「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」 ハリウッドの大物プロデユーサーの性的虐待事件をスクープした女性記者2人の取材活動と闘い

(2023年1 月9日12:15)

「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」 ハリウッドの大物プロデユーサーの性的虐待事件をスクープした女性記者2人の取材活動と闘い
「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」(© Universal Studios. All Rights Reserved.)

2017年5月10日、ニューヨーク・タイムズが「パルプフィクション」「グッド・ウィルハンティング/旅立ち」「恋に落ちたシェイクスピア」など数々の名作を手がけたハリウッドの大物プロデユーサー、ハーヴェイ・ワインスタイン(70)による女優やスタッフなどに対する性的暴行事件のスクープ記事を掲載。「#Me Too」運動が世界的に広がるきっかけとなったが、その記事を担当した2人の女性記者、ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイーの不屈の取材活動やワインスタイン側の妨害など息詰まる攻防を描いたドキュメントタッチの話題作。2人の記者が書いたベストセラー回顧録「その名を暴けー#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘いー」が原作。
トゥーイー記者をキャリー・マリガン、カンター記者をゾーイ・カザンが演じているほか、NYタイムズの当時の編集局次長レベッカ・コーベット役にパトリシア・クラークソン、編集長ディーン・バケット役にアンドレ・ブラウアー、被害者の1人で取材に応じるローラ・マッデン役にジェニファー・イーリーなどのキャスト。実名でワインスタインからの性被害を公表したハリウッド女優アシュレイ・ジャッドが本人役で出演している。
監督はドイツの女優で映画監督のマリア・シュラーダー。出演した「Aimée & Jaguar」(1999年)で第49回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。監督としては「不倫時間」(2007年)や、プライムタイム・エミー賞リミテッドシリーズ監督賞を受賞した「アンオーソドックス」(2020年)などがある。
2022年/米・ユニバーサル映画/ 原題:SHE SAID/129分/配給:東宝東和

「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」 ハリウッドの大物プロデユーサーの性的虐待事件をスクープした女性記者2人の取材活動と闘い
「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」(© Universal Studios. All Rights Reserved.)

■ストーリーbr>
NYタイムズの調査報道記者ジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)とミーガン・トゥ―イー(キャリー・マリガン)は大統領選挙や職場環境の問題など数多くの題材の調査報道で実績を残してきた。そうしたなか、アカデミー賞を受賞した名作や数々のヒット作を手がけハリウッドに君臨する超大物プロデュ―サー、ハーヴェイ・ワインスタインが数十年にわたって複数の女優やスタッフらに性的暴行を繰り返しているという噂をキャッチする。ジョデイは産休中で産後うつ気味のミーガンと共に取材を開始。取材先でワインスタインの名前を出したとたんに玄関のドアを閉められ、さまざまな嫌がらせや生命を脅かされる目に遭いながらも屈することなく取材を続ける。しかし被害者の多くが多額の示談金と引き換えに秘密保持契約に署名していたことが明らかになり取材は大きな壁にぶち当たる。そうした中、熱心な取材にある被害者が口を開く。ワインスタインの有力弁護士が編集局に乗り込む中、記事掲載をめぐって編集幹部らと2人の記者の会議が重ねられる。

「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」 ハリウッドの大物プロデユーサーの性的虐待事件をスクープした女性記者2人の取材活動と闘い
「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」(© Universal Studios. All Rights Reserved.)



■見どころbr>
ハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行事件はピューリツァ―賞を受賞した2017年のNYタイムズの記事をきっかけに、有力紙やタブロイド紙などが連日書き立てて世界的に有名な事件になり、「#MeToo」運動が堰を切ったようにハリウッドなどで広がったのは記憶に新しく、現在もそれは続いている。女優が打ち合わせだといわれてホテルの部屋に入ったらワインスタインがバスローブ姿になっていて性的行為を迫られ、逃げ出したり、干されることを恐れてやむなく応じたりなど、サバイバーと呼ばれた女優ら被害者の告白記事があふれたが、そうしたワインスタインの卑劣な性加害の実態だけでなく、当時はあまり報じられなかった高額示談金と秘密保持契約書で事件を闇に葬るハリウッドの絶対的権力者の手口が描かれている。
そして、取材に当たった2人の女性記者の地道で不屈の取材活動が克明に描かれている。裏付けをどうやってとったのか。被害者が名乗り出るまでの葛藤やそれを引き出す記者の取材活動。また実名でワインスタインを告発した女優アシュレイ・ジャッドが果たした役割など、調査報道の舞台裏が描かれ、さらにはNYタイムズの編集局で編集局幹部と2人の記者の緊迫のやり取りなども描かれている。2人の女性記者の手記に基づいて映画化されているだけにリアルで、ドキュメント映画のような迫真の展開が最後まで続き、そして報道の役割、「#MeToo」運動の意義を改めて問いかけている。
(2023年1月13日(金)全国公開)