-
映 画
「土を喰らう十二ヵ月」「鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽」「あちらにいる鬼」のとっておき情報
(2022年11月12日11:00)
映画評論家・荒木久文氏が「土を喰らう十二ヵ月」「鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽」「あちらにいる鬼」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、11月7日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いいたします。
荒木 こんにちは。11月、秋たけなわ…、今読書週間なんですね。
読書の秋、ダイちゃんは、どんな本読んでいます?
鈴木 まぁ、いろいろくだらない本、くだる本、読んでいますけど…。最近、読んで面白かったは、内館牧子さんの「老害の人」。意外に、老人のなるほどなぁとか、定年、終活だったり…、そういうのをちょっと読みながら、年寄って、なる怖~って頷いてる感じ。
荒木 なるほどね~。私はもう、自分のことですからね。もう、そういう老害の人にはなりたくないなって思いながら、読んでみたいね。
鈴木 面白いよ。
荒木 そうですか。是非、読んでみます。
今日取り上げるテーマは、国語の教科書にも載るような、日本の有名な作家に関する映画ばかりです。
まず、「飢餓海峡」、「五番町夕霧楼」。そして「越後つついし親不知」、「越前竹人形」…著作はたくさんありますね。 作家の水上 勉さんです。
鈴木 はいはい。
荒木 彼のエッセイからテーマを取ったタイトルが、「土を喰らう十二ヵ月」という、今週金曜日、11日から公開の作品です。
舞台は長野の人里離れた山荘、白馬の辺りですかね。1人で暮らしている老年に近ずいている作家のツトムさん。彼は日々 近所の山で採れた実やキノコ、畑で育てた野菜などを自分で料理して、ほぼほぼ自給自足の生活をしているんです。季節の移り変わりを身近に感じながら執筆活動を続けているんですけど…。そんな彼のもとに、年の離れた恋人の編集者が東京から訪ねてきたりして。 2人で食べる大切な時間を過ごしてるんですけども。ま、そんな悠々自適な暮らしを送っているツトムさん…。
「丁寧に生きること」まさにそんなことを描いている映画だと言ってもいい作品だと思います。主演が、あのジュリーです。
鈴木 沢田研二さんね‼
荒木 で、恋人には松たか子さんなんですけども。
鈴木 えぇー⁈ 何 そのカップルって言う…。
荒木 ねぇー。ちょっと年の離れたカップルでいいよねーって感じですよね。一体いくつ年下の恋人なんですかね。沢田研二さんが、枯れそうで枯れてない役なのもいいんですね。で、昔からのジュリーファンはですね、「老境に入った男の色気をビンビンに感じます。」と言っていますけどね。ま、こういう人たちは、何歳のジュリーでもいいんでしょうけどね。
鈴木 (笑)
荒木 で、作家の水上勉さんの料理エッセイ「土を喰う日々ーわが精進十二ヵ月ー」(新潮文庫刊)を原案に描いたオリジナルの物語なのですが、水上勉さんは福井県の貧しい家に生まれて、幼いころにお寺に預けられるんです。そこで精進料理を学んで、その後、自ら収穫した野菜や山菜を駆使して料理を作り、それを食べる歓びや料理にまつわる思い出を、とても味わい深い文章にしているんですね。タイトルの「土を喰らう」というのは、旬のものを頂くということです。たけのこ、キノコ、いろいろな山菜…、ダイちゃん、こういうものはどうですか?
鈴木 好きですね。山梨の方は農家の方も多いので、やっぱり土を食らうんですよ。
荒木 そういうことですよね。その映画では、料理研究家の土井善晴さんが、全ての料理を手掛けているんですけども、その美味しさとか、瑞々しさが、銀幕を通してにじみ出てくるような、そんな感じです。
鈴木 ああ!いいですね。荒木さん、いい表現された!いい!!
荒木 ありがとうございます。山梨もそうだけど、私も田舎が長野なんで、ツトムさんほどではないのですが、長野の実家に帰ると、朝 農協の直売所やファーマーズマーケットのようなところで、地のモノを買ったり、自分のうちの畑で取れたものも多少あるんで、なるべく料理して、畑のものを食べるようにしているんです。
鈴木 いい!いい!
荒木 特に春の山菜。 タラの芽? タラの木は数年前に山から枝を取ってきて、挿し木したら、もう10本以上になっています。タラの芽の天ぷらね!これ、ダイちゃんにも食べさせたいねー。
鈴木 ちょっとー!Uberでもいいから、こっち持って来なさいよー!
荒木 そうだねー。茗荷の天ぷらも美味しいですよ!
まー、そんな話になってしまいましたけど、ご紹介したのは、作家水上勉さんのエッセイからテーマを取った、「土を喰らう十二ヵ月」という沢田研二主演の作品でした。
鈴木 はいはい。これ、観たいな~。
荒木 2本目!「走れメロス」!って言うと…、そう、太宰治です。
鈴木 読んだなー、いろいろ…。
荒木 そうですよね。中学校の必読図書になっていると思いますね。
教科書にも載っているかと思います。太宰治の代表作はいろいろありますけど、「ビヨンの妻」「人間失格」、そしてその中の名作小説、「斜陽」をもとにした作品ですね。
鈴木 「斜陽」~。
荒木 紹介するのは、現在公開中の「鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽」という作品です。読んでいる人も多いと思うのですが、ざっくりいうと、戦後没落する貴族階級を描いたものです。主人公はかず子さん。東京から伊豆へ引っ越して、慣れない田舎暮らしを始めるんですが、母とか、弟が相次いで死ぬというなかで、彼女が昔、交際していた妻子ある作家との道ならぬ恋を歩むわけですね。そして彼の子を身籠るという…小説だったんですけど。この小説は、没落していく上流階級の人々を「斜陽族」という言葉で表して、社会現象を起こしたんですね。この作品を監督したのは、近藤明男監督という方なんですけど。あの、増村保造の助監督を務めていたんですが、増村監督と脚本家・白坂依志夫が遺した草稿をもとに脚本を完成させたというものです。ま、ストーリーは、ほぼほぼ原作通りです。忠実にオーソドックスに表現されています。つまり小説の魅力を正確に映像化しているんですけど。
鈴木 淡々とした映像な感じなんですか?
荒木 そうですね。本当に淡々としています。おっしゃる通りです。注目すべきは出演者です。かず子役!宮本茉由さんって人なんですけど、ダイちゃんに写真見てもらえます?
鈴木 いやー、写真も何も!全部、これ壁紙にしたいくらいタイプ!好きです!素敵な、綺麗な方じゃないですか~!
荒木 そうですね!この人が、品があってね!いかにも貴族出身のお嬢様という雰囲気ですよね。ファッションモデルさんらしいんです。
鈴木 いいわー、これー。
荒木 で、お相手役の作家・上原は、安藤政信さんが演じています。
鈴木 うーん、いかにもだなー。
荒木 そうですよね!太宰治は青森県の富裕な大地主の六男として産まれ、成長すると、政治活動での挫折後、自殺未遂や薬物中毒を何度も繰り返すんですね。
そんな中で、多くの作品を次々に発表しているんですが、結局、38歳の若さで亡くなるわけですよ。それも謎の死と言われていますが。このキャラクターは、もうずっと前から注目されていますね。いわゆる無頼派と言われる人なのですが…。数年前には小栗旬さんが太宰治を演じた「人間失格 太宰治と3人の女たち」もありましたし、最近はアニメで、私はあまり知らないんですが、「文豪ストレイドッグス」で、太宰本人を反映させたキャラクターもいるそうです。
鈴木 太宰は、永遠ですね!
荒木 ホントですよね。実はこの作品、山梨のメディアが制作委員会に入っていたり…ていうのは、あの巨匠増村保造さんね、彼は甲府出身なんですよね。
そういう関係で、後援とか制作をやっていてですね、実は全国に先駆けて、先月29日から山梨県だけ先行公開ロードドショーされているんです。
鈴木 さすが~!
荒木 だから既に、見た方もいらっしゃると思いますけど。…ということで、機会があったら是非観てください。太宰治の名作小説ですからね。
鈴木 かず子―。かず子―。
荒木 (笑)はい、現在公開中です。「鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽」という作品でした。で、最後はですね、11月11日公開、今週金曜日ですね。「あちらにいる鬼」という作品です。ここに登場する作家は、瀬戸内寂聴さん。旧、瀬戸内晴美ですね。
と、井上光晴さんですね。
鈴木 はいはい。
荒木 この映画は、作家・井上荒野さんが、自分の父である作家の井上光晴と自分の母親、そして父の愛人だった瀬戸内寂聴さんをモデルにした、3人の特別な関係をつづった小説を映画化したものなんですね。映画のストーリーはですね、人気女流作家の長内みはる…。明らかに瀬戸内はるみですよね。彼女は、戦後派を代表する作家・白木篤郎、ま、面倒くさいから、井上光晴でいいですか!彼と講演旅行をきっかけに知り合って、まあ、いわゆる男女の仲になる、不倫ですよね。一方、井上光晴の奥さんは、夫の奔放な女性関係を黙認していたんですね。
鈴木 なんと!
荒木 今までも平穏な夫婦生活を送るために、見て見ぬふりをずっとしていたんです。とにかく、この井上光晴さんの女遊びは半端じゃなくって、めちゃくちゃなんですよ。もう何人も、堂々と不倫相手を自分の家に連れてきたりしているんですよ。それを、奥さん何も言わずにジーっと堪えているんですね。
鈴木 いーやー…。
荒木 瀬戸内晴美と井上光晴は、そういった単なる、浮気じゃなくて、お互いにかけがえのない存在となっていくという、深みにはまるというものなんですけど…。瀬戸内寂聴さんはねぇ、ダイちゃんもおなじみですよね。
鈴木 イヤ、当然ですけど。結構 彼女がいろいろ話すドキュメンタリー観ると、昔、結構奔放でいろいろあるんですよね。
荒木 そうなんですよね!晩年は本当にいいお婆ちゃんキャラだったんですけど…。
鈴木 若い頃は、結構な結構ですよねー。
荒木 若いころは周りを顧みず、とてもとても!情熱家というか、とにかく愛に突っ走る女性だったんですねー。作家としての代表作には「夏の終わり」など、これは映画にもなりました。あと、谷崎潤一郎賞とかね、野間文芸賞など、それから文化勲章も受賞らっているんですよね。
鈴木 「花に問え」とかもそうですね。
荒木 読んだことあります?
鈴木 あります!あります!
荒木 意外だな?瀬戸内寂聴読むんだ?
鈴木 だって、面白いおばちゃんだなと思ったから!僕から見たら、最初!若いころ。
荒木 はいはい。私はあんまり読んでない、一冊くらいかな?
大正・昭和・平成・令和と4つの時代を生きた人で、昨年11月9日亡くなられましたから、明後日で1年ですね。
で、井上 光晴さんは大正15年生まれの作家です。貧しい家庭に育ち、炭鉱労働をはじめいろいろな職業を経て、社会の底辺にある差別と矛盾や、そういう人々への共感をテーマにした作品が多いです。「虚構のクレーン」「地の群れ」なんかは、私も読みましたけど。
で、井上荒野さんは井上光晴の長女で、この人も直木賞作家です。
鈴木 凄いなぁ!
荒木 で、今回の映画はさっき言ったように 井上荒野が自分の父と母と、愛人の瀬戸内寂聴の3人の出会いから父の死までを描いた作品なんです。
映画では女流作家役を寺島しのぶさん。
鈴木 ああ!なんかいい!
荒木 井上光晴をモデルにした作家を豊川悦司さん。その妻役は広末涼子さん。
鈴木 ああ!なんだか濃いなー!3人。
荒木 濃いでしょう!大変ですよ、寺島しのぶさん。実際に出家するシーンがあるんですが、実際に頭を丸めたり、素っ裸の絡みはもちろんですね、大変な熱演です。で、広末さんも気持ちを爆発させるというのではなく、耐えるというね、この演技が素晴らしいですね。豊川悦司さんの井上光晴は、なんとなく面長で髪の毛が多いところなど、雰囲気がとても似ています。女の人を引き付ける魅力もありますからね。
鈴木 ありますからね。
荒木 で、監督は、廣木隆一さん。脚本が荒井晴彦さんなんですけど、この2人ですからね、ガンガン攻めてきています。いろんな意味で、かなりの問題作だと思いますよ。
鈴木 あー、問題作ですか。
荒木 今の、昨今のコンプライアンスの問題や、ある意味のモラルの強要などの風潮から見ると、とんでもない作品だと非難されるかもと思います。
鈴木 その辺りは、わざとというか、敢えて意識しているんでしょうね。
荒木 もちろん、どんどん出していますね。だから、理解できない部分もあるんですが、今、モラル、モラル、という人たちは、眉を顰めるっていうのがあるかもしれませんね。常識外れというか、世の中の性倫理や道徳観から解放されている感じの映画です。ヒューマンドラマですけども。2時間19分と少し長めですが。
鈴木 長いな。
荒木 圧倒的な俳優さんの演技、観ていただきたいと思います。
11月11日公開「あちらにいる鬼」という作品。ご紹介しました。
なかなか本を読む時間はないと思いますが、本読んだり、映画を観てね!
鈴木 秋ですからね。
荒木 先週は排泄物の話とかちょっと尾籠な話題が多かったので、今日は一転
文学のお話ということで。振れ幅が広いですね。
鈴木 いい。振れ幅広いけど、結局、私の最後の〆の一言は、かず子ー、かず子ーになりますよ。
荒木 あの女優さん、綺麗ですからね。注目です。宮本茉由さんです。
鈴木 じゃあ、かず子、〆るよ。 ありがとうございます~。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。