4月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦

(2024年4月9日19:45)

文化放送「上地由真のワンダーユーマン」(月曜午後9時30分)でパーソナリティ―の上地由真と映画ソムリエの東紗友美さん、映画評論家の荒木久文さんの3人が4月のおすすめ映画を紹介して見どころを解説した。同番組では毎週テーマを設け“由真的”テイストで進行。毎月第1週目は「今月のシネマログ」と題し、その月に公開される話題の映画作品を上地由真と映画の専門家2人が紹介する。今回は4月1日の放送で「プリシラ」などが紹介された。

上地    上地由真のワンダーユーマン!今週もよろしくお願いします。 今日は月に一度の映画をフューチャーする回、題して「今月のシネマログ」。 映画ソムリエの「さゆみん」こと東紗友美さん、そして映画評論家の荒木久文さんとお届けしていきます。 よろしくお願いします。

荒木・東  よろしくお願いします。

上地    今日、エイプリルフールですよ。なんかエイプリルフールにちなんだ作品とかってあるんですかね?

東     あ~、あれ!8年前くらいに『エイプリルフールズ』っていう映画が公開されたんですけど、群像劇でね。もういろんな人たちの噓が絡み合っていくお話でね、松坂桃李さんが結婚詐欺師とか演じた…面白かったです。

荒木    どんどんどんどん繋がってね、噓が。

東     まさに4月1日におすすめしたい映画です。

上地    見てみてください。4月公開の映画の中から、私、上地由真とさゆみん、そして荒木さんの三人が「これはおすすめ!」と思った作品をご紹介していきます。まず、さゆみんからお願いします。

4月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
「プリシラ」(2024年4月12日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー)( 配給 : ギャガ)( ©The Apartment S.r.l All Rights Reserved 2023)

東     はい。私がご紹介するのは、4月12日から公開の『プリシラ』です。 世界的なアーティスト、エルヴィス・プレスリーの妻を描いたドラマです。 14歳のプリシラはスーパースター・エルヴィスと出会い恋に落ちる、彼の特別になるという夢のような現実を手にします。魅惑的な世界に足を踏み入れたプリシラにとって彼の色に染まり彼のそばにいることが彼女のすべてだったのですが、少しずつ2人の間に溝が生まれ始めます。プリシラとエルヴィスの関係はどうなっていくのでしょうか・・・? というお話なんですけども、こちら1985年に出版した回想録、プリシラ本人が書いた『私のエルヴィス(Elⅴis and Me)』を基にした作品なので、もう完全にプリシラ目線の映画だったのが非常に興味深かったです。
なんならエルヴィスの顔が全く印象に残らないぐらい、もう完全にプリシラの物語になっていました。やっぱり世界的なスターとか大スターとの恋愛って女子なら一度は憧れるじゃないですか?でも現実ってこんな超ビターなんだろうなって思ったりしましたし。 有名人との恋愛を甘いテイストで疑似体験することとかは、これまで私、織田信長と付き合ってたこと、ゲームとかであるんですけど。

上地    あはははは!

東     あるんですよ。でもすごく甘かったんですけど、現実ってもっとビターだなって体験させてくれる映画で。あとこの映画、めちゃくちゃすごいと思ったんですけど、見終わった後ね、ソフィア・コッポラという女性監督の作品なのでインテリアもヘアメイクも衣装も何もかも可愛いんですけど、こう言って語弊がないといいんですけど・・・ 何も残らないですよ。なんかまっさらな気持ちというか空虚感があって。で、何も残らないっていうのが、当時プリシラがエルヴィスとの生活で感じていた空虚感を追体験させられたんじゃないかなって思うほど、これさすがコッポラだなと思って。本当に有名な人との恋をビターな側面から疑似体験するっていう、これ案外初めての経験だったんじゃないかなって、私、思って。

上地    たしかに。言われてみると、そうですね。

東     そうなんですよ、あの空虚感。体験しちゃったんですよ。由真さん、どうでしたか?

上地    いや、プリシラ演じていた…ケイリー・スピーニーさん…。

東    はい。もう少女から大人までのね、女性を繊細に演じ分けられていたのが本当にすごいなと思いましたし。あとね、ファッションがね、またね、どんどん変わっていくんですよ。

上地    エルヴィスの好みのファッションに変わっていくというか。

東     いいこと言った!そう、シャネルとかヴァレンティノが提供した衣装もね、ファッション誌をめくるように楽しいですし。

上地    だからもう60年代、70年代のセレブなファッションを見ているだけで楽しいなっていうふうに思いましたね。

東     すごかったですよね。さっき言ってくれたケイリー・スピーニーさんは朝はドイツ時代のプリシラ、15歳の時を演じて、午後にはグレイスランドで妊娠していた20代を演じていたり。本当にお芝居も…顔もね、非常に可愛らしい。

上地    可愛いんですよ~!

東     ね!可愛い方なんですけど、繊細なお芝居いいな、なんて思って観ていましたが…女心がわからなさそうな荒木さん?

上地    あっははは!

荒木    いや、わかり過ぎて…何もできないね。

上地・東     わかりきってるのかい!(笑)

東    どうですか、『プリシラ』は?いかがでした?

荒木    もう、そういう意味じゃですね、一昨年でしたか、バズ・ラーマンのね。 『エルヴィス』と対を成すというかですね。非常にここではエルヴィスがアーティストとして、そういう意味じゃ立派な人間としても描かれていたのですが、こちらでは逆ですよね、全く。クズ男。プリシラをお人形さんとしか見ていない。

上地    たしかに…。

荒木    自分好みの女に育てるというかね、そういう視点で非常に制圧者というか抑圧者として描かれていましたよね。

東     そうですね。

荒木    ちょっと 気になったのは、私、1970年代はちゃんと物心ついていましたので、当時の結婚の事情とか写真なんかも見たんですけども…。

東     気になる!どうですか?当時を知っていた…。

荒木    そうですね、ケイリー・スピーニーちゃん、可愛くっていいんですけども、ロリータっぽくて。本物の当時のプリシラはね、もっと大人びていましたよね。

東     妖艶な色っぽい印象もありますよね。

荒木    ちょっと歩き方なんかもね、よちよちで。で、身長差が40センチくらいあってジェイコブ・エロルディというプレスリーをやった方は196センチあって、ケイリーちゃんは155センチしかないんですよ。だから40センチも差があって。いつもしがみついて上を向いている感じですよね。

上地・東  うんうん。

荒木    あれは抑圧だとか、こう上下関係みたいなものを表しているんでしょうけど。本物のプリシラは163センチあって、エルヴィスは180センチちょっとですから、20センチくらいしか差がないんですよ。だからもっと大人っぽくて非常にリアリティがあったという気がしましたよね。 プリシラはね、離婚後、いろいろ映画にも出ているんですよね、『裸の銃(ガン)を持つ男』というおバカ映画でしたけど、どたばたコメディですけど、3作とも重要な役で出ていましたよね。演技の方はね、演技力を要求されるような映画じゃないので、あはは!という感じでいたけどね。なかなか面白いですよ。

東     見てないんですよ、それ。

荒木    面白いですよ。まあそんな感じでですね、最後ね、東さんが言ったように何も残らない空虚な感じで。私も初めて気がついたんですけど。たしかにそうだな~っていう。

東     ソフィア・コッポラさん自体は純真だった女性がタフな精神性を手に入れる物語が大得意だから、もっと描けるんだけど、あの同じ気持ちを味わってほしくて、そういうような、ああいう演出に今回したのかなって。やっぱり彼女の手腕がすごいなって思いながら観ていたけどね。

荒木    逆に言うとね、その後をもう一度コッポラに描いてほしいなと思いますよ。

東     たしかにー!ね!ドラマありますもんね。

荒木    プリシラは1973年に離婚してからその後、空手の先生と同棲するんですよね。

東     へ~!あ、でも見たことある。

荒木    写真家とか弁護士だとか美容師とか、いろいろ交際していくんですよね。

上地    おお、すご~い!

東     それ聞いただけで、より興味持ちますね。

荒木    で、1978年頃にマイケル・エドワーズというモデルと同棲していたんですが、なんとその時、映画で赤ちゃんだったリサ・マリーがですね、12,3歳になっていて、そのマイケル・エドワーズと関係が出来ちゃうんですよ。

上地    えっ・・・なんてこった!

東     あっ!それ、どこかで聞いたことある。すごい話ですよね。

荒木    子どもの頃のリサ・マリーにとっては母親のプリシラはね、しつけには厳しいくせに、自分は奔放でめちゃくちゃやっていることに反発して、ダニー・キーオっていう人と結婚するんですよね。それで娘と息子が生まれるんですけども、彼女は歌手として活動するんですけども、その後キーオと離婚して、あのマイケル・ジャクソンと結婚するんですよね。

東     ああ、そっか。すごいな、相関図が欲しい(笑)

荒木    その後はニコラス・ケイジと結婚する。 で、その後もう一回結婚して離婚する。4、5回やっているんですよ。そして去年の1月12日に病気で亡くなってしまうんですね。で、その後まだ続きがあるんですよ。

東     え…。

荒木    リサ・マリーの遺産をめぐって争いが始まるんです。それはなんとリサ・マリーの娘のライリー・キーオという、まあ孫娘…。

東     そっか、そこも!ライリー・キーオも繋がるんですね。今、ハリウッドで活躍されている…。

荒木    そう。おばあちゃんであるところのプリシラと、そのリサ・マリーのことで財産争いをする。どうやらそのあたりのことはですね、去年の5月くらいにプリシラが満足する形で決着がついているんですけどね。まあ人生いろいろありますよね。

上地    すごいですね。もうこれだけで本当に映画になりそうな。

東     そうですよね~、たしかに(笑)いや~、そんなプリシラの人生、幕開けともいえる映画『プリシラ』ぜひ観ていただきたいです。私、東紗友美がご紹介したのは、4月12日から公開の『プリシラ』でした。

上地    続いては、映画評論家・荒木さんのおすすめ作品です。

荒木    はい。私はですね、もう公開中なんですけども、3月29日公開の『オッペンハイマー』もうこれはですね、観た人みんな、難しいって言っていまして。 こちらにとっても、まあなんとも説明、解説しにくい作品でもあるんですけど。やらないわけにはいかないので(笑)まあ逆に言うとですね、これから『オッペンハイマー』を観るために、これだけは知っておいた方がいいということをですね、ちょっとお話したいと思います。

上地    はい。

荒木    この映画、正直わかりにくいんですよね。まずですね、一言でいうと説明なしの不親切映画です。何の説明もない…。まずね、ノーラン作品はことごとく複雑で難解なんですよ。『インセプション』なんかそうだったんですけども。時間の遡及というか逆転とかですね。こう遡ったりこっちへ来たり激しく使っていますよね。 それからふたつめ、この『オッペンハイマー』、専門的分野にどっぷりで原子物医学の世界。もう難しい単語が連発されます。 3つ目は登場人物が多いんです。しかも50人以上いるんだけど、しかもその人物に対する説明が全くないんです。その上で政治的歴史的な要素が含まれていて、しかも原爆投下の評価が分かれるというね。そういうお話なんですよ。

東     これは今年のアカデミー賞、作品賞、今年のハリウッドのトップをいった作品なので、私も大変楽しみにして観たんですけども、難しかったんですけども、全部わからなくても世界観には入れるかな、っていう印象で。あと私がね、突出してこの映画について言いたいのは、去年の夏、この映画『オッペンハイマー』と映画『バービー』がネットでミームで、なんだろうな・・・画像を作ってしまって。日本では大炎上してしまって、今もう世界のすべてで、去年の7月公開ですからね『オッペンハイマー』すべてで公開しているにも関わらず最後まで日本では公開されず、今回3月29日現在も公開されているんですけど、ようやく公開になったんですけど。実際、箱を開いてみるとそんなに、実際長崎と広島に落とされるシーンはないですし、実験のシーンでちょっとね、緊迫感ある原爆のシーンはあるんですけど、問題ないとまでは言えないんですけど、日本人の方も観るべき、観て今と向き合うべき。やっぱり過去からしか学べないこともありますし、観て大丈夫かな、と。トラウマになるとか、そういうタイプの作品ではなかったかなという印象がありましたね。

荒木    今の話でいうとね、原爆の悲惨さが表れていないんじゃないかっていう批判があるんですけど。だけどね、ちょっとやっぱり疑問があると思うんですよね。 オッペンハイマーという人物を描いた映画作品に必ずしもそれを入れなきゃいけないのかどうかという議論がありますよね。つまり例えば、日本がアジアの国を侵略した時に戦争映画があったとすると、なんでもっとアジアの人をひどい目に合わせたものを入れないのかという批判が中国とか韓国から出る、そんなものに繋がりかねない。 だからそういう意味でいうと、悲惨さを入れ込むことで作品としてどうなのかどうか。映画はね、監督のものですから、監督の考えを入れればいいことであって、それに対していろいろ言うのはね、もちろん言ってもいいし、そういう意見があることは確かだけど、だからといってこれはダメだというふうに決めつけない方がいいと思いますね。

東     そう、たしかに原爆の恐怖は描いていないんですけど、私がちょっとショックだったのが、その後、フラストレーションとストレスでいっぱいになっていくオッペンハイマーが描かれるんですけど、そっちのどんどん心が壊れそうになっていく描写の方が私はR指定がつく理由なんじゃないかって。実際は違うんですけどね、そこじゃないんですけど。そのくらいそうやって自分の過ちを描いたドラマになっていると思うので、その原爆が写ってないことがどうとかを語る話じゃないなって改めて思ったんですけど。

荒木    そうですね…途中になっちゃいましたけど、まずね、この映画の時間軸って3つあります。まず本人の人物の描写ですね。大学生の頃から学者になって原爆に関わっていく部分で、まあここがメインですね。カラーで時系列で出てきます。
2番目、1954年に彼がソ連のスパイ容疑をかけられた聴聞会の部分が出てきます。 これが狭い部屋でいろんな人に尋問を受けているパートですね。これで共産主義者のレッテルを貼られて、以降厳しい管理下に置かれるっていうことですね。
3つ目はその後1960年代ちょっと前、原子力委員会の当時の高官でルイス・ストローズっていう人がいます。これが例のロバート・ダウニー・Jrですね、助演男優賞を獲った、この人が議会で聴聞を受けているシーン。この3つがなんていうの?川の流れが混じるように・・・ 女の子の三つ編みの髪みたいな、そういう感じで出てきて。しかも、前にいったり後ろにいったり時間軸が…。

東     ぐちゃぐちゃにね、もうなるから(笑)

    上地    うわ~!ややこしそう。

荒木    ちょっと油断すると、えっ、今どこなの?私、今何を見ているの?っていうことになっちゃうんです。

上地    置いていかれちゃうんだ。

荒木    はい。だからもっとね、わかりやすくしてほしいって言うんですけど、これがノーランなんですよね。だから一生懸命観ること。つまりカメラの…スクリーンを見て、カラーの時は、あ、これは時系列でやっているんだなって、白黒の時はこうだな、ということをまずは頭に入れていくことが大切ですね。 もっと楽しみたいっていうか、よく観たいっていう人は、まあマンハッタン計画とは何だったのかとかね、第二次世界大戦のその原発競争とかアメリカ共産党の当時の状況なんかをよく見て知っていると、映画館を出る時に「ああ、ちょっとよくわかったな」で「あ、何もわかりませんでした」で出るよりはお金払った価値があるんじゃないかな。

上地    たしかに。 ちゃんと体に浸透させないと。

荒木    だからね、努力しないとダメ。

上地    努力して観ないとダメ?(笑)

荒木    まず しっかり観ることと、それから予備知識を入れて行くこと。 映画の楽しみ方ってたくさんあるから、人それぞれでいいんですけど、私はよく勉強して予習をしながら観ると、とってもすごい素晴らしい映画として楽しめるんじゃないかなと思います。

東     なるほどな~。たしかに映画と両想いなれる方法ですよね、調べるということは。

荒木    ということでね、今日はちょっと、映画の見方なんて偉そうにお話ししちゃいましたけど、私がご紹介したのは、今公開中の『オッペンハイマー』という作品でした。

4月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
「パスト ライブス/再会」(4 月 5 日(金)TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開)(Copyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved)(配給:ハピネットファントム・スタジオ)

上地    トリは私、上地由真のおすすめ作品です。 私がご紹介するのは、4月5日から公開の『パスト ライブス/再会』という映画です。 すれ違う男女の24年間を描いた大人のラブストーリーです。
あらすじです。ソウルに暮らす12歳の少女のノラと少年ヘソン。2人はお互いに恋心を抱いていたのですが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまいます。 そして12年後、24歳になりヘソンは兵役を終え、ソウルで大学生になっています。そしてノラはニューヨークで脚本家として活動していました。お互いがどうしているのか気なっていた2人はフェイスブックを通して連絡先を知って、オンラインで再会を果たします。そして頻繫にビデオ通話をし、心を通わせていくのですが、ノラの執筆とニューヨークの生活に集中したいという思いから、2人は再びすれ違ってしまうんですね。 そしてさらにそこから12年後、36歳になったノラはアメリカ人の作家・アーサーと結婚していましたが、ヘソンはそのことを知りながらノラに会うためにニューヨークを訪れます。24年ぶりにやっと巡り会えた2人が選ぶ運命とは・・・というお話なんですけども。もうこれ、大人のラブストーリーって言っているんですけど、本当に大人のラブストーリーで、もう2人が大恋愛して、うわ~!って燃えあがって結ばれて・・・みたいな映画じゃないのよね。

東     だからリアルなんだよね。

上地    そう。だから本当に共感できるというか。

東     恋愛、恋愛じゃないし、特に主人公のグレタ・リー演じるノラがやっぱり自立したい自分の居場所を見つけたい、そうやって考えている女性だからこそ本当に令和のヒロインというか、これまでの恋愛映画のヒロインとまた違った印象で。だからこれ今、女性の共感値が高くて、アカデミー賞の作品賞にも脚本賞にもノミネートされていたんだよね~。

上地    ね~。なんかノラとヘソンと、そしてノラが結婚した作家のアーサーと3人でね、バーで飲むシーンがあるんですけど…あれ、どう?!

東     あんな意地悪なすごいカメラワーク見たことない、みたいな。

東     だから、旦那とノラを挟んで座って、あんないじらしい演出とかもあって、ちょっと、とにかく新しいタイプの恋愛映画だなって思いました。

上地    ねー!(笑) すごい新しいなって思いました。

東     だけど同時にやっぱり共感もすごく、共感値も高かったかな、っていうふうな印象なんですけど。だって今の私たちの物語じゃないですか。 仕事もしたい、自立もしたい、いろんなものを手に入れたい。だから恋愛だけじゃないけど、やっぱり忘れられない、縁も信じている。でも縁っていうことを切り札にした物語ではあるのに、縁を切ることも大切なことを描くから、やっぱり一段上の話なんじゃないかなって。これがやっぱり作品賞、脚本賞クラスの作品だなって。縁、縁言っているけど意外と縁を信じ、信じてはいるけど切ることも選択しようとするヒロイン。なんかちょっと語っているといろんなこと考えちゃって、ちょっと泣きそうなんですけど。

上地    自分もね、被せられますもんね、主人公に。

東     そうそう。被せられる。どうですか、荒木さんは?

荒木    さっき この番組に入る前に、東さんに呼ばれてね。あんたは女性の恋愛だとかね、そういうことをしゃべっちゃダメなのよと。

上地    あはは!言われたんですか?

東     あっはっは!言いました!

荒木    そう。ジジイがね、恋愛とかね、そんなの誰も聞いてないのよ、わかんないことしゃべっちゃダメって言われたので、「ああ、わかりました」って言ったんですけど~。この『パスト ライブス/再会』という映画ですけど、これもう典型的な女性映画で、私なんかがわかる映画じゃないですよ、はっきり言って。やっぱり、ちょっと私が言うとしたら、マスキュリニティっていうんですけども・・男性性っていう部分、これなんかはもう今のものと数十年も前のものとは全く違っていて、力強さとか勇敢さとかそういうことを示す過去のマスキュリニティじゃなくて、新しい優しさとかね、相手を思いはかる気持ちが全面に出ている、という男性像を描いているんですよね。

上地    精神的なマッチョじゃないというか。それも今っぽい要素かもしれないな。

荒木    僕なんかが見ると、なんだ、こいつら?ガンガンいけよ!オメェら男か? ついているのか、お前?!っていうぐらいだよね。

上地    いや~。だってね、ノラの結婚したアーサーがもう一番、私なんて心が広いっていうか、すごいな、こんな人いるのかな?って。

東     あの優しさこそが、強さなのかもしれないじゃないですか?

荒木    そうね、現代に求められている…まあ女性に求められているマスキュリニティじゃないかとは思うんですけどね。男としての優しさってあれだけじゃないし。 しかもね、恋人が外国から会いに来て、それを許して7日間もね。東さん、どうですか?あなたの昔の男がどこかから帰ってきて、今の旦那が7日間も自分の子供の面倒みて、デートさせて、しかも最後の日には3人で飯食うとか出来ますか?現実的ですかね、これは?

東     (笑)

上地    でも逆に何もないから、3人で会おうってなるわけじゃないですか。

東     そうそうそう。その、男と女ってだけの関係じゃないんですよ。なんか、人と人として会っていて、その延長があの3人になった。だからね、どう言ったらいいんだろう?年代による価値観とかも出るから面白い!

上地    男として自信がないとね、やっぱり。

荒木    というか、まあスタジオの外にいる男の人たち、みんな頭の中クエスチョンだと思いますよ。みんな不思議そうな顔していますし。まあ、これはもう確固として女性映画でね。やっぱり僕なんかが観て今の女性のもちろん感性もわかるけども…。

上地    まあ、たしかにな~。めちゃくちゃ反映されていますよね。

荒木    大きな壁みたいなものがちょっと見えたなっていう気がしますよね。

上地    私がご紹介したのは4月5日から公開の『パスト ライブス/再会』でした。4月公開の映画作品の中から、それぞれの推しをご紹介しました。ぜひ映画館でチェックしてください。映画評論家の荒木久文さん、そして映画ソムリエの東紗友美さん、ありがとうございました。

荒木・東  ありがとうございました。

4月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
荒木久文さん、上地由真さん、東紗友美さん(左から)

■上地 由真
オーディションがきっかけで関西を中心に音楽活動開始。2007年シングル「shine day」などをリリース、以降全国各地でライブ活動やイベント参加。最近は女優としても活躍、舞台、映画などのジャンルにも進出。

■東 紗友美
映画ソムリエとしてTV・雑誌・ラジオなどで活動中。趣味は、映画ロケ地巡り。国内外問わず廻り、1年で100箇所以上ロケ地を訪れたことも。インスタグラムでも毎日映画に関する写真やコメントをほぼ毎日掲載中。

■荒木 久文
現在 複数のラジオ番組を中心に、新聞紙面 ニュースWEBなどに映画をテーマとした評論 批評 紹介 などの活動を展開。報知映画賞選考委員 ノミネート委員  日本映画ペンクラブ会員。

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