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映 画

「BELUSHI ベルーシ」「ただ悪より救いたまえ」「世界で一番美しい少年」のとっておき情報
(2021年12月26日11:15)
映画評論家・荒木久文氏が、「BELUSHI ベルーシ」「ただ悪より救いたまえ」「世界で一番美しい少年」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、12月20日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 荒木さん、よろしくお願いします。
荒木 今週はクリスマス週です。大物映画も多数公開されていますね。
先週末からは、「マトリックス・レザレクションズ」。今週は「キングスマン ファーストエージェント」などですね。
こういうのはテレビでバンバン紹介しているし、まあ定番ですから、まあ、それなりなので。ハッキリ言って。だからこの番組ではあえて取り上げもしませんよ。
ということでどちらかというと個性的な作品をご紹介いたします。
一本目・・・ 略称でBBというと何を連想します?
鈴木 B・Bキング!!
荒木 なるほど。BB弾…私はブリジット・バルドーと言ってびっくりされました。…恐ろしく古いですねーって。
鈴木 あははは。いいじゃないですか?
荒木 まあ、ブルース・ブラザーズ です、という人もそれなりに古いので知らない人が多いんでしょうかね。この番組のリスナーはほとんど知っていますよね。
今日取り上げるのはThe Blues Brothers、(または The Blues Brothers' Show Band and Revue。)ブルース・ブラザーズと言ってもほんとの兄弟じゃないんですね。
コンビ名です。二人のコメディアン、ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドの二人。彼らを中心に結成されたブルース・R&B・ソウルのリバイバルバンドって言っていいのかな?
鈴木 そうですね。それでいいと思います。
荒木 そのメインメンバーがジョン・ベルーシ。この名前に聞き覚えがなくても、黒服にサングラスの2人組が歌い踊る、小柄なほうと聞けば、わかりますかね?
鈴木 はいそうですよね。

荒木 今回ご紹介の作品、1月17日から公開中(『ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている』(2021年))のR・J・カトラー監督による『BELUSHI ベルーシ』というドキュメント映画です。米エンターテインメント界で嵐を巻き起こし、33歳という若さで命を落としたジョン・ベルーシの軌跡を追うドキュメンタリー映画でジョン・ベルーシの栄光と苦悩に迫ります。
ジョン・ベルーシ、彼は破天荒な人で、どう猛なブルドックみたいな感じでしたね。ある意味 アメリカのコメディ界に革命を起こした人だったのですが、人気絶頂の1982年に33歳の若さで薬物の過剰摂取により亡くなっています。
ダイちゃん、彼のルーツはどこかご存知でしたか?
鈴木 えー どこなんだろう?
荒木 ヨーロッパのアルバニアなんですよ。その移民の家庭に生まれ、シカゴの即興コメディ劇団からキャリアをスタートします。その後NBCのコメディ番組有名な「サタデー・ナイト・ライブ」に出演。大人気を得ます。その後映画にも出演、学園ハチャメチャ・コメディの映画『アニマル・ハウス』(1978年)で一躍人気者になり、ジョン・ランディス監督と組んだ『ブルース・ブラザース』(1980年)のヒットで、映画スターとしての地位を固めています。思い出、ありますか?ダイちゃん。
鈴木 僕はね、R&B と言われる前のリズムアンドブルースと呼ばれていた頃 あのあたりの魅力を教えてもらったのが、映画の「ブルースブラザーズ」や彼らのアルバムでした。 そこからアレサ・フランクリンや何やらという感じになりましたよね。
荒木 なるほどね、入り口としてねー。
しかし、あまりにも早くアメリカンコメディの象徴的存在になったことと、一見、破天荒で、大胆のイメージがあるのですが、本当は脆い、ガラスのような繊細極まりない神経の持ち主だったんですね。
鈴木 絶対そうだったんでしょうね。
荒木 そして、ブレークのきっかけとなった番組での共演者(チェビーチェイス)へのジェラシーやアルバニア出身というコンプレックスなどのマイナスな感情が、大きなプレッシャーとなって彼にのしかかっていくんですね。
それが彼を薬物へと追いやっていくわけなんです。
そしてこの映画では 高校時代からのパートナーである妻のジュディスの自宅に保管されていた未公開音声テープや大量のラブレターだとかポエムが明らかになります。
ジョンの相棒とも言える俳優ダン・エイクロイドら関係者へのインタビューやアーカイブ映像、それから目立つのはアニメーションですね。これを交えながら、もう嵐のように駆け抜けた彼の人生を振り返ります。
今でもブルース・ブラザースの音楽的影響は大きいですよね。それだけじゃなくて、『マトリックス』『メン・イン・ブラック』のスタイルは…。
鈴木 ああ、そうか…同じだもんね…。
荒木 そうです。『ブルース・ブラザーズ』へのオマージュであることはよく知られていますし、日本でも 最近では星野源が『ブルース・ブラザーズ』を音楽ルーツが、ひとつであることと言っていますね。
ジョンベルーシ 今、もし生きていたらどんなになってるんだろうね?
相棒のダン・エイクロイドは今も役者としてもいい味出してるんだけどねー。見たかったよね。
そんな気持ちにさせられる作品でした。「ベルーシ」という公開中のドキュメンタリー、ご紹介しました。
鈴木 音楽ファンも是非見てほしいですね。
荒木 そうですね。2本目。こちらも観たら絶対ハマりまくります。個性派の韓国作品です。
24日から公開の『ただ悪より救いたまえ』という韓国映画。典型的な韓国のバイオレンスアクションなんですが、バイオレンス度が半端じゃない純度がめちゃくちゃ高い。見るのには強い覚悟と体力がいりますよ。
鈴木 えー?!

荒木 気楽に見ちゃいけません。警告しておきます。
ストーリーです。 主人公はファンジョンミンという俳優さんが演じる殺し屋です。
引退前の最後の仕事として、日本のヤクザを殺害します。
するとこのヤクザの義兄弟だった冷酷なもう一人の殺し屋 こちらはイ・ジョンジュという俳優さんが演じていますが、殺したほうの殺し屋を追いかけ仇を取ろうとします。
つまり逃げる殺し屋と追っかける殺し屋…の戦いなんですが、この殺しかたや殺しの数が凄いったらありゃしない…。
鈴木 すごいったらありゃしない…あはは。
荒木 周囲を巻き込んでとにかく殺す殺す。銃で、刀で、素手で…殺し方がえぐいし、リアルでリアルで。目的のためだったら手段を選びません。
しかも 主な舞台はタイの都会の裏社会…そう、ほぼほぼ無法地帯 警察はいるけどヤクザに買収されているし関係ないねって感じ。
格闘場面の映像はもう、究極にすごいですよ。カットもカメラワークも、また、るろうに剣心みたいなアクロバテイックな映像とも違って格闘している二人のすぐそばにいて汗や血がかかってくるんじゃないかとも錯覚します。
二人の俳優さん、主人公のファンジョンミンさん、何本か韓国映画を見た方は必ず、ああこの人ってわかります。それほど有名です。そして追いかける狂気の殺し屋、迫力凄い、イ・ジョンジュさんは最近大ヒットしたあの1億1100万世帯が見たと言われているNetflixの作品「いかゲーム」の主人公ソン・ギフンなんですよ。
髪型が違うし表情の作り方が全く違うのでわからない人が多いようなんですが、役者さんてすごいなって思いますよ。
この二人のコンビがかつての傑作と言われるノワール映画『新しき世界』もやっています。
鈴木 ロマンスみたいのはないんですか?
荒木 ないですね。 親子の情とかあります。子供を守るために頑張るとか、あとはね、児童の臓器売買なんていうのが、絡んでくるのですが…。
鈴木 グロいですねぇ…。
荒木 とにかくバイオレンス好きは見たほうがいいですよ。
『ただ悪より救いたまえ』。
鈴木 体調いい時に見ますよ。
荒木 そうですね。そのほうがいいですね。もう一本いけるか?な?
こっちもドキュメンタリーですね。先週から公開中です。
ビョルン・アンドレセンって知ってる人いないだろうなぁ。

鈴木 あー、あの…美しい少年?
荒木 よく知ってますねー!!
鈴木 スウェーデンの子でしたよね。
荒木 ラジオ聴いてる人で知ってたら表彰したいぐらいです。
鈴木 表彰してくださいよおー。
荒木 ダイちゃん、すごいねぇー。
この人はかって 世界で一番 美しい少年 と呼ばれた人なんですね。
1972年のイタリア映画「ベニスに死す」で主人公を破滅に導く少年タジオ役を演じた当時15歳のスウェーデン人です。
当時 大巨匠と呼ばれたルキノ・ビスコンティ監督に見いだされて、「世界で一番美しい少年」として世界中から注目を集めた彼は、特に日本で大人気になりました。あの池田理代子が「ベルサイユのばら」の主人公オスカルのモデルにしたと言われ…。
鈴木 ああ、そうなんだー、そう、ちょっと似てるわー。
荒木 日本のカルチャーにも大きな影響を及ぼしたんですね。1971年、映画のキャンペーンと日本メーカのチョコCMのために来日しました。意外にきれいな日本語で「永遠の二人」というCMソングを歌い来日の際には熱狂的なファンの歓迎を受けましたね。
鈴木 どこかの記憶に残っていますよね、
荒木 時は流れてそれから。それから約50年。
世界で一番美しい少年はどんな人生を生きて、どんな人になっているのか?というのを追っかけたのがこの映画です。タイトルも「世界で一番美しい少年」。
まあ、「あの人は今どうしてる?」の大規模版といったところでしょうか?
実はこの人、2年前ですか?怖い映画と話題になったアリ・アスター監督作「ミッドサマー」で老人役で出演しているんですね。
鈴木 ああ、そうなんですか?
荒木 その変貌ぶりが話題となったアンドレセン。66歳です。どんなになっているかは まあ、見てあげてください。
老人になった彼が、「美少年」だった時に訪れた、東京、パリ、ベニスを再びたずねます。
見ていると残酷ですよね。かつての栄光と今の破滅ともいうべき自分の状況を再確認する旅です。この人、この映画の主人公になったおかげで、いろんな搾取をされているんですね。
ほんとに傷ついているんです。そのいろいろ搾取の軌跡をたどるとともに、人生を運命づけられてしまったひとりの人間の「旅路」を映し出しています。
なかなか考えさせられる映画でしたよ。きれいに生まれるのもなー、老けると落差がねー。
鈴木 私や荒木さんは、ちょうどいいですよね。
荒木 いやいや、幸せですよ、お互い我々は…あはは。
鈴木 おいおい…あはは。
でも映画っていうのは、人に感動や幸せを与えるのですが、ことによっては不幸をもたらすこともあるんですね。
荒木 おっしゃる通りですね。映画の主人公や、出演者がどうしているか、調べてみると面白いですよね…。
鈴木 荒木さん、ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。