9月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦

(2022年9月11日9:15)

文化放送「上地由真のワンダーユーマン」(月曜午後9時30分)でパーソナリティ―の上地由真と映画ソムリエの東紗友美さん、映画評論家の荒木久文さんの3人が9月のおすすめ映画を紹介して見どころを解説した。同番組では毎週テーマを設け“由真的”テイストで進行。毎月第1週目は「今月のシネマログ」と題し、その月に公開される話題の映画作品を上地由真と映画の専門家2人が紹介する。今回は9月5日の放送で「人質 韓国トップスター誘拐事件」「アイ・アム まきもと」「マイ・ブロークン・マリコ」が紹介された。

上地    上地由真のワンダーユーマン!今週もよろしくお願いします。 今日は月に一度の映画をフューチャーする回、題して「今月のシネマログ」。 映画ソムリエの「さゆみん」こと東紗友美さん、映画評論家の荒木久文さんとお届けしていきます。よろしくお願いします!

荒木・東  よろしくお願いします!

上地    9月公開の映画の中から、私、上地由真とさゆみん、そして荒木さんの三人が「これはおすすめ!」と思った作品をご紹介していきます。それでは早速さゆみんのおすすめからお願いします。

9月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
「人質 韓国トップスター誘拐事件」(© 2021 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & FILMMAKERS R&K & SEM COMPANY.All Rights Reserved.)(9/9(金)シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー)(配給:ツイン)(提供:ツイン、HuLu)

東     私がご紹介するのは9月9日から公開の「人質 韓国トップスター誘拐事件」です。「ただ悪より救いたまえ」「新しき世界」などで知られる韓国の俳優ファン・ジョンミンが本人を演じたことで話題になったサスペンスアクションです。
ストーリーは、韓国の人気俳優ファン・ジョンミンが記者会見からの帰宅途中に何者かに拉致されてしまいます。スタンガンで気を失っていたジョンミンが意識を取り戻すと、そこは薄暗い犯人たちのアジトでした。パイプ椅子に縛りつけられ身動きがとれない状態で、ジョンミンは大金目当てで誘拐されたことを知ります。まるでゲームのように犯行を楽しむ若者たちは、ソウルを震撼させている猟奇殺人事件の犯人でした。絶体絶命の極限状態の中、ジョンミンは唯一の武器である卓越した演技力を武器に犯人と対峙するのですが…というお話なんですけども、いやこれ斬新ですよね。ファン・ジョンミンがファン・ジョンミンを演じる、そして誘拐される…なんて言ったらいいのかな、日本で言うと阿部寛さんが阿部寛さんとして誘拐されるとか、大泉洋さんが大泉洋さんとして、とかそんな国民的スターだと思うんですけども。まあこの設定、すごかったんですけど。
まず私、今日はね、この映画もそうなんですけど、「ファン・ジョンミンとは何ぞや?」についてどうしても語りたい。私ね、好きな俳優が何人かいるのでジョンミンさんも大好きで!彼が出ているって言ったらすべて観ます。しかも5、6回観ます、その同じ作品を。ファン・ジョンミンが大好き!

上地    私も大好きです!

東     由真さんがね、なんか男性の趣味が合わなさそうかなと思ったけど、ジョンミン氏だけは合いますよね。たまらないですよね(笑)

上地    ジョンミン、合った、合った(笑)この人出てるー!って思ったら、絶対これ、面白いわと思って。

東     同じこと言ったー!(笑)

上地    そう、そうなんです、観ちゃうんですよ。

東     そうですよね、観ちゃいますよね。さすが~!本当に演技力が素晴らしいんですよね。なんかファン・ジョンミンが演じた役って、今もこの世の中にこの人、生きてるんじゃないかって終わった後もしばらくそう思わせる役が多いんですけど。今ね、なんか韓国の俳優さんって言うと、どうしてもソン・ガンホさん。もちろん『パラサイト 半地下の家族』ですとか、最近だと是枝さんと撮った『ベイビー・ブローカー』という作品でカンヌ国際映画祭で主演男優賞をアジア系の俳優で初めて獲られた方なんですけど、ソン・ガンホさんなら知ってるよ、みたいなことを言ってくる一般のお友達が多くって。もちろんオッケーなんですよ。ソン・ガンホさん、素晴らしいんですよ。でもね、本国ではソン・ガンホさんと同じ並びぐらいに有名なんですよね。本当に彼が出ている作品はヒットしますし、「1億俳優」と書いて興行収入の累計が1億円を超えている俳優とも呼ばれています。今回その彼が卓越した演技力で犯人たちと対峙していくって感じなんですけど。ファン・ジョンミンさんってアクションがめちゃくちゃ上手いじゃないですか。でも今回はあえて誘拐される方だから、それを封印していて演技力の上手さだけに徹底してるのが逆に際立ちまくっているんですよね、演技力が。それが素晴らしいなと思いましたね。なんか楽しんでしまいました。 どうでした~?

荒木    本人が強くない、ただの俳優さんを演じているわけですから、まあ有名俳優ですけどね、そんなにアクションを出来るわけでもないし、まあそういう意味ではリアリティもあったし、映画自体も面白かったですよね。クライム映画としても面白かったし、ジェットコースター的な展開とか。それからカーチェイスもハリウッド並みにすごかったですよね。あと群像映画的な要素もあったし。非常にファン・ジョンミンね、新しい展開かなと思いました。他にもあの誘拐犯が良かったですね。

東     今回ね、1000人がオーディションに受けられたらしいですね、誘拐犯役だけでね。

荒木    キム・ジェボムさんって言うんですね。この主犯。元々ミュージカルスターで映画出演は少ないようなんだけど、あの目がね、目の中に空洞があるようなちょっと虚ろなサイコの目が…。

上地    ちょっと恐ろしかったです、本当に。

荒木    恐ろしかったよね。これから出てくる人かもしれませんね。

東     今回 そこも面白かったですよね。ファン・ジョンミンはもうトップ級のトップスターだけど、その誘拐犯ですとか、を新人俳優で固めて、それはファン・ジョンミンも企画の意図で賛成したことらしくて。他にもそういう新人俳優たちに光を当てたいということで。ファン・ジョンミン、性格もいいんですよ。

荒木    ああ、そうですか。付き合ったことあるんですか?

上地    いい男だな~。

東     付き合ってました。怒られないかな、これは~?(笑)

荒木    (笑)ああ、そうですか~。

上地    アハハハ!

荒木    あとモチーフになった本人が、有名俳優が誘拐されるっていう発想が面白かったんですけども、これは昔、中国のウー・ルオプーさんというあまり有名じゃない俳優さんが実際に誘拐されて身代金を要求された事件があったんですって。それが7、8年前にアンディ・ラウが主演で誘拐される大物俳優を演じて、これが今回の映画の元になっているんですって。

東     そういう映画もあるんですね。アンディ・ラウか~、しかも。

荒木    そう、あのアンディ・ラウ。

東     タイトル、わかります?

荒木    タイトルはね、なんとか先生だったかな…ちょっと覚えてない。(笑)

東     へえ~。見てみます、アンディ・ラウのフィルモグラフィから。

荒木    はいはい。ちょっとごめんなさい、あと、なんかファン・ジョンミン誘拐事件って銘打ってあるんですけど、俳優さんが実名で映画に出演することっていうのはちょくちょくあるんですけど、ほとんどカメオ出演じゃない?まあご愛嬌っぽいのではあるんですけども。大物俳優さんが実名でしかもタイトルになっているというのはあんまりないんだけど、有名なのは「ジョーカー」でアカデミー主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックス。この人ね、「容疑者、ホアキン・フェニックス」という2010年の映画で実名で出ているんです。これね、モキュメンタリーというインチキドキュメンタリーなの。 この人は、彼が俳優を辞めてラッパーになったというドキュメンタリーを撮ったんですが、これちょっと評判が悪くていろいろ他に迷惑をかけて。この作品でしばらく仕事がなかったの。

上地    そうなんだ?(笑)

荒木    そういう作品なの。

東     はい。(笑)

荒木    他にもニコラス・ケイジ、ご存知でしょう?この人もアカデミー賞を獲っているんですけど、最近お金がないのでね、仕事を選ばず、とんでもない作品にまで出演しているって言われるでしょう?この人も自分の「ジ・アンベアラブル・ウェイト・オブ・マッシブ・タレント」という日本未公開の作品なんですけど、映画の中でニック・ケイジという役で…。

東     ほぼ本人ですね!(笑)

上地    アハハハ!

荒木    ほぼ本人。架空の自分を演じて、お金がない落ちぶれた俳優というそのままの自分を演じる。プライバシーまでネタにしているんですね。こういう人もいるということでね。

東     面白―い!あるんですね。

荒木    実名俳優さんね。ある程度ね、有名じゃないと出来ない。

東     そうですね、その称号ですよね。

荒木    ファン・ジョンミンね、本当に素晴らしい俳優さんですけどね。

東     これでファン・ジョンミンを覚えていただきたいです。日本だとね、結構知らない方がいるけど。

荒木    映画としてもね、味付けが濃くて。ザ・韓国映画っていう感じで。

上地    過去のファン・ジョンミンの作品のセリフとか隠されていたから。出てきて、結構興奮。上がった!

東     そうなの、そうなの!え、それ気づけた?

上地    気づいた。

東     あなたも元カノですか?!

上地    元カノです(笑)

東     元カノですね、元カノ同士でしたね(笑)そう、だからファン・ジョンミン検定みたいになっていて、セリフだとか役名だとか出てきて。知れば知るほど、ファン・ジョンミン好きならより楽しいし、知らなくても楽しいみたいな作品なのでぜひ!

上地    観返したい作品だね。

東     ね~っ!たしかにー!もう、ぜひファン・ジョンミンを堪能してください!私が紹介したのは9月9日から公開の『人質 韓国トップスター誘拐事件』でした。

上地    続いては、映画評論家・荒木さんのおすすめ作品です。

9月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
「アイ・アム・まきもと」(配給:ソニー・ピクチャーズ エンターテインメント)(©2022 映画「アイ・アム まきもと」)(9月30日(金)全国公開)

荒木    はい。私が紹介する作品はですね、劇団「大人計画」の阿部サダヲさん主演の9月30日公開ですね、「アイ・アム まきもと」。「私は牧本です」というタイトルですね。舞台は東北の小さな都市です。山形の酒田市みたいな感じですね。牧本、この人は市役所で人知れず亡くなった人、つまり孤独死した人を火葬して埋葬する、いわゆる「おみおくり係」として働いているんですね。一般的にはこのような孤独死については自治体と警察や葬儀社との共同作業で事務的にパッパ、パッパと作業するのが普通なんですが、この牧本さんは亡くなった人の気持ちというか思いを大切にするあまり、市役所や警察の世間一般のルールとは違ってですね、死者に対する思いや考えを優先してしまって、非常に他の人に迷惑をかけているんですね。ある日、牧本さんは孤独死した蕪木さんという老人の部屋で、彼の娘と思しき少女の写真を発見するんですね。ちょうどその頃、新しい上司が、この「おみおくり係」を廃止することになって、蕪木さんのおみおくりが牧本さんの“最後の仕事”となってですね。牧本さんはこの蕪木さんのお葬式に一人でも多くの参列者を呼ぶために、わずかな手がかりを頼りに亡くなった蕪木さんのかつての友人や知人を探して歩く、というお話ですね。工場で同僚だった人とか、元恋人とか、命を救われた人とか、そういう人たちを訪ねて、死んだ蕪木さんの人生を辿るうちに亡くなった人の思いを大切にするが故に、ちょっと迷惑をたくさんかけるんですけども、やがて人と人の繋がりを変えていく…というストーリーなんですね。
共演は満島ひかりさん、宇崎竜童さん、宮沢りえさん、錚々たるメンバーです。 これ、お二人とも観ていただいているわけですよね。いかがでしたでしょうか?

上地    みんなに怒られながらですけど本当に憎めないキャラクターでしたよね、阿部さんが演じた牧本って。私、こんなに自分のためじゃなくて人のためにね、こんなに頑張れるって本当にすごいな、尊敬するな、っていうふうに思いました。

東     稀に見る本当に清らか過ぎる心を持った主人公だなと思いましたし、今その鬱屈した世の中でいろんな人がギスギスしている中、この映画を、心がどうしても細くなってしまう瞬間みたいなものがあるじゃないですか、そういう時にこの牧本を見て、こういう人もいるんだなと思うだけでめちゃくちゃ救われましたね。いい映画だったと思います。

荒木    まあ孤独死した人物の葬儀を行うって辛い仕事ですよね。淡々とね、彼は仕事をこなしているんですけども、何よりも孤独死した人もそうだけど、牧本さん自身も孤独なんだよね。だからこそ故人を偲ぶ優しい心みたいのがあると思うんですけど。まあ最後にはね、思わぬ展開があって、ちょっと笑えてちょっとホロっとするというところはあるんですけど。実はこの作品はね、リメイクなんですよ、海外作品の。

東     あっ、そうなんですか?

荒木    うん、イギリスとイタリアの合作映画ですね。パゾリーニ監督という人の『おみおくりの作法』というものをベースにしてそのまま作った映画ですよ。あちらはイギリスのロンドンの民生委員の話。ジョン・メイさんというおじさんがやっていました。こちらもすごく良かったんだけど、今回の作品、たぶんね、日本が舞台であるということ、それから最近の孤独死の増加だとか、コロナの状況で人と人のふれあいの距離の問題とか、いろいろありますよね。そうなるとね、リアリティっていう面でもね。まあむこうよりっていうわけじゃないけど、身近に感じて。歳も歳だし、そろそろ孤独死っていう心配もあるので。

上地    ないない。

東     すごく元気そう。

荒木    わかんないよ、みんなこれ可能性があるわけで。家族の状況がどうなるかについてはね、わからないですよ。

東     でもたしかに、みんなそうですよね。

上地    本当にわからないですよね、うん。

荒木    ある調査によると65歳以上の孤独死の死者数って年間で何人いると思います?27,000人近いんですよ。たとえ孤独死しても親戚や身内がいて、引き取られるケースはそれでもラッキーですよね。でも関係者が見つからなかったり、見つかっても遺骨や遺品の引き取りを拒否する例も結構あります。映画の中でも出てきましたね。

上地・東  ありましたね。

荒木    こういう場合はですね、「行旅死亡人」って言うんですって。「旅行」っていう字を書いてそれを反対にした「行旅死亡人」。というふうに扱われて、映画にあったように自治体がね、死体を無縁仏として処理されるんですって。お金も全部自治体が払っているんですけど…。 それと…最近はね、みんな空気を読むってことが人と人との付き合いのプライオリティの上の方にあるでしょ?特に若い女の子は、「なんで空気読まないのかしら、あの子。」とかね。

東     たしかに、よく出るワードではありますよね。

上地    ありますよね。

荒木    うん。特にね、「空気を読む」っていうのは行き過ぎると同調圧力を強めたり、新しい発想が出てこないんじゃないのかな?「あいつ空気読まないからダメだ」って言われちゃうと。でもね、そういうふうにあまりしないで、やっぱり空気読まない人も大切だし必要なんだよね。みんな同じ方向へ向くよりは、そういうことでやってもらうってことも。

東     たしかにね。

荒木    そういうこともちょっと横道にそれちゃったけど考えましたね。この映画を観て。

東     いや私も最後、横道にそれていいですか?

荒木    はい。

東     私、今年阿部サダヲさんにトラウマを抱えていたんですよ。5月公開の『死刑にいたる病』、めちゃくちゃ大ヒットしたんですけど、あれで本当にもう見てはいられないぐらいの殺人犯を演じて、ちょっと阿部さんが上手過ぎたのもあって、完全にトラウマで。もう阿部さんの映画、最悪見られないかもぐらいまで思っていたのに、今回牧本を演じてくれて私のトラウマが解消!

荒木    アッハッハ。

上地    救われたね~!

東     そうだよね。そういう人、いっぱいいると思うんです。『死刑にいたる病』がすご過ぎるから。

荒木    ある意味ね、反対だからね。

上地    真逆ですよねー。

東     そうなんですよ。「そのトラウマの方、牧本に救われます」ということを言いたかったですね~(笑)

荒木    はい。私に対するトラウマも解消してください。

上地    解消させてください。

東     はい…何の?なんなんですか?(笑)

上地    アハハハ!

荒木    ということでね、まあ寂しさと温かさとかが、とても大切という、人の心を見事に描いた作品だと思います。「アイ・アム まきもと」9月30日の公開です。

9月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
「マイ・ブロークン・マリコ」(9月30日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開)(配給:ハピネットファントム・スタジオ/KADOKAWA)(©2022映画「マイ・ブロークン・マリコ」製作委員会)

上地    トリは私、上地由真のおすすめ作品をご紹介します。私がご紹介するのは9月30日から公開の「マイ・ブロークン・マリコ」です。2019年にオンラインコミックで連載され、SNSでも話題になった同名漫画を映画化した作品です。主人公のシイノトモヨを永野芽郁さん、そして親友のマリコを奈緒さんが演じています。 ストーリーです。ブラック企業で営業として働くやさぐれOLのシイノトモヨはテレビのニュースで親友のイカガワマリコが亡くなったことを知ってショックを受けます。 幼なじみだった二人は助け合いながら育ってきた特別な関係だったのです。 マリコが子供の頃から父親に虐待を受けていたことを知ったシイノは何か出来ることはないかと考えて、なんと実家からマリコの遺骨を奪って逃亡します。マリコの魂を救うため、シイノは遺骨と共に二人旅に出かけるのですが…というお話なんですけども。 永野芽郁さんが本当に今までにない…今まではキラキラしたような役だったんですけれども、今回はたばこを吸ってやさぐれた感が…。

東     新境地!彼女にとって新境地になる作品でしたよね。

上地    ねー!すごくかっこいいなって思ったし、友達を急に亡くした悲しみとか後悔とか悔しさとか、怒りとか、いろんな感情の嵐がこう自分にズシズシ突き刺さってきて…。まあこれを聞いたら重いテーマって感じるかもしれないんですけど、結構コミカルな部分とかも。

東     シリアスだけじゃないんだよね。

上地    そうなんですよね、散りばめられていて、重過ぎないっていうか。 観終わった後、ちょっと希望を与えてくれるような、優しい気持ちになるような、 そんな作品だなって思いました。どうでしたか?

東     いや~、いい映画でしたよね。なんか難しいんですけど、女の子の友情って、やっぱり結論、男性よりも難しいような気がしていて・・。でもそれを超えても距離感だったり、お互いの共依存っぽい関係だったりとか、嫉妬とか、恋人が出来た時の友達から離れる感じとか、いろいろ面倒臭さはあるんですけど、それを超えてもめちゃくちゃ絆が強固だったりするじゃないですか。そういうのをかっこいいテンションで描くのがすごいなって思って。なんかね、なんだろうな…友情映画なんですよ、ロマンシスみたいなジャンルかな~って思って。

荒木    そうだね。一般的にはシスターフッドって言うんだけど、シスターフッドの場合は男に対する反発とかね、解放みたいな意味が入っているので、純粋な意味でシスターフッドではないけど。かといって女の友情だけとは言えないね。

上地    なんかそれだけでは片付けられないような。

荒木    今言ったような女の子の微妙な距離感ね。それが非常によく表れていて、女性監督のタナダユキさんの力量が素晴らしいと思います。微妙なところとね、それからソリッドなところと上手く演出していますよね。

東     意外にもロードムービーになっているので、悲壮感もありながらあっという間にあの世界観にグーっと持っていかれて。

上地    一緒に走ってるような感じでしたね。

東     そう!本当そうなんですよね。なんか自分の中にマリコが乗り移ったかのような感覚になる作品だったので。なんかズシッといい疲れがありましたね、映画観た後に。

上地    うん。

荒木    あのキレる演技ってね、もちろん由真さんも役者さんなのでやることがあると思うんですよ。キレる演技って比較的、その優しい演技や泣く演技より、まあ女優さんによるけど簡単だって言われますよ。

上地    そう、感情。

荒木    感情をワーって発散させて。だけど今回の場合にはその中には喪失感ですとか怒りだとかね。そういういろんな感情を交互に抑えながらやっているっていうこと、彼女がね。たしかに、可愛い子ばっかりやってたのがだんだん成長してきて、ああここまで出来るようになったんだなっていう思いで見ていましたよね。

東     奈緒さんも儚くて消えてしまいそうな女性が上手くて。

上地    本当壊れて…いつ壊れてしまうのかわからないような繊細さ。

東     二人の友情に本物感がより増幅するというか…ね。

荒木    男性の監督だとね、なかなか出来ないですよね。女性のタナダ監督なので、そういった細部までのこだわり。時間もコンパクトだったし。この人はだいたい短い映画が多くって。

上地    85分ぐらいでしたね。

荒木    そうですよね。初期の映画が特に良いので、もう一度見てもらうといいと思います。『ふがいない僕は空を見た』だとかね、それから『お父さんと伊藤さん』とかね。いろいろ名作ありますので。これも本当にそういう意味では新しい彼女の新境地だと思います。女優さんも、監督さんもね。

上地    この作品と合わせて過去の作品も見てみたいですね。私がご紹介したのは、9月30日から公開の「マイ・ブロークン・マリコ」でした。

9月公開の映画作品の中から、それぞれの推しをご紹介しました。ぜひ映画館でチェックしてみてください。 映画評論家の荒木久文さん、そして映画ソムリエの東紗友美さん、ありがとうございました!

荒木・東  ありがとうございました!

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荒木久さん、上地由真さん、東紗友美さん(左から)

■上地 由真
オーディションがきっかけで関西を中心に音楽活動開始。2007年シングル「shine day」などをリリース、以降全国各地でライブ活動やイベント参加。最近は女優としても活躍、舞台、映画などのジャンルにも進出。

■東 紗友美
映画ソムリエとしてTV・雑誌・ラジオなどで活動中。趣味は、映画ロケ地巡り。国内外問わず廻り、1年で100箇所以上ロケ地を訪れたことも。インスタグラムでも毎日映画に関する写真やコメントをほぼ毎日掲載中。

■荒木 久文
現在 複数のラジオ番組を中心に、新聞紙面 ニュースWEBなどに映画をテーマとした評論 批評 紹介 などの活動を展開。報知映画賞選考委員 ノミネート委員  日本映画ペンクラブ会員

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