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映 画
アラキンのムービー・ワンダーランド/「ハロウィン THE END」「ザ・ホエール」のとっておき情報
(2023年4月15日10:15)
映画評論家・荒木久文氏が「ハロウィン THE END」「ザ・ホエール」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、4月10日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でFMfuji の東城佑香アナウンサーを相手に話したものです。
東城 本日は鈴木だいさんがお休みのため、私FMfuji アナウンサーの東城佑香がお送りしています。荒木さん、はじめまして。
荒木 はじめまして、東城さん。よろしくお願いします。いいですね、女性っていうのも。
東城 いつも、コーナーでお声は聞かせていただいているんですけども、こうやってお話させていただくのは初めてということで、とても楽しみにしておりました。
荒木 東城さん、映画はどんなジャンルをご覧になりますか?
東城 私、映画はいろんなジャンル、ホラー以外だったらなんでも観るんですけど、特にサスペンスとかマーベル映画が好きなので、SFだったりとかミュージカルとかも…。
荒木 なるほど。
東城 この前も「シング・フォー・ミー、ライル」を観てきたばっかりなんですけど、いろんなジャンルを観ております。
荒木 今日は、東城さんが唯一苦手なホラーも入ってます。
東城 あはははは。逆に楽しみにしたいなと思います。
荒木 3月にアカデミー賞の授賞式が行われたんですが、まだ記憶に新しいところですよね。作品賞の「エブリシング・エブリホエアー オール・アト・ワンス」をはじめ、ほとんどの受賞映画はすでに日本でも公開されているんですが、ここにきて、主演男優賞を取ったブレンダン・ブレイザーと助演女優賞受賞のジェイミー・リー・カーチス、この2人が出演した作品が公開されます。今日はこの2作品を紹介していこうかと思うのですが、ブレンダン・ブレイザーはご存じですか?
東城 はい、わかります。
荒木 ジェイミー・リー・カーチスさんは、ちょっと知らない人が多いかもしれませんが、昔からの女優さんなんです。脇役が多いんですけど。この二人にはある共通点があるんですが、さあ、どのあたりが共通点なのでしょうか?・・・と聞いてもわかるわけないよね?
東城 そうですね。共通点ですか…。難しいですね。
荒木 それはこのふたり、今までアカデミー賞とは全く無縁の俳優で、オスカーなんて絶対取れるわけがないと思われていた、いわば、対象外の俳優だったということです。
そもそもアカデミー賞のノミネートはされるんだけど、なかなか受賞できないという大物スター、俳優さんというのはいっぱいいるんです。例えば主演男優賞でいえば、代表格はジョニーデップ。3回ノミネートされても受賞なしですね。 他にもトム・クルーズ、ロバートダウニー・ジュニア、スターローン、シュワちゃん…、いっぱいいますけどね。ちょっと注意してみると、どうやら大スターでもアクション系の俳優さんやコメディは不利なんですね。
東城 ああ、確かに。
荒木 ホラー系も弱いんですね。女優も同じで、主演女優賞もいちばんノミネートされているのは、今回「フェイブルマンズ」でノミネートのミッシェル・ウイリアムスなんですけども、5回目でしたけどダメでしたよね。他にも8回ノミネートされているグレン・クローズとか、6回のエイミー・アダムスとかいますが 受賞は無いんです。にもかかわらず、今回ブレンダン・ブレイザーとジェイミー・リー・カーチスは、初ノミネート初受賞というわけです。
東城 ああー!凄いですね。
荒木 もちろん初ノミネート、初受賞は過去にもいますが、この二入りは今までアカデミー賞とは全く縁がなかったとされるアクション系とホラーが本来のジャンルの俳優さんなんです。ということで、珍しいということなんです。
まず、東城さんが苦手だとおっしゃるホラー出身のジェイミー・リー・カーティスさん。この人は1976年の『ハロウィン』のヒロインだった人なんですよ。
東城 ああー!タイトルはもちろん知っています!
荒木 そうですよね。観たことないという人でも、タイトルとかブギーマンとかね、ご存じですよね。この「ハロウィン」が大ヒットして、70年代、80年代のホラーブームになっていて、その度、彼女は殺人鬼に追いかけられるような役ばかりで出ていたんです。
ニックネームが「絶叫クィーン」っていうんです。完全にホラー女優として、はっきり言ってちょっと見下されていた存在なんですよ。それが、今回アカデミー賞ということで、まわりは驚いてますけどね。
今回、彼女の主戦場だった「ハロウィン」シリーズの第3弾が今週14日から公開されるんです。それが、「ハロウィン THE END」というタイトルの作品です。
東城 まさに最終章って感じですね。
荒木 そういうことです。テレビなんかもやってたんですけど、45年前に1作目が出て、この時ジェイミー・リー・カーティスはローリーという高校生役で出ていました。そして最初の作品の、直接の続編となる1作目が40年後を描いた「ハロウィン」が2018年に作られるんです。その前に「ハロウィン」っていっぱいあったんですけど、それはもうご破算で願いましてはってことで…。40年後を描いた「ハロウィン」が正統な2作目というなんです。その続編として2021年「ハロウィン KILLS」。そして、最終章「ハロウィン THE END」が、今年4月14日からということなんです。
東城 うーん、今週の金曜日ですか。
荒木 そうですね。物語は定番といいますか…。主人公のジェイミー・リー・カーティスさんが、孫娘と暮らしながら回顧録を書いて、40年以上にわたるブギーマンとの戦いを振り返っていたというところに、ブギーマンがまた登場するという…ですね。
東城 ああー!また来ちゃいますか。
荒木 また来ちゃうんですよ。死なないんですねこの人。ストーリーなんですけども、1作目で高校生だった彼女も3作目ではおばあちゃん。孫がいるんですよ。なんか3代にわたる大河ドラマ風になっちゃっていますね。
東城 そうですね、時代時代で描かれているわけですものね。
荒木 もともと彼女は、有名なお父さんとお母さん、お父さんがトニー・カーチス、お母さんがジャネット・リーというスターなんです。有名人の子供ということばかりが有名だけで、あとは血みどろになって叫んでいる女優ということだったんです。
そんな彼女がオスカーを獲得した後の最初なんです。凱旋公開と言ってもいいですね。
もちろん撮ってるのはずっと前ですけど。そんなことを考えながら見ると、何となく女優さんとしての輝きが今までと違うなーと思えるから不思議ですよね。ホラーとして有名な「ハロウィン」ですので、東城さんには苦手な分野なので無理かもしれませんけど…。
東城 そんなに怖いんですね。
荒木 怖いです。血がだめな人はダメです。スプラッターですから。ドロドロ血が出ますから。
東城 予告は頑張って観たんですけど…。目を細めながら観ました。
荒木 無理することはないです。お好きな方はどうぞということで、「ハロウィン THE END」14日公開です。
さあもう一人の今年の主演男優賞受賞のブレンダン・フレイザーですが、この人は10年前ぐらいに、彼は『ハムナプトラ』シリーズという映画で大スターだった人なんです。
この作品、エジプトを舞台にした「インディジョーンズ」みたいな、宝探しですよね。
そこで主人公の冒険家を演じてた人がこの人なんです。爽やかなイケメンで若い女の子に圧倒的な人気がありました。今回アカデミー賞主演男優賞を取ったのは「ザ・ホエール」という映画なんですけど、全然別人みたいになっています。
写真を前もって見ていただいたと思うんですけど、前の写真と比べてどうですか?
東城 びっくりしました! いやー、あの…、本当にご本人なのかなっていう、言われなければわからないくらい大きな体になっていましたよね。
荒木 そうですよね。髪も薄くなってるしね、肌はたるんでぶよぶよだし、全く別人みたいですね。この「ザ・ホエール」が満を持して4月7日から日本公開されています。
ストーリーを簡単に申し上げますと、チャーリーという役です。主人公40代。彼はパートナーを亡くしたショックから、過食と引きこもり生活を続けたせいで、なんと272キロという極度な肥満体型になってしまいます。看護師のリズに助けてもらいながら、オンライン授業の大学講師として生計を立てていますが、歩行器なしでは立ち上がることも出来ず、モノを落としちゃうとマジックハンドなしでは拾えないんです。部屋からも出られない。でも、ものすごい勢いで高カロリーのジャンクフードなんかを食べ続けるわけなんです。ま、自分自身の死期が近いことを知っているんですね。心不全の症状が悪化しても病院に行くこともしないんです。たったひとつ心残りだったのは、8年前に家庭を捨ててから疎遠になっている娘との関係を修復しようということで、娘を呼び出すんですけども、娘のエリ―という17歳の女の子は、学校生活や家庭に多くの問題を抱えてて、父親に対して憎悪をむき出しにします。死が近づいてくる中で果たしてこの2人は…ということなんです。
このブレンダン・フレイザーという人はアクションスターだったんです。
『ハムナプトラ』という冒険アクション映画は見た方も多いと思うんですけど、『ハムナプトラ3』まであって、それが出た後、彼は突然映画界から消えているんです。
何故かというと、彼はハリウッドでずっと干されてたんです。
東城 そうなんですか。
荒木 原因は、映画界のお偉いさんに、若い頃、性的ないたずらをされてそれを告発したら、反対に仕事が来なくなっちゃったんです。
東城 えー?そんなことあるんですね。
荒木 あるんですね。また それが原因で心の病にかかり、ずーっと調子が悪くて人前に出られなかったんです。だから、この映画は彼自身を反映している部分もあるんですね。ということで、もともとアクションスターが、今回は巨体という外見につつまれた内面、心を表す演技をしているわけですよ。死を前にした巨体の男が後悔と許しを求める、精神の救済のことを表現してるわけですけど、死が迫っている彼の内面が見えるような…、ホント熱演です。
東城 それこそ私、こちらも予告を観たんですけれど、最後の方に、泣き叫びながら「信じたいんだ!人生でたった一度だけ正しいことをしたと!」という姿、それだけで涙出そうになっちゃって。
荒木 そうですね。エンディングが素晴らしいです。
東城 その、一度っていうのは、彼にとって何だったのかなって、その一言で凄く気になりましたね。
荒木 そうでしょうね。観ている観客にも、自分の生き方を思い起こさせるんですよ。あなたのあの時の判断は正しかったの?後悔してることは、やっぱり修正しておかなきゃいけないんじゃないの? そういうものを振り返えさせられるわけですよ。
東城 みなさん、それぞれでありますもんね。
荒木 そうですよね。心を揺さぶるような作品、傑作と言っていいと思います。
この「ホエール」というのは、もちろん、「くじら」という意味なんで、彼の巨体を表しているのですが、もう一つの意味も含まれているということで、今、日本公開されてますんで、是非、時間のある方は観に行って頂きたいと思います。
東城 凄く、「ザ・ホエール」観に行きたくなりました。
荒木 そうですよね。
東城 映画館に足を運びたいと思います。
荒木 この2人の俳優さんを例に挙げるまでもなく、人生をね、どんないい事が転がり込むかもしれませんからね。ま、逆もありますからね(笑)。
東城 (笑)いい方に転がることを願って、いつどういうことが起きるかわからないっていうのは、確かに仰る通りだなと思いました。
荒木 ま、何事も前向きに考えていきたいと思います。
東城 いいことがこれから沢山あるように願って。今日はご紹介いただきましてありがとうございます。