。
主要部門ではこんなところですが…。
はかには 脚本賞はエメラルド・フェネル。「プロミシング・ヤング・ウーマン」での受賞。
脚色賞は、クリストファー・ハンプトン、フロリアン・ゼレールが「ファーザー」でオスカー獲得です。
鈴木 荒木さんのご感想かいかがですか?予想通りという感じですか?
荒木 主演男優賞以外は まあだいたい予想通りですかね。
今年の注目点たくさんありましたが、まとめていうと…「多様性」ダイバシティですね。
「史上最も多様なオスカー」と言われていました。
鈴木 ダイバシティや「史上最も多様なオスカー」、なぜそういう流れになったと思います?荒木さんは。
荒木 女性や黒人、アジア系の候補が今までになく多かった 女性が前23部門で過去最多の70人がノミネートされたこと 特に監督賞には5人のうち史上初めて2人の女性(
うち一人は中国人、ノマドランドのクロエ・ジャオ)白人以外では初めてでした。
主演女優賞には5人のうち黒人二人で史上2度目でした。
2,3年前に「オスカー・ソー・ホワイト」と言われたことがあります。
主要の受賞者が全員 白人だったことから言われた言葉なのですが、「白すぎるオスカー」という意味ですね。要因はいくつかあります。候補作の間口が大作の公開延期、制作延期により広がった、などがあるのですが、過去オスカーソーホワイトの批判にこたえ主催の科学アカデミーが、投票権を持つ会員を多様化させた、白人男性中心の構成を改め、女性や海外の映画関係者を招き入れたことが大きく影響していると思います。
鈴木 なるほど…。
多様性は時代の流れだとは思うのですが、映画ファンとしてはそのあたりを意識しすぎてかえって偏りが生じないようにしてほしいと思いますよね。
荒木 そうなんですよ。従来のアカデミー賞は「きらびやかな白人たちの映画の祭典」というイメージがあったことは事実ですが、それを否定することで多様性が出てくるというのはまずいんじゃないかと、私も思います。何よりも作品の質、演技本位で選ぶということは大切なんでしょうね。世界的にも多様性ということは叫ばれていますが、今回の結果が多様性優先の結果とは思いませんし、素晴らしい結果だとは思いますが、今後の課題ではあるでしょうね。
鈴木 難しいもんですね。多様性という言葉に縛られてしまうと、多様性じゃなくなってくるという感じもしますしね。今後の大きな課題でしょうね。
荒木 そうですね。今年もオンラインでやらなかったことに大きな批判が出たり、注目されているので毎年、いろいろな問題が出てきますよね。
鈴木 毎年 いろいろな問題が露呈しながらも 素人のファンからすると「アカデミー賞」って楽しいなっておもいますよね。
荒木 そうですね。それから今年の受賞作やノミネート作品は、コロナで公開が遅れていたり、ネット公開が多いのであまり見ていないんだよね。これから私も楽しみに見たいと思います。
鈴木 荒木さん ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。