「哀れなるものたち」エマ・ストーン異次元の演技 性の解放と自由・平等を求める冒険の旅 

(2024年1月24日13:30)

「哀れなるものたち」エマ・ストーン異次元の演技 性の解放と自由・平等を求める冒険の旅
「哀れなるものたち」ポスタービジュアル

自ら命を絶った若い女性ベラが天才外科医により奇跡的に蘇生されて、最初は子供のように本能の赴くままに奔放に生きながらも急速に進化を遂げ、やがて「世界を自分の目で見たい」という強い欲望に駆られてヨーロッパ横断の冒険の旅に出て様々な体験をしながら変貌を遂げていく姿を描いた異色の映画。1992年に発表されたアラスター・グレイの同名小説をもとにトニー・マクナマラが脚本にした。

エマ・ストーンがロデュサーを兼ねて主人公のベラを熱演。ベラに特別な感情を抱くフランケンシュタインのような顔をした天才外科医ゴッドウィンにウィレム・デフォー、ベラを誘惑して冒険の旅に誘い出し、ベラに恋をする放浪者の弁護士ダンカンにマーク・ラファロ、ゴッドウィンの助手でベラの婚約者マックスにラミー・ユセフなどのキャスト。
監督は、2009年の「籠の中の乙女」で第62回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門グランプリを受賞し、エリザベス女王を演じたオリヴィア・コールマンにアカデミー賞主演女優賞をもたらした「女王陛下のお気に入り」(18年)の鬼才ヨルゴス・ランティモス。同作に続いてエマとコンビを組んだ。

第81回ゴールデングローブ賞(ミュージカル/コメデイ部門)の作品賞、主演女優賞(エマ・ストーン)を受賞し、第91回アカデミー賞(現地時間3月10日授賞式)に作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞(マーク・ラファロ)など10部門にノミネートされている。エマ・ストーンが「ラ・ラ・ランド」(16年)に続いて2度目の主演女優賞獲得なるか注目されている。

「哀れなるものたち」エマ・ストーン異次元の演技 性の解放と自由・平等を求める冒険の旅
「哀れなるものたち」エマ・ストーン異次元の演技 性の解放と自由・平等を求める冒険の旅
「哀れなるものたち」エマ・ストーン異次元の演技 性の解放と自由・平等を求める冒険の旅
「哀れなるものたち」エマ・ストーン異次元の演技 性の解放と自由・平等を求める冒険の旅

2003年/イギリス/142分/監督:ヨルゴス・ランティモス/原作:アラスター・グレイ/脚本:トニー・マクナマラ/原題:POOR THINGS/R18+/字幕翻訳:松浦
出演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ、クリストファー・アボット、ハンナ・シグラ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2023 20th entury Studios.All Righits Reserved.

■ストーリー

橋の上から飛び降りて自らの命を絶った若い女性ベラは、ロンドンの天才外科医ゴッドウィン(ウィレム・デフォー)により奇跡的に蘇生する。純粋無垢な脳を移植されたベラは、ゴッドウィンの保護のもと、子供のように奔放にふるまいながら日々急速に進化していき、性に目覚め、放浪者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)を相手に純粋に性の快楽を追及する。そうしたなか、ダンカンに誘われて館を抜け出しヨーロッパに冒険の旅に出る。「世界を自分の目で見たい」という欲望を実現したベラは、ダンカンを捨てて「自由と平等」をも求めるなどさらに変貌を遂げていく。

■見どころ

エマ・ストーンがフランケンシュタインの女版のように蘇生されたヒロイン・ベラ役で異次元の演技を見せている。天才科学者によって蘇生しながら、無垢な子供のような感性で常識を破壊する性の快楽を追及し、マーク・ラファロ演じる放浪者の弁護士ダンカンを相手に、またパリの娼館で娼婦になって連発する全裸セックスシーンはシュールで作品に強烈なインパクトを与えている。そして「世界を自分の目で見たい」という強い欲望に駆られて、ダンカンに誘われるまま、ゴッドウィンと住む館を密かに抜け出しスペインやパリに冒険の旅に出るのだが、社会主義に目覚めたり、結婚を迫るダンカンの独占的な愛の鎖から自らを解放して、パリの娼館で娼婦になったりと予想もつかない奇想天外な展開が続く。斬新な映像や美術、音楽、散りばめられたジョークなども秀逸で「女性の自立と解放の旅」に最後まで目が離せない。 (2024年1月26日より全国公開)