ジョージ・フロイドさん死亡事件で元警官が殺人罪で逮捕 8分46秒ひざで首を圧迫

(2020年5月18日)

黒人男性ジョージ・フロイドさんが偽札使用の疑いで逮捕された際に、白人警官に地面におさえ付けられ死亡した事件で29日(現地時間)、解雇された同警察官が殺人罪で逮捕され訴追されたことが分かった。フロイドさんが8分46秒にわたって同警官からひざで首を圧迫されていたことが判明。また現場にいたほかの3人の警官もフロイドさんの体抑えたりしていたことも発覚して波紋が広がり続けている。

米芸能サイト「TMZ」によると、逮捕された元警官デレク・ショーヴィン容疑者(上の逮捕直後の顔写真=インスタグラムから)は第三級殺人罪と第二級過失致死罪で訴追された。事件から4日後のスピード逮捕で、証拠となる現場を映したビデオがあったことと、抗議デモの一部が暴徒化するなど緊迫した事態の鎮静化を図るために捜査当局が早期の逮捕に踏み切ったとみられている。現場にいた他の3人の警官はまだ捜査中で逮捕されていない。

起訴状によると、米ミネソタ州ミネアポリスで25日(現地時間)、ショーヴィンがフロイドさんの車に近づき、偽札を使用したとして銃を突きつけて車から出るようにと言ったという。フロイドさんがハンドルに手をかけると、警官は銃を構えた。フロイドさんは「手錠をかけられることに抵抗した」が手錠をかけられた後はおとなしく従ったという。
警官は、偽札を使用した疑いで逮捕したことを告げ、その後、通りの向かい側に止めていたパトカーに連行。フロイドさんは 「硬直して地面に崩れ落ちて、閉所恐怖症であることを警官に打ち明けた」という。

■フロイドさんは「息ができない」「立たせてください」と訴えたが無視される

警官はフロイドさんを車の後ろに乗せようと何度か試みたが、もがいていたという。ショーヴィンがフロイドさんを地面に押さえつける前から、フロイドさんは何度も「息ができない」と言っていたという。同日午後8時19分、ショーヴィンはフロイドさんをパトカーから引きずり出し、フロイドさんは手錠をかけられて地面に倒れた。ほかの2人の警官もフロイドさんの背中と足を抑え、ショーヴィンがフロイドさんの首に左膝を当てて押さえつけたという。

フロイドさんは 「息ができない」「ママ」「お願い」「立たせてください」などと言い続けたが、警官たちは「あなたは元気に話している」と抑え続けたという。他の警官が「横向きにした方がいいですか」と言うと、ショーヴィンは「いや、そのままでいい」と答えたという。 <br> 別の警官は「精神的に錯乱しないか心配だ」というと、ショーヴィンは「だから腹ばいにしているんだ」と答えたという。現場を映したビデオには通りかかった住民とみられる人がやめるよう声を上げたが、若い警官が立ちふさがって近寄らないようにする様子も映っていた。

■警官はフロイドさんが動かなくなった後も3分近く抑え続けた

午後8時24分、フロイドさんは動かなくなり、午後8時25分には呼吸しなくなり話もしなくなったという。この時別の警官がフロイドさんの手首の脈を確認して「脈がない」と言ったという。同8時27分、ショーヴィンはついにフロイドさんの首から膝を外した。ショーヴィンは8分46秒の間、フロイドさんの首に膝を当てていたという。そのうちの2分53秒は、フロイドさんが無反応になった後のことだったという。

検視局によるとフロイドさんには冠動脈疾患と高血圧性心疾患を含む持病があったという。 検死局は毒物検査の結果が出る前の予備的な調査結果として「警察に拘束されたときの複合的な影響、彼の健康状態、そして彼の体のシステム内の潜在的な中毒性物質が死をもたらした可能性が高い」と発表したという。検視官は「外傷性窒息や絞殺の物理的所見はなかった」と述べたという。第三級殺人罪は最高で25年の禁固刑の可能性があるという。

フロイドさんの遺族は「われわれは第一級殺人罪での訴追を予想していた」と第三級殺人罪の適用に不快感を示し、罪状の変更を求め、ほかの3人の警官も逮捕するよう促したという。28日に抗議デモの一部が暴徒化して州兵が出動した血元のミネアポリスでは29日外出禁止令が発動された。ニューヨークやアトランタなどでも29日(現地時間)も抗議デモが続き緊迫した状況が続いている。