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ハリウッド特急便
映画「ラスト」誤射事件、ハリナ・ハッチンズさんの遺族がアレック・ボールドウィンらを提訴「ウクライナに閉じ込められている」
(2023年2月10日12:15)

映画「ラスト」の誤射事件で死亡した撮影監督ハリナ・ハッチンズさん(当時=42)の妹と両親が、アレック・ボールドウィン(64)らに損害賠償を求めてロサンゼルスの高等裁判所に提訴したことが分かった。ハッチンズさんの死によって「ウクライナに閉じ込められている」という。米メディアが報じた。
米紙ニューヨーク・ポスト(電子版)によると、ハッチンズさんの妹スヴェトラーナ・ゼムコさん、父親でウクライナの兵士のアナトーリ・アンドロソヴィッチさん、母親のオルガ・ソロヴィーさんは、ロシアの軍事進攻が続くウクライナに閉じ込められているという。
ハッチンズさんの死によって、ロシアとの戦争から逃れるための重要なライフラインが絶たれたとしている。9日(現地時間)、遺族を代表してボールドウィンとプロデューサーに対する訴訟を発表した弁護士はハッチンズさんが生前いかに経済的に彼らを助けていたか、戦争が勃発したらすぐに戦争で荒廃した国から彼らを引き離せただろうと説明した。
「ハリナ・ハッチンズは、自分の夢を追いかけるためにウクライナから米国に来た。その夢には、自分と家族全員がより良い生活を送ることも含まれていた」と、ジョン・カーペンター弁護士は述べた。被害者の家族が他国に住んでいても、損害賠償を求めることができる判例があるという。

遺族らは、撮影のセットでいくつかの安全確認が無視されたと主張し、銃を発射したボールドウィンのほかに武器担当のグティエレス・リード、ボールドウィンに現場で銃を渡した助監督のデビッド・ホールズも被告として名前を連ねている。
遺族は、ボールドウィンが撮影現場で、ホールズに「コールド・ガン」(実弾が入っていない銃)といわれて銃を渡されたと主張していることに「(責任を)のがれられない」としている。ボールドウィンのようなベテラン俳優なら、銃の実演を要求するか自分でチェックすべきだったと主張しているという。
さらに、撮影していたシーンでは、ボールドウィンが銃の引き金を引いたり、発射したりする必要は全くなかったとしている。また、事件当時、セットの建物内にはハッチンズさんの安全を確保するプレキシガラス(軽くて強いアクリル樹脂のガラス)が十分になかったと述べている。
ハッチンズさんの遺族は、コンソーシアム損失(不法行為者による侵害で家族関係の利益が奪われること)、過失、精神的苦痛の故意の侵害などで訴えており、不特定の損害賠償を求めている。
ニューメキシコ州サンタフェの検察当局は1月31日、ボールドウィンを過失致死罪で訴追している。ハッチンズさんの夫もボールドウィンを訴えていたが、その後和解して「ラスト」のプロデューサーに就任した。
■映画「ラスト」の誤射事件
事件は2021年10月21日(現地時間)、米ニューメキシコ州のロケ地で西部劇「ラスト」のリハーサル中に起きた。教会のセットでボールドウィンが小道具の銃を発砲し、撮影監督のハリナ・ハッチンズさん(当時42)の胸に当たり死亡、彼女を貫通した銃弾が近くに居たジョエル・ソウザ監督(48)の肩に当たり負傷した。
昨年12月、ボールドウィンは米ABCニュースのインタビューで「引き金は引いていない」「銃に実弾が入っていたとは知らなかった」などと語った。ハッチンズさんの死は事故であり、自分に責任はないと主張。スタッフは銃に実弾が入っておらず、適切に空砲が装填されていることを確認するべきだったとしている。また、引き金は引いてなく、拳銃の撃鉄を戻した後、銃が勝手に暴発したなどと主張していた。
1月31日(現地時間)、米ニューメキシコ州サンタフェ郡の検事局はアレック・ボールドウィン被告を過失致死罪で訴追した。検事局は、ボールドウィンの安全上の過失を数多く列挙している。有罪になれば最高で5年の禁固刑の可能性がある。