「アド・アストラ」　ブラッド・ピットが宇宙飛行士をシリアスに演じて新境地

ブラッド・ピットが製作・主演を兼ねたSFアドベンチャー。初めての宇宙飛行士役で、消息を絶った父親を捜す任務で地球から３２億キロ離れた惑星に飛ぶ。宇宙飛行のリアルな映像に加えて、父と子の壮絶なドラマ、未知の生命体の存在の問題、地球の脅威となる計画など深淵なテーマを題材にした話題作。監督は「エヴァの告白」（２０１３年）、「ロスト・シティＺ失われた黄金都市」（２０１６年）などを手掛けたジェームズ・グレイ監督。

■ストーリー

１００年後の地球と太陽系惑星が舞台。科学者の父親(トミー・リー・ジョーンズ)に憧れて宇宙飛行士になったロイ・マクブライド（ピット）は、ある日宇宙軍の上司に呼び出される。地球外生命体の探索をするために宇宙船に乗り込んで海王星に向けて飛び立ったが１６年後に消息を絶ち死亡したとみられていた父は実は生きていて、太陽系を滅亡させる力がある”リマ計画“に関係していたことを知らされる。そして父親を捜して地球の脅威となっている計画を阻止するという極秘ミッションを命じられる。

月と火星を経由して地球から４３億キロ離れた海王星に向かう計画だったが、途中でトラブルに巻き込まれロイは任務を解かれてしまう。なんとしても父を自分の手で救出したいという強い思いに駆られたロイは強行突破して宇宙船に侵入し海王星に向かう。

■見どころ

宇宙船や宇宙飛行のリアルな映像に加えて、宇宙の彼方に消えた父親を追跡するサスペンスが絡んで最後まで緊迫した展開が続く。そして父を救出しようとする息子と、宇宙の彼方で生きていた父親の謎が明かされていくドラマ。エリートの宇宙飛行士のストイックな生活や深い孤独。そして仕事にのめりこんで疎遠になる恋人（リブ・タイラー）との関係など、人間ドラマを掘り下げているところが見どころ。

ピットは「ワンス・アポン・ァ・タイム・イン・ハリウッド」のクールで楽天的で派手なアクションを見せるスタントマン役とは対照的に、父を探して宇宙のはるか彼方へと飛び立つ孤独な宇宙飛行士を抑制を効かせた渋い演技でシリアスに演じて新境地を見せている。
(２０１９年９月２０日公開)