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映 画
日本映画ペンクラブ賞と「リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング」のとっておき情報
(2023年3月2日10)
映画評論家・荒木久文氏が日本映画ペンクラブ賞と「リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、2月26日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いいたします!
荒木 元気ですね。身体鍛えてるの?素晴らしい。よろしくお願いします。
暮れあたりから2023年去年の映画界を振り返るみたいのをずーとやってきて、実はこの時期、業界総まとめ振り返りの最盛期なんです。
鈴木 年度末だな。
荒木 まだ振り返っているの?振り返りすぎだよね。と、あきれている方もいるかもしれませんが、今日で最後ですのでちょっと聞いてください。
鈴木 わかりました。
荒木 実は、私が日本映画ペンクラブという組織に入っているっていうのは何回も皆さんにお伝えしていますけど、私、実はこの組織で広報委員というのをやらされてるんです。映画ペンクラブの活動を広く皆さんに伝える役なんです。山梨観光大使みたいなものね。その映画ペンクラブの最大のイベントが「日本映画ペンクラブ賞」という賞の決定と、その年のベスト映画を選ぶ「会員選出ベスト映画」の発表なんですが、つい最近これが決定したんです。私はプレスリリースを作って一般紙やスポーツ新聞とかに送ってるんですけどね。何とか少しでも日本映画ペンクラブの知名度を上げるために頑張ってるんですけど、ほとんど世の中の人、知らないですよね。
鈴木 ここでお知らせしますよ。
荒木 ありがとうございます。ちょっと専門的になっちゃって申し訳ないんだけど、ちょっとここで説明させてもらおうと思います。「日本映画ペンクラブ賞」はその年に映画界の発展に寄与した団体や個人に贈られているのです。今までは皆さんあまり知らない人も多かったんで、ここで紹介しても仕方ないと避けてましたんですけど、今年は、リスナーの皆さんも受賞者を知ってるんじゃないかと思い紹介します。
鈴木 お!?
荒木 以下、プレスリリースからです。映画評論家、翻訳家、監督など映画関係者で構成する日本映画ペンクラブ(渡辺祥子・代表幹事)は11日、2023年日本映画ペンクラブ賞に脚本家・映画監督・「映画芸術」編集長の荒井晴彦氏を選出した。
荒井さんは、若松プロで助監督を務めた人なんです。1977年に日活ロマンポルノで脚本家デビュー。「赫い髪の女」とか「Wの悲劇」とか、4多くの話題作の脚本を担当した方なんです。「身も心も」で監督デビューして、「火口のふたり」っていう、4年前くらいかな、話題になったんですね。ほぼ、男女が全裸で抱き合ってるのが80%という映画でしたけど。これがキネマ旬報ベストテン1位に選ばれました。今年は「福田村事件」の、共同脚本ですけど、あと「花腐し」という映画で、これも評価されたんですね。また「映画芸術」という映画雑誌、SNSなどとは本質的に異なる映画専門雑誌として業界や体制に与することなく、孤高を貫いているという。
鈴木 でも信頼できますよね。
荒木 辛口ですけどね。評価されたということで、荒井晴彦さんでした。
この賞はほかにも功労賞と特別賞があってですね、「功労賞」は、長い間業界に尽くされた方ですけど、こちらは角谷優氏さんという、ご存じの方もいるかと思いますが、フジテレビのアナウンサーだった人です。
鈴木 ああ!わかった。
荒木 わかりますかね?テレビの映画制作を開拓した人です。ゴールデン映画劇場の枠を創出したり、「キタキツネ物語」とか有名ですよね。これで高視聴率44.7%と。その後はプロデューサーとして「南極物語」とか、「ビルマの竪琴」とか、「小猫物語」を作った人です。角谷優さんが「功労賞」。
そして「特別賞」っていうのもあるんですよ。片桐はいりさん。女優さん。
「かもめ食堂」とか、「キネマの神様」とかでお馴染みの女優の方。この人は、大学卒業後「ブリキの自発団」という劇団でで活動しながら、今のシネスイッチ銀座ですね、当時、銀座文化って言われてましたけど、ここでもぎりのアルバイトをしていたんですね。
有名になった現在も時々もぎりやってるんですけど(笑)。本も、「もぎりよ、今夜も有難う」っていう本で、今も全国を回って、もぎり&トークイベントをやってるんですね。
鈴木 最高じゃない!それ!(笑)。
荒木 そういうことで「特別賞」を受賞ですね。
鈴木 片桐はいりさん、一度見たら絶対忘れられない顔ですもんね。
荒木 授賞式は3月19日午後6時から、銀座でやりますけど、来たい人はお金払うと入れます(笑)。
鈴木 あはははは。来てくださいということね。
荒木 よろしくお願いします。
次は各メディアや関連団体が発表する「年間ベスト映画」です。
日本映画ペンクラブ会員選出ベスト10からお話しましょう。部門は、洋画と邦画と文化・ドキュメンタリー部門の3部門。選出したのは、会員152名いますけど100名ぐらいだそうです。日本映画からいきます。ダイちゃんの好きな映画はありますかどうか。第3位「怪物」、第2位「福田村事件」、第1位「PERFECT DAYS」。
鈴木 「福田村事件」入ってるじゃないですか!2位に。
荒木 ねー、入ってますね。続いて外国映画です。3位「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」、マーティン・スコセッシですね。2位「枯れ葉」、1位「TAR/ター」ですね。
鈴木 「TAR」!はいはいはい!
荒木 最後、文化映画はですね、3位「ハマのドン」という作品です。1位がふたつあって、「国葬の日」と「妖怪の孫」という、どちらも安倍首相に関連するドキュメンタリー映画です。
鈴木 でも、一味違うトップ3が並んでますね。
荒木 そうですね。特徴的ですね。
次は映画雑誌の代表格「スクリーン」です。この「スクリーン」は洋画雑誌なので、洋画のベストランキングになります。選出したのは、主にこの雑誌に執筆している映画ライターや評論家など35,6人といわれています。3位「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」。
鈴木 おお、見たわ。
荒木 去年なのに、懐かしい感じですね。2位「キラーズ オン ザ フラワームーン」。1位「TAR/ター」です。
鈴木 俺、「TAR/ター」見てないんだよ。
荒木 「TAR/ター」は玄人ごのみっていうかね、上位ですね。ちなみにここの「スクリーン」は、その年のベスト俳優、女優も選んでいます。1位はなんと、ビル・ナイです。「生きる LIVING」の。女優は、ケイト・ブランシェッド。この雑誌は読者によるベストテンや俳優賞も選んでいるんですが、これ見ると面白いんです、評論家が選んだのと全然違うんです。読者が選んだベスト映画は「ミッションインポッシブル」。女優はマーゴットロビー。ダイちゃんが大好きな。男優はティモシー・シャラメ。非常にわかりやすい2人を選んでますね。
鈴木 大衆が選ぶのも、それはそれで大正解ですよね。
荒木 そういうことですよね。続いての雑誌。有名なのは「キネ旬」なんですけど、こちらも比較的堅いと言われております。日本映画部門ですね。3位「ほかげ」。2位「PERFECT DAYS」。一位は、あまり知らないかもしれないけど「せかいのおきく」。
鈴木 ほうー。
荒木 黒木華さんのですよね。で、海外部門。3位「枯れ葉」。2位「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」。1位は、なんと「TAR/ター」です。
鈴木 これじゃあ、ちょっと「TAR/ター」見なきゃだめだ。
荒木 はい、「TAR/ター」、見といてください。ちなみにキネマ旬報俳優賞は、主演男優がパーフェクトデイズの役所広司さん、女優は「ほかげ」で趣里さんです。
最後、WEB系で一番大きいと言われる「映画ドットコム」のサイトですね。洋・邦ミックスで、このサイトのスタッフやライターが選んでます。これは、やはりわかりやすいというか、若い人が多いのかな。3位「君たちはどう生きるか」、2位は「バービー」、1位「グランツーリスモ」。
鈴木 全然違うね!
荒木 違いますね。で、私が投票しましたのは、邦画1位「PERFECT DAYS」でした。洋画は、1位「ヨーロッパ新世紀」というちょっと堅いのです。
鈴木 「ミッション:インポッシブル」じゃなかったんですか。あはははは。
荒木 まあね(笑)。いろんなところで使い分けてるんでね。
鈴木 なるほどね。
荒木 ドキュメンタリー文化映画部門は、「新生ロシア1991」という、これも堅い映画ですから。 ということで、来週はいよいよ 第96回アカデミー賞‼
鈴木 ですね!
荒木 のノミネートがすでに発表になっています。3月11日、本番ですからね。発表なんで、よろしくお願いします。
鈴木 こちらこそよろしくお願いします。楽しみにしています。
荒木 ということで、1本短めですが ご紹介しましょう。先に見ていただいてると思いますが、音楽映画。3月1日より公開の「リトル・リチャード アイ・アム・エヴリシング」です。ロックンロールの創始者のひとりと言われる、リトル・リチャードの知られざる真実と素顔に迫ったドキュメンタリーということで。もう、ダイちゃん複数回見たんだって?
鈴木 試写のくせに、2回見せてもらいましたから。
荒木 素晴らしいですね。
鈴木 もう、一秒一秒、全てのコマ全ての瞬間が、僕にとって黄金のようなフィルムばっかりで。荒木さんがおっしゃったように、リトル・リチャードってロックンロールの創始者のひとりっていうか、いわゆるロックの殿堂入りの最初の10人にも入っているっていうか、当然入ってるんですけど。
当然エルビス・プレスリーもいるんですけど、その映画の中で一つか二つどころか、印象深いシーン沢山あるんだけど、ある時、エルビスがリトル・リチャードの楽屋を訪れて、「心配するなよリチャード」って言って、「君こそがロックンロールの真のキングなんだから」って、エルビスがリチャードに言ったっていうコメント見て、プルプルプルプルって震えましたからね、僕!
荒木 はいはいはい!
鈴木 それ、絶対エルビスの本心だと思ってて。やっぱりね、ロックンロールって当然ながら黒人音楽がルーツなんで、要するに黒人音楽なんですよ。ロックンロールって!
荒木 基本はね、そうなんですよ。
鈴木 そうなんですよ!それを白人がよりクリエイトしていくような様に見せただけなんで。だからエルビスからみりゃ、当然チャック・ベリーだとかファッツ・ドミノだとか、リトル・リチャードだとかジェリー・リー、ジェームス・ブラウンとか、このあたりをキングだと思いながらロックンロールを広めてったのが自分なんだなあと思ってるから、たぶん本音でリトル・リチャードに言ったんだろうなとかって思うだけで、わくわくしてきたり。
荒木 なるほど。
鈴木 あと、リトル・リチャード、当時1950年代の活躍ですけど、当時も当然黒人であって、あとはゲイであったってことで。
荒木 マイノリティ!
鈴木 あの当時、めちゃめちゃ厳しいじゃないですか!そっちは。
荒木 しかも南部ですからね。
鈴木 そうなんですよ!それでいろいろとね、乱交騒ぎがあったとか、いろんなインタビューがありましたけど、途中で「人生でもっとも大事なものは?」って聞かれたら、「愛さ」って答えて、「ぜひ手に入れたいんだ」と、「自分の望む愛を手に入れていない。今の自分自身と神様しかいないんだから」って。なんかそうやって愛に飢えている孤独な人だったんだなって側面もわかって。たぶん感激しながら、曲はもう、自分のケツから腰から足首から全部が揺れていくっていうロックンロールの基本だなっていうくらい、本当にたまらない映画を見させていただいたって大満足でしたね。
荒木 いろんな素材も、昔のをよく取ってありましたよね。
鈴木 びっくりした、あんな話あるんだね。
荒木 それで今の、ゲイであることを公表した、活動を続けた時点で、最近ではいわゆるクイアっていうんですかね、先駆的アーティストとしても再評価されていますよね。
鈴木 だからリトル・リチャードが、ミックジャガーがロックンロールをリトル・リチャードがはじめたっていうコメントをインタビューで述べていたり。とにかくリトル・リチャードがいなかったら、当然ビートルズもいなかたんだろうなとか、今の我々が楽しんでいる娯楽の半分以上は無かったんだろうなと思うと感謝だなあと思って。
荒木 1950年代のあたまに、あれだけ勇気を持って、たぶん映画には表せられない弾圧とか差別もあったでしょ。あれだけ派手にやっちゃうと。
鈴木 だから突然、神だとかゴスペル行っちゃったりとか迷いもあったじゃないですか、いろいろと。
荒木 途中ね、消えた時期とかもありますもんね。
鈴木 最後は、アメリカミュージックアワードで功労賞貰って、涙ながらスピーチするっていうのを見て、やっぱり凄いいい、よかったな、これでって思いましたもん、僕。感激しました。ほんとにいい映画見せていただきました。
荒木 ありがとうございました。2020年の5月に87歳で亡くなりましたが、本当にそういう意味での金字塔ですね。「リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング」
鈴木 シャラップ!おだまり!ですから!
荒木 3月1日から公開の作品です。
鈴木 これはもう、絶対にリスナーには見ていただきたいです。
荒木 今日は曲をかける時間はありますか。
鈴木 あると思いますから、一応振っておきます。ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。