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映 画
「青春18×2 君へと続く道」「ラストターン 福山健二71歳、二度目の青春」のとっておき情報
(2023年5月12日20:00)
映画評論家・荒木久文氏が「青春18×2 君へと続く道」「ラストターン 福山健二71歳、二度目の青春」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、5月6日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いいたします。 今日はいつもと声の雰囲気が違いますが、何処か、外ですか?
荒木 はい、外ですね。緑を見ながらあるビルの上から。
鈴木 (笑)のんびりお願いします。
荒木 ここから見ると緑がきれいですけど、ゴールデンウィークも、ダイちゃんもあまり休みなかったと思うんですけど、本当にいいお天気でよかったですよね。
鈴木 天気はよかったですもんね。
荒木 春、真っ盛りという感じで堪能したと思うんです。
話違いますが、青い春と書いて、青春(せいしゅん)ですね。これはもともと季節の「春」を示す言葉なんですけど、この言葉は、古代中国における陰陽五行では、「春」には「青」。(緑)の字が当てられたんですね。同様に、「夏」は「朱」、赤いってイメージを与え、「秋」を「白」。「冬」を「玄」、(黒)というイメージですね。それぞれ「青春(せいしゅん)」、「朱夏(しゅか)」、「白秋(はくしゅう)」、「玄冬(げんとう)」という形で年代を表しているんです。つまり青春は15歳から30歳くらいまでの、人生における若々しく元気な時期というようになっていますね。
話がちょっとそれてしまったんですけど、この春真っ盛り、タイトルに、この青春という言葉が使われている最新映画を2本ご紹介します。
1本目は、「青春18×2 君へと続く道」という現在公開中の作品です。
舞台は18年前の台湾と現代の日本です。始まりは18年前の台湾で、18歳の高校生ジミーくんがカラオケバーでバイトしていましたが、そこで日本から来た4歳年上の旅行者、アミちゃんと出会うんです。ジミーは彼女に恋心を抱いていくんです。ところが、彼女にはある秘密がありました。それはここでは言えないですけど。そして突然アミちゃんが突然日本に帰国することになり、がっかりしたジミーにアミちゃんはある約束をします。
時が経ち、18年後の現在。ジミーは36歳になっています。自分で立ち上げた会社が大成功していたのですが、あることでその会社を追放されてしまうんですね。彼は故郷に帰って来て、実家で昔アミから届いた絵ハガキを見て、初恋の記憶がよみがえます。彼女が生まれ育った日本への旅を始めようということで旅たちます。いろんな所、鎌倉、長野、新潟、そしてアミちゃんの故郷の福島へ各駅停車の旅をしていくんです。列車に揺られて。
鈴木 結構、各地 回っていますね。
荒木 そうなんですよ。で、いろんな人との一期一会の出会いを繰り返しながら、アミの故郷にたどり着いてですね、そこで、ジミーが知ったこととは…というストーリーです。
本当に、青春と初恋の甘酸っぱい記憶がエモーショナルに描き出されていますね。
監督が藤井道人さん。日台合作作品で、藤井監督がメガホンを取ったためか、出演者も豪華です。主演のジミーには台湾の人気俳優シュー・グァンハンさんです。
この人がジミー役。アミ役は清原果耶さんです。シュー・グアンハンさんは、台湾では知らない人のいない売れっ子なんです。主題歌は、ミスチルが担当しています。あとでね。
鈴木 あとで、かけましょう!
荒木 青春の神髄というか、いつの時代にも変わらない憧れとノスタルジーに溢れた映画です。自分の18歳の頃を思い出しますよ、みんな見いてる人は。どうしてもエモくなってしまうと思いますよ。18歳前後の旅というのはとりわけ印象深いですよね、
ダイちゃんも、若い時アメリカとかひとり旅なさったでしょう?
鈴木 ひとりで80数日間でしたからね、アメリカ一周っていうのはね。
荒木 いろんな人との出会いもあって、自分がそこに存在するということをね、ダイちゃんもね、本当に存在確認だと思うよ。
鈴木 本当に自己確認ですよね、まさしく。
荒木 この映画は、JR東日本が協力していて、青春18切符とかご存じですよね。
鈴木 もちろんです。
荒木 各駅停車、鈍行、1日乗り放題のチケットですね。これって18歳前後の人しか使えないような印象があるんですけど、誰でも使えるんですよ。
鈴木 えっ!? それ、50歳でも、70歳でも、30歳でも使えるんですか?
荒木 全然使える。81歳でも使えます。
鈴木 えーっ!?
荒木 「青春18きっぷ」ってネーミングがあるだけで、誰でも使えるんですね。
鈴木 なんだぁー、「青春18きっぷ」ってつけなきゃいいのになあ。18歳前後しか使えないってイメージになっていますもんね。
荒木 そうですね。映画の話に戻りますが、青春という心の問題だということもあるんでしょうけど。いろいろな台湾青春映画へのオマージュも見受けられます。とてもエモーショナルです。台湾の青春映画っていいですよね。ランタン バイクの二人乗りとか。
鈴木 そうだよね、いかにも青春っぽいもんね、絵柄が。
荒木 岩井俊二監督の『Love Letter』なんかもありますよね。ジミーがアミの面影を求めて現代の日本を見ていたり、観客にとっても、自分ごととして感じられる場面がいろんな所にありますよ。いい映画だと思います。
鈴木 これはちょっと見たいね。
荒木 旅はアミのふるさとで終了するんですけど、青春のほろ苦い涙のエンディングがとても印象深いです。
鈴木 そのエンディングは、当然ながら聞けないわけね?
荒木 はい、聞けないですね。
鈴木 あはははは。はい、即答ですね。
荒木 だんだんわかってきますよ、見ているうちに。こういう風になるんだろうな最後はと。
鈴木 だんだんわかってくる流れのまま、大逆転ってことはないですか?
荒木 ないですね。その通りにおさまります。「青春18×2 君へと続く道」現在公開中です。
もう1本。青春がタイトルについている作品なんですが、そのタイトルが、「ラストターン 福山健二71歳、二度目の青春」というタイトルなんです。
お分かりですよね。主人公が71歳の青春映画です。5月9日公開です。
これは、岩城滉一さんが主演です。なんと26年ぶりの主演映画ということです。
ストーリーは、岩城さん演じる福山健二さんは定年退職し、妻も看取り、今はひとり静かに暮らしています。最近老化に不安を覚えめた健二は、残りの人生を他の人に迷惑かけずに過ごそうと思って、心と身体の健康維持を意識し始めます。自治体のコミュニティクラブに参加した健二は、そこで同年代の橋本さんと出会い、お互いに友好を深めていきます。ある日、その友達の橋本さんが健二を水泳教室に誘います。
「目標持ってやろうよ、出来ない事を出来るようになるのは愉快じゃないですか?」という言葉に後押しされ、参加を決めるんですね。そして挑戦して、次第に変化が訪れる…というお話です。主演の岩城滉一さんは、あまり年齢を感じさせないワイルドで、かっこいいイメージが強かったですよね。
鈴木 カッコいいよね。岩城さんになりたいとか、岩城さんが上司だったらいいのにとか、みんな1回や2回は思っていますもん、なんとなく。
荒木 ところが一転、実年齢通りの役柄の悲哀やごく普通の小さいことにも迷いながら生きる老人の主人公を演じています。
鈴木 イメージ的に信じられないな。
荒木 妻役は宮崎美子さん。友達の橋本さんは田山涼成さん。友達の橋本さんは、老人クラブで出会ったおじさんなんですが、いい歳こいて若い娘とおっぱいにしか興味がないというちょっと昭和なおじさんなんですね。
鈴木 荒木さんとなんら変わらない感じはしますねぇ。
荒木 そうですね。
鈴木 あはははは。そうですねって、即答がいいですね。
荒木 そうですね。に身につまされるんですよね。ほんと私と同世代を描いている作品なんで、やることなすこと心当たりがあるんですよ、物を探したり、物を落としたり。孤独な朝だとか夜だとかね。そういうことが年代的に身につまされるんですね。
鈴木 俺がいるから、荒木さんはひとりじゃないですからね、孤独じゃないですからね。
荒木 直ぐ あなたもその歳になりますから(笑)。
鈴木 あはははは。ほんとひとってそうですもんね。
荒木 ただね、若さっていうのは、結局気持ちの問題で、心の持ち方だから、もちろん身体は衰えてきてるけれども、今は「グランド・ジェネレーション世代」というらしいんですが、今だって輝けないことはないって、そういうことを教えてくれる作品ですね。老後はそんなに酷いもんじゃないって希望も与えてくれる作品です。
鈴木 なんか背中押してくれそうで、いいですね。
荒木 「ラストターン 福山健二71歳、二度目の青春」5月9日公開です。
鈴木 岩城滉一さんの実年齢って、やはり同じくらいの71、72歳くらいなんですか?
荒木 そうですね、同じ年代ですね、たしか昭和26年生まれだったかな。
鈴木 そうか、岩城さんもそんな年代になるのか。
荒木 寝ているところを見ると、あのカッコいい岩城さんがこんな老人になっちゃったんだと寂しくなるところもありますけどね。
鈴木 ありがとうございます。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。