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映 画
アラキンのムービー・ワンダーランド/「FALL/フォール」「#マンホール」「エゴイスト」のとっておき情報
(2023年2月11日10:30)
映画評論家・荒木久文氏が「FALL/フォール」「#マンホール」「エゴイスト」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、2月6日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 荒木さ~ん。よろしくお願いします。
荒木 よろしくお願いします。あのね、ダイちゃん、人にはいろんな苦手な場所ってありますよね? それが強くなると恐怖症と名前がつくんですが…、メジャーなところでは高いところが苦手な人はいわゆる高所恐怖症。
鈴木 あ!俺だ!
荒木 それから狭いところが苦手な人は、閉所恐怖症。反対に広いところが苦手な人もいるんですよね。
鈴木 そんな人いるんですか?
荒木 広場恐怖症というんだそうです。地下や低いところがダメな低所恐怖症なんてのもあるんだそうですね。いろんな人がいますよね。ダイちゃんは高いところ…、ダメですよね。
鈴木 ダメ!! 高いところ! 高いところ…って、僕は駄目過ぎるんです!
荒木 と言う事で、一作目「FALL/フォール」。
鈴木 出たよー‼
荒木 英語で落ちるという意味です。現在公開中です。これ、色々名前付くんですけど、高所サバイバル・スリラーって言ったらいいのかなー。
なんと、地上600メートルという高いところが舞台です…。
主人公はベッキー。ある日、岩登りのフリークライミング中に夫を落下事故で亡くしてしまいます。親友の女性ハンターはそんな彼女を元気づけようと、「もういい加減にして新しい生活をしましょう」と、彼の遺骨を高いところから空にまくことによって、過去を断ち切ろうと提案します。その舞台として現在は使用されていない広い砂漠の真ん中にある、細い超高層テレビ塔、ま、一本鉄の管が立っているようなところ。その高さ600メートルに登ることを計画します。
鈴木 ないない!!
荒木 そうだよね、ダイちゃん考えられないよね。
鈴木 6mでも怖いもん俺!
荒木 そうだよね。2人は老朽化して不安定になっているその塔、梯子を登って、とうとう地上600メートルの頂上へ到達することに成功するんですね。気の遠くなる高さですよ!600mって東京タワーの約2倍。スカイツリーですね、ほぼ。そこの先端に登るんですね。
鈴木 何考えてるんですかね…。
荒木 (笑)しかしですね、登った途端、その唯一の梯子が突然崩れ落ち、2人は鉄塔の先端、広さ2畳ぐらいのスペースですかね、そこに取り残されてしまうんですね。さあ、二人は降りることができるのか?という、そんな話なんですけども。もう気の遠くなるような高さですよね。ダイちゃん、観ていただいたんですよね?かわいそうに。
鈴木 荒木さんから、色んなお薦めの映画をちょっと早めに観られるっていうね、特権を持っていると、私 嬉しかったんですけど、今回の「FALL フォール」だけは、荒木さんを恨みましたね!あまりに怖い、これは。
荒木 まぁホントに、高いところと言うと人間には、高所恐怖症じゃなくても必ず持っている根源的恐怖ですよね!
鈴木 そうですよ!落ちたら死ぬって言う…恐怖ですよ。
荒木 落ちたら死ぬって言うね…。私みたいな年寄になると30㎝の高さから落ちても死にますからね。
鈴木 あっはっはっは!あっはっはっは~!
荒木 途中で、ダイちゃんもそうでしょうけど、気持ち悪くなった人とかね。肩が凝ってガチガチになった人とか、腹が立って仕方なくなる人とかね…。
鈴木 あそこがシュワっと縮ますもん、何か。
荒木 そうでしょ。お尻もぞもぞしちゃいますよね。僕、高いところはパラグライダーやっていたんで慣れているんですけども、自分でコントロール出来て空を飛ぶっていうのと、高いところで成すすべはなしってのは、基本的に違いますね。単に高い低いの問題じゃないって。本当に、そういう意味での恐怖を上手く使ってますね。
鈴木 大した舞台じゃないんです、ある意味。一か所だけですから、雰囲気。
荒木 そうですよね、ワンシュチュエーションですよね。で、あんな細い鉛筆みたいなタワーが本当にあるのかと思ったら、本当に存在するんですね。アメリカ・カリフォルニア州にある、「サクラメント・ジョイント・ベンチャー・タワー」という、テレビ塔として建設されたもので、こういう所登る人、いるらしいよね。本来登るべきではない場所にのぼることを 「クレーニング」って言うんですって。
ま、映画は観ていただくとして、ツッコミどころたくさんある映画ですよね、はっきり言って。なんでこんな古い鉄塔、きちんと調べておかないの?とかね。ところどころ腐っているしね。それから装備も軽装で、タンクトップにコンバースですよ。無茶だよね。
鈴木 SNS世代が話題つくりでやっちゃったって感覚あるじゃないですか?あれですよ!
荒木 そうですよね、多分。いわゆるYouTube的な、ね。砂漠の中の600メートルの高さって風も強いだろうしね。
ただ詰め込んでいるアイデアは面白いんですよね。二人が持ってきている限られた道具だとか、スマートフォンやドローンをフルに活用したり、ひねり出すアイデアとかね。スマートフォンってあまり高いところだと電波が届かないんですよね。
鈴木 そう、届いてなかったじゃないですかー、色々。
荒木 謎解きとか、女同士の友情や確執なんもあってね、奥にストーリーも用意されていますし、人間の愚かさとかたくましさもちゃんと描かれていましたね。と言う事で、高所恐怖症のダイちゃんに敢えて観ていただきました。「FALL/フォール」っていう、現在公開中の映画ですけど、とにかくリアルの生活では体験できない恐怖とスリルですよね。
鈴木 ホント!究極のスリルと怖さでしたよ、これ。
荒木 と言う事で。これも映画の楽しみのひとつです。
今日はそういう事で、ちょっとした恐怖を感じる場所を舞台にした映画をもう一本紹介したいと思います。
鈴木 あー!面白い。
荒木 今度は、反対に低いところへ落っこっちゃって、その穴から出られなくなったお話です。ちょっと先ですが、2月10日公開の「# マンホール」ってタイトルです。
鈴木 ハッシュタグマンホール…。(笑)
荒木 穴に落っこちちゃう人は川村君。不動産会社勤務で、営業成績トップで、仲間の信頼は厚いし、会社の社長の娘との結婚も決まって将来を約束された、誰もがうらやむ超ハイスペック男ですね。この川村君、結婚式の前の夜のお祝いのパーティで、酔っぱらって、渋谷なんですけど、マンホールに落っこってしまいます。深夜、ハッと気が付いて穴の底で目覚めた川村くんは、足を怪我してしまって思うように身動きが取れないんですね。 おまけに、地上にあがる梯子も壊れてしまいます。
鈴木 出たー!!(笑)
荒木 (笑)梯子壊れるパターンですね。手元にスマホあるんで現在位置を調べますが GPS壊れててダメで、110番に助けを求めるも、まともに取り合ってもらえません。
唯一連絡が取れたのは、結婚のために自分が振った元カノなんですね。彼女に助けを求めますが・・何か変な感じになっちゃいます。これで単なるエスケープの映画じゃなくなってくるんですね、こっから。誰かにはめられたんじゃないかと考えた彼は、SNSで「マンホール女」というアカウントを立ち上げると、場所の特定…自分が何処にいるのかとか、助けてくれというのを求めるんですね。女性のふりをしたほうが、ネット民が動くだろうと考えたわけです。案の定、場所探しとか犯人探しにネットピープル大騒ぎですよ!!! ねー!明日の結婚式までのタイムリミットはあと僅か―。文字通り 幸せの絶頂からどん底に落ちちゃった川村君は這い上がれるのか!? というね、そういう低いところからの作品です。
鈴木 怖っ!こっちの方が「FALL/フォール」よりまだ観られそうだな。
荒木 こっちの方が観られるかもね。ただね、このマンホール古いものらしくて、最初は水もないんです、砂や土が溜まっている程度なんですが…。穴までは8メートルくらいしかないんですよ。最初はすぐ出られそうなのに、そこにはそこの恐ろしさがあるんですよ。雨が降り出し、水が溜まってきます。
鈴木 うゎ、うわ、うぁ…。
荒木 そして次から次にガス管が破裂して、ガスが溜まるんですね。
鈴木 なんでそうなんのよ~!そういうのって。
荒木 その上、泡状の有害物質が押し寄せて来るっていう。ま、次から次へとピンチが襲いかかります。当然ですけどね。
で、主演の川村君は「Hey! Say! JUMP」のあの色男ですね。中島裕翔君がやってます。
ほぼマンホールの中で一人芝居ですね。元カノの役は、ほぼほぼ声の出演になるんですが、奈緒さんですね。SNS立ち上げて、無責任なネット民達が盛り上がるわけですね。勝手に捜索に乗り出したりね。色んなことをやるわけですけども、さあどうなることやら?…と言うわけですけど。彼は落ちたのか?落とされたのか?ここは渋谷なのか?別の場所なのか?と言うね。 あのね、ちょっと捻り過ぎかなとも思うんですけども、とても良く出来ています。
鈴木 へぇー。
荒木 完全なワンシュチュエーションじゃなくって、これあんまり言っちゃいけない、例のごとくネタバレ厳禁ですよ。きれいごとで終わらない、人間の醜さや本性というものがさらされて、最後は意外な決着が待っています。
鈴木 そうですか?どんでん返し系?
荒木 どんでん返しです。大どんでん返し、一杯あります。
鈴木 えー。
荒木 高いところと低いところという事で、2番目の映画は「# マンホール」という2月10日公開の作品です。
鈴木 家から出ないことにするわー、俺。
荒木 それが一番安全ですね。 ちょっと今回アカデミー賞お休みして、凄い映画がありましたんで簡単にご紹介します。2月10日から公開の「エゴイスト」って言うね。
鈴木 エゴイスト…ほぉー。
荒木 東京の花形ファッション雑誌の編集者として働いている浩輔君、鈴木亮平さんなんですね。彼は、千葉の田舎町で小さい時 母を亡くして、ゲイである自分の姿を押し殺して思春期を過ごしてるんです。今は仕事も順調で、パートナーはいないんですけども、気の置けないゲイの仲間たちと自由気ままな生活を送っているんです。
そんなある日、浩輔さんは若いパーソナルトレーナーの、宮沢氷魚さん演じる龍太君と出会います。 彼は貧しいながらも母を支えながら懸命に生きているって事で、この2人は恋人同士になるんです。
鈴木 なるほど。
荒木 時には龍太の母も交えて3人で、楽しい満ち足りた時間を過ごすんですが
そんな二人に思いがけない大変な出来事が起こるというね。まずゲイという要素が全面的に押し出されていますので、男性同士のセックス描写がとても激しいです。はっきり言って、そこまでやるの?という感じです。
鈴木 そうなんですか!
荒木 徹底してやっています。だから中には、ちょっと・・・という方がいるかもしれません。で、この映画、一言で言って鈴木亮平の演技力の凄さを改めて見せつけられる作品です。それだけで、逆に言えば観られる作品です。
鈴木 ああ!凄いなー。
荒木 鈴木さんって言えば、ダイちゃんも観ていただきましたけど「孤狼の血」。
鈴木 そうだよね!あのヤクザのね!
荒木 今回はね、鈴木さんにゲイが乗り移っているというか、ほんとにゲイなのかな?っていうね。一例ですけど、例えば、私たちふざけてお姉のマネをする時、グラスを持つ時にちょっと小指を立てるでしょ?あんなことしなくて彼は。普通にグラスを持つんですけど。
その持ち方がとても優しい、何か卵でも持つようにふんわり持つんですよ。
そんなところにも、その彼のゲイ表現が表れていてですね、ひたすら恋人を愛おしむ眼にもですね、もう圧倒されますね!改めて凄い役者さんだなと思いました。
で、宮沢氷魚君、お相手の恋人もですね、無邪気で健気でどこか儚い青年。これも本当に上手いですし、母親役には阿川さんがやっています。
あと、この映画、寄った映像が多いんです。ホントに生っぽさっていうのかな、そういうのが良く出ています。ま、激しいと言えば、キスシーン、セックスシーン、ベッドシーンも話題になっていますが、”セックス”をきちんと描きながらも、テーマは”愛”の話になっているんですね。「与えることで満たされていく、この愛は身勝手ですか?」という、この映画のキャッチコピーなんですけど、そういう意味でのエゴイストなんですね。
鈴木 なるほど。
荒木 と言う事で、この「エゴイスト」。鈴木亮平の演技を観に行くと言う意味でも、凄い映画ですね。2月10日公開の作品です。
鈴木 なんか今日は「FALL/フォール」に発して、「#マンホール」に「エゴイスト」。トゥーマッチに私に迫って来てますよ。
荒木 色々、上行ったり下行ったり大変でした。
鈴木 大変でした(笑) 荒木さんありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。