「広島・長崎を忘れない市民有志」が「#NoBarbenheimer」の署名活動開始

(2023年8月4日17:15)

「広島・長崎を忘れない市民有志」が「#NoBarbenheimer」の署名活動開始
オンライン署名を呼び掛けるサイト

米国で拡散して物議をかもしている「#Berbenheimer」(バーベンハイマー)に対して「広島・長崎を忘れない市民有志」が「原爆投下の事実と被爆者の苦しみを消費しないで」と訴え、米ワーナー・ブラザースなどに「SNSでの謝罪」や「再発防止策」などを求める署名活動を1日に開始。4日現在2万人近くの賛同が集まっている。

米国で7月21日から公開されて大ヒット中の映画「バービー」(日本11日公開)と原爆の父と呼ばれる米国の原爆開発を主導した科学者オッペンハイマ―を主人公にした映画「OPPENHHEIMER」(日本公開未定)をめぐって、2つの映画の鑑賞を推奨するファンらが、バービーの頭にきのこ雲を描いたコラージュ画像などを拡散する「#Barbenheimer」(バーベンハイマ―)が流行し、これに「バービー」の公式X(ツイッター)が好意的反応を示した問題で、「広島・長崎を忘れない市民有志」が、米ワーナーブラザースに「SNSでの謝罪」や「再発防止策」などを求める書面活動を1日に開始した。

ワーナーブラザースジャパン、米本社の「#バーベンハイマ―」便乗に抗議する異例の声明
バービーを肩に乗せるオッペンハイマーのコラージュを掲載した『バービー』の米国の公式ツイッター(現在は削除)

「広島・長崎を忘れない市民有志」(以下市民有志)では、バービーの頭をきのこ雲にしたり、原爆の炎を背景にオッペンハイマーがバービーを肩に担ぐ画像のミーム(ネタ画像)に「その内容は原爆投下による被害と被爆者の苦しみを無視する受け入れ難いものです。さらに、映画『バービー』の米国の公式X(旧ツイッター)がそうした投稿に対して、「It’s going to be a summer to remember(意訳:忘れられない夏になるね!)」などと肯定的なコメントをしました」と非難。

「日本は戦争を始め、その戦争加害の末に、原子爆弾の被害を経験しました。まもなくその原爆投下から78年を迎えます。8月6日に広島原爆の日、そしてその3日後の8月9日には長崎原爆の日を控える中、これらの行為にお墨付きを与えている状況に怒りと深い悲しみを感じています」と訴えた。

   「一方、日本で映画『バービー』を配給するワーナー ブラザース ジャパン合同会社は、31日午後6時24分、「映画『バービー』公式」Xアカウントを通じて<映画「バービー」のSNS投稿について>と題し声明を発表しました。文中では、「アメリカ本社の公式アカウントの配慮に欠けた反応は、極めて遺憾なものと考えており、この事態を重く受け止め、アメリカ本社に然るべき対応を求めています」「配慮の欠けた一連の反応について、不快な思いをされた方々には、お詫び申し上げます」としています。それを受けて翌8月1日(現地時間7月31日)、米ワーナー・ブラザースは各メディアに向けて公式声明を出し、「ワーナー・ブラザースは先の配慮に欠けたソーシャルメディアへの投稿を遺憾に思っております。深くお詫び申し上げます」と正式に謝罪した上、該当ツイートを削除しました。私たちはワーナー・ブラザースの迅速な対応を歓迎します」としている。

そのうえで「しかし、原爆投下被害の軽視や誤った認識が社会にいまだ数多く存在するということが分かった以上、米ワーナー・ブラザースによるメディアに対する謝罪とツイートの削除だけでは不十分ではないかと考えます」と指摘。

「要望1」として、ワーナー・ブラザースに対して、「原爆の合成画像に好意的なリアクションをしたことをSNSでも謝罪」することを要請した。
「日本の戦争責任の結果、原爆が投下された1945年の末までに広島では約14万人、長崎では約7万4千人が亡くなりました。生き残った被爆者もさまざまな後遺症やトラウマ、社会的な差別に苦しみ、78年が経った今なお被害には終わりがありません。
また、核兵器による被害は日本だけで起きているのではありません。ウラン採掘や核実験などによる被ばくは世界中で起こっています。オッペンハイマーが携わった核実験「トリニティ」も米国内に多くの被ばく者を生みました。公式アカウントによるSNS上の動きへの便乗は、原爆の被害と被ばく者の苦しみを無視することだと考えます。私たちにとって「忘れられない夏」とは、「映画が公開された夏」ではなく、「原爆が街と市民の命をもろとも破壊した夏」なのです。そして広島、長崎だけでなく世界中に存在する被ばく者が受けた被害は今もなお続いていることもまた、私たちが決して忘れてはならないことなのではないでしょうか」と指摘している。

「要望2」としては「.#Barbenheimerというハッシュタグの使用を控え、原爆を揶揄するような画像の作成・使用禁止を求める声明を出してください」として「.#Barbenheimerというトレンドの中、原爆被害を軽視する動きが頻発し、公式アカウントまでもそれに便乗してしまうという事態は看過できません。私たちは、人間の被害に立脚した責任ある発信を求めます。
この署名は両作品そのものの価値やそれに携わってきた方々の思いを否定するものではありません。特に、映画『オッペンハイマー』が全米で公開され、原爆投下の是非について国内で再び議論が沸き起こっているという状況を私たちは歓迎します。いまだ世界に12,000発もの核兵器が存在するこの世界の現状を改めて問い直す動きが広がることは私たちの希望です」と訴えた。

さらに「要望3」として「再発防止策の実施」を挙げた。
これについては「戦争や原爆による被害が軽視され、揶揄されることは、残念ながらこれまで幾度となく繰り返されてきました。「不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」といった謝罪のコメントが出ることがありますが、相手の受け取り方の問題に転嫁したり、中身の伴わない謝罪をしたりするだけにとどまるのは適切な対応だとは思いません。今後、同様の発信や、それに対する公式アカウントによる肯定がなされないよう、早急に上記の【要望2】を実施し、またガイドライン等でも規定を設けてください。
核の脅威が高まる今、今回のような事態を再び起こさないことは、核兵器の被害を二度と繰り返さないことにつながると考えます」としている。

「今日から5日後の8月6日に、日本は78年目の広島原爆の日、そしてその3日後の8月9日には長崎原爆の日を迎えます。大切な日が近づく中で、このような事態が起こってしまったことが、本当に残念でなりません。被爆者の方々がこれを見ると思うと、胸が潰れる思いです。核兵器廃絶を求め行動してきた日本に住む私たちは、現状の改善を求め、署名を集めます。ご賛同いただける方、ぜひご署名ください。そしてこの思いを世界に届けるため、拡散をお願いいたします」と訴えた。
署名は(https://www.change.org/NoBarbenheimer_jp)から。