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映 画
「未体験ゾーンの映画たち2022」と2021 年ベスト映画のとっておき情報
(2022年1月15日10:00)
映画評論家・荒木久文氏が、「未体験ゾーンの映画たち2022」と2021 年ベスト映画のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、1月10日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 荒木さーん、よろしくお願いいたします。今日は成人の日ですよ。
荒木 そうですね。 若い人たちは、これから未体験の世界を体験して大人になっていくと思うのですが、いい体験をしてほしいですね…?!
鈴木 なんですか??それ、あはは…。
荒木 あはは…無理やり次の話題と結びつけようと思うとおかしくなっちゃうねー。
今日は毎年ご紹介しているイベント、「未体験ゾーンの映画たち2022」についてお話ししようと思います。
この「未体験ゾーンの映画たち2022」は11回目を迎える、例年 この時期の名物イベントです。
東京地区は渋谷のヒューマントラストシネマ渋谷で行われます。
昨年も紹介しました。もう6、7年やってますよね。おなじみです。
このイベント知らない方のために、「未体験ゾーンの映画たち」とは何か?とちょっとご説明しますね。
日本で、映画は年間1000本以上公開されているといわれています。ところが それでも一般公開されていない作品が非常に多いんですね。有名な俳優さんが出演していないとか、出ていても宣伝予算が確保できないなどの理由で、劇場公開が見送られ、DVDだけ出版するもの、または全く公開されない、つまりお蔵入りしまう作品が多くあるわけです。
ところが中には、これは、傑作!!と思われるものとか、マニアックな作品、そして変わった作品もたくさん
あり、それらを配給会社などが、「ほんと、もったいないからぜひスクリーンで鑑賞して欲しい!」ということで開かれるのが、このいわば、「このままじゃもったいない映画の上映しちゃおう映画祭」が、この「未体験ゾーンの映画たち」なんですね。
今年の期間は先週金曜日からスタートして2月の24日までです。27本の作品が揃いました。
今年の傾向としては コメディとか おバカ怪獣ものではなく、本格的ホラーサスペンスが多いのが特徴でしょうか?
鈴木 あはは…本格ホラーサスペンスですか?
荒木 はい、まあ いつも言っていますが、デパートの高島屋や三越ではなく、ビレッジヴァンガードやドンキホーテ的楽しさがあふれるイベントですよー。
鈴木 大好きですよ、そっちの方が…。
荒木 今日はとりあえず いくつか1月前末までの作品からいくつかご紹介しましょう。
まず現在公開中から「ヤクザプリンセス」という日本・ブラジル・アメリカの共同制作映画。サンパウロと大阪を舞台に家族を殺したヤクザ一味に復讐を誓う女性の物語。伊原剛志さんも出演するそうですよ。
1月21日から公開の「アクセルフォール」という映画は地上500メートルからエレベーターが急降下を繰り返すというお話。謎を解かなければ死が待っているという…考えるだけでも怖い話です。
もう一本同じく1月21日公開 一人の少年が殺人鬼になるまでの物語です。
「キラー・セラピー」という作品。息子の凶暴性を心配した父親が、彼を病院に連れて行くのですが、秘密のセラピーは少年を闇の世界にひきずり込んでいくというスリラーです。
鈴木 ひえーやだなー…。
荒木 そして 私が見せていただいたのは1月14日から公開の「ザ・ビーチ」というタイトルの作品。人里離れたきれいなビーチへ休暇を過ごしにやって来た若いカップルと中年夫婦の二組。
楽しい時間を満喫する彼らでしたが、そのうちにビーチに深い霧が漂ってきました。そのうえ海岸には気味の悪い生物が打ち上げられます。そのうちに周りの人々は正気を失って肉体も気持ち悪く変形してきます。
不可解な出来事が相次ぐ中、若いカップルのふたりは、自分たちが何かに寄生されていることに気づいていきます。美しいビーチを襲う不気味な寄生生物の恐怖を描いたホラー。とにかく気持ちわる系の怖いタイプの作品。
怖いのは比較的平気だよという人も気持ち悪いのが加わってますから、ちょっと、怖さが違いますよ。
その寄生生物って言うのが、不気味で、不気味で…。こういうの好きな人いますよね。
鈴木 それって エイリアン的な感じですか?
荒木 そうですね、もっと凝縮した気持ち悪さですよ。「ザ・ビーチ」という作品
このイベント…たくさん作品がありますが、迷っちゃいますね。
「未体験ゾーンの映画たち」は2月末までです。きょうは1月末までの作品をいくつかご紹介しましたが、
プレゼントとして3組6名に招待券のプレゼントをさせていただきますね。
次は2月公開の作品を中心にまとめて紹介します。
鈴木 毎年面白いですよね。「未体験ゾーンの映画たち」。楽しみです。
荒木 はい、番組後半は、昨年暮れから呼びかけていました2021年 BUMPY的ベスト映画という企画で、ラジオお聞きのあなたが昨年2021年見た映画作品の中でベストと思われるものを挙げてください。というものでしたが、ダイちゃん、皆さんからいただいていますか?
鈴木 はい、はい リスナーさんからたくさんいただいています。私の方からメールをご紹介いたします。東京千代田区のラジオネーム「ときさん」から「2021年 24本の映画を劇場で見ました。コロナで劇場に足を運ぶ回数が減りましたが、意外に見ているなという印象です。その中ではベストは、やはり『007』が、待ってましたのナンバー1でした。とにかくダニエルのボンドを目に焼き付けました。かっこよかったです。
そのほかには、やはり『マトリックス』でした」というのが「ときさん」です。
荒木 はい、「ときさん」洋画の王道を行っていますね。
鈴木 「2021年は続編が目立ちましたが、今年もたくさん映画が見たいです」という、「ときさん」でした。同じように「007」がもう一人、横浜にお住いの「ゆきさん」です。「昨年はコロナの影響で洋画がなかなか公開されなかったので、邦画をよく見ました。だけど、やはり『007』は初日に映画館に行きました。たまらない1本でした。また、邦画をたくさん見ましたので、その良さを実感しました。心にぐっと来たのは『花束みたいな恋をした』です」。
荒木 なるほどね、この番組でも紹介させて頂きました。
鈴木 「SF、ドンパチも好きなんですが、こういった良質なラブストーリーも心に潤いをくれます」
…という素敵なお便りです。
そしてこちらは甲州市塩山にお住いの「きょーこ」さんですね。「ダイさん 私の2021年のベストは『ワイルドスピード ジェットブレイク』です。鬱々とした気分をすきっとさせてくれました。音楽もよくって、そのムードでこの2021年を乗り越えることができました。映画の力ってすごいですよね。あと、うちの小学生の娘に聞いたら、ベストは『竜とソバカスの姫』だそうです。子供たちも映画館で映画を観るようになって映画好きの母としてはうれしいです」…というものです。
鈴木 どうですか?「007」、多いですよね?
荒木 ダニエル・グレイグの007シリーズ最後の集大成としての華やかさがありました。 報知映画賞でも外国映画作品賞でしたから、当然と言っては当然なんですが…多分、ダイちゃんも?
鈴木 そうですね。僕は圧倒的に2021年ナンバーワンは「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」です。
荒木 私もベスト5には入れていますよ。
鈴木 ベスト5? それどうなんですか?
荒木 あの、まあ、わたし、 見方が違ったりする部分があって、えー、なんなのそれ?という事がよくありますからね。
鈴木 職業的に「007」を1位にしたらダメなんですかね?
荒木 いやいやそんなことないですよ、現に報知映画賞の時は圧倒的に第1位に押していましたよ。選考委員としてはね。だけど 私が個人として選ぶのはまたちょっと違っていますからねー。
鈴木 それちょっと教えなさいよー。知りたいですよ。
荒木 そうですか、それじゃ私の選んだランキングですが、洋画部門から 5位は「南山の部長たち」という韓国映画。4位は「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」、3位が「ラストナイト・イン・ソーホー」、2位 「悪なき殺人」。そして1位はなんと、ディズニー映画の「クルエラ」、やたら気に入りましたよ。
次は邦画部門。5位「弧狼の血 LEEVEL2」、4位 「すばらしき世」、3位「ドライブ・マイ・カー」、2位「由宇子の天秤」、そしてトップが「偶然と想像」。
トータルでいうと個人的には日本映画の「偶然と想」が今年のナンバーワンでしょうか?
去年は318本ほど見ていますが、2021年公開の作品は290本ぐらいですかね。
鈴木 そんなにたくさん見ていて荒木さんのトップテンに入るというのはそれだけですごいことですよね。
荒木 私はね、職業柄ですか、その監督の作家性だとか、変なところにこだわる部分がありますかね。みなさんの言うように、見て、楽しい。基本それでいいと思います。それが映画の原点ですよ~ね。
そういうことでいいですよね、「007」、「マトリックス」、“みんな違ってみんないい”ですよね。
自分の映画という事で、皆さん選んでいらっしゃる。素晴らしいと思います。
鈴木 1位の「クルエラ」と「偶然と想像」、どこがそんなに良かったんですか?
荒木 「クルエラ」は単純に女優かな、あはは。「偶然と想像」は今年話題の濱口竜介監督作品。
昨日発表の「米映画批評家協会賞」で4冠でしたよね。「ドライブ・マイ・カー」ですが、これすごいことで、
この賞の作品賞、20年は「パラサイト」21年は「ノマドランド」、そのままアカデミー賞作品賞ですよ。
鈴木 これはちょっとすごいことになるかもしれないですよね。
荒木 もしかしたら…という夢も広がりますよね。
この「偶然と想像」という作品には濵口監督の本質というか、特徴がよく表れていると思うんです。脚本、構成、発想や着想点 難しい会話劇ですけど、カメラワークや役者の使い方も素晴らしいなという事で、分析的に一位に選ばせて頂きました。
鈴木 なるほどねー。
荒木 濵口作品の入門編としては一番いいんじゃないですかね。テイスト、エッセンスがしっかり詰まっているという感じですかね。
鈴木 濵口作品を見たことのないリスナーさんが見るにはいいですかね?
荒木 そうですね。難解ではありません。笑いがあるし、コメディ的な要素のある作品なので、これから濵口監督が話題になった時も参考になりますよ。
鈴木 今日は、2021年の私のベス映画というテーマについて、リスナーの方々からのメールをご紹介しながらお送りしました。荒木さんこれからもこうしたリスナーを巻き込んだ形でやっていきましょうね。
荒木 よかったですね。楽しかったです。ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。