「Shirley シャーリイ」 エリザベス・モスが”魔女”と呼ばれた伝説の作家を怪演

(2024年7月4日23:00)

「Shirley シャーリイ」エリザベス・モスが”魔女”と呼ばれた伝説の作家を怪演
「Shirley シャーリイ」のエリザベス・モス

映画「Shirley シャーリイ」(7月5日公開)で、エリザベス・モスが”魔女”と呼ばれた伝説の作家を怪演している。スーザン・スカーフ・メレルの2014年の小説「Shirley」を原作に、アメリカの怪奇幻想作家シャーリイ・ジャクスンが女子大生失踪事件を題材にした小説に取り組んで苦闘していた時期を描いている。マーティン・スコセッシ監督が製作総指揮に名乗りをあげた作品としても注目された。

監督は、世界各国の映画祭で高く評価された「Madelineʼs Madeline(原題)」(2018)やA24 と Apple TV+が共同制作した「空はどこにでも」(2022)などで知られ、いま最も注目を集めている奇才ジョセフィン・デッカーで、⻑編第 4 作目。彼女の初⻑編「Butter on the Latch」(2013)に惚れ込んだという巨匠マーティン・スコセッシが製作総指揮に名を連ね、2020 年のサンダンス映画祭で US ドラマ部門審査員特別賞を受賞した。

本作は、巨匠スティーヴン・キングにも影響を与えたアメリカン・ゴシック作家シャーリイ・ジャクスンの伝記小説に現代的で斬新な解釈を加えた、想像力とダイナミズムに満ちた心理サスペンスで、作家自身のキャラクターと執筆過程を描きながら、まるでその小説世界に迷い込んだような幻惑的な映像を作り上げた。
,br> シャーリイ役に、ドラマ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」(17)などのエリザベス・モス。その夫の大学教授スタンリーに「君の名前で僕を呼んで」(17)、「シェイプ・オブ・ウォーター」(17)などのマイケル・スタールバーグ、教授の助手フレッドにローガン・ラーマン。その妻ローズに「帰らない日曜日」(22)などのオデッサ・ヤングなどのキャスト。

【ストーリー】
1948 年、「ニューヨーカー」誌上に発表した短編「くじ」が一大センセーションを巻き起こした後、新しい⻑編小説に取り組んでいたシャーリイ(エリザベス・モス)はスランプから抜け出せずにいた。ベニントン大学に通う 17 歳の少女ポーラが突如として消息を絶った未解決の失踪事件を題材にした長編小説に取りかかるが遅々として進まず、部屋に引きこもってばかりいた。そんなシャーリイの状況を変えようと、大学教授である夫のスタンリー(マイケル・スタールバーグ)は、助手のフレッド(ローガン・ラーマン)とその妻のローズ(オデッサ・ヤング)を居候として住まわせ、ローズにシャーリイの世話をさせる。
ローズはシャーリイのカリスカ姓に惹かれるが、シャーリーは、夫も知らなかったローズの妊娠を言い当てて、4人で食事中にばらすなど、意地悪く振る舞う。気難しいシャーリイに挫けそうになるローズだったが、ローズが少女失踪事件の調査に協力するなどするうちに、二人の間には奇妙な絆が芽生えていく。やがて作家と助手兼家事手伝いの関係の枠を超えてロマンチックな領域に踏み込んでいき、思わぬ展開を見せていく。

「Shirley シャーリイ」エリザベス・モスが”魔女”と呼ばれた伝説の作家を怪演
「Shirley シャーリイ」のエリザベス・モス
「Shirley シャーリイ」エリザベス・モスが”魔女”と呼ばれた伝説の作家を怪演
ローズ役のオデッサ・ヤング㊨と夫フレッド役のローガン・ラーマン
「Shirley シャーリイ」エリザベス・モスが”魔女”と呼ばれた伝説の作家を怪演
シャーリイ㊧と夫のスタンリー(マイケル・スタールバーグ)
「Shirley シャーリイ」エリザベス・モスが”魔女”と呼ばれた伝説の作家を怪演
惹かれあうシャーリイ㊧とローズ

【見どころ】
「17歳のカルテ」(99)、「透明人間」(20)などの映画や、ゴールデングローブ賞女優賞(ドラマシリーズ部門)とエミー賞主演女優賞(ドラマシリーズ部門)をW受賞したHuluの「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」(17)のエリザベス・モスが”魔女”と呼ばれた作家シャーリー・ジャクスンを、鬼気迫る演技で描いて見せている。何かに取りつかれたような表情、狂気をはらんだ形相や毒をはらんだセリフなどで観客を翻弄して予想不能な”魔女”と呼ばれた作家を創出した。これを正面から受止めて、シャリーの世界に飛び込んでいくいく若い人妻ローズ役のオデッサ・ヤングも独特の個性を見せて熱演している。
シャーリーが初対面のローズに毒舌をふるい、けんもほろろにあしらう前半から一転して、2人が打ち解け、さらにはそれぞれの夫には秘密の関係を共有するようになってからの展開は、息詰まる心理描写と相まってスリリングで、2人の関係がどこに向かうのか最後ま目が離せなくなる。

■シャーリイ・ジャクスン(Shirley Hardie Jackson, 1916 年 ~1965 年)

カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。33 年、ニューヨーク州ロチェスターへ移住。ロチェスター大学に入学するが中途退学。37 年、親元を離れてシラキュース大学に編入学し、後に夫となるスタンリー・エドガー・ハイマンと出会う。在学中、ハイマンらと同大学の文芸誌の刊行に携わり、創作意欲を高めていった。40 年、卒業と同時にニューヨークに移り、ハイマンと結婚。42 年には第一子が誕生し、のちに三人の子をもうける。ハイマンがベニントン大学の教授陣に加わった 45 年より一家はバーモント州ノースベニントンに定住した。
48 年、ジャクスンは 20 年代にカリフォルニア州バーリンゲームで育った子供時代を半自伝的に描いたデビュー⻑編『壁の向こうへ続く道』を出版。ジャクスンの最も有名な短編である「くじ」は、同年 6 月に『ニューヨーカー』誌に発表されて一大センセーションを巻き起こし、彼女の名声を確立した。
51 年に発表された⻑編第 2 作『絞首人(処刑人)』には、46 年に実際に起こったベニントン大学に通う 18 歳の少女ポーラ・ジーン・ウェルデンの失踪事件の影響が見られる。現在も未解決のこの事件は、ジャクスンと家族が住んでいたベニントン近郊のグラステンベリー山の森の荒野で起こっている。50 年代を通じて文芸誌や雑誌に数多くの短編小説を発表し続け、その一部は 53 年の回顧録『野蛮人たちとの生活』にまとめられている。59 年、ゴーストストーリーの古典ともされる超自然的なホラー小説『丘の上の屋敷』を出版。スティーブン・キングが激賞したことでも知られ、『シャイニング』に影響を与えたと言われる。62 年、最後の⻑編小説となる『ずっとお城で暮らしてる』を出版。ジャクスンを代表する最高傑作と評されるゴシックミステリーとなった。
1960年代になると、健康状態を損ねたジャクスンは闘病生活を送るようになり、48 歳の若さで心不全により死去。25 年という比較的短い執筆期間で、6つの⻑編、100 を超える短編、家族の日常を描いた 2 冊のエッセイ、4 作の児童書を刊行した。また、多くの⻑編は映画化もされ、ロバート・ワイズ監督による『たたり』(1963)はホラー映画の古典的名作としても知られる。2008 年、彼女の功績を称え、心理サスペンス、ホラー、ダークファンタジーのジャンルにおいて最も優れた小説に贈られる賞としてシャーリイ・ジャクスン賞が創設された。日本では小川洋子、鈴木光司が受賞している。

【クレジット】
監督:ジョセフィン・デッカー
脚本:サラ・ガビンズ
原作:スーザン・スカーフ・メレル(『Shirley』未邦訳)
撮影:シュトゥルラ・ブラント・グロヴレン 美術:スー・チャン 編集:デヴィッド・バーカー 衣装:アメラ・バクシッチ 音楽:タマール=カリ 楽監:ブルース・ギルバート、ローレン・マリー・ミカス キャスティング:ケリー・バーデン、ポール・シュニー
出演:エリザベス・モス(『ハースメル』『透明人間』『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』)/マイケル・スタールバーグ(『ボーンズ アンド オール』『君の名前で僕を呼んで』)/ローガン・ラーマン(『ブレット・トレイン』『ウォールフラワー』/オデッサ・ヤング『帰らない日曜日』『グッバイ、リチャード!』)
2019 年|アメリカ|英語|107 分|アメリカン・ビスタ|原題:Shirley|字幕翻訳:橋本裕充
(C) 2018 LAMF Shirley Inc. All Rights Reserved
配給・宣伝:サンリスフィルム
公式サイト https://senlisfilms.jp/shirley
公式X https://twitter.com/shirleymovie_jp
7月5日(金)TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー