「サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~」 聴力を失ったドラマーの絶望と希望

(2021年5月8日16:30)

「サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~」 聴力を失ったドラマーの絶望と希望
「サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~」((Instagram/ @rizahmed)

バンドのドラマーが聴力を失ってゆき聴覚障害者のコミュニティーに参加するが、溶け込めず聴力を取り戻そうとして人工内耳の手術を受けるなど苦闘する姿を描いた異色の映画。第93回アカデミー賞で作品賞、ドラマーを演じたリズ・アーメッドが主演男優賞、難聴障害者コミュニティーの主宰者役のポール・レイシーが助演男優賞など6部門にノミネートされ、編集賞と音響賞を受賞した。監督はドキュメンタリー「Loot」(2008年)、「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」(2013年、脚本を担当)などのダリウス・マーダー。

■ストーリーbr>
ドラマーのルーベン・ストーン(リズ・アーメッド)は、ボーカルで恋人のルイーズ(オリヴィア・クック)とコンビでバンドを組んで活動していた。トレーラーに住み全国を回りながらライブを行っていたが、ある日耳が聞こえにくくなっていることに気づき、専門医に診てもらったところ、ハードなサウンドのバンドを続けると聴力を失うといわれる。病状は悪化の一途をたどり自暴自棄になるストーンを見かねた知人に勧められて、聴覚障害者のコミュニティーに参加する。コミュニティーの主催者ジョー(ポール・レイシー)に温かく迎えられ、障害者たちと親しくなり手話も習得していくが、バンド活動をあきらめきれず、トレーラーに残していた器材を売って金を工面し、人口内耳を埋め込む手術を受けるが、思わぬ展開が待ち受ける。

■見どころ

リズ・アーメッドが激しくドラムをたたくドラムプレイや聴力を失ってゆき自暴自棄になったり、聴覚障碍者のコミュニティーでの生活で苦闘する様子などを熱演している。そしてアカデミー賞を受賞した音響技術が難聴になり次第に聴力を失ってゆく主人公の衰えてゆく「聞こえ方」を再現したといわれ、観客も同時に体験する。コミュニティーの主宰者ジョーは「ここでは誰も自分を障害者だとは思っていない」という。その言葉が重く響く。そしてストーンにコミュニティーでの重要な仕事を与えようとするが、ストーンはその世界に溶け込めず納得できない。そして人口内耳を埋め込む手術が成功して聴力を取り戻したときに、再現されたその独特な「聞こえ方」が衝撃的だ。そこからラストまでのストーンの心情の揺れ動きや変化が胸に迫ってくる。
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