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映 画

「ミッドナイト・トラベラー」「アナザーラウンド」のとっておき情報
(2021年9月10:50)
映画評論家・荒木久文氏が、「ミッドナイト・トラベラー」と「アナザーラウンド」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、9月6日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 荒木さん お願いします。
荒木 はい! だいちゃん、 先週この番組で話題にした M ナイト・シャマラン作品「オールド」見てきてくれたんですって?
鈴木 見た、見た…。
荒木 いかがでしたか?
鈴木 基本的には荒唐無稽だと思いながら見ていたのですが、シャマラン・マジックというか、なんとなく、佳境に入ると納得してしまい、こういうネタというかあり得なくなさそう…世界のどこかではこういうことがあるかもしれないという魔法に包まれ
ドキドキしてしまいました。
荒木 そうしたら「三振」ではないのですね?
鈴木 ツーベースで、エラーの後盗塁して送球もそれてホームインという感じですかね?
荒木 わけわかんないですけど…そうですか…私も見に行きたい…リスナーの皆さんも、だいちゃん情報なので私より信頼あるからネ…。
鈴木 おもしろいですから、是非見に行ってください。

荒木 ありがとうございます。…ということで。
さて 先月からアフガニスタン情勢が盛んに取り上げられています。
アメリカ軍の撤退とそれに伴う混乱・タリバンのカブール制圧、全土掌握…
今後アフガンはどうなっていくのか、アフガンの女性たちは?…と想いは巡りますが、ニュースを断片的にたくさん見ても、遠い東アジアに住んでいる私たちには、なかなか、ピンとこないことも多いと思います。
ちょうどそんなタイミングの今週、あるアフガニスタン人の家族を描いた注目のドキュメンタリーが公開されるんです。
「ミッドナイト・トラベラー 真夜中の旅人たち」9月11日公開です。
この作品 アフガニスタンからタリバンに追われて 安住の地を求めてヨーロッパを目指す難民家族4人が、スマートフォンで自分たちの旅を自ら撮影したという、注目のドキュメンタリーなんです。
時は6年前です。アフガニスタンのテレビディレクターをしていたハッサン・ファジリさんは、あるテレビ番組を制作しました。それは、かつてタリバンメンバーとして行動していた男が、やがて 武器を捨てて、タリバンから離れ平和主義者に、つまり転向するという内容で、その作品が国営放送で放映されると内容に怒ったタリバン首脳はすぐ出演者の男性を殺がいします。そして番組を作ったハッサンにも死刑宣言をして命を狙うようになります。ハッサンは家族を守るため妻と2人の娘を連れてアフガンを脱出、ヨーロッパのブルガリアまで5600キロもの旅に出ることを決意するんですね。
鈴木 実話、ドキュメンタリーなんですね?
荒木 そうです、そうです。彼らはその旅のすべてを、3台のスマートフォンで記録します。旅の途中 移民業者に騙され、娘を誘拐すると脅されたり、何日何日も凍える寒さの中を森で過ごし、国境線を越えるために必死で走ります。夜しか移動できないから「ミッドナイト・トラベラー」というんですね。雨水飲んだり、険しい道を、道なき道を行くというすさまじい旅です。お粗末な難民収容所でずーっと待たされる。さらには街中で難民排斥を訴える右翼や民族主義者にすさまじい暴行を受ける・・・。
多くの困難に直面しながら命懸けの旅を続ける家族の姿を通し、国を追われて難民になるとはどういうことか、3年間のその現実を映し出しています。大変ショッキングな映像が多いのですが、映画の中の8歳と5歳の二人の幼い娘と奥さんの笑顔が救いですが、泣けますよ。こんなに過酷なのか、こんな現実があるのかという驚きと恐怖が、現実の生々しさと一緒に襲ってきます。
鈴木 よく撮影し続けましたよね?
荒木 そうですよね。だいちゃん、私たちには 自分が日本から追われて難民になるって感覚は、見当もつきませんよね?
それがどういうことか…この映画を見ても実感はできませんが、私たちには想像も受け入れることもできない、ただただ、絶望的なことだということだけは理解ができます。
世界各国でいろいろな映画賞を受賞しています。
ただ、幸いこのハッサン一家はアフガンを脱出してヨーロッパに入れましたが、アフガンには現在「難民」にもなれない、つまり国から脱出できない多くの人々がいるわけです。彼らの気持ちにも思いを馳せてしまい、私たちにも何かできないのか?という気持ちにさせられます。日本は難民を受け入れるどころか、今、アフガンでは日本大使館で働いていた500人もの人々が脱出できないでいるという情報もあります。入管の事件もあったし、いろいろな問題が表だっていますよね。そんな思いを感じたすごい映画でした。
「ミッドナイト・トラベラー」という作品 11日の公開です。
協力者が現地から脱出するというコンセプトは「アイダよ どこに」という作品でも
ユーゴスラビアから脱出する現地人の協力者の実話が描かれていました。
鈴木 考えさせられますよね。

荒木 はい 話はガラッと変わりますが…。
いきなりですが、だいちゃん お酒はどう?最近はなかなか飲めませんが、家で飲むというパターンですか?
鈴木 もともと、あまり飲まないですよね…家で一本ぐらい開けて寝ちゃいますけどね。
荒木 お酒の上での失敗ってたくさんあるでしょうけど、何かエピソード、あります?
鈴木 あまり飲まないので大きな失敗って基本ないんですが、ひとつ、2005年という事ははっきり覚えています。ある日友達と飲んでへべれけになって気が付いたら自宅に着いていて・・・頭痛くて記憶が失ったことがありまして、その夕方にメールが届いて「昨日お店に来てくれてありがとう ♡ とても楽しかった。 また来てくださいね。はるか」って書いてあるんですよ。衝撃の文章で、どこにも「だいさん」とは書いてないんだけどあまりのタイミングのドンピシャ具合に、いたずらメールかもしれないし誰かに聞くことも出来ずに、悶々としながら、女の子が周りにいたような、いないような、変なところをもんだような、揉まないような…そんな事が1回ありましたね。
「はるか」っていう名前は忘れられないですね。
荒木 そうですか でもそれはエピソードで、失敗じゃないよね。
そんなのに通じるかも「アナザー ラウンド」というお酒をめぐる映画です。
現在公開中です。第93回アカデミー賞®国際長編映画賞を受賞し世界中で映画賞を総なめにしたデンマーク作品です。
主演はマッツ・ミケルセン。デンマークの宝と呼ばれる俳優さん。
役柄は50歳を超えた、高校の歴史教師。仲良しの同じ学校教師同僚3人と仲良し。
ある時彼らは「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」、まあ ぶっちゃけ 適当に酔っぱらっていたほうが冴えるよ
という理論を証明するために、仕事中、授業中ですよね、にある一定量の酒を飲み、常に酔った状態を保ち、仕事、彼らの場合は授業するというとんでもない実験に取り組みます。
すると、これまで惰性でやって来た時とは打って変わり、生徒さんたちの態度もイキイキと変わり、適当だった授業も楽しく活気に満ちたものになり、当然 生徒さんたちとの関係性も良好になっていきます。
他の 同僚教師たちもゆっくりと確実に人生が良い方向に向かっていく…と思われましたが、しかし、その実験が進むにつれだんだんとコントロールが不能になってゆきます。
監督のトマス・ビンターベアさんの実体験に基づくものらしいのですが・・そうそう まずこの映画を観る上で、知っておかないといけないのが、デンマークの飲酒事情。デンマークでは、親の許可があれば子供も酒を飲めるんです。平均的には、14歳から飲み始めるらしいということ。これを知らないと、冒頭から高校生がめっちゃ飲んでいるので、混乱すると思いますが…。
鈴木 えー、そうなんですか?いいんですか?
荒木 日本と違って、お酒が身近な文化圏の北ヨーロッパやロシアの方には自然に受け取られるかもしれませんね。確かに私個人的に言っても 少しお酒を飲んだほうが、アイデアも良く湧くし…。
鈴木 よくわかりますよ。
荒木 想像力も高まりますよね。打ち合わせも会議室でやるより、居酒屋のほうが、よっぽどいいアイデアが出るのかもしれませんが、ただね…人にもよるでしょうけど、酒飲むとね、気分も乗りますが、いま,だいちゃんが言っていたような、失敗ではないけど、訳の分からないことが起こったりしますし、実現不可能なのに何とかなりグッドアイデアのような気がしちゃって、結局は朝起きると…という感じも確かに多いですよ。そうじゃありません?
鈴木 そうですよね。
荒木 さっきのダイちゃんではありませんが、“酒の上の失敗”は多いけど、“酒の上の成功”って少ないですよねー、ほとんどないというか…。
鈴木 言わないですよねー。
荒木 若い時は女の人口説くのには小心だから酔っぱらわなくてはできなかったかなー(笑い) やはり酒飲むときはでかい話や、でたらめ、人の悪口やほら話、エロ、与太話がぴったり…って言うかそのままこの番組みたいですが…。
鈴木 盛り上がるんですよねー。
荒木 我々、酒飲んでなくても盛り上がりますからねー。
この映画、荒唐無稽で、依存症映画と言ってもいいのですが、メッセージは単純で、酒はほどほどがいいという事でしょうか。中年男同士の温かい友情をも描いた非常にユニークな映画でした。
酔っ払い映画で有名なのは「ハングオーバー! 消えた花婿と史上最悪の二日酔い」、
というのが有名ですが、”ハングオーバー”というのは、日本語では"二日酔い"という意味を持っていますが、今回の”アナザーラウンド”っていうのは「もう一杯行こうよ」っていう意味だそうです。
鈴木 ずーっと飲もう映画ですよね。これ。
荒木 そもそも、考えてみると日々の暮らしや仕事がアルコール飲むだけで向上するわけありませんよね。生き辛さとか、いろんなものが詰まっている中でもっと根深いというか社会体制の仕組みそのものが問題じゃないかなと思います。やはり 酒って、仕事が終わって気分転換に飲むもので、酒の席での仕事の話…どうしてのそうなっちゃうんですが、仕事仲間で飲むと…今こういう状況はないですけどね。
鈴木 そうですよね。
荒木 それからこの映画の主演、北欧の至宝といわれるマッツ・ミケルセン。ご存知の方はご存知でしょう デンマークの俳優さんです、今後は『ファンタスティック・ビースト3』『インディ・ジョーンズ5』への出演も決まっているそうですよ。
鈴木 荒木さん ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。