-
映 画

「マッドマックス:フュリオサ」「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」 などのとっておき情報
(2023年6月1日22:00)
映画評論家・荒木久文氏が「マッドマックス:フュリオサ」「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」などのとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、5月27日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
荒木 今日は、5月31公開の超話題作、「マッドマックス:フュリオサ」。
9年ぶりの新作で登場となりますが、ダイちゃん、このシリーズは?
鈴木 全部見ていることに気づきまして、この間。
荒木 すばらしいね、あとでその辺りも話したいと思うんですが。とにかくド肝を抜くけた外れの超びっくりのアクション大作です。さすがにこれはアクション好きの皆さん、見なきゃ損ですよと声を大にして言いたいです。

鈴木 これは、完璧に面白いですか?
荒木 面白いですよ!ダイちゃんも絶対に見たほうがいいですよ。
2015年、9年前に公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の前日譚です。今 流行ってます、ゼロ的なファースト的な前日譚。
ストーリーから行きます
時は世界が崩壊した後です。のちの女性戦士フュリオサ。彼女が幼いころふるさとから巨大な暴走族のバイカー集団にさらわれてしまいます。そのころ世界を支配していたのは二人の独裁者です。イモータン・ジョーとディメンタス将軍。この2人の暴君が対立し争う中で、少女フュリオサは多くの試練を乗り越えいつか故郷へ帰る道を探す事になるという。彼女の10歳から26歳までが描かれます。
鈴木 16年間てことなんだ!
荒木 そういうことです。前のデス・ロードは2.3日のお話だったんですけど、今度は16年間の話ですね。マッドマックス、ダイちゃんおっしゃったようにシリーズなんです。50年も前から続く映画シリーズ。
なんと第1回は1979年ですからね。今回も監督をしているジョージ・ミラーと主演メル・ギブソンの出世作です。ディストピアムービーの金字塔と言われてますけど。舞台が近未来で暴走族による凶悪事件が多発する荒廃した社会、警官がマックスなんです。
これが凶悪犯を追いかけるという作品です。後に、多くの作品に影響を与えたんですけど。続編、『マッドマックス2』。1981年の公開。いきなり舞台設定がガラッと変わります。
世界大戦により文明は崩壊し暴走族が略奪を繰りかえす荒廃とした世界で、元警官のメル・ギブソンのマックスは、ひとり砂漠を彷徨うという設定です。第3弾は、「マッドマックス サンダードーム」。ここにもメル・ギブソン出ていますが、面白い人も出ていますよね。
鈴木 ティナ・ターナー!
荒木 それで、一度シリーズは終わるんですよね、3部作。
そのあと27年間という長い空白があって、9年前、新シリーズで「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が出るんですね。
鈴木 これ、メル・ギブソン、当初出るみたいだったようですね。
荒木 そうですね、この作品ではマックスはトム・ハーディがやっていましたね。シャーリーズ・セロンの丸刈り、片腕の女性戦士フュリオサが話題になったんですけど、アカデミー賞で、6部門受賞しました。
そして実質スピンオフで、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の前のお話として今回の「ファースト・フュリオサ」があるわけですよね。マックスは出てこない。で、フュリオサ役には、アニャ・テイラー・ジョイです。フュリオサの若い時演っているんですけど、顔見れば、この女優さんも売れていますから、おわかりになると思うんですけど、存在感が凄いんですよ。ほとんど台詞はないんです。特徴的な目が凄いんです。
鈴木 ターミネーターの時のシュワちゃんみたいだね。
荒木 あーそうかもね。ああいう登場の仕方かもしれない。目で演技してるって感じです。アクションシーンも上手くこなしてます。シャーリーズ・セロンに似てるかどうかというと微妙なところです(笑)。他にも、「マイティ・ソウ」のクリス・ヘムズワースも出ています。監督は、ずっとジョージ・ミラーがやっているんです。この映画は、カーアクション。バイクと車に限定されてるんですけど、145台の車両が登場するそうなんです。
鈴木 145台?
荒木 はい。35台が車型です。110台がバイクです。
鈴木 バイクが多いですね。
荒木 それが凄まじいスピードなんです。集団カーアクション。これ何人死んでても不思議じゃないような、そんなアクションですね。
鈴木 それ、本当に乗って飛ばしてんの?
荒木 飛ばしてんです。もちろんCGもあったりするんですけど、特殊撮影も。でもほとんど実際にやっているみたいですね、砂漠や山岳を上手く使った設定にも抜群のセンスを感じます。そして、もうひとつ凄いと思うのは「怒りのデス・ロード」の前日譚ですよね…繋がりが素晴らしいんですよ。
つまりね、何の矛盾もなく「怒りのデス・ロード」に出てきた結果の伏線がそこでわかるんです。
「怒りのデス・ロード」の前に第5弾のこっちの脚本ができていたんじゃないかと思っちゃうほどです。
鈴木 そんなに繋がりがスムーズですか?
荒木 スムーズです。フュリオサがどんな状況でどこから来たのか、彼女を形作っているものは何なのか、そういうものが上手く、全部、伏線がばっちり回収されるんですね。実は、前の作品、第4弾を作った時に第5弾もほぼ完璧に作ったんですって。
鈴木 なんで4.5.ってやらないんだろうね。
荒木 やる予定だったらしいですけど、いろんな事情で続けては出来なかった、営業的なこともあるでしょうしね。4がヒットしなければ、5が出来ないってのもあるからね。
鈴木 ああ、そういうことか。
荒木 そうなんですよ。だから、そういう意味では、最近いろいろ前日譚ってあるけど、リレーが完璧で、超理想的なスピンオフですね。だから「怒りのデス・ロード」を見てから行くと、もっとよくわかるね。
鈴木 じゃあ、最初、5、4って行った方がいいってことですか?
荒木 そうですね、ま、4、5見ても繋がるけどね。
鈴木 じゃあ、3、4じゃダメか。
荒木 3、4は、ほぼ関係ないからね。とにかくね、物凄い映像体験でしたよ。2時間強が、本当にあっという間です。我々の期待を軽々と超えていく。この映画は余計なことを考えないで大口開けてびっくりしながら没入すること。わぁー!とかあー!とか。
鈴木 絶対、これはポップコーンを買わなきゃ駄目ですね。
荒木 ポップコーン食べる暇ないです。
鈴木 そんな感じ?そんなスピーディーですか。
荒木 そうです、食べるのも忘れます。ただただ浸るだけで、映画館から出る時には興奮し過ぎて、久々にクラクラしました。
鈴木 いいね!
荒木 期待していいです!
鈴木 荒木さん、絶賛ですね。
荒木 超話題作「マッドマックス:フュリオサ」。大スクリーンで楽しんでください。
鈴木 荒木さん的には、6、ありそうですか?
荒木 どうかなあ、あるんじゃないかな…。
鈴木 おおー!わかりました。

荒木 さて…映画を沢山見ていると、もちろん面白いもの、つまんないものあるんですけど、今回は、見ていてやるせないとか虚しさを味わった作品でしたね。
タイトルが、「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」という、ドキュメンタリーとでも言いましょうか、今、公開中の作品です。
時は1972年11月。早稲田大学文学部キャンパスで第一文学部2年生の川口大三郎さんが、新左翼党派革マル派からリンチによって大学構内で殺害されるという事件が起こりました。
この映画は、この事件を中心に70年代のいわゆる「内ゲバ」を追った作品なんです。川口さんリンチ殺人事件当時に第一文学部の学生で、事件直後に「革マル派追放」「新自治会設立」の運動のリーダーとして活動し、現在はジャ―ナリストの樋田毅氏の2021年の著書「彼は早稲田で死んだ」が原案です。桶田氏や、殺された川口大三郎さんを知る当時の同級生の証言や、当時の写真や資料とか映像を交えて、あと池上彰さん、佐藤優さん、内田樹さんらの証言を入れたり、劇作家の鴻上尚史氏が演出を担当した、俳優が演じる川口さん殺害を再現した劇パートもあるんです。(映画ではリンチ場面は劇パートとして描かれ、川口さんは革マル派と敵対する中核派のスパイと疑われ、本人は否定するが「認めろ」「吐け」などと追及され壮絶なリンチで死亡する)
立体的に構成されていて、そこから内ゲバの不条理とか、あの時代特有の熱量に迫るというもの。代島治彦さんという人が監督しているんですけど…実は私、当時、殺された川口君と同じ大学で同じ学年に在籍していたんです。
鈴木 えっ?荒木さん、知っている方ですか?
荒木 直接は知らないんですよ、学部は違いますからね。でも同じ2年生だったので、1972年の11月にこの映画の中で描かれている事件をライブで体験してるんですよ。だからある意味の当事者なんですね。
鈴木 そうだよね。
荒木 映像や写真の数々にあの当時のこと、忘れていた部分まで思い出されて、本当にいたたまれない気持ちになりましたね・・・。あの当時は、川口君事件って言ったんですけど、内ゲバとかいう以前に大学の中で一般の学生が自治会を名乗る党派の同じ学生に殺されるという事実に対して、誰もが、一体どういうことなんだ?という素朴な疑問と強烈な怒りがあって、こういうのが私を含めた一般的なこの事件の見方だったんですよ。
革マル派の拠点として占拠された大学と、それを黙認・利用していた大学当局側への怒りもあって、こうした支配からキャンパスを解放しようということで、いろいろな学生グループもあったし、さまざまな運動があったんです。
だんだん時間が経過する中で、一般学生が次第に離れていく過程で政治党派が介入してきてきて変質し、いわゆる内ゲバが激しくなっちゃうんですけど。
鈴木 今の10代、20代、内ゲバって何を言ってるのかわかんないですよね。
荒木 もう全然、何言っているのかわかんないと思います、昔のことだから。
ただ、今振り返ると、大学2年から3年にかけて、大学での試験や入学式が中止になり、大学総長が学生に拉致されて団体交渉の矢面に立たされたり、キャンパスは長い混乱が続きました。私のクラスメイトや友達も学校に出て来られなくなったり、襲撃されて大けがした人、人生を狂わされてしまった人、たくさんいました。
ダイちゃんはじめ、ラジオお聞きの皆さんは、私の喋っていることを聞いても、何が何だかさっぱりわかんないですよね。
鈴木 そういう方いると思います、たくさん。
荒木 何をやっていたんだと、何を騒いで何を求めていたのか‥、不思議だと思います。だからこの映画を見ても理解できるとは思いませんけど、当時の状況について、ほんのちょっと知ることが出来る作品じゃないかと思います。
我々の世代にとって、あの時代のことを話したくないことも多いんですよ。今でも、心の底に澱のように溜まってる部分があってね、これからも積極的に喋ってくことはないと思うんだけども、この映画を見て、紹介しようかどうしようか迷ったんですけど、一人でもこの作品を見て当時の状況をわかってもらえばと思ってご案内した次第です。
鈴木 1960年代から70年代の中盤くらいまで、日本だけじゃなくて、アメリカでもどこでも荒れてましたよね、時代が。
荒木 若者の反乱の時代と言われていましたよね。その時代を描いた中の1本として「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」というドキュメンタリー。現在公開中です。
興味のある人は見てください。
さて、気分を変えて、先週、チケットプレゼントをさせていただいたアニメーション作品。「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章」ということで、通称「デデデデ」。宇宙からの侵略者が日常生活に溶け込んでしまった世界で青春を謳歌する少女たちを描いたアニメ2部作の後編です。主人公2人は大学生になっています。
東京の上空に何年も留まっていた巨大な母艦がいよいよ動き出して、世界の終わりがカウントダウンになる…、ということなんですけどね。音楽ユニット「YOASOBI」のボーカルのいくらちゃんこと幾田りらさんと、あのちゃんが主演の声を演じるということで話題になった作品です。後半も相変わらず切れが良く、リズムも素晴らしい展開です。
原作とはエンディングも違っているようなんで、原作を知っている人でも楽しめるということでね。現在公開中です。
今回、主題歌は幾田りらフューチャーするところの、あのちゃんの「青春謳歌」っていうのかな。
今日は3本、全然ばらばらな作品ご紹介しました。
鈴木 ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。