濱口竜介監督の「偶然と想像」がベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞

(2021年3月8日21:00)

濱口竜介監督の「偶然と想像」がベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞
(濱口竜介監督)

「ハッピーアワー」や「寝ても覚めても」などで知られる滝口竜介監督(42)の「偶然と想像」が5日、第71回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で最高賞に次ぐ審査員大賞(銀熊賞)を受賞した。

「偶然と想像」はタイトル通り「偶然」と「想像」をテーマにした3話のオムニバスで、濱口監督初の短編集。濱口監督自身が「ハッピーアワー」などのプロデューサー高田聡とともに企画立ち上げを行い、2019 年夏から約 1 年半 をかけて製作したという。脚本はすべて濱口監督が手掛け、撮影は 3 話ともに「うたうひと」「ひかりの歌」の飯岡 幸子が務めている。劇場公開は未定。

濱口竜介監督の「偶然と想像」がベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞
(第1話のシーン)( ©2021 NEOPA/Fictive)

第1話「魔法(よりもっと不確か)」―モデルの芽衣子(古川琴音)が親友のヘアメイク・つぐみ(玄理)が「いま気になっている」と話題にした男が、2年前 に別れた元カレの和明(中島歩)だと気づく。
第2話「扉は開けたままで」―大学教授・瀬川(渋川清彦)は 50 代にして芥川賞を受賞した。彼に落第させられた男子学生・佐々木(甲斐翔真)は 逆恨みから彼を陥れようと、同級の女子学生・奈緒(森郁月)に瀬川の研究室を訪ねさせる。
第3話「もう一度」―仙台で 20 年ぶりに再会した二人の女性。夏子(占部房子)は東京でシステムエンジニアに、あや(河井青葉)は仙台 在住のまま 2 児の母になっていた。高校時代の思い出話に花が咲くが、会話は次第にすれ違ってゆく。

■審査員の評

「In the place where dialogues and words usually end, the dialogues of this film only begin. That’s when they go deeper, so deep that, amazed and troubled, we ask ourselves: How much deeper can it go? The words of Hamaguchi are substance, music, material. At first it looks almost minor: a man and a woman, sometimes two women, stand in a room with white walls. Then the scene moves forward, and as it advances you feel that the whole universe, including yourself, is standing there with them inside this simple room.」(ベルリン国際映画祭の公式サイトから)
「対話や言葉が通常終わるところで、この映画の対話が始まる。彼らが一層深刻になるとき、とても深刻で驚かせられ困惑させられるとき、私たちは自問する、どこまで深刻にできるのかと。濱口の言葉は物質で音楽で素材である。最初それはほとんど小さなことに見える。男と女、ある時は2人の女性が白い壁の部屋に立っている。その後シーンが進むにつれて、あなた自身を含む宇宙全体がこのシンプルな部屋の中で彼らとともに立っていることを感じる。」(和訳)

■濱口監督のコメント

映画『偶然と想像』がベルリン国際映画祭審査員グランプリ(銀熊)賞を受賞しました。経験豊かな監督たちが揃った 「審査員からの賞」が贈られたということを心から嬉しく、誇らしく思っています。撮影中ずっと、役者の演技を見な がら、カメラの後ろで驚いていました。その驚きが海を超えて伝わったことに感激しています。この映画、一番の見ど ころはと問われたら「役者の皆さんの演技」だと答えます。会議室のようなリハーサル部屋で始まった時間が、このよ うな結果にまで結びつきました。この物語の価値を信じて参加し、最高の演技をしてくださった役者の皆さんにこの 場を借りて、御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。そして、その役者の演技を支えるよう にして、献身的に仕事をしてくれたスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。演技の素晴らしさは皆さん がつくってくれた環境から生まれたものです。今はなかなか集まる機会が持てませんが、早く皆さんと喜びを分かち 合いたいと思います。 そして、ベルリン国際映画祭にも改めて御礼を申し上げます。この映画を見つけてくれて、ありがとうございました。 審査員グランプリ賞、とても光栄に思っています。

■濱口 竜介(はまぐち りゅうすけ)

1978 年12月16日生まれ。神奈川県出身。2008 年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了 制作『PASSION』が国内外の映画祭に出品され高い評価を得る。2015 年 『ハッピーアワー』(2015)でロカルノ国際映画祭・ナント三大陸映画祭で 主要賞を受賞するなど世界の注目を集める。『寝ても覚めても(2018)が第 71 回カンヌ 国際映画祭コンペティション部門正式出品。現在、村上春樹原作・西島秀俊主演 『ドライブ・マイ・カー』が 2021 年夏に公開待機中。