第35回東京国際映画祭 ラインナップ発表 橋本愛がフェスティバル・アンバサダー

(2022年9月21日22:30)

第35回東京国際映画祭 ラインナップ発表 橋本愛がアンバサダー
記者会見に出席した(左から)今泉力哉監督、橋本愛、福永壮志監督、松永大司監督(21日午後、都内で)

第35回東京国際映画祭(10月24日~11月2日)の「コンペティション」部門をはじめ全上映作品のラインナップが21日、都内で発表され、昨年に続いてフェスティバル・アンバサダーを務める女優の橋本愛(26)、コンペ部門に自身の監督作品が選ばれた今泉力哉監督(41)、福永壮志監督(40)、松永大司監督(48)が登壇した。

コンペ部門にはチリの独裁政権下の恐怖を描いた「1976」(チリ/アルゼンチン/カタール)やヒトラー役に抜擢された男の悲劇を描いた風刺劇「第三次世界大戦」(イラン)など、国内外の15本の作品が選ばれた。日本映画からは今泉力哉監督の「窓辺にて」、福永壮志監督の「山女」、松永大司監督の「エゴイスト」の3本が選ばれた。

「窓辺にて」は稲垣吾郎、中村ゆり、玉城ティナなどのキャストで、妻の浮気を知った男が、芽生えたとある感情に想い悩む大人のラブストーリーだという。「山女」は18世紀後半の東北を舞台に、冷害による食糧難に苦しむ村で、人々から蔑まれながらもたくましく生きる少女の物語で、山田杏奈、森山未來、永瀬正敏などのキャスト。「エゴイスト」は高山真の自伝的小説が原作。編集者の主人公・浩輔とパーソナルトレーナー・龍太の愛を描いた物語で、鈴木亮平と宮沢氷魚などのキャスト。

■今泉力哉監督・福永壮志監督・松永大司監督のコメント

今泉監督は「2013年にも『サッドティー』という作品で「日本映画スプラッシュ部門」で呼んでいただいて、4本5本くらい毎年のように参加させていただいていて、コンペでは『愛がなんだ』という映画で2018年に参加させていただいたぶりになるので、また呼んでいただいて、選ばれて嬉しいなと思っています」と語った。
またコンペ部門に出品する自身の監督作品「窓辺にて」について「稲垣吾郎さんと何かやろうとなり、ずっと自分は恋愛映画を撮り続けているんですけれども、日常に近い恋愛ものをやろうとしていて、今回は主人公の奥さんが浮気していることを知った時に、怒りとか悲しみとかが感情的に起きなかったってことは愛情があるんだろうか?ということに悩む人を描いています。まだ名前のついていない悩みを抱えた人がいっぱいいるのに、その人たちについての作品がまだあまりないな、ということを描くのをずっとやってきて、今回の作品もまさにそういうことをやろうとした作品です」と語った。

福永監督は「大変嬉しく光栄なことだと思っております。東京国際映画祭の印象というと、自分は長い間海外にいたので参加した経験はあまりなくて、ただ日本を代表する映画祭の一つだと思いますし、映画界にとっても大きなイベントだと思っています。(松永監督)『アジア三面鏡』の監督として参加させていただいたことがありますが、コンペでは初めてで、映画祭の花形として他の国の映画と並んで自分の映画がどのように見られるかが非常に興味深く、光栄だと思います」と語った。
また「映画祭は発表の場であり、映画文化への理解を深める場だと思うので、色々な人の作品を拝見するのも楽しみにしていますけど、シンポジウムとかイベントであった人と交流して次に繋げることができればなと思っています」と語った。

松永監督は「『アジア三面鏡』の監督として参加させていただいたことがありますが、コンペでは初めてで、映画祭の花形として他の国の映画と並んで自分の映画がどのように見られるかが非常に興味深く、光栄だと思います」といい「監督たちと交流するのも楽しみだなと思うのと、『エゴイスト』という作品が、初めて一般上映されるのでどういう反応になるのかがとても楽しみです」と語った。
その後、コンペ部門の審査委員長ジュリー・ティモア(演劇・オペラ演出家で映画監督)のコメントが紹介された。

■ジュリー・ティモア審査委員長のコメント

「芸術は我々を混沌の中から導き出し道を切り開く道しるべです。暗い劇場の中、目の前で明滅する映像は、私たちを深く引き込み、孤立した単一の自己存在から引き離します。映画館で作品に浸ってください。そこは私たちが全く知らないこと、知っていると思っていること、個人的に経験したことの境界を共に超えさせてくれる宮殿です。他人の人生や愛に没入して鼓舞され、苦悶させられてください。第35回東京国際映画祭のコンペティション部門国際審査委員長として来日できることをとても光栄に思います。」

コンペ部門の国際審査委員には女優のシム・ウンギョン、映画監督のジョアン・べドロ・ロドリゲス氏、撮影監督の柳島克己氏、元アンスティチュ・フランセ館長のマリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル氏に決まった。またや黒澤明賞が14年ぶりに復活することが発表された。

■橋本愛が東京国際映画祭について熱く語る

第35回東京国際映画祭 ラインナップ発表 橋本愛がアンバサダー
アンバサダー就任について語った橋本愛(21日午後、都内で)

2年連続でフェスティバル・アンバサダーに選ばれた橋本愛は「本当にありがたいことですし、とても光栄なことだなあと思いますし、役目を果たさなければと背筋が伸びる思いです」と語り、「映画祭にかかわる人間として、今の日本映画にいろいろ立ちはだかる課題について自分の気持ちを発信していけたらなと思っています」と抱負を語った。

そして「一番はハラスメントと呼ばれることだったりとか、あと労働環境が問題だったりとか、映画界に限らずいろんな問題があると思います」と指摘。「そういうので一番感じるのは、上の世代の方々が今まで積み重ねてきたものを大事に、誇りをもってもの作りにかかわっている姿勢はとても素晴らしいことだと思います。一方で若い人達の声をちゃんと聞こうという姿勢が、もう少し…お互いですけど、声を聴くということが大事な事なんじゃないかなと思いました」と訴えた。

「そういったことも含めて、若い人たちの世代も、そういった声を押し殺されることを何度も何度も味わってきたなかで、あきらめることなく、逃げずに自分の意見をちゃんと持って伝えていく。伝えるだけじゃなくて、表現方法をちゃんと鍛えて、自分の中にあるものを伝わるように伝えること磨いていくことも大事だなと。そしてお互い歩み寄って映画を作る環境になったらいいなと思います」と語った。

昨年の東京映画祭のアンバサダーを務めた経験について「昨年は海外の監督さんや女優さんと話す機会がありまして、そこで自分の英語力の拙さにくりしみながらも、映画を通してのコミュニケーション能力というものも、力を身に付けていかなければいけないんだなと思いましたし、世界にちゃんと開いていかなければいけないだなと考えさせてくれたきっかけになりました」という。

そして「もうひとつは映画そのもの役割だったり映画祭の役割について考えるきっかけになって、日本全体に例えば同性婚が認められていなかったりとか、LGBTQへの理解がまだ浅かったりとか、環境問題への取り組みが海外に比べると薄かったりとか、そういったところに目を向けて、歴史だったり伝統を守っていくことはそれ自体は美しく素晴らしいことだとは思うんですけど、一方で守り抜く過程でこぼれ落ちていく人たちもいて、そういう人たちの悲しみににもちゃんと寄り添って、それでも生きていってほしいという気持ちを込めてものを作っていくのが映画でもあるし芸術でもあるし、そういった存在でありながら、そしたら世界がいつの間にかちょっと良くなっていくということを映画を通して続けていけばいいのかなと思います」などと熱く語った。

<第35回東京国際映画祭 開催概要>
■開催期間:2022年10月24日(月)~11月2日(水)
■会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区 ■公式サイト:www.tiff-jp.net
<TIFFCOM2020 開催要項>
■開催期間:2022 年 10 月25 日(火)~27 日(木)(※オンライン開催)
■公式サイト:www.tiffcom.jp


【関連記事】
第35回東京国際映画祭、予告編公開 フェスティバルソングにNewspeakの「Bonfire」
第35回東京国際映画祭、審査委員長に舞台演出家で映画監督のジュリー・テイモア 黒澤明賞など主要企画決定
第35回東京国際映画祭のオープニング作品は「ラーゲリより愛を込めて」 クロージング作品は「生きる LIVING」
第35回東京国際映画祭のポスタービジュアル公開 コシノジュンコ監修 テーマ「飛躍」
第35回東京国際映画祭が作品エントリー開始 コンペ部門と「アジアの未来」部門
東京国際映画祭が「ウクライナ・ロシア情勢に関する声明」発表
第35回東京国際映画祭の開催日が決定(2022年10月24日~11月2日)
第34回東京国際映画祭閉幕 東京グランプリはコソボの監督の「ヴェラは海の夢を見る」
橋本愛VSバフマン・ゴバディ監督が”激論“ 第34回東京国際映画祭
第34回東京国際映画祭:コンペ正式出品「三度目の、正直」ワールドプレミアで監督・出演者登壇
第34回東京国際映画祭:ワールド・シネマ・カンファレンス「映画界の未来」
第34回東京国際映画祭開幕 審査委員長イザベル・ユペール、アンバサダー橋本愛らがレッドカーペット
アラキンのムービーキャッチャー NEO/「第34回東京国際映画祭」「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2021」「ハロウィンKILLS」のとっておき情報