映画「箱男」ジャパンプレミア 永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、石井岳龍監督登壇

(2024年7月9日11:15)

映画「箱男」ジャパンプレミア 永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、石井岳龍監督登壇
登壇した㊧から石井岳龍監督、浅野忠信、永瀬正敏、白本彩奈、佐藤浩市(8日、東京・新宿区の新宿ピカデリーで)

映画「箱男」(8月23日公開)のジャパンプレミアが8日、都内で行われ、永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、石井岳龍監督が登壇した。

本作は、石井岳龍監督最新作で、永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市らが豪華共演を果たし、第 74 回ベルリン国際映画祭にてワールド・プレミア上映され話題をさらった。 原作は、「砂の女」「壁」などその著作が世界二十数か国に翻訳され、今なお世 界中に熱狂的な読者を持つ安部公房の同名小説。生前はノーベル文学賞に最も近いとされ、日本が 世界に誇る小説家の一人である。「箱男」は、安部が 1973 年に発表した小説であり 代表作の一つ。

街で見かけた箱男に心を奪われ、自らも段ボールをかぶって箱男として生きるカメラマンの”わたし”を演じた永瀬は「今日は本当にうれしいです。この映画に27年かかりました。楽しんでいただければと思います」と挨拶。

映画「箱男」ジャパンプレミア 永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、石井岳龍監督登壇
浅野忠信

永瀬の宿敵となるニセ箱男を演じた浅野は「永瀬さんの宿敵ばかりやってて、何十年か前にも石井監督の『ERECTRICK DRAGON 80000V』でも宿敵やらせていただきまして」と言って観客の笑いを誘い、「この作品出でられて本当に幸せですし、大好きな作品なので、今日は皆さんにも楽しんでもらえると思います」とアピールした。
白本は「葉子役を演じさせていただきました白本彩奈です。今こうして皆さんを前にして、ずっとこの日を待ち遠しくしていたので、とても圧倒されてています。よろしくお願いします」と挨拶した。
箱男殺害をもくろむ軍医役の佐藤は、「今日はありがとうございます。最後まで楽しんでいってください」と挨拶。
石井監督は、「大変な猛暑の中、ありがとうございます。今日はこんなに素敵な俳優さん達と一緒にいるのはちょっとまぶしいですけど、この間長く時間がかかり、いろんな関係者やスタッフにすごく世話になってようやく辿り着いたので、今日はそういう素晴らしいスタッフ達、素晴らしい関係者達を代表して、私もここに立たせていただきます」と語った。
,br> 27年かかっての完成に、石井監督は「いやあ、本当に夢のようといいますかね。 こんなに大勢のお客さんの前でついにできたというのは、まるで私が箱の中に入っていて、箱の中で妄想を見ている、夢を見ているのではないかという気分ですね。自分が本当に箱男になった夢を見ているみたいです」と胸中を明かした。

原作者の安部公房氏に生前会ったときのことについて、「ものすごく頭が切れる方で、日本が誇る知性の方だったんですけれども、ナポレオンのような、たくさんの情報が高速で何重にも流れていて、いろんなことをマシンガンのように話される方。片方ずつ違う靴下を履かれていたのが、とても印象に残っています」と振り返った。そして「映画にするなら娯楽にしてほしいと一言言われまして、エッ!?箱男を娯楽に?その課題がうまくいっているかどうか、楽しんでいただければと思います」と語った。

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永瀬正敏

永瀬は、27年前に、ドイツのハンブルグでクランクインする直前に製作中止になったときのことを振り返り、「明日本編はクランクイン、今日からとりあえずスチールから写真から先に始めましょうという感じで、ロビーに集まっていました。みんなも僕も衣装も着て、ロケバスも来て。そしたら監督がプロデューサーさんに呼ばれて、しばらくしたら監督とホテルの外を歩いて行かれる後ろ姿を偶然見てしまって、あれ監督、どこに行かれるんだろうなと思ったら、この映画を中止にしますと言われたので、監督の後ろ姿は一生忘れないとずっと思っていましたね」と振り返った。
そして「ホテルの部屋のドアを開けっぱなしにしてずっと箱に入っておりました」という。役作りのため「一つお借りしてトイレとお風呂入るとき以外は箱の中で生活をしていまして、スタッフの人にも、まだ入っているまだ入っていると言われながら、僕の役は頭から箱を被っているわけだったので、ちょっとでも借りていたいということで、今回も同じことをしていました」と”箱男生活”を引きずっていたことを明かした。

佐藤は、当時を振り返って、「ちょうど白夜の季節だったんですよね。21時22時でもまだ明るい中で決して冷たくないビールを飲みながらドイツを感じていましたけどね」と語った。

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石井岳龍監督

石井監督は、「製作しないっていう選択肢は、私にはずっと一度もなかった。必ず作りたい。監督したい作品にすると、それは変わってなくて。この作品が安部公房さんの非常に重要なテーマ、今まで見えなかった日常のものが見えてくる。非常に気付きを与えてくれる原作で、その中でもこの箱男っていうのは最もシンプル。ダンボール箱とのぞき窓を開けて、普通だったら僕らがちょっとドロップアウトした方って思ってしまうんだけども、この装置だけで彼が僕らよりも優位に立つ。そういう不思議な逆転の発想の発明のような、非常に貴重な作品だったので、どうしても映画化したいという思いがありました」と映画化に向けての強い想いを語った。
「やはりこれだけ情報化社会が進んで、全員が一人ひとつの質問を持っていて、特にコロナ禍後閉じ込められ、個別する機会が増えて50年前の原作小説なんですけれども、さらに今の世の中、一人ひとりが自分の見えない箱に入っているという、現代を予見しているるような映画で、それは結果的にそうなってしまったんですけれども、そういう先見の明と言いますか、非常に鋭いテーマを突きつけられて、その果てに何があるのかというのは小説を読んでいただくのが一番いいんですけれども、映画は座って見ているだけで2時間たっぷり楽しめますので。ぜひこれを体験映画として作りたかった、というのがあります」という。

浅野は「台本自体はものすごい面白かったですし、特に僕がやらせていただいたニセ医者の役が、本当に読んでいて、気になるポイントがいっぱいあったんですよね。その気になるポイントを何度も何度も読んで読んで自分の中で何かを組み立てていくうちに、本当にある種のニセ医者状態になっていくというか、この世界の中に没頭できている自分がいたのですごく楽しみましたね」という。

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白本彩奈

数百人の中から葉子役に選ばれた白本は、「今でも場所であったり状況というものを鮮明に覚えているんですけれども、絵に描いたようなガッツポーズとおたけびを上げたのをすごく覚えていますね。それからしばらく経ってからふつふつと実感が湧いてきて、痺れるような嬉しさというか、こみ上げてきました」と振り返った。
永瀬や浅野らとの共演については、「私としては本当に初め恐縮ながら前に立たせていただいて、一緒にお芝居させていただくという気持ちだったんですけれども、やっぱりよく考えながらよく作っていく中で、私がこれではだめだなというふうにすごく感じて。それから私なりの葉子ですけど、監督と手をつないで相談をしながら作っていかせていただいて、それからは本当に皆さんそれぞれの前で違う葉子として立てることができましたし、本当に違う刺激をいつも与えてくださる皆さんだったので、皆さんに活かしていただいたな、と深く思っています」という。

石井監督は「白本さんは実は一番若かったと思うんですけど、その解釈って言いますかね。葉子さんの解釈を自分の解釈で皆さんやってもらったんですけど、その解釈がすごく説得力があって、なおかつ堂々としてやって、びっくりしたんですね。お話ししていく中でとても葉子さんというのを非常に自分なりに理解されているし、この大変な日本映画を代表する名優さん、盲獣たちとこの人だったらうまくやっていけるんじゃないかということですね。大変な映画だったと思うんですけど、私だけじゃなくて、関係者全員がそう思っていたので、期待以上な存在を示してくれて、素晴らしい演技をしてくれています」と称賛した。

原作から時代が進んでいるので葉子の役柄を今描くことについて石井監督は、「原作はやはり50年前なので、それを今の映画として描くということは一つテーマだったんですけども、テーマ的には50年前の映画だけども現在を先取している。まさに今の時代を先導している映画なんですけどもキャラクターはすごく皆さん面白いんですが、葉子さんというのは実は名前があって富山葉子というんです。他のキャラクターは全員記号なんですよ。”わたし”、医者、軍医。葉子だけは何故か名前があるんですけども、その割に原作にほとんど詳しいことが書かれていなくて、現代に今リアルな女性として、あるいはこの他の3人に決して負けないと言いますか、振り回されない非常に主体性を持った女性として、こんな感じで存在してほしいと思ったので、共同脚本のいながきさんと、一番力を入れてずっとキャラクターを作り上げて、その後は白本さんと相談して実際の撮影の時は全面的に彼女に任せて作り上げていったという感じですね。非常に私的には、全員そうなんですけども27年かかったってこともありますけど、もこのキャラクターたちの存在は本当に素晴らしいと思います。結構これほどなんて言いますかね。なかなか日本映画、リハーサルしたりするし合ったりする時間がなかなかとれないことが多いんですけども、充実した演出ができたんじゃないかなと思っています」という。

映画「箱男」ジャパンプレミア 永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、石井岳龍監督登壇
佐藤浩市

佐藤は「27年前というのは僕はまだ37だったわけですよ。当然、その時に読んだその自分の独房歌と今のそれとはまた当然スクリプトも変わっているんだけど、本当にそこで自分が受ける印象でひとつだけ変わってないのは、深淵を覗くものは深淵から覗かれるということがふっと自分の中でその時読んだ時に思い立ったのは今も変わらないですけど、僕は時代を経て形は少し変わっているけど、でも石井さんがよりお客さんに届きやすい本にしてくださったな、という。そういうことだと思います」と述べた。

最後に1人ずつメッセージを語り、永瀬は「僕は今日あまりにも嬉しくて、2日前から知恵熱が出ましてですね。汗だくだくなんですけど、とにかく皆さんに楽しんでいただければ、いろんなものが詰め込まれた監督の作品なのでぜひ楽しんで見てもらえれば、と思います。あと、水分をよく取られてください」と熱中症対策も呼び掛けた。
浅野は、「皆さんが本当にどうやって見てくれるのかがとても気になっているので、ぜひSNSとかそういうものを使われている方はそこでたっぷり感想を書いていただけたら嬉しいなと思います。それをちょっと覗かせていただいて、みんながどういう気分で箱男を楽しんだら良いかを知りたいです」と語った。
白本は、「27年越しに描いた今だからこそ、きっと27年前とは違ったものが見えると思いますし感じられると思いますし、伝えられると思うので、今見るこの箱男というものにすごく注意していただきながら、特に私は自分が20代ということもあるんですけども、若い方たちにぜひ見ていただきたいなと思う作品です。楽しみください」とアピールした。
佐藤は、「今浅野君がおっしゃった通り、この映画を見た時に各々の感想はいろいろあると思うんですよね。お客さんがどうやって見てくださったのかも知りたいし、そうか、こう見たんだというのを逆に楽しませてください。よろしくお願いします」と述べた。

そして石井監督は、「私は体験する映画、映画館でしかできない体験をする映画、というのが大好きで、そういう映画を作りたいと思っていますので、これは皆さんに箱男になってもらう。箱男の中のこの迷宮といいますか、闇の奥に誘う冒険旅といいますかね。そういう体験の旅の映画になっていると思います。 途中ちょっとわからないことがあるかもしれませんが、あまり考えずに素敵な素晴らしい俳優さん方が皆さんをしっかり導いてくれますので、どうぞ体験していただければ、と思います。皆さんの体験が非常に貴重だ、と思います。 楽しんでください」と舞台挨拶を締めくくった。

【「箱男」の製作経緯】
「箱男」は、その幻惑的な手法と難解な内容の為、映像化が困難と言われていた。幾 度かヨーロッパやハリウッドの著名な映画監督が映像化を熱望し、原作権の取得を試み たが、安部公房サイドから許諾が下りず、企画が立ち上がっては消えるなどを繰り返し ていた。そんな中、最終的に安部公房本人から直接映画化を託されたのは、『狂い咲きサ ンダーロード』(1980)で衝撃的なデビューを飾って以来、常にジャパン・インディ・シ ネマの最前線を走り、数々の話題作を手掛けてきた鬼才・石井岳龍(当時:石井聰亙) だった。安部からの「娯楽にしてくれ」という要望のもと、1997 年に製作が決定。
石井 は万全の準備を期し、ドイツ・ハンブルグで撮影を行うべく現地へ。ところが不運にもクランク・イン前日に、撮影が 突如頓挫、クルーやキャストは失意のまま帰国することとなり、幻の企画となった。あれから 27 年―。奇しくも安部 公房生誕 100 年にあたる 2024 年、映画化を諦めなかった石井は遂に『箱男』を現実のものとした。
主演には 27 年前 と同じ永瀬正敏、永瀬と共に出演予定だった佐藤浩市も出演を快諾。さらに、世界的に活躍する浅野忠信、数百人のオー ディションから抜擢された白本彩奈ら実力派俳優が揃った。

映画「箱男」ジャパンプレミア 永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、石井岳龍監督登壇映
「箱男」ポスタービジュアル
映画「箱男」ジャパンプレミア 永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、石井岳龍監督登壇映
「箱男」の場面写真

【物語】
『箱男』 ――それは人間が望む最終形態。 ヒーローか、アンチヒーローか
完全な孤立、完全な孤独を得て、社会の螺旋から外れた「本物」の存在。ダンボールを頭からすっぽりと被り、街中に存在し、一 方的に世界を覗き見る『箱男』。カメラマンである“わたし”(永瀬正敏)は、偶然目にした箱男に心を奪われ、自らもダンボールをか ぶり、箱男としての一歩を踏み出すことに。しかし、本物の『箱男』になる道は険しく、数々の試練と危険が襲いかかる。存在を乗っ 取ろうとするニセ箱男(浅野忠信)、完全犯罪に利用しようと企む軍医(佐藤浩市)、 “わたし”を誘惑する謎の女・葉子(白本彩 奈)…。果たして“わたし”は本物の『箱男』になれるのか。そして、犯罪を目論むニセモノたちとの戦いの行方はー!?

【クレジット】
出演:永瀬正敏 浅野忠信 白本彩奈/佐藤浩市 渋川清彦 中村優子 川瀬陽太
監督:石井岳龍
原作:安部公房「箱男」(新潮社) 脚本:いながききよたか 石井岳龍
プロデューサー:小西啓介、関友彦 製作:映画『箱男』製作委員会 製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ 制作プロダクション:コギトワークス PG12
ⓒ2024 The Box Man Film Partners
公式サイト:https://happinet-phantom.com/hakootoko/ 公式 X(旧 twitter):https://twitter.com/hakootoko_movie
2024 年 8 月 23 日(金)全国公開