「洗骨」沖縄の離島の洗骨の儀式と家族の絆のドラマ

(2019年2月11日)

  • 洗骨
  • 「洗骨」(丸の内TOEI)
  • 沖縄の離島・粟国島などに残る「洗骨」の儀式をめぐる家族のドラマを描いた作品。奥田瑛二、筒井道隆、水崎綾女、大島蓉子ら演技派俳優をそろえ、お笑いコンビガレッジセールのゴリとして知られる沖縄出身の照屋年之が監督・脚本を担当した。国際的な短編映画祭で数々の賞を受賞した同監督の短編映画「born、bone、墓音。」を原案にして長編映画として新たに製作したものだという。

    粟国島の粟國村の新城家の長男・新城剛(筒井)は、母・恵美子(筒井真理子)の洗骨のために4年ぶりに故郷に戻ってくる。実家に一人で住んでいる父親の信綱(奥田)は、妻の死で抜け殻のようになり隠れて酒を飲んでいた。そこに名古屋で美容師として働いていた長女・優子(水崎)が大きくなったお腹を抱えて里帰りする。父親は店長だが自分1人で生むといい剛や叔母の高安信子(大島)を仰天させる。様々な問題を抱える家族は信子らの支えもありやがて洗骨の日を迎える。

    遺体を島の西側にある「あの世」に風葬して、4年後に白骨化した遺体を取り出して骨をきれいに洗ってもらうことで「この世」と別れを告げるという洗骨の儀式のシーンは思わず息をのむ。厳粛で生と死について改めて考えさせられる。
    ダメな父親をしたたかに演じて存在感を見せているベテランの奥田。筒井、水崎もそれぞれが抱える問題を熱演し、大島がたくましい島の女を笑いも交えて軽妙に演じている。また、鈴木Q太郎の笑わせる演技などすべてのキャストのアンサンブルが見事。(2019年2月9日公開)