小松菜奈・松田龍平W主演「わたくしどもは。」 第36回東京国際映画祭でワールドプレミア

(2023年10月26日11:30)

小松菜奈・松田龍平W主演「わたくしどもは。」 第36回東京国際映画祭でワールドプレミア
登壇した富名哲也監督㊨と畠中美奈プロデューサー(25日、東京・有楽町のTOHOシネマズ日比谷で)(©2023 TIFF)

第36回東京国際映画祭(10月23日~11月1日)のコンペティション部門に選出された富名哲也監督、小松菜奈・松田龍平W主演作「わたくしどもは。」のワールドプレミアが同映画祭の公式上映として25日、都内で行われ、富名哲也監督と畠中美奈プロデューサーが登壇して同作について語った。

同作は、ベネチア国際映画祭が新鋭監督を支援するプロジェクト、Biennale College Cinema 2018-2019において、インターナショナル部門9作品のうち日本から唯一選ばれた企画で、香港国際映画祭、昨年の東京国際映画祭など多くの国際映画祭でも映画化の期待と注目を集めていた。企画から5年の月日を経て完成して2024年に公開される。

上映後には満席の観客から、ワールドプレミアという記念すべき上映を讃える拍手が沸き起こり、「美しく素晴らしい作品」「佐渡の映像が綺麗で引き込まれた」など早くも絶賛の声が続々挙がった。

佐渡島の金山跡地を舞台の本作は富名監督の長編2作品目。長編1作目となる『Blue WindBlows』(18)も同じ佐渡島で撮影された。

富名監督は「1作目の撮影を終えたときに、佐渡金山という場所に惹かれるものがあって、それは言葉にすることができない“何か”でありました。それが何なのか自分でも不思議に 感じ、後日再び佐渡を訪れました。そこで目にしたものが“無宿人の墓”というものでした」と、佐渡島の金山跡地の片隅にひっそりと佇む墓地から着想を得たという。
続けて、「“無宿人の墓”の歴史を調べたときに、江戸時代、無宿人と呼ばれる戸籍を剥奪された人々が内地から佐渡島に連れてこられ、金山で過酷な労働を強いられた結果、多くの 方が命を落とすという出来事があったことを知り、自分が感じた言葉にできない“何か”は、もしかしたらそれなのでは、と直感的に感じ、映画にしたいと考えました。しかし、実際の無宿人たちをそのまま描くということは難しいことだと感じ、自分なりのストーリーとして描けたらと考えました」と佐渡島という場所が映画への強いインスピレーションになったことを明かした。

富名監督と二人三脚で映画製作をしている畠中プロデューサーも、「監督が北海道出身で私が鹿児島出身で佐渡島はちょうど真ん中に位置します。もともとは先祖の墓が石川県にあったので最初はそこでロケをしようと思っていましたが、ふと思い立って佐渡島に行ってみたら、二人で気に入ってしまったんです」と佐渡島を舞台にするに至ったエピソードを披露した。
過去の記憶がない女と男を演じた主演の小松菜奈、松田龍平について、「どこか現実的ではないこの物語に、どう説得力を持たせるかが重要でした。いるだけで説得力があり、また第一線で活躍されている方に演じてもらうことで、この小さな映画が沢山の方に届いてくれることを願い、小松さんと松田さんへオファーしたところ、お二人に快諾いただきました」とキャスティングについて振り返った。

主演の二人の他には、金山跡地の掃除婦役に日本映画界で唯一無二の存在感を放つ大竹しのぶ、ジェンダーに悩む高校生役に歌舞伎界ホープの片岡千之助、謎のバスガイド役に映画・ドラマ・舞台と多岐にわたって表現の幅を広げている石橋静河、あの世とこの世の狭間の番人をする館長役に舞踊家・俳優として幅広く活躍する田中泯、透の母親役に、エッセイ本などの執筆や海外作家の絵本などの翻訳を手掛ける内田也哉子、爛れた男に国内外でジャンルを横断した活動が目立つダンサー・演出家の森山開次、そして能楽師役に重要無形文化財保持シテ方宝生流能楽師の辰巳満次郎と名だたる俳優が名を連ねル。それぞれのキャラクターが、セリフが少ない中でも、圧倒的な存在感を放ち、その身体表現が特出している。

富名監督は「俳優部へは特別に演出指示のようなものはしていません。本作は心理劇があるわけでもなければ、物語が劇的に展開していくような作品でもありません。私の中には、そういったものに依存しない作品を作りたいという思いが根底にあるため、おのずと佇まいや身体表現が大事になっていきました」と語るように、それぞれのキャラクターが持つ役割と、それぞれの俳優が演じる圧倒的な身体表現は、この作品に欠かせないものになっている。

また、映像の美しさや物語の奥深さが感じられる理由のひとつに、本作が持つ「色」があげられる。本作に登場するキャラクターがまとう黒や白の衣裳や、登場人物につけられた「ミドリ」「アオ」のような名前の数々。

富名監督は、「ミドリは生命を感じる色でもあり、また死を感じさせる色でもあると考 えています。実は前作『Blue Wind Blows』やその前の短編『終点、お化け煙突まえ。』のキャラクターも名前を色にしています」と“色”に対する強いこだわりについて言及。

佐渡島を舞台に、記憶を失った二人の謎めいた過去と運命を描く本作は、観ていくうちにどんどん神秘的なその世界に魅了され、何度も味わいたくなってしまう不思議な力を持つ。2024年ロードショーで、11月には富名監督の過去作の特集上映も決定。詳細は後日発表される予定。『わたくしどもは。』にも通ずる、富名監督が作り上げる世界観に注目がが集まりそうだ。

小松菜奈・松田龍平W主演「わたくしどもは。」 第36回東京国際映画祭でワールドプレミア
「わたくしどもは。」の小松菜奈㊨と松田龍平



【あらすじ】
舞台は佐渡島の金山跡地。倒れている女(小松菜奈)が目覚める。女には過去の記憶がない。女は、清掃員の女性キイ(大竹しのぶ)に助けられ、家に運ばれる。そこにはアカとクロという名の女の子も暮らしている。名前を思い出せない女はミドリと名付けられ、キイと一緒に清掃員として働き始める。ミドリはそこで警備員の男(松田龍平)と出会う。 男もまた名前と過去の記憶がないという。そんなミドリと男は互いに惹かれ合っていく…。

〖クレジット〗

出演:小松菜奈 松田龍平
     大竹しのぶ 片岡千之助 石橋静河 田中泯 内田也哉子 森山開次 辰巳満次郎  田中椿 三島天瑠
監督・脚本・編集:富名哲也
音楽:野田洋次郎
企画・プロデュース:畠中美奈
製作・配給:テツヤトミナフィルム
配給協力:ハピネットファントム・スタジオ ©️TETSUYA to MINA film
公式サイト:URL https://watakushidomowa.com


【第36回東京国際映画祭 開催概要】
■開催期間:2023年10月23日(月)~11月1日(水)
■会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区 ■公式サイト:www.tiff-jp.net
【TIFFCOM2023 開催概要】
■開催期間:2023年 10 月25 日(水)~27 日(金)
■会場:東京都立産業貿易センター浜松町館 ■公式サイト:www.tiffcom.jp

【関連記事】
映画「わたくしどもは。」に大竹しのぶら追加キャスト 音楽は野田洋次郎 小松菜奈・松田優作W主演「わたくしどもは。」第36回東京国際映画祭コンペ部門に出品
第36回東京国際映画祭 役所広司、杉咲花、浜辺美波、神木隆之介、稲垣吾郎らがレッドカーペットに登場
第36回東京国際映画祭 小津安二郎生誕120年記念特別映像公開 「ヴェンダース、小津を語る」&「SHOULDERS OF GIANTS~普遍」
第36回東京国際映画祭 「Amazon Prime Video テイクワン賞」ファイナリスト8作品決定
第36回東京国際映画祭 チャン・イーモウ監督に特別功労賞「今後も映画の本質を理解して、素晴らしい映画を撮る努力を続けてまいります」
第36回東京国際映画祭 ラインナップ発表 ナビゲーターに安藤桃子監督
第36回東京国際映画祭 黒澤明賞にグー・ シャオガン監督とモーリー・スリヤ監督
第36回東京国際映画祭 予告編が22日から都内近郊の各劇場で上映
第 36 回東京国際映画祭 小津安二郎生誕 120 年記念特集上映、城定秀夫監督特集などの企画決定
第36回東京国際映画祭のポスター完成 安藤桃子監督がナビゲーターに就任
第36回東京国際映画祭 Prime Video「Amazon Prime Video テイクワン賞」 短編映画作品 募集開始
第36回東京国際映画祭「TIFF ティーンズ映画教室」、特別講師に真利子哲也監督
第36回東京国際映画祭 審査委員長、ヴィム・ヴェンダース 小津安二郎監督特集も決定
第36回東京国際映画祭 作品エントリー開始 コンペ部門とアジア未来部門
第35回東京国際映画祭閉幕 「ザ・ビースト」が東京グランプリなど3冠 稲垣吾郎主演「窓辺にて」観客賞
橋本愛、是枝裕和監督との対談で「女優開眼」を語る 国際交流基金・東京国際映画祭共催の交流ラウンジ
東京国際映画祭、監督特集で青山真治監督追悼 宮崎あおい、浅野忠信ら登壇
松永大司監督、「エゴイスト」の東京国際映画祭ワールドプレミアで同作を語る 「鈴木亮平と宮沢氷魚が演じるラブストーリー」
戸田恵梨香と永野芽郁、「母性」完成報告会で「愛せない母と愛されたい娘の衝撃ドラマ」を熱く語る
寺島しのぶ、主演映画「あちらにいる鬼」の東京国際映画祭舞台挨拶で製作秘話明かす
稲垣吾郎と今泉力哉監督、「窓辺にて」の製作秘話を語る 東京国際映画祭で上映
シム・ウンギョン、「岩井俊二監督『リリイ・シュシュのすべて』に衝撃を受けた」 東京国際映画祭の審査員に選出
第35回東京国際映画祭開幕 橋本愛、二宮和也「映画愛」を語る
第35回東京国際映画祭開幕 審査委員長ジュリー・テイモア、アンバサダー橋本愛らがレッドカーペット
第35回東京国際映画祭「交流ラウンジ」ラインナップ決定 橋本愛×是枝裕和監督など
第35回東京国際映画祭 野上照代氏に特別功労賞
第35回東京国際映画祭、「黒澤明賞」アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と深田晃司監督
第35回東京国際映画祭「Amazon Prime Video テイクワン賞」ファイナリスト作品決定
第35回東京国際映画祭 ラインナップ発表 橋本愛がフェスティバル・アンバサダー
第35回東京国際映画祭、予告編公開 フェスティバルソングにNewspeakの「Bonfire」
第35回東京国際映画祭、審査委員長に舞台演出家で映画監督のジュリー・テイモア 黒澤明賞など主要企画決定
第35回東京国際映画祭のオープニング作品は「ラーゲリより愛を込めて」 クロージング作品は「生きる LIVING」
第35回東京国際映画祭のポスタービジュアル公開 コシノジュンコ監修 テーマ「飛躍」
第35回東京国際映画祭が作品エントリー開始 コンペ部門と「アジアの未来」部門
東京国際映画祭が「ウクライナ・ロシア情勢に関する声明」発表
第35回東京国際映画祭の開催日が決定(2022年10月24日~11月2日)
第34回東京国際映画祭閉幕 東京グランプリはコソボの監督の「ヴェラは海の夢を見る」
橋本愛VSバフマン・ゴバディ監督が”激論“ 第34回東京国際映画祭
第34回東京国際映画祭:コンペ正式出品「三度目の、正直」ワールドプレミアで監督・出演者登壇
第34回東京国際映画祭:ワールド・シネマ・カンファレンス「映画界の未来」
第34回東京国際映画祭開幕 審査委員長イザベル・ユペール、アンバサダー橋本愛らがレッドカーペット
アラキンのムービーキャッチャー NEO/「第34回東京国際映画祭」「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2021」「ハロウィンKILLS」のとっておき情報