「SNS-少女たちの10日間-」と「スプリー」のとっておき情報

(2021年4月22日17:50)

映画評論家・荒木久文氏が、「SNS-少女たちの10日間-」と「スプリー」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、4 月19日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

アラキンのムービーキャッチャー NEO/「SNS-少女たちの10日間-」と「スプリー」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊨と鈴木氏)

鈴木   荒木さーん! こんにちは。よろしくお願いします。

荒木   だいちゃんはツイッターやフェイスブックなどSNSはやってますか?

鈴木   私、個人ではインスタやってますよ。昔からやってます。ほかは番組でツイッターですね。

荒木   ソーシャルネットワークサービス、SNS、番組でも、もちろん個人でも…ラジオ聴いている方もやっている方多いですよね。 もう、ひとつの生活の中のインフラですよね。

鈴木   ラインだってある意味SNSですね。

荒木   そうですよね。
そんな中 今週 金曜日23日、2本のSNSをテーマにした作品が公開されますので、紹介していきましょう。

アラキンのムービーキャッチャー ネオ/「SNS-少女たちの10日間-」と「スプリー」のとっておき情報
「SNS-少女たちの10日間-」(©2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.)(2021年4月23日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー)

まず一本目「SNS-少女たちの10日間-」。
東欧チェコの外国のドキュメンタリー映画。現代に生きる子供たちがSNSとのかかわりの中でどんな危険に直面しているかを記録したものです。

まず映画は撮影スタジオに作られた3つの子ども部屋のから始まります。ダミーの子供部屋です。仕込みですね。
そこに、幼い顔立ち、というか、とても若く見える、18歳以上の3人の大人の女優が集められます。彼女たちは12歳の女子だから中一ぐらい?という設定で、幼い服装や髪型、ツインテールみたいな…そんなので、雰囲気を作り、まあ、少女に化けて、SNSで友達募集を始めます。完全なひっかけですよね。
その結果、どんなことが彼女たちに起こってくるのかを記録したのがこの作品なんです。 期間は10日間 。その間12歳という設定の幼い彼女たちにSNSを通じてアプローチしてきたのは、なんと、2458人もの成人男性だったんですね。

鈴木   でたー!!やっぱりな―!

荒木   当然 彼らは トークの模様、撮影されているとは気が付かず、彼女たちに対して、まあ予想通りというか、実に下品で卑劣な誘いを仕掛けるんです。
下手したら自分の孫ぐらいの年齢の男もたくさんいるんですよ。いやーほんとにそれはそれは…困ったもんです。大多数の成人男性は変なことをやれとか、自身の変なとこの写真やポルノのリンクを送信してきたり、なかには恐喝する者も出てくるんです。
少女役の女優たちは、友達募集はしているんですが、基本的に守ることがあります。
原則 自分から連絡しない。12才以下であることをはっきり告げる。誘惑や挑発はしない。相手の露骨な性的な指示は断る。何度も頼まれた時だけ合成した裸の写真を送る、など原則を決めて撮影は続けられましたが、一番初めにまいっちゃたのは少女を演じた女優さんたちだったんですね。女優さんたち、初めは、おっさんやジジイを観察して気持ち悪がっていたんですが、だんだん怒りと悲しみが沸き上がってきちゃうんですね。
「中年男ってみんなこんななの?!まともな人はいないの?」って。たまにね―普通の人が入ってくる、「そんなことやってちゃだめだよ」なんて言う人がいると、そんな人が素晴らしい人に見えちゃうんですね。
さあ、後半コンタクトをとってきた本当に危険な男性たちと会い、突撃取材ということになります。

鈴木   リアルだなー。会うんですか?

荒木   そうなんです。ということで児童への性的搾取の実態を描いた映像として、チェコ警察から刑事手続きのための映像が要求されたらしいですよ。
私、見ていて感じたのは、大人たちはともかく、やっぱり、子供たちにはきちんとしたSNSリテラシーというか指導が必要なのかなーということです。子供に過大な警戒心や人間は悪いものだという性悪説を植え付けること、社会は怖いところなどという教育をすることには基本反対ですが こんな大人たちがいる以上は 情けないというか…。 海外のお話ですけど、日本でも同じようなものでしょう?

鈴木   これは 個人情報の保護だったり、表現の自由の問題も絡みますから 難しいですよね。

荒木    難しいですよね。世の中本当に新しい局面に入ってきている気がします。 特にお子さんがいる方とかは今後のSNSの関わり方について考えさせられるので、是非見てほしいです。正直見ていて気分が悪とってもいいという映画じゃないんですけどね。 わいせつな会話や、危険なやりとりも生々しく映しています。

鈴木     おっさんたちはやらせじゃないもんねえ。

荒木    そうですよ。実際に2千何百人コンタクトしてきちゃうんですから。声は変えてあったり、顔にはぼかしも入っていますが、そういう作品です。いや、考えさせられた映画です。「SNS-少女たちの10日間-」という作品でした。

アラキンのムービーキャッチャー ネオ/「SNS-少女たちの10日間-」と「スプリー」のとっておき情報
「スプリー」(©2020 Spree Film Holdings, LLC. All Rights Reserved.)(新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて上映中)

もう一本「スプリー」。やはり23日の公開です。 こちらもSNSをテーマに恐怖を描いたスリラーですね。 前の作品とはガラッと違う、同じ恐怖という言葉でも、意味の違う怖い映画です。
ストーリーです。
若いカート君、20歳前後でしょうか?日頃SNS中毒っぽい彼は、10年間も動画を投稿しています。しかし見てくれる人の数は、ほぼほぼゼロ、よくても2桁?
しかし熱心に投稿を続ける彼は、ある日 SNSのフォロワーが、爆発的に増えるであろう画期的なアイデアを思いつきます。個人の車を利用してタクシーみたいに客を乗せて商売している、外国ではもう一般的みたいですががいまあ、公認の白タクみたいなものなんですね。
彼のアイデアというのは、自分の車に乗せる乗客を殺して、その様子をライブストリーミングで生配信するというとんでもないものだったのですが。

鈴木    考える人がいるだろうねー。

荒木    なんと実行してしまうんですね…。ある日人を殺してその模様を生配信してしまいます。さあ、カートのSNSは、大爆発、バズりまくり…と思ったらなんと、「嘘だ、偽物だ」「やらせに決まってる」「退屈だ」と、総すかん。まったくフォロワーが増える気配もありません。
思惑がはずれしまったカート、どうしたかというと、乗客だけでなく、フォロワーをたくさん抱えているのに自分の映像を拡散してくれない、いわゆるインフルエンサーと呼ばれる人にまで、矛先を向けて、殺しをエスカレートさせていきます。
とてもテンポがいい ジェットコースター・スリラーです。 この時代でなければの発想ですよ。

鈴木    そうでしょうねー。

荒木    生配信で殺人が行われる様子は非常にシビアで。いろんな殺し方しますね。飲料水に毒を入れる、ナイフで刺す、拳銃で撃つ…と。
そうそう 主演は、ちょっと変わった感じのする俳優さん、ジョー・キーリーという人なのですが、今人気が出ているらしいのです。日本でも売れそうですから覚えておいたほうがいいですね。日本の俳優だと岡田将生さんとかに似てるかな?
彼個人のインスタのフォロワーは680万人もいるらしいのですが そういう人が人気がない生配信者を演じるというのは面白いですね。
監督・共同脚本を手がけたのは、ウクライナの新鋭ユージーン・コトリャレンコという人です。斬新なテーマ性と視点を打ち出し、従来の概念にとらわれない柔軟な表現方法から、業界で最も注目されている若手監督の一人だそうです。
投稿動画、ライブ配信、ライドシェアのアプリなど、スマートフォンやPCの画面上で起こる出来事のみをうまーく組み込んであってとても新鮮であると同時に、何か見慣れているので、日常感も覚えますよね。こういう作品は、スクリーンライフ映画と呼ばれるそうなんですが、物語を映画で見ているというよりも携帯画面で事件を目撃している感覚が強いですよね。
まあ、世の中よく聞きますよね「いいね」が欲しくってほしくってという人…多いみたいですよね。ユーチューバーにもいるみたいじゃないですか?過激なことやる人…そういう人をその極端にデフォルメした形というところですかね。
「スプリー」というSNSをテーマにした映画、4月23日の公開です。

鈴木   ところで荒木さん自身はSNSはどうなんですか?

荒木   私は仕事の関係もあって、ツイッターもフェイスブックも、いち早く始めたんですが、すぐに、あ、こんなやばいものはないなと気が付いて、すぐやめました。 人のインスタとかには登場するんですが、自分ではやってません。

鈴木   なんか発信するものはないのですか?映画関連のとか?

荒木   発信力弱いしねー。第一こんな老人のたわごと誰が面白いのよ?

鈴木   あはは。(試写会の案内)ではまた来週お願いしまーす。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

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