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映 画

「99.9-刑事専門弁護士―THE MOVIE」と2021年世界の映画興行のとっておき情報
(2021年12月31日10:00)
映画評論家・荒木久文氏が、「99.9-刑事専門弁護士―THE MOVIE」と2021年世界の映画興行のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、12月27日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 荒木さん 今年最後ですー。よろしくお願いいたします。
荒木 はい。よろしくお願いいたします。
まず「99.9-刑事専門弁護士―THE MOVIE」という作品から。
99.9という、数字。日本においては99.9%逆転不可能と言われるのが刑事事件、一度起訴されるとほとんどが有罪となることを示している数字です。
鈴木 ほぼ100じゃないですか。

荒木 過去にTBS(「日曜劇場」)で放送された松本潤主演の人気ドラマ「99.9 刑事専門弁護士」の劇場版です。常に事実だけを追求し、最後の0.1%まであきらめずに真実を追求して、無罪を勝ち取ってきた型破りな弁護士・嵐の松本潤君演じる深山大翔 ( みやまひろと ) . 斑目法律事務所・刑事専門ルーム所属弁護士が活躍する弁護士ドラマ。
今回は、15年前に起きた毒物ワイン事件に関する依頼が舞い込み、事件を徹底的に再調査していく深山たちの前に、思わぬ罠が待ち受けているという話です。深山役の松本潤ほか、香川照之らテレビ版でおなじみのキャストに加え、新人弁護士役で杉咲花の参加が見ものです。昨日あたりからTBSテレビはニュース以外 一日中この映画の宣伝やってるような気がしますね。
テレビ版と同じく、カット数が激しく多い作品で、遊び心満載の映画です。
テレビドラマファンの方、ぜひご覧ください。12月30日の公開です。
鈴木 ずいぶん切羽詰まった時期の公開ですね?
荒木 ということで最後の放送ですので例年のごとく今年の映画界を振り返絵って見たいと思います。
昨年とに引き続き…コロナに覆われた一年。ウイズコロナの2年目でした。
異常な事態の常態化…ワクチン接種が広がり、完全閉鎖もあったが、だんだん非常事態に慣れてきたという感じですよね。
ところでダイちゃん今年は映画は劇場でどのくらいご覧になりました?
鈴木 そうですねー10本ほどですか…。
荒木 4月5月の3度目の緊急事態宣言で映画館も首都圏の映画館もクローズになったこともありましたよね。
鈴木 でもね、前後が空いていて見やすいというか…快適だったですよ。
荒木 ああ、なるほど、そういうのはありますよね。昨年から家で映画を見る、オンラインでの視聴形式が目立ってきたのもここ2,3年の特徴。ネットフリックスAmazonプライム HULU オリジナル作品も充実が今年は加速度的に進みましたね。映画 興行収入的には 邦画が洋画を圧倒しました。…というよりも、洋画の公開が軒並み遅れましたからね。
鈴木 大作、話題作ほど公開延期ですものね。
荒木 はい。そして2021年の日本の映画業界の業界総売り上げというのは、今年は1600億円ちょっとと言いますから。一番いい時、3年前でしょうか。その3分の一程度です。来年はもっと伸びてほしいと業界関係者の一員としては思います。
日本の国内映画の今年の特徴というと、まあいろいろありますが、私が勝手に3つぐらい上げるとしたら、ひとつはアニメ映画のますますの盛り上がりです。「シン・エヴァンゲリオン」定番の「ドラえもん」「コナン君」、それと細田監督の「竜とそばかすの姫」…そしてあの堀貴秀監督が一人で作った話題作「JUNK HEAD」などですね。
ふたつめは、女性を描いた映画 女性監督の作品が一昨年に続き目立ったということでしょうかね?
鈴木 表裏、女性主役というやつですね。
荒木 「あの子は貴族」や「ゆう子の天秤」など特徴ある作品が多かったです。今週12月31日に公開される「明け方の若者たち」という作品、監督は松本花奈さんという女性ですが、これも良かったですよ。
そして三つめは今年は「濱口 竜介(はまぐち りゅうすけ)」の年だったなと思います。
前々回、この番組でも紹介した「偶然と想像」がベルリンで審査員大賞 カンヌでは「ドライブマイカー」が脚本賞。3大映画祭で賞を取ればいいというものではありませんが、
両作品とも受賞にふさわしい素晴らしい作品でした。来年以降楽しみですよ。
鈴木 ひとつの指標にはなりますよね。
荒木 世界レベルだと認められた、ということですからね。
では具体的に国内の映画ランキング見てみましょうか 昨年はなんといっても「鬼滅の刃」。歴代1位へ311億円を100億近くも抜いてトータル400億円でした。
さあ、今年はどうだったというと…。
まず日本国内、2021年の興行収入ベスト7を紹介しましょう。
① シン・エヴァンゲリオン劇場版 102億円
② 名探偵コナン 緋色の弾丸
③ 竜とそばかすの姫
④ 東京リベンジャーズ
⑤ るろうに剣心 最終章 The Final
⑥ 花束みたいな恋をした
⑦ マスカレード・ナイト
鈴木 アニメ、アニメじゃないですか?
荒木 そうですね。アニメと漫画原作が多いですね。
国内はそんなところですね。
今度は外、世界に目を向けてみましょう・・・
ダイちゃんは、今年世界で一番稼いだ、まあ、見られた映画はなんだと思いますか?
鈴木 「007・ノー・タイム・トゥ・ダイ」
荒木 なるほどハリウッド映画じゃないかと思いますよね…普通は。
ところが世界全体のランキング、売り上げはどうなってるかというと…
第4位から行きましょうか?
4位:『ワイルド・スピード JET BREAK』 約800億円
3位:『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』 約860億円
鈴木 えー?!3位?
荒木 2位:『こんにちは、私のお母さん』 930億円
鈴木 ????
荒木 黙っちゃいますよね…
そして1位は『長津湖』 全世界興行収入:1000億円を超す売り上げ。
鈴木 ちょーしんこー??
荒木 今年世界で一番稼いだ映画は、なんと1位と2位は中国映画なんですよ。
鈴木 ひえー?!!!
荒木 2位の「こんにちは 私のお母さん」という映画はタイムスリップコメディです。
中国の女性コメディアンの(ジア・リンさん)が脚本・監督・主演をしています。
現代中国に生きる女性が ・1980年代にタイムスリップして、彼女が生まれる前、
結婚する前のお母さんに会うんですね。なんにもなかったほんとうに貧しい時代の中国のね。ちょっと「バック・トゥー・ザ・フーチャー」に似たような設定です。
私も見せていただいたんですが基本 人情噺で泣けるオチが付いていますよ。
来年1月には日本でも公開されるんで、興味のあり方は、ぜひご覧ください。
そして 問題はこの一位…。
鈴木 問題…ですよね。問題だよね。
荒木 一位の映画とかタイトルも聞いたことないでしょ?
「長津湖」中国映画です。これはね、中国のまあ、国策映画というか官製映画なんですね。英語だとThe Battle at Lake Changjin。読めませんが…。
鈴木 それじゃ、一位でも全世界公開でイギリスやアメリカでも公開されていて大ヒット…ということじゃなくて中国国内だけなんですね?すごいなあー。
荒木 その通りです。この映画は1950年 朝鮮戦争の時にアメリカ軍を北朝鮮の長津湖というところで、中国人民解放軍が撤退させたという「長津湖の戦い」という戦闘を英雄的に描いた映画がこの作品なんですよ。
大ヒットしてる映画なんですね。もちろん中国国内だけでですよ。今年9月からの公開なのに、興行収入世界第一位。
鈴木 人口が多いからなー。すごいマーケットですものね。すげーえ。
荒木 1作品で1000億円というと、さっき言った2021年の日本映画の洋画邦画合わせた一年分の全売り上げよりちょっと少ないくらい。製作費は222億円という、中国史上最大の製作費。日本の超大作と言われた作品が製作費、10億円ですからね。
鈴木 全然違うんじゃないですか…。
荒木 中国人民解放軍の戦いを英雄的な勝利として描いているんですが、8万人も戦死しているんですよね。まあ中国の映画ですからね。いわば中国万歳映画です。圧倒的な装備の差をものともせず、肉弾戦でアメリカを撤退させたという内容です。
これがまた当たっているんですよ。ま、学校などでも、見るように動員されているらしいのですが…こういうの見てると、すげーなーとばかり思ってらんないですけどね。
鈴木 いろいろと微妙ですもの…。
荒木 今の中国は映画だけでなく、テレビなんかでも政府と思想の異なる考え方の人にはかかわらせないという方向ですからね。なんか日本の戦前・戦中みたいな雰囲気になってきましたよね。
同時に中国の映画興行の市場マーケットはもう世界で一番巨大なものになっちゃているんだということですよね。ほかの国も無視できないという状況になってもいますよね。
鈴木 どんどん内向きになっているのも気になりますね。
荒木 そのあたりが怖いところなのかな、と私も思います。
鈴木 200億円という製作費なので、内容的には画的にも大スペクタクルなんで、とてつもない大戦争映画みたいなものなんですか?
荒木 そうらしいですよ。一流監督3人、人民解放軍を大動員しての大スペクタクルらしいですよ。ものすごいらしいよ。アメリカや、カナダでは公開しているらしいんですが、日本での公開予定は、今のところないですね。見てみたいですよね。
でも 万歳映画ですからね・・愛国心をあおる映画だから、見てもしょうがないかなー?
鈴木 ちょっと引くかもしんないよね。
荒木 というわけで 世界一位の映画をご紹介しました。
鈴木 誰に聞いても当たらないよね。第一位は…。
荒木 そうだよね。でもダイちゃん、良いセンいってますよ。007は3位だしね。…ということで 毎年、亡くなった映画関係者を振り返っていますが、今年も、ザーと見てみましょう。いずれも私たちに夢や幸せをくれた人々ですよね。
1月には タニヤ・ロバーツ。「007 美しき獲物たち」でボンドガールでした。同じく1月、ナタリー・ドロン。ルノー・ベルレーとの共演した『個人教授』は私の印象に残っています。そして2月には クリストファー・プラマー。なんといっても『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)のトラップ大佐役。82歳でアカデミー助演男優賞を受賞しましたね。つい最近までスクリーンで拝見していました。3月には田中邦衛さん。青大将ですよ。「北の国から」の五郎さん、88歳。
鈴木 今年でしたか…。
荒木 4月には田村正和さん、77歳。そして8月、千葉 真一さん日本を代表する映画スター。サニー・チバ。9月にはジャン=ポール・ベルモンド。20世紀後半のフランスを代表する俳優の一人でした。みんな 私たちに楽しみをくれた人々ですよね。ご冥福を祈ります。
今年の売り上げが多い作品を振り返りましたが、肝心なのは内容的に面白かった映画、感銘を受けた映画ですよね。売り上げではない自分の中のランキングが大切ですよね。
鈴木 そうですね、ラジオお聞きのあなたの今年見たベスト映画をお寄せくださいね。こちらは1月10日のこのコーナーでご紹介します。1月9日の日曜日までに是非送ってください。メッセージをくださった方には抽選で荒木さんからのプレゼントがあるかもしれませんよ。あなたの選んだベスト映画2021を待ってます。
荒木さん、ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。