前妻の女優アンバー・ハード（34）に対するDVを報じた英紙「サン」を相手取った名誉棄損裁判で敗訴したジョニー・デップ（57）が24日（現地時間）、ロンドンの控訴裁判所に上訴した。第1審の判決を破棄して控訴審を行うことを求めている。

英紙「ガーディアン」（電子版）によると、ジョニー・デップの弁護士は、前妻アンバー・ハードに暴行し彼女の命を危険にさらしたとする「サン」紙の記事を「おおむね真実」としてデップの主張を退けたロンドン高等裁判所の先月の判決は「明らかに間違っている」として「公正な裁判を受けられなかった」と主張。控訴裁判所に控訴審を行うことを求めた。

デップは「妻の虐待者」との見出しでハードに対するDVを報じた「サン」を名誉棄損で提訴。7月に法廷で暴露合戦を展開して注目を集めたが先月2日（現地時間）の判決で、ニコル判事は記事の内容を「実質的に真実である」と判断してデップの主張を棄却した。同判事は「サン」側が提示した14件の家庭内暴力の疑惑のうち１２件は真実と認めた。その中にはデップが2015年3月にオーストラリアで 「3日間の監禁状態」に置き「人生の恐怖に陥れた」ことなどが含まれる。夏の間に行われた裁判では、デップとハードが証人として出廷し、デップの薬物の乱用から夫婦のベッドでのウンチ事件など、暴露合戦になりセンセーショナルに報じられた。

デップの弁護士デヴィッド・シャーボーンは、ロンドンの控訴裁判所に「（ニコル判事の）判決を破棄し、新たな裁判（控訴審）を命じる」よう求めている。24日（現地時間）、控訴裁判所に提出された書類の中で、デップの弁護団はニコルの判決は「明らかに危険」と主張した。

デップの弁護団は、ニコル判事が「ハードさんの証言が真実ではなかったことを考慮したり、認めたりすることなく、ハードさんの説明を文書証拠や他の目撃者の証拠と照らし合わせて検証することなく、また、それらの目撃者を信じていないという調査結果を出すことなく、被控訴人（ハード）が重大な身体的暴行を受けたと結論づけた」と主張。「判事の無批判な（ハードの主張の）受け入れは明らかに危険」としている。
さらに「彼（判事）は関連する証拠を除外し、ハードさんを実質的に貶める無関係な事項として無視または却下し、証拠に裏付けられていない所見を出し、彼女の主張が適切な精査に耐えられるかどうかを評価することができなかった」と主張している。

そして「この判決は、非常に公的な判断であり、1人の判事によって（デップが）非常に深刻な犯罪に関与したという壊滅的な調査結果を作った。不当に告発された家庭内虐待の疑惑で一般大衆や特に被害者に大きな影響を与えた。したがって、そのような状況では効果的な控訴審が開かれることが重要」と訴えた。

デップは、「サン」相手の名誉棄損裁判のほかに、DVの被害者としての経験についてハードが寄稿したワシントン・ポストの手記に対して、名誉棄損でハードに5000万ドル（約52億円）の損害賠償を請求して米バージニア州の裁判所に提訴している。これに対してハードは、デップはハードの人生を破滅させるために偽のアカウントを使って「中傷キャンペーン」を行ったとして、1億ドル（訳103億円）の損害賠償を請求する”倍返し“の反訴を起こし、来年に裁判がスタートする。デップVSハードの”法廷バトル“は来年も続くことになり、成り行きが注目される。

■ジョニー・デップVSアンバー・ハードの”バトル“の経過

デップとハードは2012年に「ラム・ダイアリー」で共演したのがきっかけで恋愛関係になり、同年デップは長年のパートナーだったヴァネッサ・パラディ（45）との破局を発表。14年にハードと婚約して翌年2月に結婚したが、わずか１年３か月の結婚生活で16年５月にハードが離婚を申請。酒に酔ったデップからDVを受けていたとしてあざができた顔写真を公開して波紋を広げた。デップはDVを否定していたが17年8月にデップが７００万ドル（約７億７０００万円）を支払うことで離婚が成立した。これで一件落着かと思われたが続きがあった。
18年10月、デップが雑誌「GQ」（英国版１１月号）のインタビューで、ハードに対するDVを全面否定して、ハードのDV告発で「シンデレラから醜い男にされた」などと激しく非難。さらにハードが同年12月ワシントンポストに手記を寄せてDVを告発したら報復されたとしてそうした社会構造を変える必要があるなどと訴えて、その後デップが「妻虐待夫」と報じた英紙「サン」とワシントンポストに手記を書いたハードを名誉棄損で提訴した。