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映 画
「ドーナツキング」「アイス・ロード」のとっておき情報
(2021年11月10日11:40)
映画評論家・荒木久文氏が、「ドーナツキング」と「アイス・ロード」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、11月8日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 荒木さん、よろしくお願いします。
荒木 はい、よろしくお願いします。寒くなってくると食べ物が美味しいですよね。だいちゃんはお酒はそう飲むほうではないけど、お菓子や甘いものとかはどうなんですか?
鈴木 好きですよ。 甘味処とか行っちゃいますよ。
荒木 へえー、私も好きですよ。 そうそうさっきCMが流れてましたけど、山梨に行くと欠かせないのは桔梗屋の信玄餅ですよ。おいしいですよね。ここのところ行けないから暫く食べてないので食べたいですよ、信玄餅。
それはさておき、ドーナツの話。ドーナツは食べますかね?
鈴木 ドーナツはね、だいぶ好きかもしれないなー。
荒木 だいちゃん アメリカに行くとハンバーガーショップはもちろんですが、ドーナツ屋さんが多かったでしょ?
鈴木 多かったですね。 朝食に暖かくしたミルクとドーナツというパターンは最高の組み合わせですよね。
荒木 なるほど。一説によるとアメリカ・カリフォルニア州には、ドーナツ店が5000店もくらいあるらしいんですが。
鈴木 5000店?!
荒木 そうなんですよ。おなじみのミスドやダイキンなど大手チェーンも多いのですが、圧倒的に多いのが個人経営のドーナツ店なんだそうなんですね。日本では個人経営ドーナッツ店なんて見たことありませんよね。…ということで今日ご紹介するのは、11月12日公開「ドーナツキング」という作品です。ドキュメンタリーです。
鈴木 へえー。
荒木 さっき言ったようにしかもカリフォルニアの個人経営ドーナツ店のうちの約8割以上がカンボジア系、あの東南アジアのカンボジア出身の人の経営らしいんですよ。なぜ カンボジア人の店ばかりなのか?と当然思うでしょ?
これをきちんと調べた人がいるですよ。それがこの映画の監督アリス・グーさんという女性。 調べていったら、実に面白い事実につきあったタンです。
それに基づいて作られたのが、ご紹介の映画「ドーナツキング」です。
かつてドーナツの王様、「ドーナツキング」と呼ばれたカンボジア人がいて、その人が最初にドーナツ経営で大成功し、その影響でカンボジア系の店舗がばかばかできて、今のようにたくさんの店が成立したんだってことが分かっていくんですよ。
鈴木 のれん分けみたいですねー。
荒木 まさにそうなんですよ。
その伝説のドーナツキングと呼ばれたのは「テッド・ノイ」さんという人なんですが、彼は カンボジアの貧乏な家の子だったんですが、1970年にカンボジアで内戦がおこります。ポル・ポトのクメール・ルージュという毛沢東主義系のゲリラが首都プノンペンに入ってですね、政府を倒しちゃたんですよ。
テッドさんたちは国を脱出し、タイにいたんですが、帰れなくなります。
そして1975年にアメリカに難民としてわたり、無一文からドーナツ業を起こして、大成功します。
その10年後の1985年…たった10年間でカリフォルニアのドーナツショップの8割はテッドさんの傘下の店になっちゃうんです。
鈴木 アメリカンドリームじゃないですか?!
荒木 ですねー。当然 大金持ち 億万長者になります。そしてアメリカの共和党のレーガン大統領とかパパブッシュとかにも、資金提供して政治的な権力者にもなり、大豪邸に住み、一時は頂点に立っていたのですが、その後はなんと、なんと、ホームレスにまで落ちぶれてしまうんですね…。
鈴木 ええー! ちょっと、どうして?
荒木 この映画はそのあたりのことや、彼、ドーナツキングの奥さんとのなれそめや、家族のことを詳細に描いているドキュメンタリーなんですね。
もうちょっと詳しく言うと…さっき言ったようにカンボジアではプノンペン陥落後 ポル・ポト派による「大虐殺」があり、大混乱となります。当然難民が大量発生して、その中でも大勢がアメリカ移住を望みます。
でも難民が米入国するためには国内で経済的裏打ちがある身元引受人が必ず必要になります。先にアメリカにいたテッドさん、お金がありますから、当時、難民申請した人たちを「自分の家族だ」「親戚だと」とでたらめ言って、片っ端から引き受けるんですよ。
100を超える家族を自分の親戚として身元引受人になったと言われています。
それだけじゃなくて、彼らにドーナツ屋のノウハウを教えて、お金を貸して、ドーナツ屋を始めさせたんですよ。もともとカンボジアにもドーナツに似たお菓子があったようですね。だからカリフォルニアのドーナツ屋さんはみんな、テッドさんの傘下に入った形になったんです。もちろん、そこからきちんとお金も吸い上げてもいるのですが・・。 結果多くのカンボジア難民たちを助けて、アメリカでの生活経済基盤を与えたわけでテッドさんは神のように尊敬されたんです。
ところがあることをきっかけに彼は、その大豪邸も財産も地位も尊敬も家族をも、その後全てを完全に失ない、カンボジアに戻りホームレスになるというドキュメンタリーです。
鈴木 あることって何ですかー?!
荒木 まあ、没落のきっかけは映画を見ていただきたいんですが、ヒントだけ言いましょうか?そのアルファベットの頭文字はGです。ジャイアンツじゃありません。
ギャンブル、ギャンブル。
鈴木 …?
荒木 激しいアップダウンの人生…見てると貧乏だけど平穏でよかったかな?
という気持ちになる「ドーナツキング」という作品です。
そういえば ちょっと話は横道にそれますが、アメリカ映画を見ているとアメリカの警察官、パトカーなんかでよくドーナッツ店に立ち寄ってコーヒーとドーナツ食ってますよね、あれは何でか?というと、高カロリーで運動量が多い警官にとってすぐに食べられるエネルギー源であることやコーヒーにも合うしどこでも食べられることなど、いろいろ理由があるらしいですが、一番の理由は、だいちゃん、何だと思います?
鈴木 情報収集に便利!!
荒木 それもあるんですけど、なんといっても一番大きな理由は制服の警察官は、ドーナツが無料らしいという話があるんです。
鈴木 えー?
荒木 警官に頻繁に立ち寄ってもらうことによってお店の周辺は安全になるということで、全ての店ではないようですが、そういうことがあるようですね。警察、消防士等が、制服を着ていると無料で利用しているのは本当みたいですよ。
鈴木 ただ食いか!あのドーナツは!
荒木 なんか、ヤクザのみかじめ料みたいですが、これで店の治安が保たれれば安いのでしょうか?日本でいうとなんだろ・・白バイ警官やお回りさんが立ち食いそば屋に行くと無料になるようなもんかな?
・・・ということで11月12日公開「ドーナツキング」という作品のご紹介でした。
次の作品。だいちゃん、アイスロードってわかりますか?
アイスロードというのは、北極圏などの寒い地域で、冬の時期凍結した川や湖、海に張った氷の上に作られる冬限定の道路のことです。氷の上の自動車道路です。
大型トラックがバンバン通れます。これによって、冬の道路のない地域への輸送が可能になり飛行機便で運ぶより荷物をより安く運ぶだけでなく大きく重い貨物の輸送もできるようになるんです。 当然危険な道路です。長いものはカナダに2000kmにもなるものもあるようです。
鈴木 エー!
荒木 この道路がメインステージの11月12日公開の作品、リーアム・ニーソン主演 その名も「アイス・ロード」という映画です。
ストーリーです。カナダの北のほうのダイヤモンド鉱山でガス爆発事故が起こり、作業員26人が地下に閉じ込められてしまいます。
作業員を救出するためには30トンもの重さの特殊な装置を、地下の酸素が尽きる30時間以内に遠くから持ってきて取り付けなければなりません。
鈴木 その設定だけで凄すぎてわくわく…笑っちゃいます。
荒木 飛行機では重すぎ 陸路ではとお過ぎて運べず、唯一の方法はで結氷した湖の上の道路 アイス・ロードを大型トラックで運ぶためしかありません。
しかし 季節は4月、春になりかけ氷が緩んできています。すでにそのアイス・ロードは閉鎖になりつつありますが、そこを使うしか手はありません。そのために3人の凄腕ドライバーが集められます。その一人がリーアム・ニーソンですね。強いおじさん。
さあ 厚さ80センチの氷の道「アイス・ロード」で、30トンの重さの荷物を大型トラックで進みます。
鈴木 無理でしょ?ふつう。
荒木 ただしスピードが速すぎれば衝撃波が発生し、遅すぎれば車の重量で、氷が割れて水に沈んでしまいます。できすぎた危機的状況ですね。
30時間以内に装置を届けられるのか?命がけでトラックを走らせる彼らの前には
危険極まりないアイス・ロードばかりでなく、黒い危険な人間の陰謀も隠されていたのです。
…という、とにかくはらはらどきどきものです。
主演はあの「96時間」シリーズのリーアム・ニーソンが主演。
鈴木 リーアム・ニーソン「シンドラーのリスト」以来はずーっとこの線ですかね。
荒木 あはは 多いですよね…。
今にも割れそうな4月のアイス・ロードを大重量の機会を積んで走るトラック。
極限のギリギリ感てんこ盛りです。一難去って、また一難が、これでもか、これでもか…リーアム・ニーソン。氷の海におっこちたり、雪崩に襲われたりして…。でも不死身なので、安心してみていられるのですが、それにしてももう70近いんですけどね。
鈴木 アクション、よくやりますよね。
荒木 心臓の弱い人にはお勧めできませんね。ある意味スリラーです。
怖いですよ 映画なんかでもよくあるやつガラスの天井の上に乗っかってしまって、ガラスがみしみし・・というのに似てますが、薄氷の上に乗っていて氷がピキピキ…いい出すのはもっともっと怖いですよね…。
私も小学生のころ 防火用水の氷の上に乗って、氷が割れて落っこちたこと何回もありますけどね。怖いですよ。パニック映画ですよね。
鈴木 この映画 トラックの移動だけですか?
荒木 基本的にトラックの移動が中心ですが他にもいろいろな要素が入ってきます。デート映画としてもおすすめですよ。あの名作「恐怖の報酬」も彷彿とさせますしね。分かりやすい内容で見せてくれます。
1月12日公開の作品。リーアム・ニーソン主演、その名も「アイス・ロード」という映画でした。
よけいなことですが、さっきから「アイス・ロード」、「アイス・ロード」とタイトルを繰り返し言っていると「マイ・スイート・ロード」に似ているね?
鈴木 ジョージ・ハリソンかい?
荒木 全然意味もスペルも違いますが…似てないかな?
そうそう 最後に さっきの信玄餅で思い出しました。
山梨県のみならず誰もが知っている武田信玄公。そのお父さん、武田信虎といいますよね。 その信虎の晩年を描いたそのタイトルも「信虎」という映画が11月12日から公開されます。実は山梨県内では先月から先行上映されていたのですが、山梨の古いお寺なんかがたくさん出てきますよ。山梨県民のみならず、歴史ファンは見ておいたほうがいいですよね。
機会があったら見てくださいね。「信虎」という作品も観て下さい。
鈴木 イヤー、今日は強烈な3本でしたね。
荒木 ドーナツとアイスと信玄餅、お菓子シリーズですかね。
鈴木 荒木さん、ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。