「花束みたいな恋をした」と「名もなき世界のエンドロール」のとっておき情報

(2021年2月1日10:45)

映画評論家・荒木久文氏が、「花束みたいな恋をした」と「名もなき世界のエンドロール」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、1月26日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

アラキンのムービーキャッチャー/「花束みたいな恋をした」と「名もなき世界のエンドロール」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   荒木さーん!こんにちは。

荒木   はい、こんにちは。

鈴木   ははは!荒木さんの声を聞くと、どうしても笑ってしまうんですよ。

荒木   なんでですか?こんな二枚目の声を!

鈴木   なんかワクワクする心の照れ隠しになってるのかもしれないな。

荒木   嬉しいですね、そう言われると。褒められることないんで。よろしくお願いします。

今日は1月29日公開の作品を2本ご紹介します。

まず1本目ですが、『花束みたいな恋をした』という作品で、公開前から早くも話題になっている作品です。
ちょっと話 逸れますが、ダイちゃんは自分の人生の中で「これが最高の恋だ」と言えるものはありますか?

鈴木   当たり前じゃないですか!

荒木   あるんだ?

鈴木   あるよー!少し話したほうがいいですか?

荒木   言っても支障ないですか?

鈴木   今の嫁さんではないんですけど。

荒木   大丈夫ですか?

鈴木   大丈夫です。コロンビア人のルピータっていう人と…。

荒木   前に聞いたな。留学時代?

鈴木   そう、留学時代、ラテンの彼女ばっかりだったんですよ。

荒木   ノリがラテンだからね。燃えるような恋でしたか?

鈴木   燃えるどころかジプシー・キングスのような恋でしたよ!

荒木   そうですか、それはすごいですね。「人生最高の恋だ」と言える人ってそんなにたくさんいないと思います。

鈴木   え、荒木さんだって…まさか奥様ですか?

荒木   いや、私はこれからですよ。多分 これから。

鈴木   さすがな答えですね。

1月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
「花束みたいな恋をした」(2021年1月29日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか、全国公開)(©2021『花束みたいな恋をした』製作委員会)(配給:東京テアトル、リトルモア)

荒木   何を言っているかよくわかりませんがね。
『花束みたいな恋をした』は人生最高の恋を描いています。
舞台は東京、2015年 世田谷区の京王線の明大前駅です。終電を逃したことで、21歳同士の大学生、菅田将暉さん演じるところの山音麦(やまねむぎ)くんと、有村架純さん演じる八谷絹(はちやきぬ)ちゃんが偶然に出会うところから始まります。
二人は好きな音楽や映画や本が嘘みたいに一緒で、初めて麦くんの家を訪れて、本棚を見た絹ちゃんが「ほぼ うちの本棚じゃん…」と言うくらい同じだったんです。
あっという間に恋をした二人は付き合い始め、楽しい日々が続きます。そして同棲。多摩川沿いのマンションに引っ越して二人の生活が始まりました。
やがて二人は大学を卒業してフリーターをしながら同棲を続けます。
麦君はイラストのアルバイトをしていたのですが、安定せず、ある日就職を決意します。
日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けますが、だんだん時間も思いもすれ違いが増えてゆく二人…という 5年間の最高のラブストーリーです。

鈴木   もう既に泣きそうです。

荒木   私も見せていただいたのですが、見ていてまばゆいというか、もうキラキラしてます。それも上辺のキラキラだけじゃなくて、二人の愛する思いがスクリーンから溢れるっていうのかな。ああ、こういう恋っていいなと思わせるいい作品です。
年寄りの私が見ても、ああいいなと思うのですから、若い女性たちが見たらみんな 胸キュンキュンで、胸が締め付けられると大騒ぎです。
ある人に言わせると、この映画には恋愛におけるすべての要素が入っているんだそうです。嫉妬も胸キュンも、焦燥感とか不安とか全部の感情が入り過ぎて、それを二人があまりにもリアルに演じているから、凄すぎて、「ああ、私って架純ちゃんなんだ」と思って、自分がずーっと菅田将暉と付き合ってたんだと思いこんじゃって、一週間ぐらい菅田将暉くんが元カレにしか見えなかったと言っていました。

若い人にはすごく刺さるんでしょうね。全て自分のことを描いているように思えて不思議という人、完全に入り込んじゃって映画の世界から帰ってきたくなかったなんて人もいます。
若い人ばかりじゃなくどの世代であっても、思い出したり憧れたり、多かれ少なかれ“わたしの話”として突き刺さると思います。ダイちゃんも若いときの恋愛を思い出せるかもしれませんね。

前評判がとても高い作品ですが、監督は土井裕泰(どいのぶひろ)さん。
『罪の声』を作った人なんですが、この映画はとにかく脚本がとても素晴らしいんです。坂元裕二さんの書き下ろしオリジナルなんです。
坂元裕二さん、ご存知ですか?月9の『東京ラブストーリー』の脚本で有名ですね。
かつて月曜の夜9時には街中から女性が消えたと。その後トレンディドラマでいろんなドラマを書いてます。もう20代前半の時から書いている人です。テレビ界の伝説とも呼ばれている稀代の脚本家です。1967年5月12日生まれですから、ダイちゃんと同じ年ですよね?

鈴木   おお!一緒ですね。

荒木   細かいこと言うときりがないんですが、現代的なアイテムへの配慮やセンスが半端ない。

鈴木   時代にちゃんとフィットするように見ているんでしょうね。

荒木   そうなんですよ。
例えば有村架純さんがカラオケをするシーンがあるんですけど、そこで歌っているある曲、そこまで有名な曲ではないんですけど、きのこ帝国のクロノスタシスなどですが、それが物語が終わった時にどういうことを意味していたかとか、ちゃんとその歌詞がいろいろな展開を示唆しているんですよ。劇中で話す固有名詞や劇中で歌う歌などいろいろな示唆に富んでいるんですね。
それを 全部わかる人いるかどうかわかりませんが、ある意味とても恐ろしい作品なのでは、と思いました。非常に凝っていて深いです。
それから映画に出てくるアイテムのひとつひとつ、ゲームや音楽など、本だとか、当時20歳前半へのこの現代感覚はすごいですよ。

もう一つは何といってもこの人の脚本の特徴、セリフがおしゃれで特徴的ですよね。 言葉は多くないのですが、一つ一つがキラキラしています。

鈴木   一番いいパターンですね。

荒木   そうなんですよ。
具体的なことはあまり紹介はしないほうがいいとは思うので、とにかくセリフがユニークで面白いんですよ。

恋愛映画いろいろありますが、この作品は恋自体が生き物みたいな描かれ方をしているんですよね。
一般的なラブストーリーって必ず二人の間に、ライバルが出てきたり、妨げとか、障害があってそれを乗り越えようとしますよね。でもこの映画には事件も起きないし邪魔も入らない。
生活者としての日常があるだけですよね。坂元さんは恋愛それ自体の楽しさとか面白さを書きたいと思ったそうなんですね。
作品に映し出されるのはごく普通の日常ばかり。我々もそうですよね。恋愛してても、喧嘩とかトラブルはあるけどそんなに大したこと、劇的なことは起こらない…。

鈴木   そうそう、淡々とワクワクしているんですよ。

荒木   そんな中に小さなドラマが溢れているというような感じですよね。
坂元さん、50歳過ぎにもかかわらずこういう若者の物語よく書けますねと言われるそうなんですけど、あんまり作品のテーマと対象年齢は関係ない、どんな感情を届けるかが鍵だとおっしゃってますね。

彼にとって映画の台本は事実上これが初なので、力が入ったと言っているので、普段は恋愛映画見ない人、特に男性に多いと思いますが是非見ていただきたいです。

状況によっては、カップルで行くのはやめたほうがいいかもしれません。映画の恋愛が良すぎて自分の恋愛がちょっと…という悲しい気持ちになるかもしれません。

ということで、1月29日公開の『花束みたいな恋をした』という非常に評判の良い作品です。

アラキンのムービーキャッチャー/「花束のような恋をした」と「名もなき世界のエンドロール」のとっておき情報
「名もなき世界のエンドロール」(TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

続いてもう1本は、同じく1月29日公開の『名も無き世界のエンドロール』という作品です。

舞台は地方都市で、岩田剛典くんと新田真剣佑くんの初共演です。

岩田くん演じるキダと、真剣佑くん演じるマコトの二人は幼馴染で、ともに複雑な家庭環境で育ちさみしさを抱えて生きてきました。
その二人に同じ境遇の転校生・ヨッチという女の子(山田杏奈さんが演じています)が加わり、3人はいつも一緒に支え合いながら仲間で、いわば家族よりも太い絆で結ばれていました。しかし3人が20歳になったとき、女の子のヨッチが2人の元から突然いなくなってしまいます。
そんな中、地方都市の小さな自動車工場で修理工として働く二人の前に、リサという女性が現れます。リサは中村アンさんが演じています。彼女は売れっ子のトップモデルで、芸能界でも注目されていて、しかも政治家令嬢という絵にかいたようなお金持ちの美貌の女性です。
リサの魅力にひかれたマコトくんは、食事に誘うが全く相手にされません。岩田くん演じるキダ君は「住む世界が違うから諦めろ」と忠告しますが、マコトは仕事を辞めてリサの住む都会へと姿を消してしまいます。
そして2年後、マコトを捜すために裏社会に身を置いたキダくんはようやくマコトに会うことができます。マコトは、リサにふさわしい男になるためにと死に物狂いで金を稼ぎ、若き会社経営者として大成功していました。以来、キダは裏社会で、マコトは会社経営者として、裏と表の社会でのし上がっていくんですね。
そして、迎えたクリスマス・イブの夜。マコトはキダの力を借りてリサにプロポーズしようとします…というものなんですが。

原作は、第25回小説すばる新人賞を受賞した行成薫のサスペンス小説を映画化した作品です。
時代が2年間を行ったり来たりとコロコロ変わる描写なので、わかりにくいと思う方もいると思いますが、大逆転もありますし面白い作品です。
岩田くんが高校生役をやっているんですよ。近過去ですから別に若い役者さん立てるというのも考えたと思いますが、岩田くん若く見えるので…。

鈴木   別に大丈夫だよね。

荒木   でも31歳ですからちょっと辛いですね。
真剣佑くんは24歳ですから違和感ないですけど、でもファンの方は嬉しいんでしょうね。リアリティな面から見るとちょっとって思いますが、制服プレイのような感じですよね。

鈴木   想像するんでしょうね。

荒木   そして中村アンさんですが…。

鈴木   大好きです、僕!

荒木   え、そうなんですか?こういうゴージャス系好きなの?

鈴木   美人でいいじゃないですか。

荒木   水川あさみさんとどっちが好きなんですか?

鈴木   中村アンさん。

荒木   え、そうなの!?今回ね、憎たらしい演技なんですよ。

鈴木   いやそれがいいんじゃないですか!

荒木   今回非常に説得力ありますよ。今までテレビ中心で、映画本数はまだまだですが、映画にもどんどん出てほしいですね。
もう一人の女優さん、対比的に地味なヨッチには今売り出し中の女優の山田杏奈さん。この前紹介した『樹海村』にも出ています。これから間違いなく伸びてくる女優さんですね。
最後の30分に全ての謎が明らかになるんですが、美女とイケメンとどんでん返しを観賞するための映画ということで、お好きな方はお見逃しないように…。
1月29日公開の『名も無き世界のエンドロール』のご紹介でした。

鈴木   荒木さん、いつも僕不思議に思っているのが、恋愛映画のときによく「ある女の子に言わせるとね、ダイちゃん」って言ってるんですけど、その女の子と荒木さんは恋に落ちているんじゃないのかな?って思うんですけど…。

荒木   全然違いますよ。同じ評論家仲間です。人妻で子供もいます。だから女の子じゃないね。よく試写を一緒に観る子なんですよ。

鈴木   ある女の子が気になってたので。

荒木   『花束みたいな恋をした』はディレクターの日原さんも気になってるみたいですね。じっくり観に行ってみてください。

鈴木   荒木さん、ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

【関連記事】
「未体験ゾーンの映画たち」と「さんかく窓の外側は夜」のとっておき情報
2021年公開の邦画ラインアップと1月公開の話題作
アラキンのムービーキャッチャー/2020年の興行収入ベスト10と「私のベスト映画3」
「ハッピー・オールド・イヤー」のとっておき情報とプロの評論家が選ぶ「私の好きな映画ベスト3」
「声優夫婦の甘くない生活」「私をくいとめて」「新解釈・三國志」「天外者」のとっておき情報
「燃ゆる女の肖像」「バクラウ 地図から消された村」「サイレント・トーキョー」のとっておき情報
「アンダードッグ」「アーニャは、きっと来る」「ヒトラーに盗られたうさぎ」のとっておき情報
「Malu 夢路」と「滑走路」のとっておき情報
「ビューティフルドリーマー」と「さくら」のとっておき情報
トランプ大統領出演の映画やTVと「十二単衣を着た悪魔」のとっておき情報
東京国際映画祭と「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」のとっておき情報
「きみの瞳(め)が問いかけている」と「花と沼」のとっておき情報
「スパイの妻」と「わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺してない」のとっておき情報
「82年生まれ、キム・ジヨン」と「本気のしるし」のとっておき情報
「ある画家の数奇な運命」と「小説の神様 君としか描けない物語」のとっておき情報
「ミッドナイトスワン」「蒲田前奏曲」「エマ、愛の罠」のとっておき情報
「窮鼠はチーズの夢を見る」と「マティアス&マキシム」のとっておき情報
「喜劇 愛妻物語」と「カウントダウン」のとっておき情報
「頑張る若者たち」を描いた「行き止まりの世界に生まれて」「田園ボーイズ」のとっておき情報
青春学園コメディ「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」と村上虹郎主演の「ソワレ」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/ホラー映画特集―「メビウスの悪女 赤い部屋」「事故物件 恐い間取り」などのとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/「ジェクシー! スマホを変えただけなのに」などこの夏おすすめの映画3本のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/高校生を描いた青春映画「君が世界のはじまり」と「アルプススタンドのはしの方」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/海洋パニックホラー「海底47m 古代マヤの死の迷宮」など「海の映画特集」
アラキンのムービーキャッチャー/又吉直樹の小説を映画化した「劇場」と韓国映画「悪人伝」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/映画「透明人間」と「河童」と「お化け」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/今までにない長澤まさみ主演の「MOTHER マザー」と「のぼる小寺さん」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/「ランボー ラスト・ブラッド」と「悪の偶像」など注目映画のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」と「15年後のラブソング」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/ドイツ映画「お名前はアドルフ?」と異色のドキュメント映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/「わたしの好きな映画・思い出の映画」:「世界残酷物語」と「八月の濡れた砂」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/ブラピ主演「ジョー・ブラックをよろしく」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/パンデミックムービー「コンテイジョン」と「ユージュアル・サスぺクツ」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/コロナ感染拡大でミニシアターの危機と救済&映画「スター誕生」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/映画「レオン」と「水の旅人 侍KIDS」のとっておき情報