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映 画

「ある男」「ザ・メニュー」「ザリガニの鳴くところ」のとっておき情報
(2022年11月24日10:30)
映画評論家・荒木久文氏が「ある男」「ザ・メニュー」「ザリガニの鳴くところ」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、11月21日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 よろしくお願いします。「ワールドカップ!ですねー。
荒木 もうねー、仕事どころじゃないってのが、本心なんです。でもそんなことは言えないんで…深夜のゲームも多いんで、体調整えて観ないとねー。
鈴木 ほんと、その通りですよ。
荒木 でもね、何とかならないもんかね、何とか。
鈴木 なりますよ!何とか。なる、なるなるなる。
荒木 昨日NHKは楽観的なことやってたけどね。そんな簡単じゃないよね。
それはさておき、先週から映画界は大作の公開ラッシュです。大作渋滞状態です。
クリスマス、お正月映画の部類ですけど、最初は『ある男』という作品です。
鈴木 「ある男」…。
荒木 はい。18日から公開ですかね。公開中です。『マチネの終わりに』などでも知られる平野啓一郎の小説を映画化したヒューマンミステリーです。
ストーリーです。
里枝という女性は夫と離婚して、子供を連れて実家のある故郷に帰ります。これね、山梨っぽいんですよね。 山梨がロケ地だそうです。
やがて「大祐」さんという男の人と知り合い、再婚して、新たに生まれた子供4人と幸せな生活を送っていたんです。ところが、ある日突然 夫の大祐さんが仕事中、事故で命を落としてしまいます。長い間疎遠になっていた大祐の、実のお兄さんが法要に来るんです。だけど、写真、その遺影写真を見て、「これ誰ですか?弟の大祐じゃないですよ」って言うんですね。
鈴木 おぉーい。
荒木 えっ?!ってことになって、里枝さんの夫の「大祐」は、まったくの別人だったんですよ。当然、里枝さんは、自分の夫の正体は一体誰だったのか?
知りたいわけですよね。そして 以前 世話になった弁護士の城戸さんに相談して「死んだ夫の身元調査」を開始するんです。 城戸弁護士は、その「大祐」と名乗った、“ある男”の正体を追う中でいろんな人と会うわけです。衝撃の事実に近づいていきます。というストーリーなんです。
鈴木 ざっくりしてるなぁー。
荒木 はい。あんまり詳しく言えないの。
鈴木 (笑)わかる。わかる。
荒木 まず、俳優さんたちが素晴らしいです! 城戸弁護士役には、妻夫木聡さん。里枝役に安藤サクラさん。「大祐」には、窪田正孝さん。ま、3人主役という感じです。これだけ気合の入った演技というのはね。特に妻夫木くんなんかはね、仕事の他に家庭にも問題を抱えているっていう設定ですね、苦悩も含めて非常に暗い部分もあるんですけど。CMで明るく宝くじの宣伝してる人とは思えない、素晴らしい演技が見られますね。
鈴木 (笑)へぇー。
荒木 監督は、石川慶監督といって、この人も、非常にテクニック高度な人で、そんな技量が非常に発揮されている作品です。
こういうテーマ、つまり配偶者が「別人だった」という素材はですね、前にも、長澤まさみ主演の『噓を愛する女』というのがありましたよね…、
他にも、小説でいえば、古くは松本清張『ゼロの焦点』とか、夏樹静子の『見知らぬ夫』とかね。
鈴木 結構あるよねー。
荒木 あるんです、あるんです。ま、自分が知っているはずなのに知らない人がそこにいたという、そういう、何かね恐怖ですよね、ある種生活の中で。
鈴木 最大の恐怖だよ、考えたら。
荒木 ホントだよね。で、まあそういう話なんで、さっき言ったように、山梨がロケ地なんで…。ここにきて賞レースの本命として注目を浴びてきた作品です。
鈴木 これは山梨の人観ないと、とにかく。
荒木 そうですね。物語全体が単なる謎解きじゃなく、重厚な人間ドラマになっています。是非ご覧になってください。「ある男」という作品でした。
はい。次の作品! 食欲の秋ですが、いろいろ美味しいものを食べていると思いますけど、「ザ・メニュー」というタイトルの作品です。
お料理映画かと思うでしょ? 私もタイトルでそう思っていて何にも予備知識を入れないで観に行ったら、ぶっ飛びました。

鈴木 ぶっ飛びましたか。
荒木 はい。ほんとは皆さんにも何も知らないで行くとジェットコースターみたいですごいと言いたいのですが、そういうわけにもいかないので、最低限紹介しますけども。
鈴木 そりゃそうだよ。
荒木 舞台は「ホーソン」という世界で最も予約の取れない人気レストランです。このレストラン、陸地から遠く離れた大海原の、小さな島に作られているんです。
世界中のセレブなど、ほんの少数の人だけが訪れることのできる、いわば幻の超一流レストランなんです。
今回、この美食レストランのチケットを獲得したのは、有名料理評論家だとか、人気映画俳優だとか、お金持ちだとか、少数の選ばれた人たちです。ゲストですね。
その中で、唯一若い女性、マーゴという女の子がいまして、彼女はグルメマニアのボーイフレンドとともにやって来たんですけども…。
そしてディナーが始まります。このレストランを仕切るのは伝説の天才シェフなんです。完璧な料理の数々が次々に登場します。信じられないおいしさに大喜びするゲストたちなんですが、しかしマーゴだけは、その過剰とも思える演出に妙な違和感を感じるんですね。
さあ、果たしてレストランと極上のメニューにはどんな秘密が隠されているのか?というね。その他に、料理が運ばれるたびに、お客さん、ゲストの素顔も暴かれていきます。さあ、天才シェフの目的は何なのか?ということも、興味を引きます。
鈴木 アガサクリスティーみたいな感じだね。
荒木 マーゴ役にはですね、アニャ・テイラー・ジョイ。あの、ラストナイトインソーホーとかね。今、最も旬な女優さんです。天才シェフ役はですね、あの「ハリーポッターシリーズ」でもおなじみのレイフ・ファインズ。
鈴木 いいですね。名優ですね。
荒木 もう お料理が美味しそうなのと、見ただけで、サプライズたっぷりのフルコースなんですけども、観終わったあとには、頭の中にちょっと料理の後味が残るような印象の映画だろうなというふうに思って観てたらね、逆にちょっと、人によったら食欲が落ちるかもしれないですね。
鈴木 え?え?
荒木 まあ、すみません。サスペンスなのであまり言えないんですけども…。
鈴木 そっか、ここまでですね。
荒木 そうですね。もう公開されているし…ちょっとヒントだけ…。
ダイちゃんは、ちっちゃい時、宮沢賢治読みましたでしょう?
鈴木 読んだ、読んだ。もちろん読んだ。
荒木 あの宮沢賢治の名作の中にヒントがあります。料理がつくタイトルあったでしょう? ほら、あの…注文の多い料理店。あれを読んだ人は大体想像がつくんじゃないかって感じね。
鈴木 読んだけど、すげえー昔だよ。覚えてないよ。
荒木 覚えてないよね。じゃ、引っ張り出してちらっと見ていただくと、ま!あんまり読まない方がいいかな?
鈴木 なんだよー。
荒木 ま、因みに私は、観終わったあと、立ち食いそばを食って帰りましたけど。
鈴木 (笑)
荒木 こんなこと言ってられない。「ザ・メニュー」という、現在公開中の作品でした。
鈴木 はいはい。

荒木 最後はこれも公開中なんです。「ザリガニの鳴くところ」という不思議なタイトルの作品です。
鈴木 はいはい。話題になってますもん。
荒木 これ、不思議なタイトルですけども、舞台はアメリカ・ノースカロライナ州ですね。フロリダの北の、海っ端。沼地というかとっても広い湿地帯ですね。
1969年といいますから、いまから50年以上も前のお話なんですよ。この湿地帯で将来有望な、お金持ちの地元青年が変死体となって発見されます。犯人として最も疑われたのは、「ザリガニが鳴く」と言われるこの辺鄙な湿地帯で、たった一人で育った少女カイア。
彼女は6歳の時に両親に捨てられて以来、学校へも通わずに、この湿地で、自然から生きる術を学んで、たった1人で生き抜いてきた若い女性だったんです。
鈴木 ふーん。
荒木 殺人容疑で逮捕されちゃうんですけども、このカイアに、ある年老いた弁護士が手を差し伸べるんです。法廷映画となってるんですが。法廷ではカイアがたどってきた想像を絶する半生が語られるわけです。その中で、どんどん青年に対する殺人の動機が浮かび上がってきちゃうんですね。 ただ、決定的証拠は見つからないんです。
さ、裁判ではその真相が明らかになるのか?という。これも、ごめんなさい。あまり言えない話なんですけども。
鈴木 (笑)
荒木 実は、この原作は「ザリガニの鳴くところ」。2020年と21年で、連続でアメリカで一番売れた本なんですよ。
日本でも2021年、本屋大賞翻訳小説部門第一位でね。で、私も何年か前に読んで、すごく面白くって、これが映画化されると聞いて、とても楽しみにしていました。
鈴木 どうで、期待通りの映画化?
荒木 あのね、最後にそれ言うんですけども、あのね、素晴らしい映画です。だけど、原作とちょっと違ってるところがあるんです。
鈴木 ま、そりゃそうだよね。
荒木 一点だけ。原作の後半の一部が、大幅にカットされているんです。
この部分を別のシーンにスポットを当てて、象徴させて、イメージさせてるって、ちょっとわかりにくいですよね…。原作を読んだ方に、この映画どう思われますかね?と
聞きたい感じです。
鈴木 そこも面白いですね。皆で話して。
荒木 そうですよね。だからね、原作を絶対に読んだ方がいいと思いますけども。誰か、本でも読んだし、映画も観たという方は、ご意見ちょっと聞きたいなと思います。
鈴木 あー!是非是非。リスナーの皆さん、感想送って欲しいな。
荒木 そうですよね。で、プロデューサーがあの美人オスカー女優のリース・ウェザースプーン。彼女も「読み始めたら止まらなかった」と原作に惚れ込んだそうです。
そしてやはりこの物語、原作に惚れ込んだのが、あのテイラー・スウィフトですね。
鈴木 主題歌ですものね。
荒木 「カロライナ」という楽曲を書き下ろしています。この後 かけていただけるようですね。
で、イギリス出身の デイジー・エドガー・ジョーンズという新人さんが、カイアを演じました。どんな雰囲気か、は後で検索でもしてみてください。
鈴木 制作も全部、何もかも、オールキャストですね、完璧に。
荒木 そうなんですよ。話題作です。「ザリガニの鳴くところ」。
ちなみに、ザリガニは本当に鳴くのか?という疑問ですが…。私、30分以上調べたんですけども…。
鈴木 鳴くの?
荒木 ジジジジ…となく種類もいるという説もあったんですが、よくわかりません。こちらも、どなたかリスナーの方で知っている方…、「私はザリガニが、ジジジと鳴くのを聞いた」とか、「ガガガと鳴いてる」とか、わかった方がいたら、是非教えてください。
鈴木 俺のザリガニは鳴くよ!とかね。そういう…。是非送って欲しいですよね。
荒木 ということで。すいません、ちょっと早いパスみたいに、ピッ、ピッとまわりましたけど。
鈴木 (笑)上手い、上手い!荒木さん、ありがとうございます。
荒木 頑張れニッポン!

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。