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映 画
アラキンのムービー・ワンダーランド/「エスター ファースト・キル」「ノック 終末の訪問者」のとっておき情報
(2023年4月10日10:30)
映画評論家・荒木久文氏が「エスター ファースト・キル」「ノック 終末の訪問者」などのとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、4月3日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 山梨学院 選抜優勝、おめでとうございます!ほんと凄いよね!
去年のヴァンフォーレの天皇杯に続いて、快挙ですよね。山梨はフルーツ王国って言われてるけど、スポーツ王国になりつつありますね。すべての分野で頑張って欲しいと思います。
鈴木 ありがとうございます。
荒木 話題は変わるんですが、坂本龍一さんが亡くなったことは昨日から今朝にかけて…。ダイちゃんもね。
鈴木 もちろんピックアップしてますよ。
荒木 映画音楽家で俳優だったという、映画界への素晴らしい業績もあったことは、私が語ることでもないんですけど、私が最後にお会いしたのが2017年の冬だったんです。『Ryuichi Sakamoto: CODA』という彼を追ったドキュメンタリー映画が賞を取った時の受賞パーティで、2,3言お話したんですけど、ほんとに穏やかな方だったですね。
坂本龍一さんをテーマにした、ドキュメンタリーというのは何本かあるんです。一番印象的なのはこの『Ryuichi Sakamoto: CODA』という映画です。
これはスティーブン・ノムラ・シブルさんという監督が2012年から5年間にわたり、坂本さんを取材したんです。坂本さん自身も「全てをさらけ出した」と語っている作品なんですけど、過去のアーカイブやプライベート映像や闘病生活など、ほんとに凄い時間をかけて作ってます。今、HULUとか配信系で見ることができます。
鈴木 俺も観よう。
荒木 興味のある方は是非どうぞ。私が好きな彼の映画音楽作品はたくさんあるのですが、2016年、ディカプリオがアカデミー賞主演男優賞を獲得したアレハンドロ・ イニャリトゥ監督の「レヴェナント・蘇えりし者」という、この音楽が壮大でね、冬山をバックにして凍った湖をデュカプリオが歩いて行くんですね。それがとても印象的で頭に残ってます。
鈴木 確かその当時、荒木さんとこのコーナーでアカデミーを取るか取らないかで、坂本さんの音楽でもりあがった記憶があるんですよ。
荒木 そうですよね、やりましたね。とにかく坂本さんは私とほぼ同じ世代なんで、本当にご冥福をお祈りいたしたいと思います。ということで、映画の紹介に移ります。
さわやかな4月に、全くふさわしくないと思われる、ホラーアンドサスペンス何本かご紹介します。まずは現在公開中の「エスター ファースト・キル」という映画です。
「エスタ―」という映画、ダイちゃんは観ましたか?2009年の作品なんですけど。
鈴木 観てない…。
荒木 そうですか。これ、2009年の「エスター」という名作ホラーの続編なんです。内容的にはそれ以前の話し、つまり前日譚というわけで実質上の第一話になるわけですね。
2009年のエスターは、幸せに暮らす家族が1人の孤児院からかわいい少女エスターを養子にすることから始まるんです。しかし、少女には問題行動が多く不可解な出来事が次々に起こって、物語の最期に衝撃の真実が判明するというパターンなんです。
鈴木 女の子の顔がアップになってるあれですよね。あれ?
荒木 そうです!あれ!
鈴木 怖そうだもんあれ。
荒木 怖いんですよ。映画好きが作っている「どんでん返しがすごい映画ランキング」というのがいくつかあるんですけど、この作品はどこのランキングにも必ず入ってきますね。それほど衝撃的なラストなんです。だから、この名作「エスター」を見てからこちらの「エスター ファースト・キル」を見ると、もっと楽しめるということなんです。じゃあ、その「エスター ファースト・キル」のストーリーはどういうものかというと…。
少女エスターはもともと裕福なオルブライト家の一人娘でした。ところが、6歳の時に行方不明になってしまうんです。で、4年の歳月が流れて、ある日、娘のエスターが見つかったという知らせが警察から届くんです。家族は4年振りの再会に大喜びで、10歳に成長したエスターを迎え入れるんですが、何かエスターが、微妙に変わっているというですね…。そういうところから始まるんです。じゃあ、その4年間にエスターに何があったのかという話しなんですけど。凄いのは、今ダイちゃんが言った、顔がアップになってるね…ポスターの女優さん。2009年の前作で当時12歳だったんですけど、エスターを演じた人がイザベル・ファーマンって人なんです。が、またエスターを演じてるんです。
鈴木 え!?
荒木 どういうことか、よくわかんないよね(笑)。しかも前作よりちょっと幼い役です。8歳くらい。
鈴木 え!?え!?意味がわかんないんだけど。
荒木 この女優さん、顔の作りはあまり変わってないんですけど、ほぼ11歳のままなんですけど、身体は大きくなっちゃってるので、でも子どもをやってるんですよ。どういうことかちょっとわからないと思いますけど、スタントやアングルの工夫で上手く
撮影しているんです。ちっちゃい子の姿で。あまりCGには頼っていませんのでえらいですけど、サイコ殺人鬼の少女。どうやって撮ってるのか、これは観て楽しんでください。
可能であれば、前作を観てからの鑑賞を強くお勧めします。
鈴木 ある意味、パート2を先に観ちゃっていいってことですか?
荒木 そうですね。2009年の作品を観て、それから今回の公開を観るとわかりやすいし、怖いってのもあります。ということで、「エスター ファースト・キル」は現在公開中です。2本目「ノック 終末の訪問者」。
トントンってドアをノックする…。終末の訪問者。「しゅうまつ」っていうのはウィークエンドではなく、世界の終わりのという意味です。「end of the world」とか、そういう意味です。この作品、4月7日から全国ロードショー中なんですけど、大ファンが多い、あの「シックス・センス」のM・ナイト・シャマラン監督の作品です。「シックス・センス」、衝撃的でしたよね。
鈴木 面白かったー。
荒木 ストーリーです。ゲイのカップルの2人の男性と、彼らの幼女で幼い娘の3人家族。バケイショーン休暇で森の中の山小屋で穏やかな時間を過ごしていました。そこへ4人の武装した男女が表れて、3人家族は訳のわからないまま捕らえられてしまいます。その4人は、「あなた方3人家族のうち一人が他の2人の手によって殺されることで、地球、つまり世界が滅びることが防げるのだ」と、とんでもないことを話し始めます。
その頃、テレビでは世界各国でほぼ同時に起こり始めた地震や津波、伝染病などの甚大な災害が報じられ始めますが、3人家族は訪問者の言うことをにわかに信じることができません。でも 時間が経つにつれて、家族は世界の終焉が迫ってきていることを感じるんです。世界というか、人類を救うための家族の一人を殺せという究極の“選択”を迫られる映画なんです。ほぼほぼ山小屋の中で、一部屋での演出なんですけど、サイコロジカルスリラーというか、オカルトファンタジーも入ってくるんです。
鈴木 一番怖い、キリキリキリキリくるパターンじゃないですか。
荒木 いきなり来られて、考えるヒマもなく、誰か死ぬやつを出せって言うんですからね。設定が面白いんです。「終末の訪問者」という、ポール・トレンブレイという人の原作なんですけど、原作とは別の結末を持ってきたらしいです。
鈴木 映画独自の脚本ということですよね。
荒木 そうです。正直 M・ナイト・シャマラン監督は、当たり外れがめちゃくちゃ多いと言われてるんです。
鈴木 え?もしかしてもしかして?
荒木 私個人的にはそうは思わないんですが、ダイちゃんも話した「シックス・センス」があまりにもショッキングだったんで、その後苦労しているというのは事実としてあるようです。だけど、この映画は凄い評判がいいんで、今回はご自分の目で確認してください。いい出来だと、僕は思います。
鈴木 また、微妙な言い方だなー。
荒木 (笑)これは4月7日からの公開なんですが、「ノック 終末の訪問者」。なんと偶然なんですが、この同じ日に同じようなコンセプトの作品が、日本映画なんですけどもう一本公開されているんですよ。女子高生が世界の終わりを救うために頑張るという、こちらは「世界の終わりから」というタイトルの日本映画です。
鈴木 似てる感じじゃないですか。
荒木 あの紀里谷和明さんが作ったんです。あの宇多田ヒカルさんの元夫の。お金と時間のある方は、両方観たらいいんじゃないかと思います。
他にも今週から来週にかけておもしろいホラーサスペンスが公開されています。7日公開のイタリア映画「ダークグラス」という作品。ローマを舞台に連続発生する猟奇的なコールガール殺人事件です。そのターゲットとなった盲目の女性が殺人鬼から逃げるというストーリーです。監督はあの「サスペリア」、ご存じですか?
鈴木 「サスペリア」!あの、決してひとりでは観ないでください…のね!
荒木 そうです!あのイタリア発祥の「ジャッロ映画」の第一人者としても知られるダリオ・アルジェント監督の10年ぶりの作品です。
鈴木 いいですね。
荒木 これも結構面白いです。今週来週サスペンスが多いので。今年度もよろしくお願いしますということで、気持ちも新たにやらせていただこうかと思うんですけど。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 ダイちゃんにご相談あるんですけど…。しばらくぶりにリスナーの方からお寄せいただく企画をやってみようかなと思ってます。
鈴木 あ!言いこと仰るなあ、荒木さん。どんなことやりたいんですか?
荒木 単純だけど、私の好きな映画音楽が一番いいのかなと。わかりやすいから。
鈴木 やっていそうで、…やってないな!
荒木 やってないんですよ。映画に関する音楽ならなんでも。主題歌でも挿入歌でも、イメージソングでも。それから既成の曲でこんな風に使われてた、
例えば、「魔女の宅急便」のユーミンとかね。
なんでも映画に関係あればOKという…、非常に幅の広い…(笑)。
鈴木 それは当然、映画のBGM的なスコアでもいいんですよね。
荒木 全然構わないね。その映画とその音楽にまつわるコメント、エピソードなんかを添えていただければ。いつ始めるかわかんないけど、4月の中旬あたりからやってみようかな。
鈴木 今月中の真ん中あたりに、また改めて。賛成です。
荒木 送っていただいた中から、何か記念品考えてますので、詳細はダイちゃんの方からご説明いただきたいんですけど。
鈴木 わかりました。そんなこんなの新しい企画も始まったということで、新年度是非よろしくお願いします。
荒木 こちらこそよろしくお願いします。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。