アレック・ボールドウィンを提訴 銃誤射事件で死亡した撮影監督の遺族が発表

(2022年2月16日14:15)

アレック・ボールドウィンを提訴 銃誤射事件で死亡した撮影監督の遺族が発表
アレック・ボールドウィン㊧とハリナ・ハッチンスさん (Instagram/@ alecbaldwininsta/@halynahutchins)

アレック・ボールドウィンが西部劇「ラスト」の撮影中に小道具の銃を誤射して2人が死傷した事件で、死亡した撮影監督ハリナ・ハッチンスさんの遺族が15日(現地時間)、ボールドウィンらを安全を無視したなどとして提訴したことがわかった。

米紙ニューヨーク・ポスト(電子版)によると、ハッチンスさんの遺族の弁護士は15日(現地時間)、ボールドウィンに対して不法死亡訴訟を起こし、同時に、撮影監督を死亡させた映画撮影現場の再現ビデオを公開した。訴えたのはハッチンスさんの夫マシューさんと9歳の息子だという。
「Killing of Halyna Hutchins on the set of 'Rust'」と題されたこのアニメーション映像は、ボールドウィンや他のスタッフが事件のあった日に撮影に参加していた様子をCGで再現したものだという。ボールドウィンが空砲だったはずの小道具銃の引き金を引く瞬間も含まれている。

ハッチンスさんお遺族の弁護士ブライアン・パニッシュ氏はロサンゼルスでの記者会見で、「罪のある人はたくさんいますが、ボールドウィン氏は武器を持った人です。彼が撃たなければ、彼女は死ななかったでしょう」と述べた。「ボールドウィン氏にはかなりの部分の責任がありますが、他の人にもあります。この訴訟が目指すのは、無意味な悲劇に責任がある人への公正な対処を評価することです」としている。

ボールドウィンは昨年10月21日(現地時間)、米ニューメキシコ州のロケ地で西部劇の撮影中に、小道具の銃を誤射し、ハッチンズさんに命中し、さらに彼女の体を貫通した弾丸が近くにいたジョエル・ソウザ監督の鎖骨に当たりけがをさせたとされる。

このビデオには、銃弾がハッチンズさんの胸に当たる瞬間も描かれている。ボールドウィンが撮影現場の仮設教会の教壇に座っているときに銃を発射し、約1メートル26センチ離れたハッチンズさんに命中したとしている。
映像では、発射前に弾丸が実弾かどうかを見分ける簡単な方法があると説明している。ダミーの弾丸は穴が開いていて、誰かが振るとガタガタと音がするが、実弾は穴がなく音もしないとナレーターが説明している。弁護団は、ボールドウィンが銃を持つ手の反対側のホルダーから銃を抜くクロスドローを行うシーンの撮影に当たって、訓練を拒否したと主張した。

アルバカーキの弁護士でハッチンス家の弁護団に加わっているランディ・マギン氏は、ニューメキシコ州の陪審員は、2年以内に裁判になる可能性のあるこの事件の複雑さを理解できると確信していると述べた。「我々は、銃の使い方を知らないカウボーイを演じるために町の外からやってくる人々に慣れている。サンタフェの陪審員はそれに慣れていて、牧場でさえ、安全訓練を受けるまでは誰かに銃を渡さないことを理解している。架空のセットで本物の銃を使って死ぬようなことはあってはならないこと」と語った。

弁護士によると、業界では、このようなシーンの撮影では、クルーは保護ガラスの後ろにいて、その他の安全装置を備えている必要があるという。

ハッチンス家の弁護士パニッシュ氏は「何が起こったかは明らかだと思う。彼は銃を持っていて引き金を引き発砲し、彼女は殺されたのです。専門家が見て判断するだろうが、我々はこれが銃の欠陥によるものだとは考えていない」と述べた。

一方、ボールドウィンは涙ながらのインタビューで、銃に実弾が入っていることは知らなかったし、「引き金は引いていない」と主張している。

ボールドウィンのほかには彼に銃を渡した助監督のデヴィッド・ホールズ、小道具の銃担当のハンナ・グティエレス=リード、その他のプロデューサーも被告として名を連ねている。撮影現場ですべての小道具の銃器のチェックを担当していたグティエレス・リードは、弾薬サプライヤーのセス・ケニー氏が、空砲しか入っていない箱に実弾を混ぜたと主張しているという。

刑事事件の弁護士ダンカン・レヴィン氏は、これまで誰も罪に問われていないことから、遺族が訴訟を起こすことにしたのは、法執行機関に対する信頼を失ったということかもしれないと述べた。「この時点で、彼らは法執行機関が起訴するかどうかさえ決めていない人物を訴えているのです」とレヴィン氏は指摘した。