「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」”モナ・リザ”が巻き起こすダークでポップな逃走劇

(2023年11月1日19:15)

「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」
「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」のチョン・ジョンソ

12 年もの間、精神病院に隔離されていた謎の少女モナ・リザ・リーが、赤い満月の夜に突然ある特殊能力に目覚め、自由と冒険を求めて施設から脱走してミューオーリンズで巻き起こす騒動を描いた異色の映画。

モナ・リザ・リーを、『バーニング 劇場版』でデビューし、Netflix 制作のホラー映画『ザ・コール』やオリジナルドラマ「ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え」でメインキャストを演じるなど、今注目を集める韓国人俳優チョン・ジョンソ。

モナ・リザに偶然救われて家に住まわせるようになり、彼女の超能力を利用するシングルマザーのダンサーを『あの頃ペニー・レインと』、『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』などのケイト・ハドソンが心機一転の汚れ役として演じている。

2 人を追いかける巡査ハロルドに、人気コメディシリーズ『ジ・オフィス』のクレイグ・ロビンソン。「モナ・リザ」に恋する自称 DJ のファズ役に『デッドプール』やザック・スナイダー監督の Netflix 映画『レベル・ムーン(原題)』のエド・スクラインなどのキャスト。

監督は「次世代のタランティーノ」との呼び声が高い、UCLA演劇・映画・テレビ学部卒業のイラン系アメリカ人アナ・リリ・アミリプール。長編監督デビュー作『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』(2014年)がサンダンス映画祭をはじめ世界各地の映画祭で大絶賛され、続く 2 作目の『マッドタウン』(2016年)ではヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞するなど、高い評価を得ている映画監督・脚本家・プロデューサーで、本作でもオリジナル脚本を自ら手掛けた。
撮影には『ミッドサマー』や『ヘレディタリー/継承』などアリ・アスター監督作でお馴染みの名カメラマン、パヴェウ・ポゴジェルスキが参加し、不穏な月が微笑むネオンカラーの街を舞台にポップでダークなおとぎ話を斬新な映像で描いている。

出演:ケイト・ハドソン、チョン・ジョンソ、クレイグ・ロビンソン、エド・スクライン、エヴァン・ウィッテン
2022 年/アメリカ/英語/106 分/カラー/ビスタ/5.1ch/原題:Mona Lisa and the Blood Moon/字幕翻訳:高山舞子
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
© Institution of Production, LLC

■ストーリー

精神病院の個室に両手を拘束する服を着せられて12年間監禁されていた少女モナ・リザ・リー(チョン・ジョンソ)はある赤い満月の夜に突然特殊能力に目覚め、足の爪を切りに来て、彼女をののしり陰湿にいじめる病院職員を特殊能力で倒して、病院から脱走する。ニューオーリンズの街をさまよっているときに、レストランで女に言いがかりをつけられ殴られているストリッパー(ケイト・ハドソン)を助け、彼女の家に転がり込む。最初はモナ・リザを敵視していた彼女の息子の少年(エヴァン・ウィッテン)は、次第に心を通わせるようになる。そうしたなか、巡査ハロルド(クレイグ・ロビンソン)がモナ・リザとストリッパーをある犯罪の容疑で追跡し、予想のつかないスリリングなドラマが展開する。

■見どころ

Netflixの韓国ドラマシリーズ「ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え」で造幣局を襲撃する犯人グループのメンバーをクールに演じていたチョン・ジョンソが、人を操る特殊能力を持ち暴れまわる謎の少女役を熱演し存在感を見せている。また、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた「あの頃ペニー・レインと」(2000年)や「10日間で男を上手にフル方法」(2003年)などのロマンティック・コメディのヒット作が多く「ラブコメの女王」といわれるケイト・ハドソンが、ストリッパー役でセクシーなポールダンスを見せたり、モナ・リザを利用して詐欺まがいの悪事を働くなどの汚れ役を熱演しているのも注目だ。そして息子役のエヴァン・ウィッテンがドラマのカギを握る少年を好演している。
イラン系アメリカ人のアミリプール監督は「アメリカで育った私は、よそ者であることを常に自覚していた。本当の居場所はどこかといつも考え、そんな時に力を与えてくれたのは、ファンタジー映画に登場するヒーローだった」と語っている。そして、「彼らを見ると自分の存在を理解してくれていると感じ、自由を求める気持ちがさらに強くなる。そんなヒーローを描きたいと思い、モナ・リザというパワフルで超自然的な能力を持つキャラクターが生まれた」と、自らの幼少期の経験が大きく影響していることを明かした。そんな監督の思いを込めたモナ・リザは新たなヒーロー像として描かれており、斬新な映像と、軽快な音楽に乗った予想不能なスリリングなストーリーなど「次世代のタランティーノ」の呼び声にふさわしい作品になっている。
(11 月 17 日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかにて全国公開)