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映 画

アラキンのムービー・ワンダーランド/「ブラックライト」「エブエブ」「フェイブルマンズ」のとっておき情報
(2023年3月2日10:00)
映画評論家・荒木久文氏が「ブラックライト」「エブエブ」「フェイブルマンズ」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、2月27日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いいたします。
荒木 今週の金曜日、ひな祭りですよね。3月3日 公開作品の中から…、
この日公開作品多いんですけど、なんと3本ご紹介します。
まずはこれ。
ダイちゃんさぁ、えれー強えー親父というとどんな俳優さんを思い浮かますか?
鈴木 強い親父ですか?…お父さんね。スティ―ブン・セガールとか…。
荒木 あー!そうおっしゃる通り。
鈴木 強すぎて怖いけどね、あの方は。あとは、シュワちゃんだり、リーアム・ニーソンだったり、あの辺りですよ。

荒木 おー!出てきましたリーアム・ニーソン。最近ではドウェイン・ジョンソンとかね、ジェイソン・ステイタムなんかもいますけど、おっしゃる通り、忘れちゃいけないのが、リーアム・ニーソンですよね。ま、彼はとっても幅が広いですね。シンドラーのリストにも出ていましたし スターウォーズにも重要な役で出ていました。
アクション系は 96時間シリーズ!あれでアクションでもスターにもなったし…。
今はちょっとこっちのイメージかもしれませんけど、さっき取り上げたセガールだとかシュワちゃんとかは、やたらなんか、機械とか無機質に強いのに比べると、ちょっとリーアム・ニーソンは、額にしわを寄せて苦悩したり、悩んだりしながら…。
鈴木 人間臭いですよね。
荒木 そうですよね、そんな感じですよね。ということで、リーアム・ニーソンのアクション最新作が来ます。「ブラックライト」という、3月3日公開です。
早速ストーリーだけいきますと、ニーソンおじさんはFBIのエージェントを引退して、今はFBIの長官に直々に雇われているという立場です。直属というわけですね。
彼は “フィクサー”と呼ばれて、どんな仕事をしているかというと、特殊任務で極秘で反社会的組織などに潜入している若い秘密捜査官に危険が迫った時に、それを助けて更生するという、いわば陰の特殊任務を担っていたんですね。
鈴木 いいね!いいね!
荒木 (笑)。ある日、仕事で救い出したFBIの潜入捜査官から、実はFBIの組織が、普通の一般人の殺しに関与しているという話を聞かされるんです。もちろん、にわかに信じられませんが、その潜入捜査官は何者かに殺されて、ニーソンおじさんは大きな陰謀が存在してることに気が付くんですね。そんな中、彼の娘と孫娘が危機にさらされる…という、やはり…定番で娘や家族が絡んできますね。それにしても、リーアムおじさんって70歳なんですね!
鈴木 うわっ!そんなになります?
荒木 そうなんですよ。相変わらず頑張っていますが、さすがに映画の中でも追いかけっこでは息が上がっちゃってですね、よたよたしたり、格闘でもパワーでは若い人には押されっぱなしで負けていますよね。だけど小技ではテクニックを発揮してね。ま、ゴルフみたいですね。ゴルフのアプローチみたいに…。体力で劣るところは頭脳と技術で―という私も見習わなければならないですけど。で、リーアム・ニーソンといえば陰謀がらみパターンが多いんですよね。
鈴木 そうですね。
荒木 今回もそうなんですけど、家族を誘拐されながら…という形式は定番というか、正直ワンパターンですけどね。美味しい定食屋さんに行って人気の定食を食べるという楽しさですね。
鈴木 もうとんかつ定食だけ!いいんですよ、生姜焼きだけでも!
荒木 まー、リーアム定食!ですね。 相変わらずの定番的美味しさです。という事で、「ブラックライト」3月3日公開です。
この作品の劇場招待券頂いていますので、2組4名様です。後でダイちゃんからご案内お願いします。
鈴木 ありがとうございます。
荒木 ということで、毎回おなじみになってますアカデミー賞の特集です。
今日はいよいよ横綱クラスといいます、東西の横綱の2本。いよいよ本命登場です。まず1本目は「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」って言う…。

鈴木 エブエブ?
荒木 略して「エブエブ」ですね。このノミネートは 10部門11ノミネートって事ですね、今回の最多ノミネートのコメディアクションなんですけどね。
鈴木 おおー!
荒木 ちょっとストーリー申し上げますね。主人公は中年女性のエヴリン。
もう何となくおばちゃんに近いのかな、おばあちゃんに近いのかな?って感じなんですけど。彼女は夫婦でコインランドリーを経営しているのですが、ここがうまくいかずに破産寸前なんですね。それに加えて、ぼけているのに頑固な父親とか、いつまでも反抗期が終わらない娘とか、優しいだけで頼りにならない夫など超頭の痛い問題だらけ毎日を送っているんですね。そんな彼女の前に、突然ですね、「別の宇宙から来たんだ」という夫が現れます。
ちょっと普通の夫と目つきが違ってくるんですね。混乱するばかりのエヴリンに、この世界にはたくさんの別宇宙があって自分も家族もみんな少しづつ違った環境で生きているんだって説明するんですね。その全宇宙を滅ぼそうとしている強大な悪がいる。それを倒せるのは君だけだと説明するわけなんですよ。
エヴリンはそんな“別の宇宙の夫”に言われまま、ワケも分からずマルチバース、並行世界で、カンフーマスター、つまりカンフーの達人としての能力を手に入れるんです。
鈴木 あはははは。
荒木 それで救世主として目覚めます。で、全人類の運命をかけた壮大な戦いに身を投じていくという、まあなんというか奇想天外な作品なんですけども!
鈴木 これ大本命なんですか!?
荒木 そうなんですよ。エヴリンには、ミシェル・ヨーですね。
夫役にはキー・ホイ・クァン。1980年代に「インディ・ジョーンズ」観た方だったら、あのちっちゃい男の子帽子被った…、覚えてませんかね? 東洋人の男の子…。
鈴木 あー!!いたね!
荒木 そ!あの子が20年ぶりにハリウッドに復帰を果たしたんです。
鈴木 えーっ!
荒木 「グーニーズ」なんかにも出ていたんですけど。そして悪役は「ハロウィン」シリーズのジェイミー・リー・カーティスが出ています。監督は、「スイス・アーミー・マン」なんかで、監督コンビ2人なんですね、ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートという、ダニエルズが手がけました。
実はダイちゃんに観てもらおうと思ったんですけど、まだ観れてないんですね。
鈴木 まだ観れてないです。観たい、早く。
荒木 結論から言うとかなりの異色作です。設定めちゃくちゃですよね。マルチバースと空手。本来だったらゲテモノ扱いっていうんで、ダイちゃんが今言ったみたいに、これが本当にアカデミー賞?と思っちゃいます。 そうなんですよー。観ていただくとわかると思うんですけど、ちょっと
テンポがかなり早くてですね、ジェットコースター並みに移り変わる作品なんで、ついて行くのに必死だと思います。
鈴木 そんな展開ですか?
荒木 うん。私もそうだったんですけど、初見では理解が追いつかない人も多いと思いますし、ちょっとお下品なシーンもありますし、すごく奇妙な映画です。
鈴木 これラズベリー賞ノミネートじゃないんですよね?アカデミーですよね?
荒木 (笑)そうです。ま、ダイちゃん含め、観ていない方々にちょっと言っておきますけど、アカデミー賞の作品賞の有力候補?だから、じっくり見なきゃいけないな…、細かいところまで見逃さないようにしないなと考えると、ダメです。
鈴木 ダメですか?それ。
荒木 (笑)ダメです。全てを理解しようとするのは難しいので、あまり考え込まずに、軽いノリでふわふわっと一緒にワープジャンプというつもりで、馬鹿馬鹿しさを楽しむと凄く面白いかもしれません。理解しようとしちゃ駄目です。
鈴木 これ、アカデミー賞の大先生たちも、一回観ただけで理解できないから、ノミネートこんだけ盛り上がってるって…どうなんですかこれ?
荒木 (笑)そうかもしれませんね。そのあたりは、後で話そうかと思うんですけど、作品賞大本命という東の横綱です。「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」という、3月3日公開の作品でした。
荒木 続いて、もう一本。こちらは対抗というのか、こっちも本命というのか、「フェイブルマンズ」という、スティーヴン・スピルバーグが“映画監督”になる夢を叶えた自分自身の原体験を描いた作品です。

鈴木 はいはい。
荒木 少年サミー・フェイブルマンくん。彼は幼い時に初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になります。8ミリカメラを買ってもらって、映画を撮っていくんですけど。皆と映画を撮ったりして、映画の製作が夢になっていきます。さまざまな人々との出会いを通じて映画人に成長していく、というお話なんですけども。
いかにもスピルバーグ監督の少年時代は、こんなんだったんだろうなと思われる内容ですね。主人公のサミー君はガブリエル・ラベルという新人君なんですけど、ちょっと小さくてひ弱な感じ。お母さん役はミシェル・ウィリアムズという、「マリリン 7日間の恋」などでもう4度もノミネートされている女優さんですけど。あとは、「バットマン」の悪役が印象的でしたお父さん役、あのカメレオン俳優 ポール・ダノが演じてます。
いい役者さんたくさん出ています。この作品は7部門にノミネートされています。で、スピルバーグの自伝的作品という位置づけで、実体験をそのまま再現したんじゃなくて、脚色しているんですよ。原体験を。
鈴木 なるほど。
荒木 だから必ずしも「スピルバーグの実体験」ではないということを、強調してくださいと言ってましたね。だけど スピルバーグ自身がユダヤ系なんで、それ故に受けた境遇とか、人種差別問題とか、しっかり描かれていて、家族、恋愛、友情、宗教とあらゆる要素が詰まっています。だからスピルバーグ監督がこういう作品を作ったという、バックボーンにあるものをちょっと見るような、そんな気がします。
鈴木 なるほど なるほど。
荒木 音楽はもちろんジョン・ウィリアムズです。 御年91歳!オリジナル作曲賞に53回目のノミネートです。
鈴木 53回…。すげー!
荒木 「フェイブルマンズ」も3月3日。東西の横綱対決という事なんですが、さっきダイちゃんが仰ってましたよね。なんでそんな「エブエブ」が?…。
鈴木 だってそうでしょう。
荒木 あのね、さっき言ったようにちょっとゲテモノっぽいところはあるんですけども、この作品ちょっと考えておかなきゃならない。今までのアカデミー賞への批判を跳ね返すというか、オスカーが変わりつつあるという要素をたくさん含んでいるんですよ。
鈴木 ああー なるほど。
荒木 今は大きな転換期になっていて、まず人種多様性。白人ではなくアジア系移民が主人公であるということ、しかも女性、それも中年なんですね。
更にLGBT要素も入っている点で、新しいアカデミー賞が志向する時流に見事に乗っているということですね。更に最終的には人間の思いやりだとか、家族愛みたいなところをちゃんと抑えているということがね。だから多分この作品が選ばれると「アカデミー賞」こう変わったんだということが主張できるわけですよね。
対して従来のアカデミー賞のイメージであれば、ド本命は間違いなく「ファイブルマンズ」ですよね。
鈴木 なーるほど。そうでしょうね。
荒木 今までのイメージの中では最も好まれる正統派の作品で、家族愛とか、青春とほのかな恋とかね、そして映画に対する熱い愛情とかね。そこに社会的背景であるユダヤ人差別とかアメリカ人の家族像を盛り込んでいて、実にバランスがいいですよね。
鈴木 じゃあこれ、既成概念対現代未来って感じじゃないですか。
荒木 そういうこと。それで人数が多くなったと言われる投票者の中で、 もともと保守的と呼ばれる年齢の高い白人男性層がこっちを圧倒的に支持すれば、「フェイブルマンズ」の方が勝つと。そういうような図式になってるようですね。
鈴木 グラミーだったり、アメリカの政治だったり似ているなあ。何か雰囲気…。
荒木 そうですね、色々似ていますね。ホントに曲がり角に来ているっていうか。そういう意味でも今年の95回アカデミー賞がちょっと見ものですよね。
鈴木 なるほど。そういうことかー。
荒木 ということで、3月3日公開、東西横綱、作品賞強力候補です。2作ご紹介いたしました。
鈴木 いやー、荒木さん。チケットまでありがとうございます。
荒木 とんでもない。あっちはアカデミー賞に関係なく気軽にね!
鈴木 あはははは。ただただ盛り上がるってことでいいですよね。
荒木 そういうことですね。
鈴木 荒木さん、ありがとうございます。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。
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ハリウッド特急便
トム・サイズモア、脳動脈瘤で昏睡状態 家族が「生命の終焉」を決断
(2023年3月1日13:45)

映画「プライベート・ライアン」などで知られる米俳優トム・サイズモア(61)が脳動脈瘤で昏睡状態になり、医師から「終末期の決定」を勧められた家族が「生命の終焉」を決断したという。米メディアが報じた。
米紙ニューヨーク・ポスト(電子版)によると、サイズモアのマネージャーは、2月27日(現地時間)、サイズモアが「昏睡状態で集中治療を受けている」ことを明らかにしたうえで、「医師は家族にこれ以上の希望はないと伝え、終末期の決定を勧めました。家族は今、終末期の問題を決定している」と語り、生命を終える決断をすることを明らかにしたという。
サイズモアは2月18日午前2時頃(現地時間)、ロサンゼルスの自宅で脳梗塞のため脳動脈瘤を発症した。意識を失っているのを発見され、救急車で近くの病院に運ばれた。
サイズモアは1989年、オリヴァー・ストーン監督の「7月4日に生まれて」で映画デビュー。同監督の「ナチュラル・ボーン・キラーズ」(1994年)、スティーブン・スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」(1998年)でタフな軍曹を演じて注目された。「ブラック・ホークダウン」(2001年)での中佐役は「理想的な軍人を演じた」と称賛された。
私生活では1996年にメーブ・クインラと結婚したが3年後の1999年に離婚した。再婚はしていないが2005年にジャネル・マッキンタイアとの間に現在17歳の双子の息子をもうけた。