稲垣吾郎と今泉力哉監督、「窓辺にて」の製作秘話を語る 東京国際映画祭のプレミアで舞台挨拶

(2022年10 月26日21:30)

稲垣吾郎と今泉力哉監督、「窓辺にて」の製作秘話を語る 東京国際映画祭のプレミアで舞台挨拶
舞台挨拶を行った稲垣吾郎㊧と今泉力哉監督(26日、都内で)

稲垣吾郎(48)の主演映画で第35回東京国際映画祭のコンペティション部門に選ばれた「窓辺にて」(11月4日公開)のワールドプレミアが26日、都内の映画館で行われ、稲垣と今泉力哉監督(41)が舞台挨拶を行い、映画に込めた想いや製作エピソードなどを熱く語った。

同作は今泉監督のオリジナル脚本で、稲垣演じるフリーライターの主人公・市川茂巳は、中村ゆかり演じる編集者の妻の沙衣が売れっ子作家・荒川円(佐々木詩音)と浮気をしていることを知るが、何も感じない自分いショックを受けるという異色のラブストーリー。玉城ティナが高校生作家の久保留亜役で出演しているほか、若葉竜、志田未来など個性派俳優が脇を固めている。稲垣が話す濃密なセリフの数々が際立ち、創作と恋愛をめぐって独特の世界が繰り広げられる。

■稲垣と今泉監督の出会いと「窓辺にて」の製作までの経緯

稲垣は今泉監督の出会いと「窓辺にて」の製作に至った経過について「結構長い間構想があったんです。時系列的にいうと、まずは(2018年に)東京国際映画祭でお会いして。その時僕は『半世界』、監督は『愛がなんだ』で(参加)、僕はもともと監督の映画のファンでしたし、お会い出来てすごく嬉しかったんです。その後に雑誌の取材で対談をして、お話させていただいて。その時監督の中にすでにこの話というのはあったんですね」と語った。

今泉監督は「コロナになってしまった時期に、稲垣さんは映画について紹介するコーナーを雑誌で持っていたんですけど、劇場での映画が止まってしまって、対談させていただいた。実はプロデューサーからこの映画の、稲垣さんと映画を作る企画を私は頂いている状態で、稲垣さんはそのことをまだ知らない状態で、対談中に稲垣さんがもし僕で映画を作るならどんな役でどんな内容になりますかといわれて、こっちは今考えている途中だったので、なんてごまかしながら答えようみたいな感じがあったというのが最初です」と明かした。

■稲垣と玉城ティナのラブホシーン裏話

稲垣は完成した脚本を読んで「監督はオリジナル脚本もそうですけど、いろんな原作のものも映画化されるので、監督らしさが出ていて、今泉監督が生み出した言葉だなというものがセリフにもありましたし、結構僕にあてて、僕をイメージして脚本を書いてくださったんだなというのが伝わったので、撮影がすごく楽しみでした」と語った。

そこで司会が「映画を観て、吾郎サンっぽいなと感じた方は手を挙げてください」というと多くの観客が手を挙げ「今ここで僕がここでしゃべっているような感じですよね」と稲垣。

映画の中で、玉城ティナが演じる高校生作家に呼び出され、ラブホテルで恋愛の相談をされ、その後彼女がガラス張りのバスルームでシャワーを浴びることになり、その時稲垣ふんする主人公が布団をかぶって見ないようにしているシーンがあったが、司会から「吾郎さんってそんな感じがします」といわれて、稲垣は「そこですか、そこは初めていわれました。あの状態だったらそうなるでしょうね、玉城ティナさんがいたらね」と笑わせた。

■司会「言葉が輝いていてどうしてこんなセリフが思いつくんだろうというのがたくさんありました」

今泉監督は「ご一緒するまではテレビで見ていたり、あと何となく自分でイメージしていた稲垣さんというものが、喜怒哀楽とかが激しいわけじゃなくて穏やかな印象があったり、今回の主人公も妻が浮気していても感情が動かなかったということに悩む人なんですけど、そういうことをもしかしたら理解して演じてくれるんじゃないかというので書いた部分もあります」と明かした。

司会が「言葉が輝いていてどうしてこんなセリフが思いつくんだろうというのがたくさんありました。例えば『理解なんかしなくていいんだよ、理解しても裏切られるんだから』とか、そういう言葉とかはどこから生まれるのか、ご自身なのかどこかで体験があったのか」と質問。
今泉監督は「もちろん自分が感じているとかから描くことは多いんですけど、映画のセリフって、すごく決めセリフみたいにしちゃうと現実世界から離れてしまうので、その辺は普段使っている言葉の中でなるべく描こうと思っていて。ただ今回小説家の話とかだったりするので、言葉がちょっとだけそういう、なんていうんですかね、文章じゃないんですけど、しゃべり言葉と文語的言葉が混ざっていても成立するのかなと思ったり。またそれが稲垣さんが話すことで、言葉が浮かないというか、本当に話してそうな言葉に見えて大丈夫だろうなと思って書いたりしました。まさにさっきおっしゃっていただいた信頼と理解とか、そういうのって裏切ることもあるし怖いみたいな部分は、現場で稲垣さんが演じた時に、茂巳という役に、稲垣さんが、もちろんSMAPの活動とか、今までのたぶん自分が想像できないたくさんの信頼とかを背負っていたことがある方だと思って、現場で芝居を観ても乗っかってる感じがして、すごく言葉に重みがあって、この映画のための茂巳の時間じゃなくて、稲垣さんの人生も乗っかった感じがして、そういうシーンはいくつもあった」と振り返った。

■稲垣「登場人物が、自分でいうのもなんですがチャーミングで可愛い」

稲垣は「監督はそういうふうに、今までの僕の経験とかを照らし合わせていてくださったというのはわからなかったんですけど。すごく理解ができる。もしかしたら僕も、もし結婚していて、妻がそんなことがあったとしたら、ショックはショックでしょうけれど。それはうまく感情表現はできないなとか、普通だったらそんなことがあったらこれくらい怒らなければいけない、これぐらい落ち込まなければいけないっていう、一つの線みたいなものがあって、そこに達していないといけないのかなと思ってしまったりとかあっても、多分ああいう主人公のような気持に僕もなるのかなあとも思います。いろんな登場人物も価値観がそれぞれで、でもみんな幸せになろうとしていて、やっぱり愛する人も幸せになってほしい。そこが本当に登場人物が、自分でいうのもなんですがチャーミングだ、可愛いっていう感じがあります」と語った。

その後質疑応答になり、役作りについて聞かれ、稲垣は「ここまで役作りしない役ってないんじゃないかなというくらい。僕が言いそうな言葉僕が思っているとこを監督が見透かしているかのような。よくあて書きって、僕が世間で思われているイメージ、例えばパブリックイメージだったりとか、そういうものにあてて書くということはあると思うんですけれども、こんなふうに演じてもらいたいとか、そういうのではなく、本当に僕の素、なんか僕の心の中を見透かされているような不思議な感じだったので、本当にこれは自然にそこに佇んでいれば、この役は茂巳としてできるんだなと思ったので、演じましたね」という。
「あとは監督も先ほどおっしゃってましたけれども、あまりお芝居お芝居しないというか本当にそこで生まれてる言葉のように感じさせるというか、今泉監督の作品というのは本当に自然に俳優さんたちが演技してますよね、おしゃべりをしてますよね。そのような感じに、今泉さんの監督の今泉組のお芝居のスタイルに自分をチューニングしていくというか、そこに合わせていったというのがありますけれども、それは僕にとっての俳優にとっても最高の体験でした」と今出雲監督の独特の演出スタイルについて語った。

■今泉監督「これがいけないこれがいいというのを疑うということをやろうとした作品」

今泉監督は、この物語を作るにあたって何か参考にした映画や小説はあったかと聞かれて「参考にした映画とか小説とかっていう実際の作品からというのはないんですけれど、本当に現実世界にあるこれがいい悪いとされているみたいなことが、ひとつ設定としてあって、それを疑うということをした作品ですね。例えば劇中で浮気とか不倫みたいなことが出てきて、それって世の中的には良くないことで、もちろん大前提は良くないことですけど、その浮気とか不倫している時間って楽しい時間だからよくないといわれている気がしていて。この作品の中では、やめといたほうがいいよって思ってたり、罪悪感について話したり。一方浮気相手の気持ちからすると、本当に片思いのような純粋な気持かもしれないものが絶対的な悪として、そこに感情がないものにされることに対し、そんな簡単な事なのかなと思ってしまう部分があったり。あと手放すとか、例えばスポーツ選手が引退するとか、何かをやめるっていうことがマイナスで、続けるということがプラスみたいに言われてるけど、実は手放すとかやめるということも、進むために必要だったり、全然マイナスな事じゃないんじゃないかという思いもあって、これがいけないこれがいいというのを疑うということをやろうとした作品でした」と語った。

「そしてもう一つ、悩みについての話なんですけど、共感とかみんなが知ってる感情というものが映画の主題になりやすいんですけど、これは小さな悩みというか、ほかの人には理解されないかもしれないことを主題にしていて、やっぱり実は本当に自分の悩みなんてちっぽけで、こんな悩みで悩んでいるなんておかしいな、例えば世界にはいろんな問題があって戦争があったりということと自分の悩みを比べて、それがちっぽけなことに悩んでることはないなとおれは思っていて、小さな悩みも恋愛で亡くなる人もいるし、一つの悩みを大事にしたいとか大切にしたいと思っていて、それについて書きました」と同作に込めた想いを語った。 (11月4日(金)全国ロードショー/配給:東京テアトル)

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