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映 画

「クルエラ」「アオラレ」「5月の花嫁学校」のとっておき情報
(2021年5月27日16:30)
映画評論家・荒木久文氏が、「クルエラ」、「アオラレ」、「5月の花嫁学校」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、5月24日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 荒木さん、今日もよろしくお願いします。
もう5月終わりですよね。
荒木 そうですね5月も終わり。来週の宣言終了を一応見据えて 映画はこの後は公開ラッシュ必至ですよね。ただもともとこの時期に公開予定の作品と、宣言期間中に公開できなかった作品が、溢れかえっていてスクリーンの調整が大変みたいです。
だからお客さんの入りの少ない映画はあまり長い間上映しないでしょうね。弱肉強食状態になると考えています。また折に触れてそのあたりはお話したいと思います。
とりあえず今週公開の話題作、たくさんありますのでポンポンと紹介しましょう。
1本目 「クルエラ」という5月27日から公開の作品です。
ディズニー。ディズニーアニメたくさんありますが、「101匹わんちゃん」に登場した悪役の女性というのがクルエラ。
知らない人のためにクルエラを説明しますと…『101匹わんちゃん』(1961作品)に登場する、変わりもので非情な悪女。毛皮が大好きで、ダルメシアンの子犬たちの毛皮で特製のコートを作ろうとたくらむわけです。目的のためには手段を選ばない性格で、手下を使い、99匹ものダルメシアン犬を集めるという狂気の女性ですね。
このクルエラがなぜ誕生したかのというストーリーが今回の「クルエラ」という実写の映画で描かれるということなんですが…。
鈴木 面白そうじゃないですか?
荒木 主演のクルエラは、なんとあの「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンが演じるんですよ。エマ・ストーンですよ。本来のイメージとずいぶん違います。顔が怖い怖い…髪の毛 頭の右半分白、半分は黒。あの大きな目はそのままで、目の下クマで真っ黒け。
アニメの「クルエラ」はね、それこそ鰓が張っていてホームベースみたいな、妖怪人間ベラみたいなフェイスですが、違う意味で怖いでっせ。
ちょっとだけストーリーね。
パンクムーブメント吹き荒れる70年代英国 ちょうどパンクのムーブメントがあった時代ですね。ロンドンにエステラという名の少女がファッション・デザイナーになる夢をいだいてやってきます。
情熱と野心に燃える彼女は、裁縫やデザイン画の勉強に一生懸命に励みます。才能もあって、そのままデザイナーへの道を進んでいくと思われたエステラでしたが、パロネスというカリスマファッションデザイナーとの出会いが、エステラの運命を大きく変えることとなんです。
さあ 夢と希望にあふれた若き日のエステラが、なぜ狂気に満ちたクルエラになってしまったのか?その秘密が明らかにされる…ということで。
エステラの運命を大きく変えるカリスマデザイナーのバロネス役には、こちらも エマというファーストネームの女優 「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」「美女と野獣」でおなじみ 名女優といっていいでしょう。あのエマ・トンプソン。エマ 対決です。
ディズニーの映画「クルエラ」。5月27日から劇場公開。
鈴木 大ヒットしそうですねー。
荒木 次は、あのラッセル・クロウ主演映画「アオラレ」。
このタイトル「アオラレ」ってどういう意味か分かります?

鈴木 車であおられる?
荒木 そうですね。あおる、あおられる。例のあおり運転で、被害を受けるという意味のあおられるという意味の「アオラレ」なんです。
ラッセル・クロウというと、「グラディエーター」のオスカー俳優ですが、ラッセルクロウは、あおられるほうではなく、あおるほう。当然わかりますよね?あんな怖いおっさん、あおる人はまず、いないんで。当然 あおるほうですよ、ね。
物語の中で、あおられるのは美容師の女性です。
彼女は寝坊して、あわてて息子を学校へ送りながら職場へと向かう途中、彼女の車は信号待ちで止まりますが、信号が青になっても前の車が、一向に発進しようとしません。
クラクションを鳴らしても動かないため、彼女は前の車を追い越しますが、つけてきたその車の男から「君はマナーがなっていない」と謝罪を求められますが、これを拒否…さあ、それが恐怖の始まりでした…さあ…。
素性不明の恐怖のあおり運転常習犯をクロウが怪演。被害者はカレン・ピストリアスというきれいな女優さんが演じました。
めちゃくちゃ怖かったです。怖い!怖いホラー、スリラーです。
大型車に追いかけられるのはスピルバーグの『激突!』という有名な作品を思いだしますが…だいちゃんは車運転するでしょうけど「あおられた」ことありますか?
鈴木 ありますね。
一回だけ後ろに超くっつかれて、クラクション慣らされて…何にもした覚えないのに、すごい怖かった。結局相手は車からは降りてはこなかったんです、突然 交差点で左に去っていったんですが、その時はほっとしました。
荒木 おかしな人いるからねー。ここ数年あおり運転のニュース、よく見ますものね。この映画ではきっかけ作っちゃったのは女性なんですが、実際にここまでのことは滅多にないんだけど、中にも危ない運転はよく見かけるから、決して他人事じゃないですよね。
僕も運転することがありますのでこの作品を観ると、「こんなこと実際に起こりうる世界なんだ」という風に考えられて、余計に怖かったです。日常、運転に限らず、他人のちょっとした言動にストレス感じて狂気になっちゃう人いますもんね、普通にあることなんですけど、こういう時は冷静にならないとねと、このごろは本当に思います。
自分の言動が原因作ってんじゃないかとまじに思いますよ。
鈴木 荒木さん、少し被害妄想じゃないですかねー(笑) 気にしすぎじゃない?
荒木 そうですかね? かみさんにしょっちゅう中怒鳴られるんで。
鈴木 びくびくしてますよね。あははは。
荒木 他人には優しく接して、穏やかにね。それが危機管理能力を高めていくことですからね。そこまで考えていかなくていいですけどね。「アオラレ」という作品でした。
次は5月28日公開 「5月の花嫁学校」というフランス映画。コメディです。
花嫁学校ってわかりますかね?いまあまりないけど。

鈴木 いい花嫁さんになるために花嫁修業をする学校。
荒木 そうですね、いい花嫁さんになるための学校です。
この場合のいい花嫁というのは「何よりも夫に付き従い、子供を立派に育て、家事を完ぺきにこなし不平を言わない、無駄遣いをせず家計をしっかり管理し、お酒は飲まない…これ以上言うと怒られそうな、そういう、いわゆる昔の古い感覚の良妻賢母の花嫁さんを作り上げるための学校ですよね。フランスには多くあったらしいですよ。
1960年代のフランスには農村部などの地方で育った娘たちが、こういう花嫁学校に行くことで、裁縫や料理はじめいろいろなことを学び、都会で家政婦の仕事につけたり、ひいては裕福な都会の男性と結婚したりできたんですね。 2年ぐらい学ぶんですね。寄宿舎があるところが多かったようですね。
お話は1967年。アルザス地方にある花嫁学校、校長の女性ポーレットさんがヒロイン。
経営者の夫が突然亡くなり、ポーレットが、その時 この花嫁学校が経営的に破産寸前であることを知ります。今年も18人の少女たちが入学してきたのですが、彼女が学校を立てなおそうと奔走している中、パリで有名な「5月革命」がおこります。政府に対する抗議運動・ゼネストがフランス全土に広がってゆくのを目の当たりにしたポーレットや生徒たちは、いままでの自分たちの考えていた、花嫁さんや自分の生き方に疑問を抱き始めます。さあ果たして…ということで。
校長の女性ポーレット役は、フランスを代表する大女優 ジュリエット・ビノシェが演じ、ほかにもフランスを代表する(ヨランド・モロー、ノエミ・ルボフスキーら)女優さんたちが顔を揃えています。
有名な1967年のフランスの5月危機(5月革命 自由・平等・性解放を求めた市民蜂起)が重なっていて、社会的メッセージが込められて、女性の社会参画というか、さっき言ったような良妻賢母型のお嫁さん、良き妻良き母である前に、1人の女性で1人の人間であるという自覚の芽生えを描いています。
こういう時代にも自由を求める女性達がいて、そんな彼女たちが時代を変えてきたことを笑いの中で描いています。
鈴木 今の女性たちより、60年代のころの女性のほうが強そうですよね。
荒木 そうですね。そのころの女性はやはり逆境に置かれていたからね。
やはり 自覚のある女性は行動するでしょうね。
女性の方にはレトロなファッションや小道具やインテリアがとても可愛い、おしゃれなコメディですよね。1960年代後半らしい「いろどり」があります。…というわけで「5月の花嫁学校」というフランスの作品でした。
鈴木 ぼくはこの梅雨の時期 映画を見るのが好きなんですよ。
荒木 梅雨の季節は雨降ってる時もスクリーンで青い空なんか見てると気持ちが晴れますからね。
鈴木 何ロマンチックなこと言ってるの?いい感じの終わり方だよね。
荒木 いや、このフランス映画「5月の花嫁学校」に出てくるフランスの青い空は、すがすがしいですよー。景色もいいです。
鈴木 荒木さん ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。