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映 画

「ドライブアウェイ・ドールズ」「男女残酷物語 サソリ決戦」「プリンス ビューティフル・ストレンジ」のとっておき情報
(2023年6月17日11:00)
映画評論家・荒木久文氏が「ドライブアウェイ・ドールズ」「男女残酷物語 サソリ決戦」「プリンス ビューティフル・ストレンジ」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、6月10日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
鈴木 よろしくお願いいたします。
荒木 今日は久々に、お待たせというか、ダイちゃんも待っていたと思うんですけど、エロ要素満載のお下品言葉オンパレードの作品からいくつか紹介したいと思います。
これから私の話す言葉とか表現には、今の時代に合うように細心の注意を払ってますが、いつも申し上げておりますように、私、昭和不適切時代の代表みたいなものですから、表現などで、もしご不快に思われました方はクレームをディレクターの新海さん宛てに…、ほどほどにどしどしお寄せください。始末書用紙は、多分たくさん用意してると思うんです。
鈴木 あはははは。わかりました。私も、大変失礼いたしましたくらいは入れますから。
荒木 お待ちしております。よろしくお願いします。
1本目は、「ドライブアウェイ・ドールズ」という、現在公開中の作品です。ジョエル・コーエンとイーサン・コーエンってわかります?

鈴木 コーエン兄弟のことですか?
荒木 はい、その通りです。
鈴木 凄い、凄い2人じゃないですか。
荒木 この世界ではビッグネームで、「ノーカントリー」などでアカデミー賞まで受賞してるんですね。今回は、弟のイーサン・コーエンが初めて単独で撮った作品です。ひとことでいうと、レズビアン女性ロードムービーみたいなもんです。
ストーリーから行きますかね。レスビアンで自由奔放なジェイミーさんという女の子が主人公です。
最近、恋人の女性と破局してしまってくさっています。彼女の友人のマリアンは、堅物で自分の殻を破れずにいるのが悩みです。二人とも日々の生活に行き詰まりを感じているのですが、気分転換に車の配送、これをドライブアウェイと言うそうなのですが、これをしながらアメリカ縦断のドライブ旅行に出かけることにします。
そんなふたりは、ドライブ中のアクシデントがきっかけで、配送会社が手配した車のトランクに謎のスーツケースがあるのを見つけ、その中に思わぬものが入っていたのにびっくり仰天します。
これは普通、金とか麻薬ですよね。
鈴木 あと、死体とかですかね。
荒木 あぁまあそうですね。どれでもないんですけど。
鈴木 あら!あらららら。
荒木 あとで、ダイちゃんにはお教えしますけど。一方、そのスーツケースを取り戻したいギャングがいて二人を車で追いかけるんです。ジェイミーとマリアンは危険が迫る状況にも関わらず、なんとこのドライブ旅行をエンジョイしようとするんです。レズビアンの2人が謎のスーツケースをもったまま、シモネタ満載、スリル満点のアメリカ縦断ドライブが始まります!!ということなんです。
鈴木 これ、確実に私が見たいパターンですよ。
荒木 ひとことでいうとエロおバカ要素満載のお下品コメディです。
鈴木 最高の映画だな、一級品ですね。
荒木 徹頭徹尾、下ネタ、下品、4文字満載、痛快な不適切です、今時。
鈴木 痛快な不適切が、一番楽しいんですよね。
荒木 ジェイミー役は、マーガレット・クアリーさんというんですけど、この人、「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」に出ているんですね。「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」では、とても地味で、堅くて、くそ真面目な出版社の女性編集者を演じているんです。私も、それ以来で彼女を見たんですが、さすが女優さんですね!その落差にびっくりです。本当に自由奔放に演じていますね。他には、ジェイミーの元ガールフレンド役にビーニー・フェルドスタインとか、マット・デイモンとか、マイリー・サイラスも出ています。さすがコーエン監督です。特にマット・デイモンは、使い方がくだらなすぎて笑っちゃいます。
鈴木 役者さんとか、それ、嬉しいんじゃないんですか。
荒木 そうかもね、いじられるみたいのがね。コーエン兄弟の過去の作品を意識を頭におくと、戸惑っちゃうかもしれません。レズビアンを題材にしているのですが、変にジェンダー方向や社会的な分野に持って行かないで、エロに振り切っちゃってるんです。清々しいです。
鈴木 さすがですね。
荒木 もっともこの作品、もっと奥に深遠なメッセージが込められているんじゃないかという人もいましたが、私には全然わかりませんでした。ただのエロナンセンスです。ものすごいセックスシーンが見たい人にはちょっとですが、多いのは下品な会話や、そんな感じの言葉ばっかりです。
鈴木 本当に、そういう単語、ワードがいっぱい出てくるんですね。
荒木 出て来る(笑)。難度のわいせつ用語をお勉強したい人にはぴったり。…いないか、そんな人。
鈴木 メモでも持ってくかな。
荒木 絶対に、カップルで行かない方がいいと思います。デートムービーじゃないからね。ま、そうとう親しい夫婦だといいかもしれないけどね。
鈴木 ちょいちょい、刺激いただき系ですね。
荒木 そうですね。「ドライブアウェイ・ドールズ」という、現在公開中のコーエンの作品です。
2本目。「男女残酷物語 サソリ決戦」という、ちょっと変わったタイトル。

鈴木 もう~、名前からして、何なんですかそれ。
荒木 イタリア製セックススリラーなんです、ちょっと変わっていて。
とりあえず簡単なストーリーです。男の名前はセイヤーさんていうんです。ある慈善財団法人のお偉いさんですが、この男、セックス拷問技術の達人という裏の顔を持ってるんです。
鈴木 いろんな達人、職人がいるもんですよ。
荒木 あはははは。いるもんですね。あまり表にだせない達人ね。ある日、彼は美人ジャーナリストのメアリーを拉致して秘密のアジトに監禁し、繰り返し想像を絶する肉体的、精神的凌辱、攻めですね。この限りを尽くします。
鈴木 メアリーさん!
荒木 メアリーさん、言葉にできない恥辱を受けて泣いたり苦しんだりしていると思うとですね、何故か微笑んでるんですね。
鈴木 あら!メアリーさん!メアリーさんたら!!
荒木 やがてセイヤーさんの方が弱音を吐き始めるんですね。いまや攻撃と防御が表裏一体の、性の対決がはじまるというストーリーなんです。つまりは性的異常を抱える男と、その男に監禁された女の対決を描いているのですが、実ははこれ、1969年の作品なんです。
鈴木 え!そんな前の話しなの?
荒木 そうなの。とてもポップで、アバンギャルドっぽい、観念的なアート作品と言ってもいいと思うんです。そのせいか、日本では長らく未公開でその存在すら忘れられているんですね。ようやく今年6月に初公開といういわくつきの作品です。映画のキャッチコピーは、「こんなの、はじめて。 誰も知らない、 誰も観たことがない、 55年前の新作映画 『#男女残酷物語/サソリ決戦』 終わりなき男女の対決を描く イタリア製ウルトラ・ポップ・ アヴァンギャルド・セックス・スリラー」ということです。
鈴木 長いね!キャッチじゃないもんね、ただのコピーになってますもんね。
荒木 長い!個人的にはとても興味深く見せていただいたのですが、いわゆる「観客を選ぶ作品」というところですね。個性的でいうか、とんがった表現、サドマゾ、変態、拘束と監禁、拷問とまがまがしい言葉がいっぱい出てきます。で、ダイちゃん、洋ピンって言葉わかりますか?
鈴木 それは、私世代だったらみんな聞いたことがあると思います。洋モノのピンク映画。
荒木 ピンク映画ね。よく出てくるのが金髪に青い目の、よくいうグラマーなお嬢さんっていう。まさに、この映画そうなんですよ。
鈴木 メアリーさんですか。
荒木 メアリーさんはレトロで懐かしくなりました。撮影も大事なところはインテリア、例えば、手前に花瓶や電気スタンドで隠したりとか。
鈴木 それの方が、実はいいんですよ。
荒木 そうなんですよ(笑)。一昔前のテクニックで、こちらも懐かしかったというか逆に新鮮でしたね。「男女残酷物語 サソリ決戦」という現在公開中の作品です。
鈴木 この後、どこかでメアリー j ブライジをオンエアしたくなるような名前ですよね。
荒木 あと、7月19日にはタイトルも「How to Have Sex」という、セックスの仕方とでも訳しましょうか。リゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みを描いた作品もあるようです。興味のある人は、チェックしてみてください。
鈴木 やはり、夏っていう季節は、素敵な季節なんですよ。
荒木 そうなんですよ。最後に、ここのところ恒例のようになっています音楽映画からご紹介です。「プリンス ビューティフル・ストレンジ」です。

鈴木 見ました!
荒木 ダイちゃんにも見ていただいたんで、後でたっぷり解説していただきたいと思います。
2016年4月に57歳で急逝した孤高の天才ミュージシャン、プリンスに迫ったドキュメンタリーです。
プリンス・ロジャーズ・ネルソンが本名だそうですが、
1958年生まれ。実は6月7日は誕生日だったんですね。 プリンスの日とされているらしいですね。
プリンスの映画と言えば1984年の「パープル・レイン」が有名ですよね。これで一躍有名になったと思うんですけど、そののち12枚のプラチナアルバムと30曲のトップ40シングルを生み出し、7度のグラミー賞を受賞しました。2004年にはロックの殿堂入りを果たすんですけど、ダイちゃん、見ていただいていかがでした?
鈴木 まず、ドキュメンタリーというか、作り方がね、プリンスのドキュメンタリーなんだけども、アメリカ、特にミネアポリスのポップカルチャー歴史ムービーになっていて、そこが大変興味深い1本だなと思ったのと、やっぱり、このプリンスという方は、エゴの塊だと思っていたが、実は、実は、非常に思いやりのある地元思いの小さな男…、身長の意味でだよ…、身長の小さな男だったんだなあってわかって。最後の方なんか、結構泣きそうになりましたね、私。
荒木 そうですか、へぇー。地元ミネアポリスがよく出て来て、ブラックコミュニティの原体験だとか、チャカ・カーンとかね。
鈴木 チャカ・カーンと仲いいんですよ、この方。笑っちゃったのは、チャカ・カーンが、スライ・ストーンから電話かかって来てスタジオに呼ばれたら、そこには一人の小さい男がギターを弾いていたと。どこにスライ・ストーンはいるんだ?あんた誰?と言ったら、私はプリンスだって。実はあなたに電話したのは、スライじゃなくて、僕がスライのモノ真似をして電話したんだと。えっ!おまえさん!って話しで。それ以降、私は彼と親友なのよって笑ってるチャカ・カーンが姉御で凄いなと思ったんです。
荒木 なるほどね、面白かったですよね。他にも、プリンスを敬愛するミュージシャンが出てましたね。ただ、これは3年前に制作されたんですけど、非公式のドキュメンタリーなんです。
鈴木 だからなのかな、アンダーグラウンドの匂い満載って気がするんだけど。
荒木 そうですね。実は、なんとプリンス財団とは一切関係のない作品で、残念ながら、ペイズリーパークでのお宝的なレコーディング映像やライブ映像が全くないんですね。彼の音楽もほぼ使用許可されてないんです。BGMは、プリンスファンのプロミュージシャンの作ったBGMみたいなのなんですけど(笑)。だから、彼の音楽やダンス、彼の経歴とか音楽性を知りたいみたいな事を期待してはいけないという作品です。
鈴木 だから、プリンスとかブラックミュージックをよく聞いて知っている、私みたいな人が見ると、尚更楽しいんです。
荒木 ある意味、プロ仕様の作品ですね。一般の方には敷居高いかもしれませんけど、プリンスと、そのバックボーンということではいい作品だと思うんです。
鈴木 プリンスがね、ジミ・ンドリックスとジョニ・ミッチェルを敬愛していたってのはわかっていて、その話も出てくるんだけど、僕びっくりしたのは、10代のプリンスってグランド・ファンク・レイルロードが好きだったってのにちょっとびっくり!えーっ!?グランド・ファンク?って思ったもん。
荒木 そうですよね。
鈴木 あと、ワーナー側に最初、芸名、デビュー時に、ミスター・ネルソンで行けって言われて、最初から固辞して、本名のプリンスでデビューしたってのも、プリンスらしくて笑っちゃったりね。
荒木 そうですよね。ネルソンとかって、カントリー歌手みたいですよね(笑)。
鈴木 ミスター・ネルソンはないだろうって言う(笑)。
荒木 いろんな、面白いエピソードが詰まってる作品ですよね。ダイちゃん、喜んでもらってよかったです。
鈴木 正直、2回見ましたよ、まるまる。
荒木 ファンの方は、是非見に行って頂きたいと思います。ということで、今日は3本ご紹介しました。
鈴木 ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。