2023年映画興行と「PERFECT DAYS」のとっておき情報

(2023年12月23日10:00)

映画評論家・荒木久文氏が2023年映画興行と「PERFECT DAYS」のとっておき情報 を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、12月18日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木      よろしくお願いします。

荒木      残すところ、この放送も今年はあと2回ですね。

鈴木      ほんと!年末じゃないですかー。

荒木      そうですよ。今週と来週は、2023年の映画総まとめとして…ね。

鈴木      そう!そう!そうこなきゃダメだな。

荒木      恒例です。今日は主に日本映画のあれこれ、来週が外国映画部門をまとめてお話したいと思います。海外と日本国内、共通して言えることは復調してきたことですね。ポストコロナが。それに伴い今まで公開を見合わせていた作品が、どーっと来て本数が莫大な数になっています。映画館の取り合い。見ても見ても、次から次から新作が来てほんとに大変ですー。

鈴木      あはははは。荒木さん、仕事的には大変ですね。

荒木      今年の日本映画ってことで、いろいろな面から見ていきますね。今年、2023年に公開された作品で、日本国内の興行ランキング、どの映画が一番入ったかという。11月末現在のデータですけど、ご紹介していきます。
10位は「ワイルド・スピード ファイヤーブースト」、9位「鬼滅の刃」、8位「ドラえもん のび太と空の理想郷」、7位が「TOKYO MER 走る緊急救命室」ですね。6位「ミステリと言う勿れ」、5位に「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」、4位「キングダム 運命の炎」。ベスト3です。3位「君たちはどう生きるか」、2位「名探偵コナン 黒鉄の魚影」ですね。さあ、1位はなんでしょうかね。

鈴木      1位?って、絶対僕が挙げるものじゃないだろうなって…。

荒木      ああ、挙げてみてください(笑)。

鈴木      挙げてみてくださいって笑われてるってどうなの(笑)。じゃあ、絶対ハズれるってやつの、「インディージョーンズ」にします。

荒木      ブー!。

鈴木      あはははは。

アラキンのムービー・ワンダーランド/2023年映画興行と「PERFECT DAYS」のとっておき情報
「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」((C) 2023 Nintendo and Universal Studios)(配給:東宝東和)

荒木      1位は、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」ですね。

鈴木      うわぁー!そっちか。それか!

荒木      そうなんですよ。興行収入140億ぐらい。今後「ゴジラ-1.0」なんかが挙がってくるんでしょうけど。実質は、去年公開された作品を含めてカウントすると「ファーストスラムダンク」が157億円で第1位なんですけどね。今年公開の映画だと「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」ということになりますね。で、映画全体の売り上げが、今年は2300億円くらいになりそうですね。2019年が一番よかったんですけど。

鈴木      コロナの前の年だね。

荒木      そうですね。そのあと落ち込んで、ようやく復調してきたって感じですね。2300億というと、ラジオ業界全体の売上の約2倍ですね。 特徴としては、ここ数年アニメ映画が全体を牽引しているんですよね。 今お話ししたように、アニメが4位まで独占ですね。

鈴木      すごいなー。

荒木      すごいですよね。アニメのスーパーヒットが興行シーンを牽引していくってのは、去年も一昨年も変わらないんですね。

鈴木      実写映画しかなかったら、これはまたえらいことになりますよね。

荒木      そういうことですよ。で、特徴の2位としては、テレビ局が作るドラマが中心になっているんですね。「キングダム 運命の炎」から「ゴジラ」でしょう。それから「劇場版TOKYO MER」とか「ミステリと言う勿れ」。これがわりかしヒットが生まれたんです。近年ヒットに恵まれなかったんですよね、テレビ局制作のドラマ映画が。 ところがここに来て、ちょっとテレビ局が上手く作ってですね。 逆にいうと、映画界がテレビ局頼みという感じですかね。

鈴木      うーん…、いいのか悪いのかよくわかんないね。

荒木      わかんないねー。もう一つの特徴は、外国映画も苦戦しているってことです。ローカリティ志向が強いというか…。日本の中で見てみると、昨年は「トップガン」がスーパーヒットしたんですが、今年のベスト10の中には、「ミッション:インポッシブル」と…まあそれくらいしか入ってないんですよね。

鈴木      トム・クルーズ様様だね。

荒木      そういうこと。「ワイルド・スピード」が10位ですけど。洋画は依然苦しい状況です。もう何年もですよね。

鈴木      どうしようもないんですかね。

荒木      そうですよね。あとでちょっとその辺もお話したいと思います。あと、トピックスとしては、福田村事件がスマッシュヒットなんですよね。こういう真面目な映画っていうか、地味な映画が地方のミニシアターの頑張りもあってこういうことになったということですね。
もうひとつのハイライトとしてはですね、「PERFECT DAYS」という映画が、96回米国アカデミーの国際長編映画賞の対象となる日本代表作品に選ばれたということです。 この作品は役所広司さんが主演し、今年のカンヌ国際映画祭で日本の俳優として2人目となる男優賞を受賞していますね。12月22日の公開予定ですけどね。ということで、今年の日本映画、ダイちゃんにも聞いていきたいんですけど。ダイちゃんは、日本映画、これ1本!ということで見たらしいですが…。

鈴木      今年の邦画ってこれしか見ていんで!あの「ゴジラ-1.0」ですよ。

荒木      どうでしたか?

鈴木      面白かった!ヒューマンストリーとしても出来ていたし、あと、ゴジラそのものが怖いし、眼力がめちゃめちゃ強くて、睨んだら悪者のゴジラの魅力が満載だったなって感じだったな。

荒木      そうですよね。本当によく出来ていましたよね。私が関わった報知映画賞、作品賞でいいんじゃないかって話しが出たくらいですから。

鈴木      すごいね!それ!

荒木      人間ドラマがきちんと描かれているってことがあってね。ということは、「ゴジラ」ナンバー1ですね。

鈴木      ナンバーワンですね!

荒木      私も「ゴジラ」いいと思いました。他には、私が個人でいいなと思ったものを言っていいですかね?

鈴木      教えて!教えて!

荒木      邦画ではですね、「658KM 陽子の旅」、ここで紹介したと思うんですけど。あとは「アンダーカレント」とか。「バッドランズ」もよかったし、「エゴイスト」とか「怪物」、それから「福田村事件」ですね。それからさっき言った「PERFECT DAYS」。アニメで目立ったのが「BLUE GIANTS 」という、大人向けの音楽映画でしたね。 これよかったですね。今から配信にいく部分もあるんで、これ、よかったら見て頂きたいと思うんですけどね。

鈴木      これから、結構見られますよね。

荒木      で、今年お亡くなりになった映画の関係者の方もたくさんいたんですが、まず、松本零士さんですね。 「宇宙戦艦ヤマト」。それから、個人的には一緒に仕事をしたことのある、映画の原作を何度も手がけた、作家の伊集院静さん。それからなんと言っても、高橋幸宏さん、坂本龍一さん。あの2人。特に坂本さんは映画界にも大きな営業を及ぼしましたからね、ショックでしたね。ということで、ご冥福をお祈りしたいと思います。

 (笑)話しかわるんですが、さっき話題に出ました、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出されて、役所さんが男優賞を受賞した作品、これドイツと日本の合作映画なんですけどね。

アラキンのムービー・ワンダーランド/2023年映画興行と「PERFECT DAYS」のとっておき情報
「PERFECT DAYS」(12 月 22 日(金) より TOHO シネマズ シャンテほか全国ロ ードショー)(配給:ビターズ・エンド)(ⓒ 2023 MASTER MIND Ltd.)

鈴木      ドイツと日本ですか。

荒木      そうなんですよ。「PERFECT DAYS」。もうご存じかと思いますが、「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」などで知られるドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースが、東京・渋谷と浅草を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎを描いたドラマなんです。ヴィム・ヴェンダースから見えた東京が舞台になってるんですけど。 主人公の平山っていう男は、トイレの清掃員として渋谷で働く無口な人なんです。 淡々とした同じ毎日を繰り返しているのですが、彼にとって日々は常に新鮮な喜びに満ちているということなんですよ。昔から聴き続けている音楽と、古本の文庫を読むことが楽しみです。ほんとに風に揺れる木のような人生です、見てると。いつも小さなフィルムカメラを持ち歩いて、木々の写真を撮っているというね、非常にストイックで規則正しい人なんですね。 ところが、ある日思いがけないある人との再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少し明らかになっていくという…ドラマですけど。一言で言うと、とにかく今年の超トップクラスに入る作品だと思いました。

鈴木      超トップクラス!ですか。

荒木      そう。下手したら1番か2番かも。そんなところですね。

鈴木      え!?え!?荒木さん絶賛?

荒木      絶賛です。まず、いたるところにヴェンダーズが、監督がですね、 勝手に師匠と呼んでいるという、日本映画の小津安二郎に対する敬意とオマージュを感じるんです。平山というネーミングは、かつて、笠智衆さんがやった役名だったんです。 カメラワークやそのリズムやテーマに至るまで小津さんに対する敬愛が満ちてます。 そして、やはり役所さんの演技が素晴らしいんです。一人の場面が多いので、もともと無口なうえに喋らないんで、ほぼほぼ顔の演技というか表情の演技です。心境を顔の筋肉で表現しているんですが、もちろん大仰な芝居ががったものじゃなくて、微妙な動きがすべての感情を物語っているっていうね、私の貧しい表現力では言い表せませんが、この人は、改めて日本役者の宝だなと思いました。

鈴木      おおー!!凄いわ。

荒木      俳優と監督がね、一流同志がうまく融合するとこのような見事な作品に昇華するのだとも感じました。

鈴木      大絶賛じゃないですか!

荒木      今年最後で。もうひとつ注目は、この作品の音楽関係。 主人公の平山は毎朝早くに仕事に向かう首都高で小型のバンに古いカセットデッキを載せているんですよね。それで好きな音楽を聴くのですが、これが実に泣かせるんです。 首都高を走る小さな車から流れる…、この東京の街をバックに走るんですけども。ヴェンダースが持ってきた音楽が、アニマルズ、ヴェルヴェット・アンダーグランド、ヴァン・モリソン、ローリング・ストーンズ、パティ・スミス、ニーナ・シモン…、そして休日の部屋で流れるのはルー・リードの♪PERFECT DAYなんですよ。

鈴木      役所さん、カッコよくなっちゃうじゃないですか!

荒木      そう、カッコいいのよ。それで、首都高の、どちらかというと無機質な風景が音楽で生き生きとして輝くんですよね。ヴェンダース自身がね、日本の首都高が好きで、もちろんこの人の映画、全部自分で選曲するんですけどね。

鈴木      サントラもいいんですよね。

荒木      いいですよね。それともうひとつ、トイレなんですけど。映画には渋谷区の最新のデザインされた斬新なトイレがたくさん登場するんです。 透明なんですけども、中に入ってカギをかけると不透明になるというガラスのトイレとかね。お仕事に関しては、ちょっときれいごとすぎるかな?という感じもしないでもないんですけども、便器の会社、TOTOなんですけど、TOTOとUNIQLOかな。 もちろん制作に関わってあるんで、これはこれでいいんですけど、見ていても楽しいです。で、他にも意外な人が出ます。田中泯とかね、石川さゆりが歌を歌ってますね。

鈴木      え?!え?!

荒木      それも、外国の歌を日本語で歌うんですでどね。これは素晴らしいですよ。

鈴木      これ見たーい、見たくなるね。

荒木      見てください。もしかしたら、何も起きないことが嫌だっていう人がいると思うんですけど、本当に静かでそぎ落とされた物語っていうのかなあ。いいですよ。とっても

鈴木      凄い、凄い!そうなんだ。

荒木      この私が、ほんわか柔らかい気持ちになっちゃってるのが、びっくりしましたよね。

鈴木      あー、凄い映画だな。

荒木      是非、機会があったら見ていただいて、感想をお寄せください。とにかく、ここにきて素晴らしい映画に巡り合ったっていう感想がありますね。「PERFECT DAYS」、12月22日公開です。

鈴木      山梨の皆さんにも、是非見ていただきたいですね。

荒木      はい。

鈴木      荒木さん、ナイスな感じのラス前じゃないですか、これ!ありがとうございます。

アラキンのムービー・ワンダーランド/2023年映画興行と「PERFECT DAYS」」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊨と鈴木氏)

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。

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