「ジュリーは沈黙したままで」15歳のテニス選手が同僚の自死をめぐるコーチの疑惑に沈黙した謎

(2025年10月3日11:00)

「ジュリーは沈黙したままで」15歳のテニス選手が沈黙した同僚の自殺とコーチの疑惑
「ジュリーは沈黙したままで」ポスタービジュアル

15歳の有望なテニス選手が、同僚の自死とコーチの指導停止処分をめぐって沈黙を続ける姿を描いた異色のベルギー・スウェーデン合作映画「ジュリーは沈黙したままで」(レオナルド・ヴァン・監督)が3日、公開になった。

短編『STEPHANIE』(20)がカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、いま最も注目を集めるベルギーの新鋭監督レオナルド・ヴァン・デイル。前作と同様に、長編デビューとなる本作でもスポーツ界におけるコーチと生徒の関係に強い問題意識を投げかける。

主人公・ジュリーを演じたのは、テニス歴12年の若きプレーヤーであるテッサ・ヴァン・デン・ブルック。そのリアルな競技描写で少女の意志の在処を感じさせる一方、試合に向けたサーブ練習、ジムでのトレーニング、ケガのリハビリといった断片的なシーンの連続が、スポーツを「逃げ場」として利用していることを浮き彫りにしていく。

そんな本作の共同プロデューサーとして名を連ねるのは、社会問題に光を当て続けてきたベルギーの巨匠ダルデンヌ兄弟。また、この物語に共感を示したテニス界のスター・大坂なおみが、エグゼクティブ・プロデューサーとして後押しする。

アメリカを代表する作曲家キャロライン・ショウの観る者を包み込むようなボーカルスコア、35mmと65mmフィルムによる緊張と抑制の効いた美しい撮影は、自然の光の中に一人の少女の感情を繊細に浮かび上がらせ、その沈黙の行方を静かに見届ける。
本作は第77回カンヌ国際映画祭の批評家週刊SACD賞を受賞し、第97回アカデミー賞国際長編映画賞ベルギー代表作品に選ばれた。

「ジュリーは沈黙したままで」15歳のテニス選手が沈黙した同僚の自殺とコーチの疑惑
「ジュリーは沈黙したままで」場面写真
「ジュリーは沈黙したままで」15歳のテニス選手が沈黙した同僚の自殺とコーチの疑惑
「ジュリーは沈黙したままで」15歳のテニス選手が沈黙した同僚の自殺とコーチの疑惑
「ジュリーは沈黙したままで」15歳のテニス選手が沈黙した同僚の自殺とコーチの疑惑
「ジュリーは沈黙したままで」15歳のテニス選手が沈黙した同僚の自殺とコーチの疑惑
「ジュリーは沈黙したままで」15歳のテニス選手が沈黙した同僚の自殺とコーチの疑惑

【STORY】
ベルギーのテニス・アカデミーに所属する15歳のジュリー(テッサ・ヴァン・デン・ブルック)は、その実力によって奨学金を獲得し、いくつもの試合に勝利してきた。ある日、突然、担当コーチのジェレミー(ローラン・カロン)が指導停止になったことを知らされる。そして彼の教え子であるアリーヌが不可解な状況下で自ら命を絶った事件を巡って不穏な噂が立ちはじめる。
ジュリーはジェレミーと会って、何があったのか確かめようとするが、ジェレミーは潔白を主張し、アリーヌが自死したのは実力不足でくじけてしまったなどと説明。ジュリーは理解できない様子だったが、戻ってきたらコーチを続けてくれるよう頼む。その後、バッキーが新しコーチとしてやってくるが、ジュリーを特別扱いすることに反発するなど衝突する
そうしたなか、ベルギー・テニス協会の選抜入りテストを間近に控え、クラブに所属する全選手を対象にジェレミーについてのヒアリングが行われ、彼と最も近しい関係だったジュリーは、第三者の調査関係者から話を聞かれるが、「なにもありません」とかたくなに何も話さず、「学業とテニスに集中したい」といって、日々のルーティンを崩さず、熱心にトレーニングに打ち込み続ける。親身になってコーチするバッキーを次第に次第に信頼するようになり、やがてベルギー協会のテストの日がやってくる。

【見どころ】
主人公のジュリーを演じるテッサ・ヴァン・デン・ブルックは、テニス歴12年というだけあって、練習中のプレーや試合、トレーニングなどのシーンはパワフルで迫力があるだけでなく、同僚の自死とコーチの疑惑という深刻な事態に耐えながら練習に打ち込む姿は、揺れ動く15歳の少女の心情や振る舞いを繊細に演じて存在感を見せている。ジュリーは指導停止になったコーチのジェレミーと2人きりで店で会い、何があったのか聞くが、ジェレミーは疑惑を否定し、アリーヌの自死についても自身の見解を語っているのだが、それも含めて自身の強い想いや悩みもあるはずなのに、第三者の聴取になぜジュリーは”沈黙したまま”なのか。ジェレミーが同意を求めてテーブル越しにジュリーの手を握ると、「やめて」と手を引っ込めるシーンがあったが、彼女の沈黙の謎を象徴するような場面ではなかったか。未成年ながら実力があり、大人のプロの選手のように扱われている選手とコーチとの第三者が入り込めない特別な世界、クラブとコーチや選手の関係性の中で起きた選手の自死という事件がはらむ闇を、ジュリーの沈黙によって雄弁に物語っているような印象を受けた。

【クレジット】
監督:レオナルド・ヴァン・デイル
脚本:レオナルド・ヴァン・デイル、ルート・べカール
共同製作:デルフィーヌ・トムソン リュック・ダルデンヌ ジャン=ピエール・ダルデンヌ ほか
製作総指揮:フロリアン・ゼレール 大坂なおみ ほか
2024|ベルギー・スウェーデン合作|オランダ語・フランス語・ドイツ語|100分|カラー|5.1ch|1.85:1|原題:Julie zwijgt |日本語字幕:橋本裕充
宣伝:SUNDAE 後援:駐日ベルギー大使館
配給:オデッサ・エンタテインメント
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10月3日(金)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開