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「Girl/ガール」バレリーナを夢見るトランスジェンダーの少女の苦闘と決断

(2019年7月6日)

「Girl/ガール」バレリーナを夢見るトランスジェンダーの少女の苦闘と決断
「Girl/ガール」(東京・渋谷区のBunkamura ル・シネマ)

バレリーナを夢見る15歳のトランスジェンダーの少女ララと彼女を支える父親の苦闘と希望を描いたベルギー映画。この作品が長編デビューとなったルーカス・ドン監督は第71回カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受賞。アカデミー賞外国映画賞(ベルギー代表)とゴールデングローブ賞外国映画賞にノミネートされた。

監督が18歳で映画学校に入学したときに、ベルギー出身のトランス女性のダンサー、ノラ・モンスクールの新聞記事を見て、ドキュメンタリーの制作を打診したが断られ、オーデションで選んだアントワープ・ロイヤル・バレエ・スクールのトップダンサー、ビクトール・ポルスターを主人公のララ役にして映画化した。

15歳のララは体は男に生まれたがバレリーナになることを夢見て父親の応援とサポートで難関のバレエ学校に入学を認められる。厳しいレッスンに明け暮れながら。一方で女性になるためのホルモン補充治療を受け、1日も早く性別適合手術で体も女性になることを決めていた。しかし、ホルモン治療が思ったほどうまくいかず、クラスメイトからは「いつも私たちの体を見ているのだから、あなたのも見せて」と強要されたりする。さらには練習中にペニスをテープで隠していたため炎症を起こして手術の延期を宣告されてしまう。思い詰めたララはある衝撃的な決断をするというストーリー。

ポルタ―がトランスジェンダーの少女ララをリアルに演じて、バレリーナとしての特訓やトランスジェンダーとしての苦悩がまるでドキュメンタリー映画のように描かれて緊迫した展開に引き込まれる。トランスジェンダーの役をシスジェンダーのポルスターが演じたことや、ララの自傷シーンにトランスジェンダーやクィアからの批判があったが、映画のモチーフになっている前述のノラ・モンスクールは米誌「ハリウッドリポーター」に「すべてのトランスジェンダーの経験を描いているのではなく、私自身の経験をウソや隠し事なく語っている」「ララの物語は私の物語」と語ったという。
(2019年7月5日公開)