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アラキンのムービー・ワンダーランド/「ミンナのウタ」「ブギーマン」「シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ~ロックと家族の絆~」のとっておき情報
(2023年9月1日10:30)
映画評論家・荒木久文氏が「ミンナのウタ」「ブギーマン」「シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ~ロックと家族の絆~」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、8月21日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 お願いします。お盆も過ぎて、実はこれからがお化け映画というか、ホラー作品のラッシュアワーなんですよ。
鈴木 これからですか?
荒木 そうなんですよ。8月終わりから9月までいろいろたくさん、お化け映画、ホラー作品があるので、2回ぐらいに分けてご紹介しますね。
鈴木 楽しみですね。
荒木 今日は、その1です。
ところでダイちゃん、一見お化け話とは全く無縁と思われる音楽業界にも放送業界にも、実は幽霊話とか、怪談話って結構あるんですよね。
鈴木 あるある、ありますよ。絶対に。
荒木 音楽業界では、CDやレコードの中に、謎の声や音だとか、霊の声が紛れ込んでしまったパターンというのが多いんですけども、一番有名じゃないかと思われるのがですね、あのフォークグループ「かぐや姫」。1975年のラストコンサートで、少女と思われる呻き声が録音された…というものです。後日、このコンサートの模様を収録した音源に、その中に「私にも聞かせて…」と不気味な謎の声が聴こえて、多くのリスナーが「あれはなんだ?」と大騒ぎになったという話。このテープを逆回転して再生すると、「私もそこに行きたかった…」と聞こえるとか…。
鈴木 やーめてよー。やめよーよ。
荒木 あはははは。一説には交通事故で亡くなった女の子の声とかいう話もあるのですが、こういう、音源に不思議な音が入っているっていうのは、調べて見たら結構あるんですよ。ほんとかどうかわかんないんですけど。SMAPから森進一まで、出るわ出るわで。
鈴木 あはははは。そんな幅広いんですか。
荒木 そうなんですよ。眉唾ものも多いんですけど、音楽業界だと青山のビクタースタジオ、お墓がそばにあるからという理由でしょうか、有名ですよね。
鈴木 よく聞くね。

荒木 だからか、必然的にビクター関連のアーティストが多くなるんですよね。…こんな話ばかりしていると時間がなくなってしますが、そんな現代的で、お化けとは無縁な感じの放送業界と音楽業界を舞台にしたホラー映画をまずご紹介します。
現在公開中、あのジャパニーズホラーの巨匠 清水崇監督の「ミンナのウタ」という作品です。先日ちらっとお話しましたけど、GENERATIONS from EXILE TRIBEのメンバーが実名で出演しています。
あるラジオ局、夜の人気番組のパーソナリティを務める、GENERATIONSの小森隼君。
実名ですよね。番組収録前にラジオ局の倉庫で30年前に置いたまま放置されていた「ミンナノウタ」と書かれた一本のカセットテープを発見します。
鈴木 おいおい…、30年前って不気味だな…。
荒木 その後、収録中に不穏なノイズと共に「カセットテープ、届き…ま…した…?」という女の声を耳にした彼は、数日後にライブを控える中、突然姿を消してしまいます。マネージャーは、小森君を探さなきゃいけないっていうことで、ほかのメンバー全員に聞き取りを進めますが、他のメンバーが、リハーサル中に “少女の霊”を見たとか、変なメロディーを聞いたとか言い出します。ライブ本番が迫る中、リーダーの白濱亜嵐君とかにも“呪いのメロディー”による恐怖の連鎖が始まってくるんです。というストーリーですが、はっきり言って清水監督の最近の作品の中では、目立っていい出来です。
鈴木 目立っていい出来ですか!
荒木 いい出来です!…ということはつまり、怖い!ということですね。怖いです。だからGENERATIONSのファンが、顔を見に行く為の映画かなと思って観に行くと、ちょっと怖くてびっくりしますよ。
鈴木 そこまで怖さが際立ってるんですか?
荒木 最近の中では、一番怖いですね。今まで考えられなかったところに、幽霊を出しちゃうんですよ。ダンスリハーサル中のレッスンスタジオとか、今まであまり幽霊を出しにくかったというか、考えられない場所に少女の幽霊が出てくるんです。
放送局のスタジオとかね。ただ、我々からしてみると、意外に放送局の幽霊話ってたくさんありますよね。ダイちゃんは、FM局っていうのは新しくておしゃれでカッコいいんで、あんまりイメージないんですけど、そんな体験はありますか?
鈴木 もうね…、荒木さんにむかーし、飲み会でちょろっと話した記憶はあるんですが…。今から8年、9年前のことなんですけど、ここFM富士のブースの中で、私が2回、霊体験をしているんですよ。
その2回というのは、2度とも同じ幽霊を見たという2回なんです。で、当時はBUMPYの前の番組の、GOOD DAYという番組をやっており、あれが終わった時かな?だいぶ遅くまで収録等々あって、8時9時くらいの時に、帰ろうかなあと思って、ふっと見たら、ちょうど制作のデスクのところを、右の壁のところから左の壁の方に見える通路の場所がちょこっとあるんですけど、そこにひとり男の子が、右から左に、とことことことこって歩き抜けたんですよ。お化け的でなく、普通に男の子だったんで、僕はどなたかの息子さんか子どもが来てて、下をウロウロしてるのかなと思って、そのまま僕やり過ごしたんです。
男の子がいたと思って。その男の子の顔とか洋服が妙に印象に残ってしまい、数日、数カ月が過ぎたんですね。それで、GOOD DAYを生放送やっていた時に、ディレクターの、当時女性のイズミーナさんが、僕にキューを振ったり、いろいろ原稿を渡したり、ばたばた僕右見たり左見たりしてたんですよ。左側を見た瞬間に、後ろ側にあるスタジオにふっと人影を感じたので、あれ?おかしいなと思って振り向いたんですよ。そしたらね、マイクの前の椅子の部分に、我々がいつも座る場所に、僕が数カ月前に見た男の子が座ってるんですよ。
荒木 あらららら…。
鈴木 で、その男の子を一瞬、僕見て、えっ!って見直したんです。前に向いてからもう一度。そしたらイズミーナが、「ダイさん、どうしたんですか?」って言って、当時のADの女の子も、僕が変な風に何かを見て、もう一度見直すっていうしぐさをやっぱりわかったみたいで、確実に、僕は何かを見て、見直してるのは間違いないんです。僕が、男の子が…って言ったら、イズミーナが「ダイさん、前に見た男の子と一緒?」って言って、イズミーナが盛り上がって…。間違いなくあの男の子だった。で、寂しそーな顔をして、下を向いて椅子に座ってたんです。マイクの前で。
荒木 それで見えなくなっちゃったんですか?
鈴木 その後は、一切見てないです。嫌な感じも全くしないです。だけど、同じ男の子を、僕は2回見て、幻とは思えないくらい、普通の人の形と普通の感覚…。
荒木 「座敷わらし」だったらいいけどね。
鈴木 そう!「座敷わらし」だったら、ラッキーだよって言う方もいるんですよ。ただ、あまりにも寂しい顔をして下をうつむいていたから。僕本人には、そうは見えず思えず。
荒木 ひぇーっ。そんな話もあるんですね。
鈴木 非常に気味の悪い体験をしたことは、実はあります。
荒木 なるほどね。
鈴木 荒木さん!ちょっとあるでしょう!
荒木 私はあんまり無いんですけど。古いAM局には、この手の話多いですけど、一番有名なのは文化放送ね。かつて四谷にあった…。あそこはもとあったカトリック教会の建物をほぼそのまま使っていましたので、特に第5スタジオは礼拝堂として実際に使われていたところなんですよ。
鈴木 うわうわうわ…。
荒木 でっかいスタジオで、バレーボールコートぐらいあったんですけどね。ここが業界ナンバーワンのお化けスポット。怖い思いをした人多いらしいですよ。
あと、ダイちゃんもよく知ってる、ラジオ日本。あそこ、墓地があったんです、昔。
鈴木 あの建物の下、墓地なんですか?いやー!それはまずいでしょ!
荒木 そうなの。だから、ビル全体に出るっていう話でね。特に、ラジオ日本の制作の柱の裏とかね。ホットスポットだとかね。
鈴木 それは、俺も聞いたことあって、柱のまわりぐるぐる回って調査したことありますよ。
荒木 実際ビルの土台は石垣だったんですけど、昔の墓石使っていましたよね。よく見たら戒名が刻んでありました。
鈴木 ちょっと待って!昔の墓石を土台にしてるの?あのビル。
荒木 そうなですよ。
鈴木 やめよーよ。やめたほうがいいと思いますね。
荒木 だからかな?中に入っている会社は業績の伸びが悪いという…。
鈴木 あはははは。怖っ!
荒木 ごめん。こんな話になっちゃって(笑)。ということで、「ミンナのウタ」という作品なんですが。
もう1本は、18日から公開の、ホラー小説の大御所スティーブン・キングの短編が原作のサスペンスホラーです。「ブギーマン」っていうんですけど。3人家族を襲う恐怖というか、お母さんが亡くなったんですけど、その後その家族に、得体の知れない何かが家の中の闇に潜むようになって、家族の命を狙い始めます…というお話なんですよ。

鈴木 怖い!怖い!
荒木 暗闇って言うのは人間、本能的に怖いところですよね。子どものころなんか、いつも使っていない部屋なんか怖くて行けなかったですよね。
鈴木 怖いよねー。
荒木 ありましたよね、今は暗いところのほうが好きですが(笑)。
このタイトル「ブギーマン」っていうんですけど、どっかで聞いたことあるでしょ? 映画通の人ならわかると思いますが、ジョン・カーペンター監督の「ハロウィン」に出て来る、マイケルマイヤーズのことだと思いますよね。ところが、この「ブギーマン」って、そもそも、ヨーロッパなどの民話に出てくる怪物で、いわゆる恐怖の対象を指す「概念」なんですね。
鈴木 なるほど。
荒木 だから、聞き分けのない子供に対して「ブギーマンが来るぞー」と。日本でいうところの「鬼」とか「天狗」とか言う存在です。「駄々こねてると鬼が攫いに来るぞ」と、よく言われましたよね。
鈴木 言われた、言われた。
荒木 「なまはげ」みたいなもんですよね。だから、あまり基本的な形ってのはないんですよね。国によって、地域によって、ブギーマン的なものはいると。
で、この「ブギーマン」って映画はですね、生物と霊の中間のいかにも怖―い存在なんですが、まあ、ちょっと不気味で、まー見たい人は観るしかないんですが、いつでも殺せるのにじわじわ痛ぶって恐怖を与えるという、陰湿なブギーマン、怖いです!これ。
鈴木 怖いですか…。
荒木 はい。ということで、18日から公開の「ブギーマン」という、スティーブン・キングの原作映画でした。
鈴木 スティーブン・キングも、作品幅広いですよね。
荒木 広いですよね。ヒューマンものから、いっぱいありますからね。で、来週もホラーモノ特集したいと思います。
最後は音楽のドキュメンタリーです。8月25日公開、「シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ~ロックと家族の絆~」という作品。今年1月に74歳で亡くなったロックミュージシャン・鮎川誠さんの素顔に迫ったドキュメンタリーです。「シーナ&ロケッツ」は鮎川さんと妻のシーナさんと2人で、1978年に結成されたバンドなんですが、シーナさんが2015年に亡くなっちゃうんです。だけど、このバンドは家族ぐるみでバンドが続行されるんですよね。

鈴木 娘も3人いらっしゃいましたよね。
荒木 はい。次女さんがマネージャーを務めて、末娘のルーシーさんがボーカルを務めるということで、パパの夢を全力でサポートしたんですね。で、鮎川さんがすい臓がんで余命宣告を受けた時も、「死ぬまでに1本でも多くパパのライブをやりたい」という望みを、みんなで叶えるということだったんですよね。
出身地の九州のRKB放送が制作した番組に、未公開映像とか、家族とのプライベート映像などを加えて再編集したものがこの作品なんです。鮎川さんの素顔に、いろんな人が迫っています。鮎川さんは俳優としても活躍していましたから、映画の世界にも関連なる人でした。彼は私の近くに住んでいたらしくって、なんかでっかいアフガン・ハウンドみたいな大型犬と散歩していたのによく会いましたね。で、九州出身の彼は、追悼ライブが先日福岡で開かれたんですね。そこには、「シーナ&ロケッツ」のメンバーたちが結集したそうです。
亡くなって半年ちょっとですが、彼の個性的なギターとロックに対する情熱は消えないと思います。ということで、8月25日から公開の、「シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ロックと家族の絆」というドキュメンタリー映画です。お好きな方、是非観てください。ということで、今日はお化けの話をロックの話で、お化けのロックンロールかなとも思ったんですけど(笑)。
鈴木 あはははは。どちらも、わくわくひやひやしていいですね。
荒木 そうですね(笑)。嫌いな人にはかわいそうですけど、来週もホラー映画、これでもかとご紹介します。
鈴木 よろしくお願いします。
曲 YOU MAY DREAM /シーナ&ロケッツ

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。