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映画
3月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
(2023年3月12日10:45)
文化放送「上地由真のワンダーユーマン」(月曜午後9時30分)でパーソナリティ―の上地由真と映画ソムリエの東紗友美さん、映画評論家の荒木久文さんの3人が3月のおすすめ映画を紹介して見どころを解説した。同番組では毎週テーマを設け“由真的”テイストで進行。毎月第1週目は「今月のシネマログ」と題し、その月に公開される話題の映画作品を上地由真と映画の専門家2人が紹介する。今回は3月6日の放送で「フェイブルマンズ」「エブエブ」「有り、触れた、未来」が紹介された。
上地 上地由真のワンダーユーマン!今週もよろしくお願いします。
今日は月に一度の映画をフューチャーする回、題して「今月のシネマログ」。映画ソムリエの「さゆみん」こと東紗友美さん、映画評論家の荒木久文さんとお届けします。
よろしくお願いします!
荒木・東 よろしくお願いします!
上地 さて本日のシネマログ前半は、いよいよ来週3月12日、日本時間で13日に発表される第95回アカデミー賞の注目作品について、後半は、今注目の日本映画についてゲストもお迎えして紹介していきたいと思います。3月公開の映画の中から、私、上地由真とさゆみん、そして荒木さんの三人が「これはおすすめ!」と思った作品をご紹介していきます。前半は間近に迫った第95回アカデミー賞の有力候補作品からです。まずはさゆみんからよろしくお願いします。

東 はい、私がご紹介するのは現在公開中の『フェイブルマンズ』です。こちらは今、作品賞にノミネートされています。スティーブン・スピルバーグ監督が自身の少年時代をモチーフに描いた自伝的映画です。
初めて映画館に訪れた少年サミー・フェイブルマンは映画の魅力に引き込まれ、8ミリカメラを手に家族の行事や旅行などを撮影したり、妹や友人たちが登場する作品を制作するなど、映画監督になる夢を膨らませていきます。夢を応援してくれる母親と理解しない父親。両親との関係に悩みながらも成長していくサミー。ユダヤ系アメリカ人としての苦悩や溢れる映画への愛など、スピルバーグの原点を垣間見ることが出来る作品です。
ということなんですけども、私この映画を観て、本当にすばらしかったなと思っていて。もうゴールデングローブ賞、まあアカデミー賞の前哨戦ですね、1月にあったんですけど、これでドラマ部門でも作品賞を獲って、監督賞でも受賞していて、非常に賞レースの本命に近い作品でございます。
この作品を観てみると、映画好きな少年が映画監督を目指すまでの、そういう作品かと思っていたら、ちょっとノスタルジーっぽい作品、映画の世界を目指すまでの作品とは全然・・・映画×ノスタルジーじゃなくって、すごいなと思ったのが映画を撮ることの業とか、映画というものが人に与えていく希望を伝える作品というのはたくさんあるんですけど、これは映画が人に与える絶望とかまでも描ききっていたから、映画の中の映画だな…みたいな感じで、私はもうこれを観た時に鳥肌が立ってしまいましたし、今も監督歴50年で今年76歳になるスピルバーグがこういう…まあ生きるレジェンドですよね。スピルバーグが登場する以前、以後で映画界のすべてがCGとかも初めて使った監督なので変わったと言われているんですけど。どうしてこの監督が生まれたかっていうのを非常に深く掘り下げていて、なんか私はずっと鳥肌が立っていたんですけども、意外とこれが家族のドラマなんですよ。この作品ね、スピルバーグ自身は20年前から構想を考えていたんですけど、ようやく最近映画化されたのは、やっぱり家庭の・・・スピルバーグって家庭不和が有名なんですよ、家庭がうまくいってないっていうの。そういうのもあって。お母さんが2017年に亡くなって、2020年に亡くなってお父さんが亡くなったんですけど、それが落ち着くまで撮れなかったからようやく今生まれた作品という感じで描かれているんですけど。こんな背景があったんだって思って、すごくいろんなところが揺さぶられて。今後のスピルバーグの映画、映画ソムリエをやる以上付き合っていく上で見方が変わるなって思って観ていたんですけど。
荒木さん、観ましたよね?
荒木 はい、私もスピルバーグって誰が見ても史上最高の監督ですよね。彼がどういうことで映画に入っていったかというところから、非常に家族の問題にウェイトが置かれているんですよね。変わったお父さんとお母さんなの。お母さんは芸術家なんですよね、ピアニスト。お父さんは天才的なコンピューター技術者なんですよ。彼はいいとこ取りをしたっていう感じですよね、両方とも。本人もユダヤ系アメリカ人ということで非常に差別の中にあって。彼はちょっと識字が…字が読めないっていうんですかね?
東 難読症っていう…?
荒木 そうですね、識字障害、難読症。これで、ほとんど小さい時、勉強出来なかったんです。それで体も小さくて弱くてスポーツも出来ない。それでユダヤ人ということで口に出せないくらいいじめられたでしょ。それも今後のいろんな製作のモチーフにはなっていくらしいんですけどね。
ただ有名な監督が自分の伝記作品を作るってそうそうたくさんないですよね。知っている限りはケネス・ブラナーの『ベルファスト』なんかがそうですし、オリバー・ストーンも『プラトーン』は自分の経験を生かしたというふうに言われていますし、他にもいろいろあるんですが。今度マドンナが自分で監督してマドンナを主人公にした伝記映画を撮るっていう話がありますよね。
東 そうなんですか?
荒木 まあそれにしてもね、家族、恋愛、友情、宗教とあらゆる要素が詰まっていて、彼のバックボーンにあるものに一部でもちょっと垣間見れたな、という東さんと同じような感想になっちゃいますけどね。非常にいい作品に仕上がっていますね。
東 ありがとうございます。スピルバーグ、これからも映画人生を続ける方は絶対に触れていく監督だと思うので、ぜひどういったふうに育ってきたか見ることで今後の映画への見方、変わるんじゃないかなと思います。
私がご紹介したのは現在公開中の『フェイブルマンズ』でした!
上地 続いては映画評論家の荒木さんのおすすめ作品です。

荒木 はい。私がご紹介するのは3月3日公開ですね、これもアカデミー賞の本命登場っていう感じですよね、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ということで長いタイトルで言いにくいので『エブエブ』って言いますね。アカデミー賞ノミネートは10部門11ノミネート、最多ノミネートですね。
東 すっごいですよね!
荒木 はい。ストーリーからいきますね。主人公は中年の女性のエヴリンです。もうなんとなくおばあちゃんに差しかかっているような、そんな感じかな。彼女は夫婦でコインランドリーを経営しているんですけども、ここがうまくいかずにですね、破産寸前の状態です。それに加えて、ボケているのに頑固なお父さんと、いつまでも反抗期が終わらない娘と、優しいだけが取り柄の頼りにならない夫に囲まれて、非常に頭の痛い問題だらけの日々を送っていたわけですよね。そんな彼女の前に突然、「別の宇宙から来た」という夫が現れます。ちょっと顔つきが違っていましたね、その時の夫は。混乱するエヴリンに「この宇宙にはたくさんの別宇宙があって、自分も家族もみんな少しずつ違った環境で生きている」と。「全宇宙を滅ぼそうとしている強大な悪が出現して、それを倒せるのはエヴリン、君だけだ」と説明するわけですね。エヴリンはそんな別の宇宙の夫に言われたまま、訳も分からず、そのマルチバースの世界に飛び込みます。その中でカンフーマスターと言われるカンフーの達人として能力を発揮して救世主になるわけですね。それで全人類の命運を懸けた壮大な戦いに身を投じていくという、まあ何というか奇想天外な設定の作品なんですけども、エヴリン役にはご存知『グリーン・デスティニー』なんかで有名ですよね、ミッシェル・ヨーですね。夫役にはキー・ホイ・クァンと言いまして1980年代に『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』見た方だったら覚えているかもしれないですけど、帽子をかぶった中国系の男の子、彼が20年ぶりにハリウッドで復活を果たしたということなんですよ。これも話題になっています。それで悪役にはですね、ジェイミー・リー・カーチスなんかも出てますが、とにかく監督がですね、『スイス・アーミー・マン』の監督コンビ、「ダニエルズ」ですね。ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートっていう人が2人でやっています。
という「A24」という話題の制作会社の作品なんですけども、東さんの感想から聞こうかな。
東 エモいですよね。だって85年のグーニーズでも本当に一世を風靡したキー・ホイ・クァンと92年の『ポリス・ストーリー3』でジャッキー・チェンの相手役だったミッシェル・ヨー、この2人が正直活躍はしていたけどちょっと緩やかな活躍?ミッシェル・ヨーとかマーベル・・・『シャン・チー/テン・リングスの伝説』とかか?あれとか出ていたとはいえ、細々めなイメージがあったのに、こうやってちゃんと俳優業を続けていくことってめちゃくちゃかっこいいじゃん!ってこの作品で再注目されていることが本当にエモい。感慨深いなって思いながらもこのキャスティングに胸が熱くなりましたし、やっていることは多元宇宙×カンフーっていって、もうハチャメチャなことなのに、すごくパーソナルな家族の物語にこれも集約していくっていう脚本がめちゃくちゃ面白くて。
もうただただ身をゆだねて、楽しく観ていました。
荒木 そうですか。結論から言うとね、かなり異色作で奇妙な作品です。さっき東さんが言ったようにマルチバースと空手の組み合わせなんて絶対面白いんだけど、これ一歩間違うとゲテモノ扱いですよね、B級もいいところですよね。初見ではね、理解が追い付かないところもあるかもしれない。
東 やっていることはクリストファー・ノーランクラスの難しいことをやっているイメージ。
上地 はじめ、何を見せられているんだろう?っていう・・・(笑)もうめちゃくちゃカオスで、ぶっ飛んでいて、なんだ?これ?!って思ったんですけど。本当に身をゆだねることによって楽しく、そして気付いたらなんか涙溢れている・・・みたいな。家族愛とか、愛がね、テーマになっているな、みたいな。
荒木 おっしゃる通りです。観てない方はたぶんアカデミー賞の作品賞の超有力候補だって聞くと、じっくり見なきゃ!と、細かいところまで見逃さないようにしないとね!と考えると、これダメなんですよ、この映画。すべてを理解しようとするのは難しいので、あまり考えこまずにね。由真さんみたいに軽いノリで、ほわ~っという感じで、ですね。
上地 下品なシーンとかも結構あったんですけど、それがまた面白かったですしね。
荒木 そうですね。バカバカしいドタバタを楽しむというような感じで楽しめればいいなと思いますよ。
上地 とにかく楽しかった。(笑)
荒木 そうですね。というね、今のところ作品賞が大本命でしょうけどね、『エブエブ』。
東 この2作品がかなり本命なんじゃないか、って言われていますよね。
荒木 そうなんですよね。まあ基本的にはこの2作品が本命対抗、まあどっちが本命対抗っていうかはわからないんですけど。東さんはどうなんですか?どちらを…。
東 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がもし獲れたらすごいことだと思うんです。A24というね、ちょっと10年前ぐらいに出来た独立系の映画会社がこういうアジアっぽい作品で。だから応援したいっていう意味では『エブエブ』なんですけど。ちょっとスピルバーグ、強いんじゃないかなって思ったりもします。ただ『エブエブ』、脚本賞はいく、と思う!これ、すごい脚本ですもん。
荒木 僕もね、たぶん『フェイブルマンズ』は監督賞は獲ると思うんですよね。
東 獲る、獲りそう。
荒木 この2つ比べると、対照的な作品なんですね。現在のアカデミー賞が置かれている立場をよく認識すると、面白いことがわかってくるんですよ。『エブエブ』はさっき言ったようにゲテモノっぽいところがありますけども、この作品、今まで噴出してきたアカデミー賞の批判というものを跳ね返すいろんな要素を持っているんですね。まず人種多様性。白人じゃなくてアジア系の移民が主人公。しかも女性で中年。それからLGBT的な要素も入っている。新しいアカデミー賞が指向する時流に乗っているなっていう感じはあるんですね。最終的には人間の優しさだとか家族愛だとかいう普遍的なこともきちんと入れているというね。これがたぶんアカデミー賞はこういうふうに変わらなきゃいけないという中から、変わったんだよという答えに、もしかしたらなるかもしれない。
片や、従来のアカデミー賞のイメージであれば、本命は間違いなく『フェイブルマンズ』ですよね。最も好まれる正統派作品ですよ。例えば家族愛、それから青春とほのかな恋、それから映画に対する熱い情熱とかね。それから社会的な問題であるユダヤ人差別の問題もあるし、アメリカの夫婦像とか家族像ね。非常にバランスが良いですよね。これがどういうふうに取られるか?『トップガン マーヴェリック』なんかもね、対抗第3位につけているなんて人もいますしね。
東 こんなふうに語って、全然この3作品じゃなかったら我々…。
上地 アハハ!本当ですよね。
東 よくやるんですよ、毎年こうやって。(笑)
荒木 毎年やって、それで我々がハズして、由真さんがぽっと当てちゃう。
東 なんか当てちゃう!そうそうそう、それ!
荒木 ここでアカデミー予想やりたかったんですけど、また恥かくばかりなので。
東 そうなんですよ。1回も当てていないですからね。(笑)
荒木 ということであてになりませんけども、ということです。

上地 後半は私、上地由真のおすすめ作品をご紹介します。私がご紹介するのは3月10日から公開の『有り、触れた、未来』です。本日はこの作品の監督、山本透監督にお越し頂いています。よろしくお願いします。
山本 はい、よろしくお願いします。
荒木・東 よろしくお願いします。
上地 最初に山本透監督についてご紹介します。フリーランスの助監督として数々のドラマや映画など多数の作品を作られてきました。2008年に『キズモモ。』で長編映画監督デビュー。その後、大泉洋さん、麻生久美子さん主演の『グッモーエビアン!』、高橋一生さん、川口春奈さん主演の『9月の恋と出会うまで』などの話題作を手掛けてきた注目の監督さんです。そして、この山本監督の最新作が10日に公開の『有り、触れた、未来』。まずは内容をご紹介します。
舞台となるのは東日本大震災から10年後の仙台。いくつかの物語が並行して進行します。高校時代に恋人を失った元バンドマンの女性や、ガンを患いながらも娘の結婚式へ出席したいと願い闘病を続ける女性。そして災害で家族を亡くした女子中学生とその悲しみから立ち直れずお酒に溺れる父親。複数の物語が交差し、悲しみや苦しみを抱えながらも過去を乗り越えて生きようとする人々の希望と再生を描いた作品です。
私は全部の言葉がすごく胸に突き刺さってきて、ラストシーンを想像するだけでもちょっと胸が熱くなるというか、泣きそうな気持ちになるんですけども。本当にエネルギー溢れる作品だと思いました。
おふたり、どうでしたか?さゆみんと荒木さん。
東 今ラストシーンという由真さんの言葉が出たからあれなんですけど、私も、なんて力強くて、それでいて優しくてあったかいラストシーンなんだ、と。これちょっと久しぶりにこんなパワーという形、エネルギーという形でそれが全身をパーッと突き抜けていく感じでのこった映画久しぶりだったので、本当に元気をもらいました。ありがとうございます、という感じですね。
荒木 私もね、その…監督が前に命の大切さを伝える力強い作品にしたい、と。いろんなリズムが混ざってきますよね、最後。太鼓のリズム、演劇のリズム、あれが一緒になって、なんか力強い心臓の鼓動みたいなね、そういう命の大切さと同時に力強さを画面から感じた映画ですよね。あそこは上手くお作りになりましたね、こう細かいことになっちゃうんですけども。非常にそういう印象を受けました。
山本 ありがとうございます。
上地 監督、この作品を撮ろうと思われたきっかけは何だったんですか?
山本 3年ぐらい前ですね。コロナが始まって2020年の4月に緊急事態宣言が初めて東京で発令されて、自分の作品がちょっと延期みたいになったので、自宅作業みたいになった時に3日経った日に大林宣彦監督が亡くなったんです。4月の10日に。僕20代の頃、大林さんの助監督をしていたのでお世話になった恩師なんですけど、晩年ちっちゃくなった大林さんに会うと、「山ちゃんだったら3か月で死ぬって言われたら、どんな映画撮る?」って言われてよく聞いてきたんですよ。そのことを亡くなったって聞いた瞬間ちょっと思い出して。なんかやっぱり自分が本当に世の中に対して伝えたいことを映画にしてみたいなってその時なんか改めて。時間もあるしと思って、1本ちょっと幼児虐待をテーマにしたような本を書いたんですよ。書きあがったのが夏くらいなんですけど、僕の周りで自殺がすごく相次ぐんです。なんかもうものすごい勢いで亡くなっていく人たちが自分の身の回りに現れた時に、1回ちょっと幼児虐待のことは置いといて、なんかもっと全方位的に命の流失を止めるようなエネルギーのある映画を撮れないかって思って。そこからちょっと自殺の勉強とかをね、年内いっぱいカウンセラーの人とかを取材してやったんですけど。あまりにも難しくて。やっぱり死にたいっていう衝動は誰にでも起きる、どんなメンタルが強い人にでも起きる病だから、そういう人に生きろとか死ぬなって言うのは風邪ひいている人に熱出すなとか咳をするなっていうのと何ら変わらないよ、と先生に言われて。じゃあどうやったら生きろ、っていうか生きてほしいっていう映画がつくれるのかなって思って。東日本大震災のことを描いた本があって、『生かされて生きる』っていうタイトルの本だったんですよ。生きるだ死ぬなってことを毎日考えている時にその本にちょっと手がいったっていうか。読んでみたら震災のことがずっと書かれていて、高校のね、石巻西高校っていう学校が避難所になっていく、そこの様が書かれているんですけど、ちょっとびっくりしたのが、その後子供たちがどうやって傷と共に歩んでいっているかという話がたくさん書いてあったんです。その中のひとつが「青い鯉のぼり」のプロジェクトの話、代表だった彼は当時高校2年生だったんですけど、ずっと弟のために鯉のぼりを上げ続けている青年の話とか書いてあって。ちょっと宮城に行って彼らに逢ってみたいなと思ったんですよね。会ってみると、やっぱり傷だらけの状態からちょうど10年目、2021年3月11日に宮城に行ってたくさんのひとたちの話を聞いたんですけど、やっぱりみんな傷は癒えてないんですよ。ちょうど10年目だからみんなマスコミが心の復興って言って、いかに心が癒えてるか、っていうことばっかり取材するんだけど、みんな誰ひとり傷なんか癒えてないんだけど。それでもみんなと支え合って前に生きていくっていうことを覚悟を決めた10年だった、っていう話もたくさん聞いて。ああ、この人たちのこういうエネルギーをしっかりお借りして映画を作れば支え合って生きていくっていうことを伝えられる、生きてほしいってことをみんなに伝えられる映画になるんじゃないかなと思って。
上地 現地で今回オーディションもされたんですよね?
山本 はい。中学生のね、メインキャストが結構出てくるのと、それ以降、下の子、小学生とか保育園の子たちもみんな現地の子で選びたいなって思っていたので。名が売れているとか売れていないとかはどうでもよくて、やっぱりその土地で育った子たちがこれから先また未来を生きていく上で、その土地の血を画に映したいというか・・・っていう感じでしたね。俳優に関しては本当に自分の作品を読んでもらって、本を。で、なんでこれをやりたいのか、今これを届けたいのか、ということに賛同してくださった方が集まってきてくれたので。という意味では我々の力のひとつになりたいっていうか、束ねられてこの映画のひとつになりたいって言ってくれた方が力を貸してくれた感じなんです。でも本当、3年経つんですけどぼちぼち、もうすぐ3年目になるんですけど。それからこの映画を作らなきゃって思い始めた頃から。でもこれをやっている間にお金集め大変だったんですけど、これ本当に商業映画じゃなくて自主映画なので。でも世の中、良くなっていかないんですよ。戦争始まったし、終わらないし。増税決まったし。で、日本人の自殺率が本当に上昇したんですよね。今年になって24万人不登校児童がいるって、小・中学生だけで。コロナが落ち着いたって言って、じゃあ世の中、学校に行けない子供たちがものすごい量産されちゃったもんね。みんなだから未来に対してやっぱり希望を持ちにくい時代に突入しちゃっている、と俺は思っていて。ただやんなきゃいけないことはやってるんだな、って。途中ですごく思って。勝手に使命感持っていたっていうか、やらなきゃいけないんだ、これっていうふうに思っていました。こういう時代だからこそ、やっぱりカルチャーの力を信じて、映画の力をもう一度信じて、何が出来るか。世の中を明るくするエネルギーが絶対あるんだから生きろっていうエネルギーを届けたいと思って作ったんですが。そういうものなんだっていうふうに、スタッフもみんなわかってやってくれていたので、大変だったんですけどそれは頼もしかったし力が強くなっていくのが実感湧くので。
荒木 なるほどね。
上地 最後に監督、舞台挨拶の告知とかあれば。
山本 はい。実は3月3日から宮城の方では先行上映が始まっていて、8日ぐらいまで僕は宮城の方でちょこちょこちょこちょこと舞台に立ってみなさんの顔を、声を聞いていこうと思っているんですけど。3月10日から全国公開が始まって、10日はまず東京のお台場で舞台挨拶します。11日から1週間ぐらいは池袋の方で出来るかぎり僕らや出演者で登壇していって、その先はまだなので決まってないんですけど全国各地いろんなところの劇場に行きたいと思っています。
上地 ホームページを見たら載っていますよね?
山本 そうですね、はい。
上地 はい。最後にじゃあ、メッセージをリスナーにお願いします。
山本 はい。全編ね、宮城で撮った映画なのでどうしてもちょっと震災復興の、しかも自主映画っていう感覚でどうしても見られがちなんですけど、実はそんなことなくて世界中の人に届けたいなと思っている映画なんです。この先も自然災害があるだろうし、新たな感染症とかあるかもしれない。この先の未来いろんな苦しさがこの世の中の人たちを苦しめることがあると思うんですけど、どんな先々行っても大丈夫だよっていうことをちゃんと伝えてあげられるエネルギーになる映画だと思っているので、みなさんちょっと劇場で体感してみてほしいです。体で感じて、しばらく痺れるぐらいの音が体感出来るので、ぜひぜひ劇場でご覧になって頂きたいです。
上地 はい。私がご紹介したのは3月10日から公開の『有り、触れた、未来』でした。ぜひみなさん劇場でご覧ください。山本監督ありがとうございました。
山本 ありがとうございました。
荒木・東 ありがとうございました。

■上地 由真
オーディションがきっかけで関西を中心に音楽活動開始。2007年シングル「shine day」などをリリース、以降全国各地でライブ活動やイベント参加。最近は女優としても活躍、舞台、映画などのジャンルにも進出。
■東 紗友美
映画ソムリエとしてTV・雑誌・ラジオなどで活動中。趣味は、映画ロケ地巡り。国内外問わず廻り、1年で100箇所以上ロケ地を訪れたことも。インスタグラムでも毎日映画に関する写真やコメントをほぼ毎日掲載中。
■荒木 久文
現在 複数のラジオ番組を中心に、新聞紙面 ニュースWEBなどに映画をテーマとした評論 批評 紹介 などの活動を展開。報知映画賞選考委員 ノミネート委員 日本映画ペンクラブ会員