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映 画

「野球部に花束を」「おっさんずぶるーす」「Zolaゾラ」のとっておき情報
(2022年8月26日11:45)
映画評論家・荒木久文氏が「野球部に花束を」「おっさんずぶるーす」「Zolaゾラ」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、8月22日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 荒木さ~ん、よろしくお願いします。
荒木 今日は高校野球の決勝戦でしたね。
鈴木 まさに今ですよ!
荒木 仙台育英VS下関国際、どっちが勝つか見どころですけど。
実は全国には4000もの高校野球部が存在すると言われていますが…。甲子園に出られるのは、わずか1%なんですって!改めてすごいものですよね。
そんなこともあって、今日の一作目は高校野球を扱った漫画が原作の大笑いコメディです。タイトルは「野球部に花束を」という、現在公開中の作品なんです。
鈴木 はい。
荒木 舞台は架空の都立高校、「三鷹東高校」っていうありそうでなさそうな・・・学校名ですね。 主人公は黒田鉄平君。彼は中学時代、野球部だったんですが、高校に入ったら野球とは縁を切りキラキラの青春を過ごそうと、茶髪にして高校デビューを目指して入学したんですね。
鈴木 なるほど。
荒木 ところが、先輩野球部員が、二年生が勧誘に来ます。気持ち悪いほど優しい勧誘に乗ってですね、うっかり野球部の見学に行ってしまったのが運の尽き!
鈴木 あ~!
荒木 入部したとたん新入生歓迎の儀式で早々に頭バリカン!丸坊主!
鈴木 出た!
荒木 バラ色の高校生活など夢のまた夢ですね。奴隷と呼ばれ虫以下扱いの日々が始まります。おまけに一目惚れした同級生は、なんと先輩の妹で、手を出したら、即死です。
鈴木 最悪だね~!最悪だよ!
荒木 (笑)おっさんみたいな3年生や、今時、超やばい見た目と言動のやくざ風の監督に怒鳴られっぱなしでですね。
鈴木 面白いね!
荒木 もう、令和とは思えないブラックな部活が始まりましたという話なんですね。
鈴木 なるほど。
荒木 かなり大幅にデフォルメされて描かれている、野球部ネタの爆笑コメディですね。今時こんな前時代的野球部あるとは思えませんけど、理不尽極まりないパワハラを上手に笑いにしています。で、途中で何回か「野球部あるある解説」が入ってくるんですね。
鈴木 ええ…。
荒木 解説するのは、ロッテOBの里崎智也さん。
「野球部の1年は基本奴隷である」と、昭和のノリの体育会系のブラックな解説してるんです。思わず笑ってしまいます。 出演者も個性的で、主演は醍醐虎汰朗(だいご こたろう)さんという新人さんなんですが、そのやばい野球部監督には、髙嶋政宏さん。この人の狂気の演技は素晴らしいですよ。ほとんど裏社会の人そのもの。教師で監督なんですが、観てるだけで、三振バッターアウトって感じです。
鈴木 (笑)
荒木 野球部の選手のなかにどう見ても10代には見えない人が多いので、調べてみたら40歳以上の俳優さんが高校生役やってました。
鈴木 何かね~、でも役者だね~!
荒木 役者ですよね~。 そして一年生から見た三年生が、あの怖い怖い小沢仁志(おざわ ひとし)に見えてくるっていうのもあり、そういうイメージで作ってあるから、小沢さんもユニフォーム着て登場してます。
鈴木 (笑)
荒木 で、パワハラ、モラハラ100%。ひっどい縦社会の中で頑張るんですけども、今だったら、確実に新聞沙汰ですよね。昔の「花の応援団」ってありましたでしょ?
鈴木 あ~!はいはい。
荒木 観たことないかな?あれに近いかな。アタマカラッポにして楽しめるっていうね。 ところで、私たちの高校生の頃は野球部というとほかの運動部に比べても、練習も礼儀も服装や頭髪もめちゃめちゃ厳しくて一番アナクロなイメージがありましたけど。
鈴木 あ~!無茶苦茶きつかったと思うよ、野球部。
荒木 ダイちゃん、サッカー部だったけど、どうでした?当時の運動部って。
鈴木 ま、野球部が一番厳しいし、服装にも一番うるさいのが野球部でしたけど。我々サッカー部は、髪はどうでもよかったし。
荒木 むしろ、頭を保護する為に伸ばせとか言われたでしょう?
鈴木 そうそう、ぼさぼさの奴はいっぱいいたんだけど、でもやっぱり夏休みの部活はきつかったなぁ~、サッカー部も…。
荒木 ホントだよね、水飲むなとかね~。
鈴木 そうだよ、水飲むな!とか有り得ないよね、今じゃ。
荒木 うさぎ跳びも死ぬまでやってたからね。
鈴木 ホント死ぬまでやって、膝ガクガクしてどうすんだ!っていう。
荒木 今時は、絶対しないもんね。
鈴木 あり得ない有り得ない。
荒木 ホントに拳固で殴られてましたからね。
鈴木 ホントに殴られて、ゴールの中に入らされて、そこにシュートの嵐が来たからね、わざと!
荒木 そう!ホント!ま、伝統っていうかね~、先輩がしてきたことをしてきたっていうかね、当たり前のように受け入れて受け継いでね、本当に昭和テイストのクラブ活動でしたよね~。
鈴木 ホント!文字通り100%そうでしたよね!
荒木 この映画では、あまり強くない野球部で、助け合ったりいがみ合ったりしながらも生き延びていく一年生の野球部員の姿をね! ところが、恐れていたはずの“伝統”に、気がつけばだんだん自分たちも染まって行って、2年生になる頃には、自分がそうなってるんだよね。面白いですね。そういう面白さを表してる作品ですね。
荒木 変に恋愛とかねじ込まないで、単純に笑える作品です。
鈴木 まぁそっちのがいいんじゃないですか?これは。
荒木 そうですね。これは是非!高校野球をテーマにした「野球部に花束を」。是非観ていただくと面白いと思いますよ。
鈴木 うん、うん。
荒木 ということで、そんな高校時代を過ごしたダイちゃんも、そろそろ「おっさん」と呼ばれても全然違和感ないよね?
鈴木 当たり前だよ~!もう50だよ~。おっさんの極みじゃないですか。極み、トップですね。
荒木 いいねぇ、おっさんで。私はもう爺ちゃんだからね。
鈴木 (笑)
荒木 次の映画はですね。いわゆる「おっさん」と呼ばれる世代の男性監督たちが、同じ「おっさん」世代の俳優を主演に撮影した「今のおっさん世代が抱えている“違和感”」を共通のテーマにした短編7作品を1本にまとめたオムニバス作品なんですね。

鈴木 はいはい。
荒木 8月20日から公開なんですけど、「おっさんずぶるーす」という作品です。 ちょっと簡単に紹介するとですね。前田直樹監督が「21世紀のおじさん」。真田幹也監督が「オファーを待ちながら」という、ちょっと意味深なタイトル。荒木憲司監督が「全く最近のおやじモンときたら…」。で、西村大樹監督は「たそがれのあとに」。それから、越坂康史監督は「トイレのおっさん」っていうね。中村公彦監督が「カリスマハウス」。そして最後に、細野辰興監督が「謎乃中年認定壱拾箇条(なぞのちゅうねんにんていじゅっかじょう)」という、この7作品で構成されています。
鈴木 タイトルだけで行っちゃうね。
荒木 ああそう! この中で私が、面白いと思ったのは「トイレのおっさん」なんですけど…。
鈴木 トイレのおっさん(笑)。
荒木 この主人公のおっさんがめちゃくちゃリアリティがあるのに、設定がとんでもない発想なんですよ。あーちょっと言っちゃいけないかな…。女性トイレの便器になっちゃうってお話でですね。
鈴木 え~!それ大丈夫なんですか?
荒木 えー、とっても面白かったですねー。もう一本、「カリスマハウス」もなかなかの力作だったんですけども。 4作品を「ファミリー編」として、3作品を「ワーク編」にまとめて日替わりで上映するそうです。それぞれの切り口からおっさんの人生や社会への違和感、ダイちゃんなんかが持ってる違和感なんかをね、描き出しているってことですね。
鈴木 じゃあ必見だね!面白そうだね。
荒木 ま、おっさんと呼ばれたら観ておいた方がいいかもね。
鈴木 そうだよね。
荒木 おっさんと呼ばれた初めての時を覚えてますか?
鈴木 イヤ、俺以外に、おっさんおっさんって言われてるし、俺、早くからおっさんて言われたかったタイプだよ。どっちかっていうと。
荒木 ああ!そうですか。まあ、○○なタイプだから、おっさんて感じでいいかもしれないね。
鈴木 昔から荒木さんご存じのように、わたくし年上の女性が好きだからさ~ おっさんとして年上の女性とお付き合いする方が合ってるでしょう。何となく。
荒木 (笑)なるほどね~。何ともコメントしにくいけど…。
鈴木 荒木さん、ホントにコメントしにくそうだったもん
荒木 ということで! 「おっさんずぶるーす」という注目作品でした。
最後3本目は、8月26日から公開の「Zolaゾラ」。

鈴木 ゾラ?ドラ?
荒木 Z、O、L、A、で、「ゾラ」ですね。
鈴木 なるほど。
荒木 この作品は、デトロイトに住む黒人女性・ゾラがツイッターに投稿した148のツイートとその内容をもとにした記事を映画化したことで今、話題になっています。
ストーリーはですね、デトロイトのウェイトレス兼ストリッパーとして働く黒人女性ゾラは、レストランにやって来た客の若い白人女性のステファニーと、ダンスという共通の話題を通して意気投合し連絡先を交換するんですね。
鈴木 なるほど、なるほど。
荒木 すると早速 翌日、ステファニーから「ダンスで大金を稼ぐ旅に出ようよ」と誘われるんです。そんな急な…と思いながら、お金がなかったゾラは戸惑いながらも一緒に旅に出るんですけども。しかし、ステファニーが連れて行った仕事は、ダンスではなく全く別の、いわゆるやばい仕事でですね。それで悪夢のような2日間が始まります。…というお話です。
鈴木 俺、好きなパターンだな。今話聞いてる雰囲気は。
荒木 そうですか!これ、ツイッターが原作っていうんですけども。もともと原作ものっていうと日本では小説だとか漫画が定番でね。最近はブログなんかもぽつぽつあるんですけど、とうとうツイッターまできたか!っていう感じですよね。
ここまで原作の裾野が広がると、面白い発想の作品がツイッターとかインスタグラムから生まれてくる可能性が無きにしも非ず。だからこの番組も、ダイちゃんのツイッターから生まれるかもしれない…。
鈴木 何かが生まれていくかもしれないんだよね…。
荒木 そうそう。ただね、この広いネットの海から誰がどうやって見つけるかは問題ですけどね、はい。 だからそういうところでは注目ですね。
で、出演者はZOLAにテイラーペイジさんという、黒人の女の人と。ステファニーにはプレスリーのお孫さんで、ライリー・キーオさん。二人ともスタイルが抜群! もう、ばん、バン、ボーンていう感じでね。
鈴木 (笑)その擬音がちょっと笑ってしまった。
荒木 凄いんだよ、とにかく! これも最近ヒット作を連発しているA24による作品なんですね。色がすごいレトロな質感だとかね、フィルムカメラのような映像があったりとかですね、それからアングルもね。例えば女子トイレを上から撮るとか、それからベッドシーンがあるんですが、お尻から撮るとかですね。今まで見たことがないようなベッドシーンだなと思いました。まあ、これは見ていただくしかないと思うんですが。
そういった見せ方もA24っぽいセンスが溢れてますね。
鈴木 ちなみに、ひとつだけお聞きしますけど、これは、ハッピーエンディングなんですか?
荒木 あー何とも言えないですね。
鈴木 なるほど。
荒木 受取次第で…、ま、ひと夏の冒険映画って感じですかね。
鈴木 あ、はい!はい!はい!はい!
荒木 …ちょっと結末を言っちゃうとつまんないかな。
鈴木 あ、わかった、わかった!
荒木 というわけで、8月26日から公開の「Zolaゾラ」という作品でした。今日はあっち行ったりこっち行ったりしましたけど、3本ご紹介しました。
鈴木 荒木さん、ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。