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映 画
第48回報知映画賞のとっておき情報
(2023年12月10日10:45)
映画評論家・荒木久文氏が第48回報知映画賞のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、12月4日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 12月に入っちゃいましたね。12月はいろいろまとめの季節です。
映画業界も映画賞のシーズンに入ります。
毎年恒例なのですが、映画賞レースの幕開けとなる報知映画賞について、第48回目のラインアップが決定しましたので、今日はその選考過程や裏話・エピソードも含めてご紹介します。(授賞式は12月11日、都内のホテルで開催)
報知映画賞は新聞社系の映画賞として最も歴史があり権威のある賞の一つとされています。最も早く決定するので、歴史があってその年の賞の流れを作る役割を果たしています。
まず、一般読者やファンによる投票があってからノミネート。選考委員による選考会で決定するということです。選考委員は8人です。見城徹さん、幻冬舎の社長。読売新聞の木村さん、サイバーエージェント社長の藤田晋さん、フリーアナウンサーの松本しのぶさん。タレントのYOUさんに、映画コメンテイターのLILICOさん。映画評論家の渡辺祥子さんと私、加えて報知新聞社から3人の計11名です。
鈴木 いつもの顔ぶれですね。
荒木 そうですね、変わりないですね。そしてなんと、この11人が5時間以上もかけて投票して、選考委員会を開いたということなんですね。
鈴木 濃厚な5時間なんだろうな。
荒木 いや大変。疲れるんだよね、進行は基本的に部門別選考委員が、私はこの人が、この作品がいいと思う…と意見表明して、全員が終わった後、それぞれの意見を出し合って議論するんです。それが終わると投票です。過半数の6票以上を一回目に取るとそこで決定で、過半数に達しないと1位2位の決戦投票という方式です。みんなね、結構何回も言うけど、真剣なんですよ。
鈴木 当り前よ!当たり前!荒木さん!
荒木 興奮して喋る人もいて、そんなにギャラも貰ってないのにいいのかなと思って(笑)。
鈴木 あはははは。
荒木 選考結果についてですが、個性あふれる審査員がたくさんいらっしゃいますんで、差し支えのない範囲で審査の裏話も含めてお話ししますけど、本当はその会議内容については守秘義務があって話しちゃいけない、誰がどれを薦めたとか言っちゃいけないんだけど、ここだけの話内緒でね…あまりみんなに言わないでね。
鈴木 ここだけで、みんな聴いてるよ!
荒木 そうだよね(笑)。ということで、作品賞。実は、この番組で私が紹介しなかった作品です。「月」10月13日公開の石井裕也監督の作品なんですが、あまりにも重いテーマを扱っている問題作で、短い時間での私の貧しい表現力ではとてもその真髄を皆さんにわかってもらえる自信がなかったので、逃げちゃったというか…。
鈴木 なるほどね、そういうことで紹介をやめたのね。
荒木 そうそう。あはは、辛いんだよね…いろいろと。
2016年以神奈川の相模原の障碍者施設で入居者19人が刺殺された事件をモチーフにした、辺見庸さんの小説を映画化したものです。主演は宮沢りえさん、オダギリジョーさん、磯村勇人さん、二階堂ふみさんです。
他にも、「BAD LANDS バッド・ランズ」や「ヴィレッジ」、「ロストケア」なども挙がったんですが、1回目の投票で過半数を獲得しました。特に見城委員は、大傑作だと、何という密度と強度なんだと、これぞ映画!と評していましたよ(笑)。次は海外作品賞というのがあるんですが、これは、意外と多くの票を取ったのは、「グランツーリスモ」と「生きる LIVING」です。決選投票で1票差で「グランツーリスモ」。
鈴木 じゃあ、ほぼほぼ同格というか…。
荒木 そうですね、ほぼほぼ同格ですね。私、この作品も紹介してなくてですね…。
鈴木 ちょっと!
荒木 ホントにね、ズレてるよね(笑)。日本でもロケが行われて、新宿など東京の街並みが登場します。海外作品賞の次は監督賞。これはやはり「ゴジラ」が強かったですね。ということで山崎貴監督です。石井裕也監督との決選投票にはなったんですが、
やはり作品賞をかつて獲ったこともある山崎監督、ストーリー、演出、それから特撮という監督の得意分野が全部出た感じですね。
鈴木 作品賞と監督賞って、意外に同じものにならないんですよね。
荒木 そうなんですよ。今回は、決選投票に挙がって「月」が作品賞獲るかって勢いだったんですけど、「ゴジラ」に勢いがありましたね。
さて俳優賞ですが、主演男優賞 は横浜流星さんと鈴木亮平さん、豊川悦司さんのみつどもえとなりましたけど、結局、横浜流星さん。1回目の投票で「ヴィレッジ」と「春に散る」という2作品に主演しましたんで。無気力な青年というのが「ヴィレッジ」で、「春に散る」というのは世界王者を目指すボクサー。幅広い演技を披露してくれましたんでね。昨年、助演男優賞を受賞したんですよね。
鈴木 なるほど。去年助演、今年主演ってことですね。
荒木 そうですね、快挙ですよね。そして、注目の主演女優賞は対象作が「レジェンド&バタフライ」と「リボルバー・リリー」。なんと綾瀬はるかさん。他の女優さんの名前も挙がったんですけど、一回目の投票で圧倒的な票を獲得です。
鈴木 今や大女優ですよね!
荒木 大女優です!委員の一人 荒木久文さんのコメントを、ちょっとご紹介します。「スクリーンに映る彼女の華やかさは素晴らしい。綾瀬さんは内面の演技はもちろん、コメディヱンヌとしても乗馬や殺陣などのアクション女優としても一流の総合力の高い女優さん。まさに今一番輝いています。」と荒木さんは語っています。
鈴木 それは、ただただ好きだってだけですね!大好きだってことですね!
荒木 そういうことですね(笑)。で、助演男優賞は磯村勇斗さん。ほぼほぼ1回目の投票で決定。やはり「月」で、何も罪のない障碍者たちを無慈悲に次々と殺害してゆく職員のさとくん演じているんですね。心優しい彼がなぜこのような殺人者に代わっていったのかという、そのココロの変化を見事な演技で見せてくれました。
助演女優賞、こちらも「月」から二階堂ふみさん。浜辺美波さんやMEGUMIさんの名前も挙がったんですけど、一回目の投票で軽―く過半数に。あの「翔んで埼玉」のももみちゃんとは全く正反対のキャラです。本当にシリアスでした。「希望と絶望が共存する人物」なんですけど、それを演じ切りました。
鈴木 猛烈なコインの裏表ですね。
荒木 そういうことです!いい表現ですね。使わしてもらおう(笑)。
鈴木 あはははは。
荒木 それから新人賞です。例年2人でしたが今年は1人ですね。岩井俊二監督の「キリエのうた」に出演した、映画初出演にして初主演のアイナ・ジ・エンドさん。そのBISHでカリスマ的な人気を集めたアイナ・ジ・エンドさんなんですけど、彼女は初めての作品で一人二役に挑戦しているんですね。 松村北斗くんや黒木はるさん、広瀬すずさんと言うビッグネームたちを相手に一歩も引かない演技で見事でした。6曲の劇中歌も圧倒的なパフォーマンスで観る人を魅了していました。新人賞はアイナ・ジ・エンドさんです。
最後はアニメ作品賞です。「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」です。ゲームの世界感がそのまま表現されている点ですよね。
鈴木 ゲームの映画化って、ゲームの臨場感がちゃんと表現されているかどうかって、ファンはみんな見るじゃないですか。
荒木 そうですね、「グランツーリスモ」もそうでしたけど、そういうものがはっきり込められているかどうかが判断されると思います。
ということで、第48回の報知映画賞の各賞受賞作品なんですけど、全体を通して、今回は意外にすんなり決まったんですね。みなさん見込んでで、前にも言いましたけど、私と渡辺祥子さん以外はみんな忙しくて、普段はあまり映画を見るチャンスも多くないのですが、この時期は、ノミネート作品はほぼ見ていらっしゃると思います。2、30本ありますからね。だから、選考会の朝、目を真っ赤にして、朝までかかってDVDで見てきました…なんていう方もいらっしゃいます。
鈴木 でも、当たり前ったら当たり前ですよね。
荒木 それと、この人こういう傾向の映画が好きなんだろうなーと思われる人が、例えばLILICOさんなんかは、派手好きのハリウッドと思うでしょ。ところが日本の小さな作品が素晴らしいとね。
鈴木 イメージとはまるきり違うんだなあ。
荒木 そうなんですよね。意外性を見られるのもいつものことなんですけどね。来週の月曜日12月11日、都内のホテルで華々しく受賞パーティが行われます。
鈴木 私、何回か行かしてもらいましたけどね。
荒木 昔はダイちゃんにも来てもらったんだけどね。
昔はね、番組を通じてリスナーの方もご招待したこともありましたよね。
鈴木 そうでした。
荒木 ここ2、3年はコロナの影響でダイちゃんにもね、来てもらえない年もありましたけど、今年は例年よりも少し規模は小さいですけど、だんだん元に戻りつつあります。
鈴木 いいことです。
荒木 だから来年は、ダイちゃんもリスナーの方も、このパーティに招待したいと考えております。
鈴木 ありがとうございます。
荒木 もっとも、それまでこの番組が続いたらの話だけどね。
鈴木 ほんとね、続くんですよ!荒木さんがこの世からいなくなるまで続くと思います。
荒木 シュン…(笑)。そろそろ1年も終わりということで、今日の特集は、先日決定した報知映画賞について、一方的に喋っちゃったんですけど。
鈴木 荒木さん、ひとつ質問があるんですけど、審査員11人くらいということなんですけど、正直、派閥っていうか、仲良しグループが1、2、3とかないんですか?
荒木 無いね。みんなバラバラだね。みんな違ってみんないい形式でですね、バラバラですけど、男の人は傾向が似てるかなって感じですね。
鈴木 好みだったり、推す作品が似てるってこと。
荒木 そうですね、ま、見城さんと私は同世代ですし、藤田さんはちょっと若いですけど、そういう感情は似ているかなって思いました。
鈴木 あと、必ず毎年遅刻して来られる方っていないですか?
荒木 ああ!渡辺祥子さん、遅刻してきますね、30分遅刻で。時間違えてたって。
鈴木 あはははは。
荒木 それ聞いてどうすんのよ?
鈴木 渡辺さん、昔、某局でゲストで何回かお呼びして映画の話していただいたことありますから。
荒木 やっぱり遅刻してきた?
鈴木 遅刻は…、ほぼほぼ3分、4分くらいでしたよ、あの時は。
荒木 そうですか。そうなんだよね、あの人前から。知ってる人も出てるんで、大変でしょうあなたも。
鈴木 毎年、荒木さんたちが選んでくれたおかげで流れがあって、我々観る方も、受賞作品。これとこれと、この人好きだからってガイドになるから、こういうのいいですよね。
荒木 まあ、それはあくまで選考委員が選んだものですので。それと報知映画賞も媒体イメージに相応しいものを選んでいるんで、それはやっぱりリスナーさんの好みに合わせて選んでるわけじゃないんで、その辺りは難しいところですね。ま、微妙なところなんですけども、ひとつの参考としてみてもらうといいと思います。
鈴木 なるほど!これ、いい締めじゃないですか。荒木さん、お疲れのところ、ありがとうございます。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。