アカデミー賞発表直前、米誌「ハリウッド・リポーター」が「誰が勝つのか、誰が勝つべきなのか」特集 「ドライブ・マイ・カー」は作品賞、脚色賞を「受賞すべき」

(2022年3月27日12:30)

アカデミー賞発表直前、米誌「ハリウッド・リポーター」が「誰が勝つのか、誰が勝つべきなのか」特集 「ドライブ・マイ・カー」は作品賞、脚色賞を「受賞すべき」
オスカー像は誰の手に(アカデミー賞の公式サイトから)

第94回アカデミー賞の授賞式が27日(日本時間28日)に迫るなか、米誌「ハリウッド・リポーター」(電子版)が、今年のアカデミー賞を占う「誰が勝つのか、誰が勝つべきなのか」を発表した。日本映画初の作品賞ノミネートをはじめ監督賞、脚色賞、国際長編映画賞の4部門でノミネートされた濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」は作品賞と脚色賞を「受賞すべき」と高く評価し、国際長編映画賞は「勝ち取るだろう」と予想した。

映画賞専門家スコット・ファインバーグ氏が「受賞するだろう」とみる作品や俳優など最優力候補を予想し、同誌のチーフ映画評論家デヴィッド・ルーニー氏が「受賞すべき」作品、俳優などを挙げた。

【作品賞】
■受賞するだろう:「コーダあいのうた」
「『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を超えるノミネートを受けたのは、過去に10作品しかない」と最多12部門でノミネートされている同作を評価しながらも「しかし、ストーリーやキャストが万人を魅了する『コーダ あいのうた』ほど、アカデミー(会員)の投票に引っかからないかもしれない。評価が分かれる作品だ」と予想した。ちなみにどちらの作品が受賞しても、女性監督作品としては3本目、ストリーマー作品(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」はNetflix、「コーダ あいのうた」はApple TV+)としては史上初の作品賞となる。「スポイラー」(有力候補を妨害する候補者)になる可能性があるのは「ベルファスト」と予想した。
■受賞すべき:「ドライブ・マイ・カー」
「アートと思いがけない人とのつながりで悲しみを癒す濱口竜介の代表作に勝る作品はないだろう。村上春樹の短編小説にチェーホフを織り交ぜたこの作品は、優雅な調律のシンフォニーであり、その感情のパワーはあなたを優しく包み込むだろう」

【監督賞】
■受賞するだろう:ジェーン・カンピオン(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)
「『ピアノレッスン』でノミネートされてから28年、先駆者であるジェーン・カンピオンは、女性監督として初めて同賞に2度目のノミネートをはたした。重要な監督協会賞を含むすべての前哨戦を制した彼女は、この夜最も安全な賭けの対象であり、この部門のオスカーを手にする3人目の女性になるだろう」。
■受賞すべき:ジェーン・カンピオン(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)
「(作品賞で)前述した理由から私の気持ちは濱口監督に傾いているが、ジェーン・カンピオンを推します。これは、オスカーを受賞した女性監督の数が少ないからというだけではありません。カンピオンは、腐敗した男らしさ、抑圧された性、そしてクィアな復讐の物語という鮮烈なレンズを通して西洋の神話を再考しながら、4人の俳優から忘れがたい演技を引き出しています」

【脚色賞】
■受賞するだろう:「コーダ あいのうた」
「英国アカデミー賞と脚本家協会賞を受賞した「コーダ あいのうた」と批評家協会賞を受賞した「パワー・オブ・ザ・ドッグ」が対決するため、作品賞を占う上で重要なポイントになりそうです。また、監督賞のカンピオンと同様に、『コーダ』のシアン・へダーの(脚色賞)受賞を確実にするために、この機会を逃すまいとする有権者もいるだろう」
■受賞すべき:「ドライブ・マイ・カー」
「アメリカ西部の孤独の中でジェンダーや家族の絆を描いたカンピオンの作品は、ギザギザのリリシズムを持った時代劇の語り口に優れており、大胆な現代性を感じることができる。しかし、濱口と共同脚本の大江崇允が、細長い村上春樹の物語を、魅惑的な感情の広がりを持つ作品に拡大したことに軍配を上げる」

【国際長編映画賞】
■受賞するだろう:「ドライブ・マイ・カー」
「日本の『ドライブ・マイ・カー』以前には、この賞の候補作で作品、監督、脚本にもノミネートされたのは6作品だけでした。そのうち5作品がこの賞を受賞しています。受賞を逃した1作品(「The Emigrants」)は、他に脚本賞のノミネートしかない作品(「The Garden of the Finzi Continis」)に敗れました。だから、ノルウェーの『ワースト・パーソン・イン・ザ・ワールド』には一筋の希望があるのです」
■受賞すべき:「ドライブ・マイ・カー」
「日本からの応募作品ほど、この喪失と孤独の時代に力強く響いた作品はなかった。この作品が受賞できなかったら、本当にショックなことです」

【主演男優賞】
■受賞するだろう:ウィル・スミス(「ドリームプラン」)
■受賞すべき:ベネディクト・カンバーバッチ(「ザ・パワー・オブ・ザ・ドッグ」)
【主演女優賞】
■受賞するだろう:ジェシカ・チャステイン(「タミー・フェイの瞳」)
■受賞すべき:ペネロペ・クルス(「パラレル・マザーズ」)
【助演男優賞】
■受賞するだろう:トロイ・コッツァー(「コーダあいのうた」)
■受賞すべき:コディ・スミット・マクフィー(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)
【助演女優賞】
■受賞するだろう:アリアナ・デボーズ(「ウエスト・サイド・ストーリー」)
■受賞すべき:キルスティン・ダンスト(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)


第94回アカデミー賞主要部門のノミネート

【作品賞】
「ベルファスト」、「コーダ あいのうた」、「ドント・ルック・アップ」、「ドライブ・マイ・カー」、「DUNE/デューン 砂の惑星」、「ドリームプラン」、「リコリス・ピザ」、「ナイトメア・アリー」、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」、「ウエスト・サイド・ストーリー」、
【監督賞】
ケネス・ブラナー(「ベルファスト」)
ジェーン・カンピオン(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)
スティーヴン・スピルバーグ(「ウエスト・サイド・ストーリー」)
濱口竜介(「ドライブ・マイ・カー」)
ポール・トーマス・アンダーソン(「リコリス・ピザ」)
【主演男優賞】
ハビエル・バルデム(「愛すべき夫妻の秘密」)
ベネディクト・カンバーバッチ(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)
ウィル・スミス(「ドリームプラン」)
デンゼル・ワシントン(「マクベス」)
アンドリュー・ガーフィールド(「チック、チック...ブーン!」)
【主演女優賞】
ジェシカ・チャステイン(「タミー・フェイの瞳」)
オリヴィア・コールマン(「ロスト・ドーター」)
ニコール・キッドマン(「愛すべき夫妻の秘密」)
クリステン・スチュワート(「スペンサー ダイアナの決意」)
ペネロペ・クルス(「パラレル・マザース」)
【助演男優賞】
J・K・シモンズ(「愛すべき夫妻の秘密」)
キアラン・ハインズ(「ベルファスト」)
トロイ・コッツァー(「コーダ あいのうた」)
コディ・スミット=マクフィー(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)
ジェシー・プレモンス(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)
【助演女優賞】
アリアナ・デボーズ(「ウエスト・サイド・ストーリー」)
キルスティン・ダンスト(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)
アーンジャニュー・エリス(「ドリームプラン」)
ジュディ・デンチ(「ベルファスト」) ジェシー・バックリー(「リスト・ドーター」)
【脚本賞】
ポール・トーマス・アンダーソン(「リコリス・ピザ」)
ケネス・ブラナー(「ベルファスト」)
アダム・マッケイ(「ドント・ルック・アップ」)
ザック・ベイリン(「ドリーム・プラン」)
ノルウェー(「ワースト・パーソン・イン・ザ・ワールド」)
【脚色賞】
濱口竜介・大江崇充(「ドライブ・マイ・カー」)
シアン・ヘダー(「コーダ あいのうた」)
ジェーン・カンピオン(「パワー・オブ・ザ・ドッグ」)
ジョン・スペイツ、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、エリック・ロス(「DUNE/デューン 砂の惑星」
マギー・ギレンホール(「ロスト・ドーター」)
【国際長編映画賞】
「ドライブ・マイ・カー」(日本)
「ワースト・パーソン・イン・ザ・ワールド」(ノルウェー)
「フリー(Flee)」(デンマーク)
「Hand of God―神の手が触れた日―」(イタリア)
「ブータン 山の教室」(ブータン)

【関連記事】
「ウエスト・サイド・ストーリー」のレイチェル・ゼグラー、アカデミー賞授賞式のプレゼンターに
「ウエスト・サイド・ストーリー」のレイチェル・ゼグラー、アカデミー賞授賞式に招待されてなかった 第94回アカデミー賞「ドライブ・マイ・カー」日本映画初の作品賞ノミネートの快挙 監督賞、脚色賞、国際長編映画賞も
英国アカデミー賞、ベネディクト・カンバーバッチがウクライナ連帯表明 「ドライブ・マイ・カー」非英語映画賞
東京国際映画祭が「ウクライナ・ロシア情勢に関する声明」発表
第45回日本アカデミー賞「ドライブ・マイ・カー」最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞など8部門独占 米ISA授賞式で司会者がプーチン大統領に中指 クリステン・スチュワートも呼応 「ドライブ・マイ・カー」が国際映画賞
第95回キネマ旬報ベストテン、濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」5冠
「三度目の、正直」公開記念イベント、濱口竜介監督と野原位監督がトークショー
米アカデミー賞、ショートリスト発表 国際長編部門に濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」
第79回ゴールデングローブ賞のノミネーション発表 濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」が非英語映画賞にノミネート
濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」ニューヨーク映画批評家協会賞で日本映画初の作品賞受賞
第34回東京国際映画祭:コンペ正式出品「三度目の、正直」ワールドプレミアで監督・出演者登壇
第74回カンヌ映画祭、濱口竜介監督らが日本映画初の脚本賞
ベルリン国際映画祭授賞式 銀熊賞「偶然と想像」の濱口竜介監督が受賞スピーチ
濱口竜介監督の「偶然と想像」がベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞