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映 画

「のむコレ‘21」「リスペクト」のとっておき情報
(2021年11月6日20:30)
映画評論家・荒木久文氏が、「のむコレ‘21」と「リスペクト」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、11月1日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 荒木さん、今週もよろしくお願いします。
荒木 はい!毎回この番組では、映画イベントのお知らせをしていますね。
先週は「シッチェス映画祭ファンタスティックセレクション」でしたが、そのほかにも
毎年1月からのヒューマントラストシネマ渋谷の「未体験ゾーンの映画たち」や、新宿シネマカリテの「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション」 通称:カリコレなど、個性的な映画イベントを紹介してきましたが、今日も、映画イベントコレクションを紹介させていただきます。
現在開催中の、新たな劇場発信型映画祭「のむコレ」といいます。
鈴木 「ノムこれ」?
荒木 なにこれ?という感じですが。
これは東京・シネマート新宿や大阪・心斎橋シネマートという映画館の番組編成担当 つまり、どんな映画を劇場で上映するのか、という決定権を持つ人ですね。その野村武寛(のむらたけとも)さんという方が、韓国・中国・香港は勿論、世界中から話題作をいち早く集めた、とてもレアな作品が目白押しの映画祭なんです。野村さんが選んでいるから野村コレクション、「のむコレ」。

鈴木 それだけ?
荒木 そうなんですよ。このコレクション、今年は、グォ・ヨウ、チャン・ツィイー、浅野忠信らが出演した中国のクライムサスペンス「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海」や、アクションゲームをもとにした「映画 真・三國無双」ほかにもアクション作品では、台湾の人気俳優マイク・ハーが趙雲を演じた「真・三国志 蜀への道」、タイガー・シュロフが主演を務めるインドのアクションシリーズ最新作「シャウト・アウト」、メジャーではあまり見ない珍しい作品がそろいます。
鈴木 聞いた感じ派手なもの多いような気がします。
荒木 クライム系サスペンス作品には、実話をもとに中国社会の闇をえぐり出す「修羅の街、飢えた狼たち」という作品や、「12番目の容疑者」などという作品がラインナップに上がっていて、このイベント、今まさに公開中です。
私は、今回 この「12番目の容疑者」という作品を見せていただいたのですが、
1950年代初めの韓国ソウルの喫茶店を舞台に、店の常連客が殺された殺人事件の捜査を描いたミステリードラマです。
ストーリーを簡単に述べると…朝鮮戦争休戦後の1953年。晩秋のある昼下がり、ソウル・明洞(ミョンドン)の細い路地にある喫茶店、ここは画家や詩人、小説家など、芸術家の常連が多い喫茶店なのですが、ここに場違いな雰囲気の、陸軍特務部隊のキム・ギチェという男がやって来ます。彼は店の常連客である詩人(ペク)・ドゥファンが殺害された事件を捜査していたのですが、やがて、同じこの店の常連客の大学生チェ・ユジョンも殺害されていたことが判明し、他の常連客たちは互いに疑心暗鬼に陥っていく。というドラマなんですが 舞台はほぼほぼ喫茶店の中だけで展開される重厚な会話劇のミステリーです。
韓国の演技派俳優たちによる手に汗握る密室推理劇として話題を呼んだものですが、なかなかの迫力と緊迫感でした。
こういった雰囲気の頭で考えさせる推理ドラマをお好きな方は応えられませんよ。
「のむコレ」で上映される作品の全ラインナップと作品の詳細は公式サイトで確認して下さい。「のむコレ'21」は現在開催中です。

鈴木 そしてもう一本ですね。
荒木 こちらはガラッと雰囲気変わって、音楽映画…といってもいいでしょうね。11月5日公開「リスペクト」という作品です。
ソウルの女王アレサ・フランクリンの半生を描いた物語。
アレサと言えばフランクリンということで質の高い音楽ファンの多いこの番組では
まあ、知らない人はいないと思いますが、簡単にその音楽的位置などを含めて
だいちゃんにお話していただきましょうか?
鈴木 ちょうどね、毎週日曜日に放送している「ノスタルジック・ストーリー」という、昨日の放送ですね、その番組でアレサをちょうどいいタイミングでピックアップして特集しました。
アレサは1942年 テネシー州メンフィス生まれ。育ったのはミシガン州デトロイト という強烈な流れですよね。1961年コロムビアレコードからデビュー、1867年アトランティックレコードに移籍してからの活躍はとてつもなく、クィーンオブソウルとかレディオブソウルと呼ばれ、グラミー賞は20個以上獲得しています。
87年女性アーチストとして初めてロックの殿堂入りを果たし、また、ローリングストーンマガジンが選ぶ位歴史上もっとも偉大なシンガー100人のうちの1位に選ばれているという、説明のしようもなく、もう文句がつけようのないアーチストです。
荒木 そうですね、彼女は裕福な牧師の家で生まれ、幼い頃から、抜群の歌唱力で天才と称されていました。そして、ショービズ界でスターとしての成功を収めます。才能があった為苦労もなくデビューしてるのですが、彼女の成功の裏には、波乱に満ちた人生がありました。父からの束縛 ローティーンでの出産、夫の暴力、アルコール依存症などドラマチックな局面が本当にたくさんあったのですね。お父さんは有名な牧師様なので、お金持ちですし、黒人ですが露骨で暴力的な人種差別は経験していないようですね。
キング牧師との交流も描かれていて、当時、彼女のパワフルな歌は世論、社会 政治に影響を与えていたと言います
鈴木 公民権運動にはずいぶんかかわっていますよね。
荒木 ご本人は2018年に亡くなっていますが、3年後に映画が上映されているというスピードも驚きです。アレサ役を演じるのはジェニファー・ハドソン。
鈴木 これもまた文句ないでしょう。
荒木 アレサ・フランクリン本人から主演はジェニファー・ハドソンで、とご指名されていたそうで、ジェニファー・ハドソンは申し分なかったですよね。
圧倒的な歌唱力がないと成立しない役。
鈴木 アレサ・フランクリン本人が指名するのも、誰もが納得ですよ。
荒木 まあ、それでも演じるに当たっては並々ならぬ覚悟が必要だったことでしょうね?
鈴木 そりゃそうでしょうね。
荒木 どうなんでしょ?少しハスキーなアレサ・フランクリンの声に比して、ジェニファー・ハドソンはより艶のあるハイトーンぽいとも思うんですが…。
鈴木 でも、良い感じの低音を響かせて歌っていましたよね。
とにかく歌は圧巻でした。
荒木 そしてこの映画は有名な1972年の「チャーチ・コンサート」の場面で終わります。ですが、話はこれだけでは終わりませんで、その最後の有名なコンサート1972年の「チャーチ・コンサート」映画の中のコンサートではなく、本物のほうのコンサートですよ。アレサ自身が歌っている…こちらはほんとの映像がありました。映像が、というより、映像を記録する目的で撮影されたわけですから。
50年の長い間お蔵入りになっていたのですね…それは音声的な問題もあったようなのですが、この「アメイジンググレイス・アレサフランクリン」という映画、なんと50年ぶりに公開されたんですね。
鈴木 これも見ましたよ。夏に。これは。
これはライブ盤もCDとしてもすでにリリースされているのですが、
ある意味 映画に合わせてコンプリート版としてリリース直され、ライブの全模様がわかるようになっているんですよ。実はこのアルバムはアレサの全アルバムの中で最も売れたものなんですよ。「アメイジング・グレイス」。
アレサのゴスペルライブ、アレサの真骨頂を見ることができるということで、アレサファンならず、ソウルミュージックファン、全音楽ファン、マストのライブが見られますよ。
荒木 日本で、公開に至ったのは今年の5月28日なんです。
映画「アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン」というタイトルで 日本公開されています。これはわたし、見逃しちゃっているんですが、「リスペクト」を見た後
是非見たくなりました。
でもね、まだ上映している映画観もあるんです。アンコール上映という形で~11/4まで
渋谷文化村のル・シネマなどです。
11月5日のこの作品「リスペクト」の公開に先立ち11月3日には今お話した。「AMAZING GRACE」のDVDが発売になり、且つこの映画「リスペクト」のサウンドトラック盤が発売になるという…3つが一度にやってくるというアレサファンには至福のウィークですね。
鈴木 荒木さん、アレサは2018年8月16日に死去していますが、実は私その年2018年年末から翌年にかけて、アレサの墓参りをしたんですよ。
荒木 へー、何処にあるの?
鈴木 メンフィスなんですよ。林の中にある、小さな小屋のようなお墓でした。亡くなってから4か月しか経てないので世界中からファンが集まって、寄せ書きというか、落書きをしていましたよ。
荒木 そういう意味でも縁があるんですね?だいちゃんの大好きなアーチストですよね。アレサ・フランクリン
鈴木 最後に映画「リスペクト」のサントラ盤から「THINK」を聞きながら
お別れです。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。