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映 画

第94回アカデミー賞のとっておき情報
(2022年4月4日9:15)
映画評論家・荒木久文氏が第94回アカデミー賞のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、3月28日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 荒木さーん、よろしくお願いいたします。
荒木 今日は第94回アカデミー賞の発表、授賞式でした。
もう結果をご存じでしょうと思うのですが、今日はこの話題しかありませんね。
鈴木 それそれ。是非是非…。
荒木 今回も色々注目点がありました。まず、日本の「ドライブ・マイ・カー」。作品賞はじめ4部門ノミネート…どうなるか?
最強作品「パワー・オブ・ザ・ドッグ」がどうなるのか?作品賞あれば配信系史上初ですね。その前に 各部門のノミネート作品のお話だけちょっと…最多11部門12ノミネートのNetflix作品「パワー・オブ ・ザ・ドッグ」、「DUNE//デューン 砂の惑星」が10部門ノミネート。 日本作品、濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」は作品賞・監督賞・脚色賞・国際長編映画賞の4部門にノミネートされていました。
技術系と呼ばれる、音響賞とか、撮影賞、視覚効果賞などは6部門を「DUNE//デューン砂の惑星」がとりましたね。ほぼ独占。
鈴木 すごいよね。取りましたね。
荒木 では各賞、何から行きましょうかね?
僕も予想していたのですが、結果は後で言いますけど。作品賞以外全部当たりましたね。
鈴木 作品賞だけ外してる?荒木さんぽいね、そのあたりは、あとで迫りたいな。
荒木 あはは…じゃ主演女優賞から。わからなかったのはこの賞でした。俳優賞は、実在の人物を描いたものが多少、賞を取りやすいというアドバンテージがある傾向があるといわれていました。その法則からすると、ノミネートされていた実物の人物を描いたのは「愛すべき夫妻の秘密」のニコール・キッドマン。ルシル・ボールを演じました。ルシル・ポールは「アイ・ラブ・ルーシー」や「ルーシーショウ」の有名なテレビ女優だった人です。そして「スペンサー ダイアナの決意」という作品で、ダイアナ元皇太子妃を演じた、クリステン・スチュワート。
もうひとりが「タミー・フェイの瞳」ジェシカ・チャステイン。彼女が演じたタミー・フェイという女性は1970年代の有名なキリスト教のテレビ伝道師です。
実在の人物を演じたのは、この3人だったのですが、ニコール・キッドマンはオスカーを既に取っていますし、クリステン・スチュワートは初めてのノミネートで、一発、ほらよって、というわけにはなかなかねー…というわけで、もう数回ノミネート経験のあるジェシカ・チャステインだと思っていたのですが、やっぱりね。
鈴木 さすがだね。 予想は消去法で選ぶの?それともプラス法?
荒木 そちらかというとプラス法ですけどね…。
次は主演男優賞。主演男優賞は「ドリームプラン」のウィル・スミス。分かりやすいアメリカンドリーム。大本命と言われていました。2回か3回ノミネートされていましたよね。
続いては監督賞。監督賞は、昨年に続いて女性です。「パワー・オブ ・ザ・ドッグ」の
ジェーン・カンピオン。ずっとフロントランナーでした。 2年連続女性監督。キャスリン・ビグロー、クロエ・ジャオ以来史上3人目の女性監督賞です。
それから、助演男優賞。この番組でも紹介しました、「コーダ あいのうた」のトロイ・コッツァー。ろう者としての男性で初めて受賞。女性(ろう者)は同じ映画に出ている妻役のマーリー・マトリンがかつ「愛は静けさの中に」(1986年)で主演女優賞を受賞しています。ここでも多様化や共生とかの象徴でしょうか?
鈴木 そのあたりも多少意識しているんでしょうか?
荒木 というか、選ぶ人たちが増えて、いろんな人種の人たちが入ったり、男性の白人が多かったのが、改革されたということでしょうね。
そして、最後に助演女優賞。がちがちの本命だったアリアナ・デボーズ(「ウエスト・サイド・ストーリー」)が 前哨戦を総なめにしていましたからね。
リタ・モレノ以来ラテン系としては2人目。アフリカとプエルリコにルーツを持つアメリカ人女性としては初。クイアであることをオープンにしています。だからというわけではありません、もちろん演技が重要、演技・歌申し分なし、プラスそういうもの、アカデミー賞の多様性、共生。助演の二人はそのあたりもありますよね。
鈴木 よかったということでしょうね。
荒木 そういうことでしょうね。そして 注目の濵口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」は国際長編映画賞を受賞ということです。
鈴木 素晴らしいですね。すごいなー。
荒木 そうですよね。日本作品は13年ぶり「おくりびと」以来ということですね。
脚色賞も、と思っていたのですが、脚色賞は、「コーダ あいのうた」が獲得です。
鈴木 荒木さんとしては脚色賞も「ドライブ・マイ・カー」が取るんじゃないかと思ってました?
荒木 思っていました。「ドライブ・マイ・カー」は原作がひとつじゃなくていくつかまとめて作っていますから、非常に難しいわけですよ。バランスを取ったり…そのあたり非常にうまく作ってありますからね。
まあ、「コーダ あいのうた」はリメイク作品だったので、文句つけるわけじゃないんですが、ちょっと意外だったかな?と思います。
ほかには脚本賞はケネス・ブラナーの「ベルファスト」が受賞。
「ベルファスト」がもっと取ると思ったんですけどね。結果としてはそんなところでしょうかね。
鈴木 決まってみると納得ですかね。
荒木 というのはね、がちがちの本命だったのは「パワー・オブ ・ザ・ドッグ」でしたが、間際になって「コーダ あいのうた」がプロデューサー連盟賞なんかでガンガン追い上げたんですね。
それにはいくつか理由があって、多分、多分ですよ…私が投票したのではありませんので…「パワー・オブ ・ザ・ドッグ」って癖のある激しい作品じゃないですか?
対して「コーダ あいのうた」は、どっちかって言うとみんなが見て、よかったね。という、穏やかで、嫌われない作品ですよね。審査員、投票者は1位から10位まで順位をつけるわけですよ。投票者の心理としては、好き嫌いで「パワー・オブ ・ザ・ドッグ」は、1位か、なしなんですよ。人によっては。でも「コーダ あいのうた」は1位にはしないかもしれないけど2位か3位には入ってくるんじゃないですかね?そのあたりの感覚が違うのかな?
鈴木 さすが、報知映画法選考委員ですね。
荒木 いやいやほかにも理由があると思いますよ。配信作品とかね。
鈴木 いやいや、いろんな理由があるんでしょうねー。
荒木 想像だけですけどね。
鈴木 当たっている気がしますよ。
荒木 「コーダ あいのうた」は、ちょっと意外だったかもしれませんねー。
下馬評には当然、載っていたのですが…。今年のアカデミー賞いろいろありました。
例年よりは1か月遅れ。(昨年は4月の終わりで2か月遅れ)
去年のコロナの関係から2021年3月公開公開から12月31日までと対象月が2か月分少ない。
鈴木 それってどうなんですか?質的にとかは?
荒木 デジタル配信作品も入れていますので対象作品数は例年並みでしたね。授賞式も昨年はイレギュラーで、今年はいつもと同じドルビーシアター。
テレビ局視聴率対策もあって式進行が少し短く編集賞、作曲賞など8部門まとめるという、演出方法に賛否ありましたが強行しましたし、ハプニングもありました。
済んでみると収まるところに収まったな、という感じですね。
鈴木 授賞式が例年通り行われると、楽しいですよね。
荒木 「映画の祭典」と言ってもいわば“業界内の賞”ですからね。決してみんなで選んでいるわけではないんですが、今年はね、日本の「ドライブ・マイ・カー」が注目されていましたからね。
そういえば、「ドライブ・マイ・カー」、報知映画賞では全くどこにも引っかかっていないんですよね。まずいよねー?
鈴木 荒木さん、それって、どうなのよ?
荒木 うーん、日本の皆さんごめんなさいですね。
鈴木 あはは、まあ、日本の作品がノミネートされて、授賞式当日まで
わくわく、ドキドキできるって言うのも改めてうれしいですよね。
荒木 そうですね。映画ファンもそうでない方も「ドライブ・マイ・カー」見に行こうと思っていただければ…、非常に長い映画ですけど、示唆に富んだとてもいい作品です。選らんでいない癖にこんなこと言うのもナンですが、日本映画業界全体が活気づくきっかけになるといいなと思います。
鈴木 それと、早く日本の作品の作品賞受賞が見たいですよね。いつか。
荒木 本当にそうですね。
鈴木 荒木さーん、ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。